裏 バロッコな日々

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昼ドラHolic ~美し… rei@昼ドラHolicさん

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cocoTan

cocoTan

Oct 14, 2007
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Chapter 1-



『俺は―


逃げなくては―』

気が付くと修二は港にいた。
周囲が明るく白んでくる中で、ようやく意識を取り戻した。
ハンドルに顔を伏せ、何が起こったのか、何をすべきなのかを思い巡らせた。

「どこに隠したんだ。」
修二はエンジンをかけ、車を発進させた。



       *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  




透は、その夜店には出勤せず、ダーツバーの地下の、日頃暇さえあれば屯しているビリヤード室で修二を待っていた。

写真00008.jpg
帰りが予定より遅いことに心配になった透は、何度か修二の携帯に電話をかけた。

取引に何か手違いがあったような様子だったが、夜半過ぎ、ようやく、相手を追い詰めたような返事が返ってきた。

が、その後、修二の携帯は繋がらない。


『兄貴、どうしたんだ、兄貴...!』                                   

透は待った。
電波の届かないところに居るのか、電源が切られているのか、電池が切れたのか...。
焦燥感が透をさいなむ。


『大丈夫だ。
きっと兄貴のことだから大丈夫』
そう自分に言い聞かせはするものの、電話一本がつながらないということが、こんなにももどかしいことはなかった。

透はもって行き処のない不安と苛立ちで一杯になりながら、一晩を過ごした。



夜が明けた。
店が閉まり、透は憔悴しきった表情で、仕方なく部屋に戻り、ドアを開けた。
「部屋が、メチャメチャだ...!」
まるで泥棒にでも入られた後のように、部屋中が荒らされていた。
引き出しからあらゆるものが引き出され、壁に貼られたものはすべて剥がされ、足の踏み場のないぐらい、床一杯に、ぶちまけられていた。

呆然と立ち尽くす透の携帯に、ようやく、修二からの連絡が入った。

「逃げろ、透。」
冒頭、ビーッという音がして、それが公衆電話からのものであることが伺えた。
「あ、兄貴?」
「逃げるんだ!」
いつもとは違う修二の様子に、透は修二がただならぬ事態の渦中にいることを悟った。

「兄貴?!
どういうことなんだ、兄貴!」
「逃げるんだ、今すぐ!!」

「今すぐって...、」
「透、空港だ!どこでもいい、とりあえず出国するんだ!」

「い、嫌だ、俺も兄貴と一緒に行く!」
透は必死に訴えた。

「俺と一緒だと、危険なんだ!!」
「兄貴、オレを見捨てるのか?!」
透は、今修二と別れたら、二度と会えないような気がした―。

「...わかった。迎えに行く。階下の喫茶店で待ってろ。奥のテーブルで...。近くまで行ったら指示するから、目立たないようにしてるんだ。」



                                                   続く







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Last updated  Oct 16, 2007 10:03:14 PM


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