Hic Rhodus, hic saltus.

2006.07.06
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クリスタ=パウルの 『ナチズムと強制売春』(明石書店)
ナチズムと強制売春
強制収容所で収容者が性的虐待を受けたであろうことは想像に難くないが、強制収容所内に売春宿があったことを知ったのは、本書を読んでのことであった。本書の98~99頁には、ブーフェンヴァルト・フロッセンビュルク・ザクセンハウゼンの収容所構内図が掲載されているが、そこにはBordell(売春宿)とはっきり記されているのである。こうした事実を今まで知ることがなかったのはなぜなのだろう。

強制収容所内の売春宿で売春を強いられたのは、多くは強制収容所から選抜された女性(ユダヤ人のみならず多数の外国人やドイツ人を含む)であったが、国防軍や親衛隊用の売春宿にいた女性は、自発的意志で売春婦となった女性がいた一方で、売春を強いられたドイツ人女性もいた。ある者は街での売春の科で捉えられた者もあったが、ユダヤ人との関係を疑われただけの者もいたようである。

こうした軍関係の売春宿は、軍の規律を保ち、軍人を性病から守るためには不可欠であったが、これは軍の論理である。地域住民から見れば、性犯罪を抑止する効果もあることから、自分や家族が犠牲にならない限りでは黙認する。結果的に、戦争に売春宿は不可欠のものと認識され、そこで売春を強いられる女性の存在については、一切顧みようとしない。それは、日本だけのことではなく、ドイツにおいてもであった。

本書では、実際の被害者へのインタビューが数多く掲載されており、収容所での強制売春の実態を具体的に知ることが出来る。戦時強制売春の実態を、個々の被害者の体験を聞いたうえで捉えないと、時に問題点を糊塗してしまうことにもなるだろう。

クリスタ=パウル『ナチズムと強制売春』(明石書店)





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最終更新日  2006.07.06 10:48:13


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