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もちろん他の人に迷惑を掛けちゃいけないが、そんな”道理”を心に秘めた悪ガキ3人が集まれば、大冒険の始まりなわけで…。

ン十年前の話。

小さな山の中腹に仲良し3人組が隠れ家を造ったのだ。
どういういきさつで行動を開始したのか、覚えてはいない。

こっそりと家から持ち出したノコギリやらヒモやら、古くなった毛布やらを各人が持ち寄って、細い山道から雑木林の中に少し入った場所で、作業は始まった。

邪魔な枝を鉈で落とし、大きな枝にはノコギリを走らせ、セミの大合唱を耳にこびりつかせながら、小学校5年生の3人は汗を流したのである。

3時間かかった5時間かかったか、それとももっとかかったのか、よく覚えていない。

張り出した枝と枝に天幕となるよう古い毛布をかけ、汚いゴザを足下に敷き、藪蚊にさされることなどものともせず、どうみても当初の予定とは大幅に異なる結果ではあったが、中途まで出来上がった3人だけの隠れ家で、何かしら誇らしい思いがしたのは確かだった。



小遣いを出し合い、駄菓子屋でお菓子を買い、再び隠れ家に戻れば、そこから先は孤島に辿り着いた冒険家にもなれたし、敵の奇襲に備える忍者にもなれた。

しかし、隠れ家の終わりはあっけなかった。

台風で全てが吹き飛んでしまったのである。

大風と大雨に揺れる家の中、雨戸を閉めた部屋の中。

隠れ家がどうなっているのか気が気でなく、といって暴風雨の中、見に行くこともできず、ただ母親と二人で台風が通り過ぎるのを待っていた。

快晴の翌朝、午前6時半、ラジオ体操で顔を合わせた3人は、カードにスタンプを押してもらうと、すぐに隠れ家に走った。

朝露か台風の雨の残りか、雑草の葉についた水滴にズックと半ズボンを濡らしながら辿り着いた先には、何も無かった。

自分達で切った木の枝の断面と、その幹に巻き付いたヒモが、やけに新鮮に見えたことは覚えている。

誰も「作り直そう」という言葉を口にしなかった。

涙がこぼれそうだったが、他の二人も同様であったらしく、3人が3人とも別々の方向を見て、しばらく黙っていた。

他の二人の思いは判らないが、作り直そうという言葉が出せなかったのは、似たものは作れても同じものは作れないと、何故か確信したからだった。



親と喧嘩し、集まって話がしたいのにA君が習い事でB君が親の手伝いで集まれなかった時、一人で隠れ家に行った。

土臭い雑木林の中、一人で隠れ家のゴザに座り、胸の中が妙にスカスカのような気がして、我慢するけれど、涙が次から次にこぼれ落ちてきて、我慢するけれど嗚咽が漏れて…。

やがて少しずつ気分が落ち着いて涙が止まり、雑木林の重なりあった葉や枝の隙間から夏の青空が見えた時、何だか吹っ切れた気になった。

親の言い分にはまだ腹が立っていたが、泣いた事でスッキリしたんだろうと思う。

大人になり、自分自身の家族を持つようになり、辛い時に一人で泣ける場所が無くなった。



やりきれない思いを抱えたまま、それを自分の中に押し込めて過ごすのはツラ過ぎる。

そうした時は、一人になって思い切り泣くことが必要なのかもしれない。

泣いて泣いて、泣き疲れる程に泣けば、かつて自分が葉と枝の隙間から見た青空のカケラが、再び見えるのではないかと思ったりもする。

それが葉と枝の重なりでなく重く垂れ込めた黒雲であっても、その雲の更に上にはいつでも晴れた空が広がっている。





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最終更新日  2007年08月24日 21時10分14秒
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