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【古事記・日本書紀/新潮古典文学アルバム】天皇のもとに独自の世界を成立させる日出ずる処の国夏の暑さと私自身の怠惰のせいで、ブログが滞ってしまった。だれに何の迷惑をかけているわけでもないが、楽天ブログを通して公に発信している以上、いろんな意味で責任をもたなければと痛感している。私が個人的に気をつけているのは、特定の作品、人物への誹謗中傷は絶対しないということ。匿名性の強い個人のブログで、そういう攻撃的な態度は絶対に許されないと思うからだ。やはり、名指しでの攻撃をする場合は、こちら側も本名を名乗り、同じステージに立ってからの論争が妥当だと思っている。 私はたまに、本当にたまに駄作と思われる映画にぶち当たってしまうことがある。もう、そういうときはレビューを書かないことにしている。(笑)書いたら最後、とんでもない悪口だらけの記事になってしまいそうだからだ。 なぜ私がこんなことをつらつらと文章にしているかというと、他のいろんなブログを見るにつけ、たいていの方々はステキな画像と素直な感想でまとめられていて、ほっこりする心地よさがある。だが、中にはそうでない記事もある。一つの個性だとスルーできるものもあれば、「ちょっと、これはマズいでしょ」と、眉をひそめるものもある。そういうブログを目の当たりにしたとき、同じ日本人としてルーツは同じなのだから、先祖を敬い、同胞には敬意をはらってお付き合いしましょうよ、と声をかけたくなるわけだ。 今回、私が手にしたのは新潮古典文学アルバム1「古事記・日本書紀」である。全24巻から成っているものだが、図書館にはたいてい置いてある。帯のキャッチコピーがスゴイ。“ハートで読み、古典に遊ぶ”やっぱり日本人として自分たちのルーツを知るということは、ある程度の年齢になったら義務なのではなかろうか。小さいとき、ギリシャ神話を夢中になって読んだものだが、どういうわけだか古事記あたりになるとあまり印象にない。読んだのか読んでないのかすら覚えていない。自分のルーツを知るための日本の神話であるにもかかわらずである。そこには様々な理由があることは知っている。(だが、ここではその件については省略する。) 古典文学アルバムをおすすめしたい理由の一つに、豊富な写真を楽しめるということがある。たしかに寄せられているエッセイ(記事)は堅く、重厚感があるけれど、掲載されている写真はどれも参考資料として申しぶんのない秀逸なものばかりである。イザナギ・イザナミの物語を知りつつ、それにまつわる天橋立(京都府宮津市)やイザナキ神宮(淡路島)などの写真を眺めるのは、へたな旅行ガイドブックなんかより数段たのしめるものだ。また、恋愛に関して奥手のはずの日本人が、実は奔放な性と恨みつらみの激烈な感情を持った民族であったことが明かされる。最後に、「古事記・日本書紀」にエッセイを寄せている大庭みな子の一文を引用しておく。 『これは、人間の話、力みなぎる雄々しくも麗しい命のさま、切なくも滑稽な、怖ろしい、むごい、神々しい人間の話である』 「新潮古典文学アルバム1 古事記・日本書紀」 大庭みな子◆神野志隆光・執筆★吟遊映人『読書案内』 第1弾はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第2弾はコチラから
2016.09.24
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【井手英策/18歳からの格差論】勤労国家では対応できない社会経済の大変動大学生の息子から勧められて手にした本、それが『18歳からの格差論』である。イラストが多く、平易な文章で書かれていて、たいへん読み易いのが特徴である。どうしてこれを読もうとしたのか息子に聞いてみたところ、アマゾンの本のカテゴリ「イデオロギー」部門でランキング1位だったからとのこと。なるほど、そういう読書の仕方もあるのか、、、 それにしても最近の政治・経済への興味の傾向を見ていると、ごくごく平凡な地方の大学生も「なんかヘンだぞ」とか「このままじゃいけないのでは?」と、少しずつヤバイ感を抱いているような気がする。いわゆる都市部のエリート大学生なら、この問題についてもっと現実味を帯びた危機感を持って、主義・主張を展開するのではなかろうか。もしそうだとしたら、「若者も、お年寄りも、貧困におちいる危険性が高い国、年収200万円以下の人たちが1000万人をこえ、非正規雇用労働者も2000万人をこえる国」について、本当に腰をすえ、真摯に向き合う日もそう遠くはないかもしれない。 著者の井手英策は、東大卒で専門は財政社会学とのこと。代表作に『経済の時代の終焉』等がある。時折、テレビのコメンテーターとして出演しているので、顔を見れば、「あ、この人か」とわかる。 『18歳からの格差論』を読んで初めて知ったのは、日本が先進国のなかでも一番「小さな政府」であるということだ。つまり、財政は大きくなく、公務員の数ももっとも少ない最低水準の「小さな政府」なのだとか。我々はテレビの報道の一部だけを見て、公務員なんてスゴイ高給取りで、仕事がラクちんで、定時に帰宅できるなんて、まったく税金がもったいないと、さんざん悪口を重ねて来た。ところが実際は、先進国中もっとも少ない人数で行政を運営している「小さな政府」だと知ると、「それはどうもどうもご苦労さん」と言いたくなった。とはいえ、これだけ削っても巨大な借金を抱えているのはおかしいではないか! とも反論したくなる。そう、当然みなさんご存じのとおり、「税金があまりに安すぎる」からなのだ。たとえ消費税が10%に上がったとしても、日本の租税負担率は先進国の平均を大きく下回るというのが実情なのだとか。これって、ゆゆしき問題だと思った人は、私と同じ感性を持っていて話が合いそうだ。「べつにいいじゃん」と思った人は、その理由を聞かせて欲しい。 シンプルなことだが、税金は貧困にあえぐ人に、しっかりとお金や教育などのサービスとして提供することに使われて欲しい。こんなことを言ったら極端すぎると反論されてしまうかもしれないが、犯罪を少なくするのはこれしかないと思うからだ。(不景気になるとたちまち増加するのが強盗、窃盗、詐欺の類である。)もちろん、「あの人、ろくに働きもしないで、もらうだけもらってズルい」という意見もあるだろう。私も同感。でも、この本を読んでたいへんな勘違いであることを知った。たとえば生活保護の不正受給についてだが、な、な、なんと全体の0.5%ほどしかなく、1%にも満たない数字なのだ。ほとんどが健康上の問題や、年齢的に仕事を見つけられない老人など、深刻な問題を抱えている人たちが受給しているのだ。このデータが本当だとすれば、いかに我々が弱者に対し、いや他人に対して不信感を抱いているかがわかる。「人を見たら泥棒と思え」と先人は言う。それが日本人の根本気質だとしたら、ちょっと哀しい・・・ 『18歳からの格差論』は、政治・経済の観点からはもちろん、福祉の観点から読み進めてもたいへん参考になる。ぜひとも一読をおすすめしたい一冊である。 『18歳からの格差論』井手英策・著★吟遊映人『読書案内』 第1弾はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第2弾はコチラから
2016.09.03
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