サンク・オ・ピエを始めてかれこれ10年、色々な料理を作ってきました。数えたことはないですが、1000種類とまではいかなくても、100や200という事もないだろうという事で、、、まあ、数百種類の料理はやってきたでしょうか?
そんな中で、少しずつ作り方やスタイルを変えながらも定番となって不動のメニューになっているものがいくつかあります。そんな料理を紹介していこうかと思います。

これは、前菜の一番人気。養老渓谷産もち豚のスモークハムと生ベーコン。2006年ころから作り始めて、ずいぶん変化してきたが最近ほぼスタイルが決まってきた。

これが最初のころ。今はもう使っていない皿に盛られているのが懐かしい。ハムは、まず塩漬けから始める。専門的に作る場合は、ソーミュール液という一定濃度の塩水に硝石やスパイスやハーブなどまた発色剤や保存料なども入れてそこに肉を漬けこんで塩漬けにする。塩水がベースなので塩分濃度などが管理しやすいので、大量生産向きですね。
私の場合は、直塩法と言って、肉に直接塩を振っていくやり方。これは、最初から変わっていない。大きなラップを広げて肉を置き、地中海のカマルグ産の塩をミルで挽きながら塩を振ります。肉の厚みや脂ののり具合を見ながら塩を振ってから、ラップできっちり包んで数日ほど冷蔵庫で漬けこみます。スパイスやハーブ類もちろん発色剤や保存料も一切使いません。肉と塩だけです。
このハムを作りだしたきっかけは、市販の物に美味しいものがないからなんです。日本の法律では、ソルビン酸などの添加物を一定量入れないとハムとしては売れないんですね。それが原因で、日本のハムは何を食べてもどこか同じような味がするんです。ところがフランス産やイタリア産のハムは肉と塩だけでシンプルに作らているものが多いんです。しかしフランスやイタリア産のハムの美味しいやつは結構いい値段するので、これがまた使いづらい。それなら自分で作るか!という事で、やりはじめました。
そこで、一般的な方法である、、、ソーミュールで塩漬けし、ボイルして火を入れ、スモークして仕上げるという方法は完全に無視しました。
直塩で塩漬けし、オーブンで火を通し、冷燻でスモークして仕上げるという方法をとっています。その火の通し方がこの5年の間いろいろ変わってきました。はじめは、オーブンを低温(130度)にセットして、肉をシリコンペーパーに包みそれをさらにアルミホイルに包んでオーブンで3時間かけて火を通します。低温でゆっくり火を通しますからかなり柔らかいのですが、シートに包んで火を通すのでちょっと蒸れた感じになります。肉の表面が湿っているとスモークがうまくかからないので、最近はオーブンを250度にセットし、肉を3分ほど入れては、温かいところで6分以上休ませるという私得意の長時間ロースト法で火を通している。だからハムというより、ローストポークなのだが、実際に仕上がったものを食べると上質なハムという感じになっている。桜のスモークチップの風味がまた心地よい感じです。
生ベーコンのほうは、やはり直塩で漬けこみ、数日後冷燻にかける。その後真空パックにかけて氷温庫(-5~6℃)で熟成させる。
養老渓谷のもち豚は、千葉県の南部の養老渓谷で作られている美味しい豚です。もち豚という銘柄は、日本各地で作られていて、値段もピンキリなんですが、養老渓谷産のもち豚はその中でも一番高級なものです。餌と飼育法が良いのでしょう。変な癖がなく脂もきれいで美味しい肉です。
この5年くらいのノウハウで、最近は富士幻豚のハムやパンチェッタ、ラベルルージュのマグレ鴨の生ハムや去年の秋はイノシシのハムもやりました。上質な肉を塩だけで仕上げた美味しくてナチュラルなハム。サンク・オ・ピエでしか味わえませんよ!
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