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#食で健康に秋の味覚・きのこが「乳がん」リスクを下げる? 専門医が伝える、がんを遠ざける新習慣/ミモレ●きのこの摂取量が多い人では胃がん・乳がんリスクが大幅に低下●オリーブオイルが乳がん発症リスクを68%も下げた研究結果あり 他https://mi-mollet.com/articles/-/56791【記事の概要(所要1分)】10月の「ピンクリボン月間」に合わせ、がん専門医・佐藤典宏氏が生活習慣からがんを遠ざける実践法を紹介。まず注目は「長時間座る習慣」。1日7時間以上座る女性は、乳がんリスクが36%高く、週末の運動でも帳消しにできないと報告されています。デスクワーク中心の人は、立つ時間を増やすなど「座りすぎ対策」が重要です。さらに、きのこの摂取量が多い人では胃がん・乳がんリスクが大幅に低下。βグルカンやビタミンDなどの免疫活性成分が関与するとみられ、しいたけやまいたけなど種類を問わず有効とされています。加えて、調理油ではオリーブオイルが最も推奨され、乳がん発症リスクを68%も下げた研究結果も。ポリフェノールやオレイン酸による抗酸化・抗炎症作用ががんや認知症予防にも寄与します。つまり、「座りすぎを減らす」「きのこを食べる」「油はオリーブオイルに変える」——この3つが、日常からできるがん予防の新習慣です。
2025.10.30
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#食で健康に「野菜ジュース+一品」で栄養バランスが激変…管理栄養士「食が細くなってもヨボヨボ化しない食事メニュー」 ギリシャの「死ぬことを忘れた島」でよく使われる調味料の正体/プレジデント●イカリア島、オリーブオイル、野菜・果物、魚やチーズからたんぱく質https://president.jp/articles/-/103770【記事の概要(所要1分)】管理栄養士の関口絢子さんは、「食が細くなってもヨボヨボ化しない食事」のコツは、“旬の食材+バランス”にあると語ります。旬の食材は、最も栄養が高く、ビタミン・ミネラル・抗酸化物質が豊富で、少量でも効率よく栄養をとれるのが特徴。特に地元産で鮮度の高いものは、味も香りも抜群です。また、ギリシャ・イカリア島の長寿の秘密である「地中海食」に共通するのは、オリーブオイルや魚、野菜を中心とした“バランスの良い少食”スタイル。日本の「一汁三菜」や「まごわやさしいこ(豆・ごま・わかめ・野菜・魚・しいたけ・いも+発酵食品)」も同様に理想的です。一方で、野菜だけの食事や野菜ジュースだけでは、たんぱく質・脂質・カルシウム・鉄などが不足し、筋力低下や免疫低下を招くおそれがあります。野菜ジュースを飲む場合も、卵やチーズ、ナッツ、ヨーグルトなどを一品加えることで、栄養バランスが整い、元気な体を保つことができるとしています。--------------------その「死ぬことを忘れた島」イカリア島に興味を持って少し調べてみたのですが、まず、人口は約1万人程度。このうち、概ね10%が90歳以上の方です。欧州全体で90歳以上の方の割合は1%程のようですから、確かに10倍です。長寿の要因は、食事だけではないと思いますが、食に対するモチベーションを起こさせるという意味で、このイカリア島の地中海食は大いに参考にしたいところです。最近はよく聞くようになった地中海食ですが、調べてみると、イカリア島の地中海食は、独特のものがあるようです。まず、食材のほとんどが家庭菜園で育てられたり地元で採れたもの、つまり、自給的なんです。何が違うかと言えば、保存料などの薬品が使われている可能性が低いこと、そしてオーガニックです。次に、オリーブオイルの量は、意外にも、控えめだそうです。というのは、イタリア料理でよくあるように、炒め物で使うというのではなく、野菜にかけたりして使われることが多いようで、生のものをよく食べる習慣から来るものです。そして、これが特徴的だと思うのですが乳製品は、ヤギや羊由来のものが多いそうです。ヤギや羊のミルクは、消化が良くてカルシウムを多く含んでいます。これもまた意外なのですが、たんぱく源は、魚よりも豆類だとか。というのは、山間部に集落があるため、島でありながら、豆類、つまり植物性のたんぱく質をよく摂取するようです。また、宗教的習慣(ギリシャ正教・クリスチャン)としてのファスティング→断食を実施することもよくあるようです。全てを真似ることは不可能ですが、参考にはなりますね。
2025.10.29
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#がん治療研究【新研究】新型コロナmRNAワクチンが「がん治療」を助ける/Newspicks●ワクチン接種から100日以内に免疫CP阻害薬治療を受けた肺がん患者で生存中央値が21→37か月など著しい効果●動物実験で同ワクチンが免疫細胞を活性化しがん細胞攻撃の促進を確認 他https://newspicks.com/news-in-app/15349171/【記事の概要(所要1分)】テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究チームが、mRNA型コロナワクチンががん治療の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の効果を高め、生存期間を延ばす可能性を報告した(Nature誌、2025年10月22日)。ワクチン接種から100日以内にICI治療を受けた患者では、肺がんで生存中央値が21→37か月、メラノーマでは中央値未到達と、著しい延命効果が確認された。動物実験でも、mRNAワクチンがⅠ型インターフェロンを介して免疫細胞を活性化し、がん細胞攻撃を促進することが示された。従来型ワクチンでは同様の効果は見られず、mRNA特有の免疫再構築作用が鍵と考えられている。感染症対策から始まったmRNA技術が、がん免疫療法の“アクセル役”として注目されており、将来的には一般的なmRNAワクチンと個別化ワクチンを組み合わせる新しい治療モデルの実現が期待される。mRNAワクチンは「遺伝子を操作する」というような誤情報さえ流布されることがある。実際にはDNAに影響を与えることはなく、短時間で分解される安全な仕組み。-------------------記事にもありますが、mRNAワクチンに関するネガティブ情報がこれまで流布されてきた背景もあって、一部では「疑わしい情報」とされているのですが、この統計結果と、動物実験の結果は本物です。ただし、本当に効果が出るのかどうかについては、第三相試験で予定されているランダム化比較試験の結果を見ないといけません。もし、同じほどの効果が確認された場合は、米国では標準治療になる可能性が出てきている、そういう状況です。記事でも触れられている通り、mRNAを使用したがん個別化ワクチンは研究が進んでいます。華々しいと言える結果も出て来ています。しかし、これが一般化するまでには、時間やコストがまだまだかかります。その中で、このような既存のmRNAが使えるとわかれば、個別化ワクチンが登場するまでのつなぎにも役立つことでしょう。
2025.10.28
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#がん治療研究がんの増殖を抑える仕組みを解明 がんの強力な”ブレーキ役”分子、DA-Rafのメカニズムが明らかに/神戸大●細胞増殖にブレーキをかける●Rasの異常が関わる多くのがんに対して、新しい治療薬の開発につながる可能性https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/20251027-67232/記事の概要(所要1分)】神戸大学と千葉大学の研究チームは、がんの増殖を抑える分子「DA-Raf」がどのように働くのかを世界で初めて解明しました。通常、細胞が増えるときには「Ras-ERK経路」というスイッチが入り、がん細胞でもこのスイッチが入りっぱなしになることがあります。DA-Rafはこのスイッチを止める“ブレーキ役”の分子です。今回の研究で、DA-Rafは細胞膜の脂質(ホスファチジルセリン)にくっつくことで、増殖のスイッチを入れるRasのすぐ近くに位置し、Rasに先に結合して信号を遮断することがわかりました。つまり、RasとRafが結びつく前に「席を取ってしまう」ことで、がんの増殖を止める仕組みです。この発見により、Rasの異常が関わる多くのがんに対して、新しい治療薬の開発につながる可能性があります。--------------------------------では「Rasの異常が関わる多くのがん」とはどんながんかと言うと、代表的なものとしては膵臓がんがあります。KRAS変異という遺伝子変異が90%以上の症例で見つかっています。また、大腸がんでは40%、肺がんで25-30%程。これらの変異は、細胞に「常に増殖し続けろ」という信号を出し続けるため、がんが止まらずに増えてしまう原因になります。今回の研究でわかったDA-Rafの仕組みは、この暴走したRasの働きを抑える可能性があるため、これらのがんに対する新しい治療法になる可能性があるわけです。新しい薬の登場に期待します。
2025.10.28
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#がん治療研究コロナmRNAワクチンが免疫を訓練しがん細胞を攻撃するよう導く可能性 生存期間も延長/ミネソタ大※英語●MDアンダーソン研究●19~23年ICI(免疫チェックポイント阻害薬)治療あり進行非小細胞肺がん、悪性黒色腫1000人以上解析●生存期間中央値→摂取群30~40ヵ月:非摂取群26.7ヵ月https://www.cidrap.umn.edu/covid-19/covid-mrna-vaccines-may-be-able-train-immune-system-attack-cancer-cells-boost-survival?utm_source=chatgpt.comすごいニュースだと思いますよ。日本の報道ではかなり控えめな表現になっていますので、出来るだけ情報がわかりやすくて豊富なニュースを米国から抜き出してきました。英語のリリースなので、読めない人には難しいと思いますが、現代は便利な時代ですね、AIに翻訳させてみました。ちなみにこの米ミネソタ大学にあるCIDRAPというリリース元は、同大学所属の公的な研究・報道機関で感染症研究と対策を専門としています。代表のマイケル・オスターホルム博士は、感染症対策の世界的権威で、バイデン政権時の新型コロナ対策チームにも参加していた人物です。以下、内容です。-------------------「コロナmRNAワクチンが免疫を訓練し、がん細胞を攻撃するよう導く可能性 生存期間も延長」2025年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表されたデータによると、COVID-19のmRNAワクチンを接種した進行期の肺がんや悪性黒色腫(メラノーマ)患者では、免疫療法を始めてから100日以内の接種により、生存期間が大幅に延びることが示されました。この研究は、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究チームによって行われ、2019年から2023年までに免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による治療を受けたステージIIIまたはIVの非小細胞肺がん(NSCLC)とメラノーマの患者1000人以上の臨床データを解析したものです。●ワクチン接種群と非接種群の比較肺がん患者では、免疫療法を始める前後100日以内にワクチンを受けた人が180人、受けなかった人が704人。メラノーマ患者では、接種群43人、非接種群167人でした。ワクチンを受けた患者では、生存期間の中央値が26.7か月から30〜40か月へと延びたことが確認されました。●ワクチンが免疫療法の効きを高める可能性免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は、体の免疫システムを「再訓練」してがん細胞をより正確に攻撃させる薬ですが、進行がんでは効果が十分でない場合も多いのが現状です。研究者たちは論文の中でこう述べています:「mRNAワクチンは、炎症性サイトカインの急増を引き起こすことで、腫瘍を免疫チェックポイント阻害剤に“感作”させる(反応しやすくする)可能性があります。がんを直接標的としないSARS-CoV-2スパイクタンパク質を用いたmRNAワクチンでも、同様に腫瘍を感作できるのではないかと考えました。」●肺がん患者で生存期間がほぼ2倍にワクチンを接種しなかった場合と比べると、免疫療法開始から100日以内にCOVID-19 mRNAワクチンを受けた肺がん患者では、生存期間がほぼ2倍に延びていました。◎非小細胞肺がん(NSCLC)→中央値:20.6か月 → 37.3か月→3年生存率:30.6% → 55.8%→調整ハザード比(aHR):0.51(死亡リスク約半減)◎転移性メラノーマ→中央値:26.7か月 → 測定未到達(さらに長期生存)→3年生存率:44.1% → 67.5%→調整ハザード比(aHR):0.34(死亡リスク3分の1)この研究を発表したMDアンダーソンのアダム・グリッピン医師(PhD)は次のように述べています:「最も興奮すべき点は、すでに広く使われている低コストのワクチンが、特定の免疫療法の効果を劇的に高める可能性を示したことです。」データ収集時点でも生存中の患者がいたため、実際の効果はさらに大きい可能性もあると研究者たちは見ています。生存率の改善は、統計的に条件を揃えた比較(傾向スコアマッチング)を行っても維持されました。また、免疫反応が乏しいタイプの腫瘍でも同様の傾向が見られたとのことです。動物実験でも、ワクチンが腫瘍をICIに反応しやすくしていたといいます。●「この発見は極めて画期的」グリッピン医師は続けます:「mRNAワクチンは、免疫療法を受けている患者の治療成績を改善するだけでなく、これまで治療が効きにくかった患者にも効果をもたらす可能性があると期待しています。」また、フロリダ大学の小児腫瘍学者イライアス・サイヨール医師(PhD)は次のようにコメントしました:「この発見の意味は非常に大きい。がん治療のあり方そのものを変える可能性がある。免疫反応を再起動・再構築する“非特異的”ワクチンを設計できれば、すべてのがん患者に使える“汎用がんワクチン”を実現できるかもしれません。」「もしこれが生存率を倍にできる、あるいはたとえ5%、10%でも改善できるなら、患者さんにとっては非常に大きな意味を持ちます。しかも、がんの種類を問わず応用できる可能性があります。」●今後の展望と注意点ただし、著者らは「今回の結果はまだ予備的なものであり、因果関係を確定するには第3相ランダム化臨床試験が必要」だとしています。現在、その試験設計が進められているとのことです。なお、研究者のうち3名は、フロリダ大学で開発され、iOncologi社にライセンスされたmRNAワクチンに関連する特許を保有していることを明らかにしています。【まとめ】-COVID-19 mRNAワクチン接種により、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)治療中の肺がん・メラノーマ患者で生存期間が大幅に延長。-免疫活性化作用により、腫瘍がICIに反応しやすくなった可能性。-結果は観察研究によるもので、今後の大規模試験で確認が必要。-専門家は「がん治療全体を変える可能性がある」と期待を示している。---------------------先のコロナ禍で登場したワクチンにもいくつか種類がありますが、このリリースではどのワクチンかまでは特定されていません。ただし、mRNA方式のワクチンとされてはいますので、ファイザー・バイオンテックのものやモデルナのものであると見てよいと思います。こちらは、本家MDアンダーソンのリリースです↓https://www.mdanderson.org/newsroom/research-newsroom/-esmo-2025--mrna-based-covid-vaccines-generate-improved-response.h00-159780390.html?utm_source=chatgpt.comサマリー↓・免疫療法を開始してから100日以内にmRNA型のCOVIDワクチンを接種したがん患者は、ワクチンを受けなかった患者に比べて、3年後も生存している割合が2倍高かった。・この結果を受けて、mRNA COVIDワクチンをこのタイプの治療(免疫療法)の標準治療に組み込むべきかを検証する、ランダム化第Ⅲ相臨床試験が開始されることになった。・もしこの結果が検証で裏付けられれば、免疫療法の恩恵を受けられる患者の数を大幅に増やす可能性がある。もうランダム化比較試験の準備まで進んでいます。それほど、この研究はインパクトが大きいということです。
2025.10.24
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#がん治療研究腸内細菌叢の組成を改善するプレバイオティクス・カムカムと免疫チェックポイント阻害薬(ICI)併用は難治性メラノーマで安全かつ有望な抗腫瘍効果をもたらす【ESMO 2025】●カムカム→南米原産フルーツ●ICI単独と比較で1年生存・病勢C率など優位 他https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/search/cancer/news/202510/590681.html【記事の概要(所要1分)】南米原産フルーツ「カムカム」に含まれる成分castalaginが、腸内細菌叢を整えて免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果を高める可能性を示す臨床試験結果が報告された。ベルリンで開催中のESMO 2025で、カナダCHUM Microbiome CentreのMaillou氏が発表。フェーズ1試験(NCT05303493)では、難治性メラノーマ患者15例にカムカム150mg/日をICIと併用したところ、安全性に問題はなく、病勢コントロール率(DCR)40%、1年生存率56%を達成。完全奏効(CR)1例、部分奏効(PR)1例も見られた。カムカム単独の副作用はなく、免疫療法薬と同様の安全性プロファイルだった。代謝解析では、腸内でcastalaginが代謝されて生じるUrolithin A・Cや二次胆汁酸(GUDCA)の増加が奏効例で確認され、これらが有効性の指標になる可能性があるという。研究チームは2026年に精製castalaginによる新たな試験開始を予定しており、自然由来のプレバイオティクスが免疫療法の鍵となる可能性が期待されている。------------------------ヒト臨床試験の中間報告ですが、もう少し詳しく調べてみると、登録人数は45人で、従前通りの免疫チェックポイント阻害薬投与に加えて、カムカム由来のプレバイオティクス製剤(要するにサプリメント)を投与するという試験でした。投与量は1日150mgです。カムカムサプリを毎日飲んだ、ということです。カムカムそのものにがんをやっつける成分が入っているということではなくて、プレバイオティクスですから、つまり、腸内環境を良くすることによって、免疫チェックポイント阻害薬と何らかの相乗的に効果を成した可能性で考える方が妥当です。また、こちらはカムカムのとある成分を抜き出した製剤であり、サプリメントでありながら、薬のような位置づけであることも重要な展開で、今後、特に免疫チェックポイント阻害薬の効き目を高めることに特化した、プレバイオティスク製剤が医薬品として扱われていくことを予感させるものです。サプリ屋さんのわが社としては、気になる展開ではあるのですが、疾病治療用と疾病予防用をそれぞれのフィールドとして、薬とサプリのすみ分けが進むことと思います。
2025.10.22
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#がん治療研究標的α線治療薬アスタチンを用いた新しいがん治療の安全性・有効性を確認 難治性甲状腺がんへの医師主導治験を実施/理化学研究所●体内から放射線照射●標準治療で効果が無い甲状腺がん11名での試験→3名で転位病変消失、別の3名で腫瘍マーカー1/2に 他https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2025/20251007_1【記事の概要(所要1-2分)】大阪大学と理化学研究所の研究チームは、これまで治療が難しかった甲状腺がんに対して、新しい放射線治療薬「アスタチン」を使った世界初のヒト臨床試験を行い、安全性と高い治療効果を確認しました。アスタチンは、体の中から放射線を放つ「アルファ線治療薬」です。従来の放射性ヨウ素(¹³¹I)治療と似た仕組みですが、アルファ線はごく短い距離しか飛ばず、そのぶんエネルギーが非常に高いのが特徴です。そのため、がん細胞だけを正確に攻撃し、周囲の正常な細胞へのダメージを最小限に抑えることができます。今回の治験では、標準治療でも効果が出なかった甲状腺がん患者11人に単回投与を実施。その結果、重い副作用は見られず、安全に使用できることが確認されました。さらに中〜高用量を受けた患者のうち3人で腫瘍マーカーが半分以下に下がり、別の3人では転移した病変が画像上で完全またはほぼ消失しました。従来の治療が効かなくなった患者にも効果を示した点は、世界的に注目されています。アスタチンは国内の加速器で製造でき、輸入に頼る必要がない点でも大きな利点があります。今後は大阪大学発のスタートアップ「アルファフュージョン株式会社」が企業治験を進め、実用化を目指します。専用の隔離病室が必要な放射性ヨウ素治療と違い、外来で投与できる「通院型のがん治療」となる見込みで、患者への負担も軽減されます。この技術が確立すれば、甲状腺がんにとどまらず、他の固形がんにも応用できる可能性があります。国産の最先端治療として、アスタチンによる「標的アルファ線治療」は、日本発の新しい希望の光として、がん治療の未来を大きく変える一歩となりそうです。----------------------今回、大阪大学と理化学研究所の研究チームは、アスタチンをナトリウム化したものを使い、標準治療で効果が十分に得られなかった分化型甲状腺がんの患者さんを対象に、世界初となるヒトでの医師主導治験を実施しました。2022年から2024年にかけて11名に単回投与を行い、半年間の経過観察の結果、投与直後に一時的な吐き気などはみられたものの重い副作用は認められず、安全に投与できることが確かめられました。効果は上の通りですが、これまで効きづらかった患者さんに変化が現れたことは、臨床現場にとって明るい材料といえるでしょう。この治療の注目すべき点として、将来的に外来での投与が視野に入っているということです。従来の治療では、周囲への放射線管理のため専用病室での入院が必要でしたが、アルファ線は飛程が極めて短いため、隔離環境を必ずしも要しない可能性があります。加えて、日本国内でアスタチンを製造できることも重要です。従来型が海外原子炉に大きく依存しているのに対し、国内で安定供給体制を築ける見込みがあり、理研と大阪大学の連携に加え、新型加速器の導入で量産体制が整えば、全国の医療機関へ届けるためのネットワーク構築が現実的となってきます。もちろん、今回の結果は初期試験としての安全性確認と有効性のシグナルであり、効果の持続期間や最適な投与量、繰り返し投与の妥当性、他の治療との組み合わせなど、今後の企業治験で丁寧に検証されていくことになります。それでも、がん細胞だけに効果を発揮するというアルファ線の特性は、甲状腺がんにとどまらず、他の固形がんにも応用可能性を広げます。ヨウ素を目印にする現行の仕組みから、抗体やペプチド、低分子など、がん特異的に集まる“運び手”を使い分ければ、標的が増えるほど治療の出番も増えていくはずです。入院を前提としない放射線治療+正常組織への影響を最小限に抑えた内側からの狙い撃ち+国産製造による安定供給という三つの柱がそろえば、治療をあきらめないための一手が確かな形を持ち始めます。現状はまだ道半ばですが、すでに見えてきた手応えは小さくありません。この日本発の挑戦が、日常の外来で受けられる治療として根づいていく未来を期待します。
2025.10.21
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#がん治療研究白髪が増えるのはがんを防ぐため? 東京大学などが老化とがん化の分岐点と仕組みを解明/大学ジャーナル●東大がん研究の視点から「白髪」を研究●白髪ができるのは「がんになる前に危ない細胞を排除している証拠」と言えるhttps://univ-journal.jp/991936/?cn-reloaded=1【記事の概要(所要1分)】東京大学などの研究チームは、白髪が「がんを防ぐための体の仕組み」であることを明らかにした。髪の色をつくる色素幹細胞が傷つくと、体はその細胞をがん化させないために自ら老化させ、排除してしまう。すると色をつくる細胞が減り、白髪が生えるという。一方、紫外線や発がん物質のような強い刺激があると、この仕組みがうまく働かず、傷ついた細胞が残ってがんになる危険が高まることも分かった。つまり白髪は、体が「がんになる前に危ない細胞を処分している」サインでもあるという。研究チームは、老化とがん化の関係を理解する新しい手がかりになるとしている。----------------今回の研究は、「なぜ白髪ができるのか」ということを、がんの研究の視点から調べたものです。髪の毛の色は、「色素幹細胞」という小さな細胞がメラニン(髪の黒い色)を作ることで保たれています。ところが、この幹細胞がダメージを受けることがあります。たとえば紫外線、化学物質、加齢などによってDNAが壊れてしまうということです。普通、DNAが壊れた細胞は「がん化」してしまう危険があります。ところが、私たちの体にはそれを防ぐ仕組みがあって、危険な幹細胞を自分から老化させて働けなくするのです。すると、そのDNAが壊れてしまった細胞は増えることができなくなり、結果として色素幹細胞が減って白髪になります。つまり、白髪ができるのは、がんになる前に危ない細胞を排除している証拠ということです。白髪=体がちゃんと防御反応を起こしている、というわけです。ただし、紫外線や発がん物質などが強すぎると、この排除の仕組みが壊れてしまい、傷ついた細胞が残ってしまいます。そうすると、がんの元になる細胞が生き残ってしまいます。研究チームは、こうした幹細胞の「老化」と「がん化」の分かれ道を分子レベルで解明したことで、将来のがん予防や老化研究に新しい道が開けるとしています。どうして白髪が出来てしまうのかの一つを明らかにした研究として興味深いものですが、がん化の危険性が年齢と共に高まっていることの証拠とも言えないかなあ、とふと思いました。まあそれは、あまりに悲観的な見方であり、白髪が増えた=がんにならないようにちゃんと体機能しているんだなという認識でよいのだと思います。
2025.10.20
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#がん治療がんの次世代放射線治療「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」はここまできた/ゲンダイ●新薬利用で、生存期間1.8倍延長(マウス試験)●江戸川病院、5例中4例で腫瘍30%以上縮小●放射線の再照射可に→もう放射線が使えないと言われても使えるケースが出てくるhttps://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/378951#goog_rewarded【記事の概要(所要1分)】がん治療の新たな希望として注目されている「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」が、東大と製薬ベンチャーの共同研究によって大きく前進した。BNCTは、がん細胞に取り込まれたホウ素剤に中性子を照射し、細胞の内部で核分裂を起こして内側から破壊する“究極のピンポイント治療”だ。副作用が少なく、再発がんにも適用できることから「最後の砦」とも期待されている。今回開発された新ホウ素剤は、がん細胞内に長くとどまり正常細胞には蓄積しにくい性質を持ち、マウス実験では生存期間が約1.8倍に延長。膵がんモデルでは従来より6倍多く腫瘍縮小が確認された。江戸川病院では再発乳がん5例に特定臨床研究を行い、4人が腫瘍30%以上の縮小を示し、安全性も確認されたという。これまで放射線を当てられなかった再照射部位にも使える点が大きな強みであり、黒﨑医師は「放射線治療後でもあきらめる必要はない」と語る。今後はPETで光る腫瘍を対象とした研究が進行中で、BNCTは近い将来、がん治療の新たな選択肢として現実味を帯びてきた。----------------------この新しいホウ素製剤の性質(→がん細胞に長く留まる・正常細胞には留まらない)が、大きな仕事を成しそうな予感がします。そもそもBNCTそのものの臨床データが乏しいということやコストの問題で、大きく普及するには時間がかかりそうですが、試験を積み上げて行こうという機運は高まっているので、当面は、試験に参加するという形での恩恵享受が現実的だと思います。BNCTの募集中治験を少し調べてみました。胸部固形悪性腫瘍を対象とした国内第I/II相臨床試験の治験開始についてhttps://www.shi.co.jp/info/2025/6kgpsq000000nux7.html?utm_source=chatgpt.com初発膠芽腫に対する新型高出力中性子線源を用いた加速器BNCT装置iBNCT001及びSPM-011の第I相医師主導試験https://ct.ganjoho.jp/category/ttrial/jRCT2032230554?utm_source=chatgpt.com胸部固形がんを対象とした「BNCT治験 参加者募集」のお知らせhttps://www.tokyomidtown-mc.jp/info/202504174940/?utm_source=chatgpt.comなどです。
2025.10.16
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#食で健康に最新研究|実は“ガンと戦う栄養素”だった!ほうれん草や卵黄に含まれるゼアキサンチンの驚きの力/yoga●がん細胞を直接攻撃するCD8+T細胞を活性化●マウス実験:ゼアキサンチン摂取群で腫瘍増殖抑制、免疫CP阻害薬との併用で効果向上●がん予防への期待https://yogajournal.jp/29208【記事の概要(所要1分)】米シカゴ大学の最新研究により、目に良いとされてきた栄養素「ゼアキサンチン」に、がんと戦う新たな力があることが判明した。ゼアキサンチンはホウレンソウやトウモロコシ、卵黄などに含まれるカロテノイドの一種で、がん細胞を直接攻撃するCD8+T細胞の働きを活性化させる。これは、T細胞受容体の安定化と細胞内信号の強化によって免疫反応を高める仕組みだという。マウス実験では、ゼアキサンチンを摂取した群で腫瘍の増殖が抑制され、免疫チェックポイント阻害剤との併用でさらに効果が向上。人のT細胞でもメラノーマや多発性骨髄腫、膠芽腫への攻撃力が確認された。一方で、構造が似たルテインにはこの効果が見られなかった。ゼアキサンチンはトウモロコシ、ケール、卵黄、オレンジピーマン、マンゴーなど身近な食材からも摂取できる。日々の食事で意識的に取り入れることで、自然に免疫力を底上げし、がん予防の一助となる可能性が示唆されている。-----------------------この記事の元となるシカゴ大学の論文↓https://www.cell.com/cell-reports-medicine/fulltext/S2666-3791%2825%2900397-0?utm_source=chatgpt.com論文タイトル(英語):Zeaxanthin augments CD8+ effector T cell function and immunotherapy efficacy 掲載誌:Cell Reports Medicine:世界トップクラスの学術出版社Cell Pressが発刊。各研究機関や大学図書館でも主要購読誌として扱われている。投稿論文はすべて専門家による二重~三重査読を通過。概要(要点):・血液中の栄養素をあつめたライブラリを用いたスクリーニングで、ゼアキサンチン(ZEA)が CD8⁺ T 細胞の腫瘍細胞への細胞傷害性を強めることが発見された。 ・ゼアキサンチンを経口投与すると、マウスモデル(B16F10 メラノーマ、MC38 結腸癌)で抗腫瘍効果が確認された。 ・免疫チェックポイント阻害剤(anti-PD-1 など)との併用で効果がさらに強まること、さらにヒトの TCR 遺伝子操作 CD8⁺ T 細胞に対しても細胞傷害能が強化されることが示された。 ・ゼアキサンチンは T 細胞表面の TCR(T 細胞受容体)複合体の安定化やシグナル伝達強化を通じて作用すると考えられている。 ・対照として、構造異性体であるルテイン(LUT)には同様の効果は見られなかった。少し詳しく説明しますと、まず、マウスへの投与は飼料に混ぜる形でなされています。つまり、食べさせているということです。ただこれ、あくまでも実験上ですが、効果が発現した量のゼアキサンチンをヒトの摂取量に換算すると、概ね、一日に2.8g程度摂取に相当してきます。毎日の食事から摂るのは到底無理な量です。卵黄で計算すると、一日に40,000個です。ただし、この摂取量と言うのは、薬理用高容量であり、通常摂取量を大幅に超える量をあえて実験や治療目的で投与されています。要するに、メカニズムを確認するための動物実験用量ということです。まだまだ研究がその次元、ということも言えそうです。ですから、この量でないと意味がないとか、同じようにヒトに効果が確認されるというものではありません。よって、人間が健康維持のための摂る量としては、現状はっきりとした事は言えませんが、1日卵1~2個に加えて緑黄色野菜や果物を摂ることで、ゼアキサンチンやルテインを複合的に少量ずつ補うのが理想と言えそうです。食事のことなんか気にしない、という方でも、普通に食べていそうなメニューです。これを習慣化したり、既に習慣化されている方にとっては、励みになる記事ではないでしょうか。
2025.10.15
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#食で健康にがんを予防するための食事とはどんな食事なのか…「何を避けて、何を食べればいいのか」の世界的研究/東洋経済●食事は10〜20%のがん発症の原因になっている→重要●アルコールを避ける・食物繊維を摂る・超加工肉を避ける・砂糖入り飲料を避けるhttps://toyokeizai.net/articles/-/907759?display=b【記事の概要(所要1分)】WHOによると、がんの30~40%は生活習慣が原因で、その中でも食事は10〜20%を占める重要な要素とされています。ハーバード大学医学部講師の濱谷陸太氏は、世界がん研究基金などの提言をもとに「がん予防のための食習慣」を紹介。ポイントは、①アルコールを避ける②食物繊維を多く摂る(野菜・果物・豆・全粒穀物中心)③ファストフードや超加工食品を避ける④赤肉・加工肉を控える⑤砂糖入り飲料を避けるこれらは文化に依存せず科学的根拠のある内容で、家族にがん患者がいる人などに特に有効な「チェックリスト」となります。-----------------これは本からの抜粋記事なのですが、こういう記事って多いですよね。アルコールを避ける、食物繊維を・・・って、最近ではお医者様でも言われることなのですが、庶民の私からすると、じゃあアルコールやファストフードは一生摂るなってことを言いたいのかとか、食物繊維はどれくらいの頻度でどのくらいの量を摂ったらいいのか、そこまで教えてよと言いたくなるのです。そこで、私になりにこれら、当たり前に言われる事の内容を少し掘り下げて調べてみましたので、よろしければご参考になさってください。■食物繊維はどのくらい摂ればいいのか目標量(WHO・日本の基準)成人で1日25~30g以上推奨。(具体例)ごはん茶碗1杯の玄米で約3g、りんご1個で約4g、ゆで大豆100gで約6g、野菜1皿で約3~4g。→毎食、野菜・果物・豆・穀物を組み合わせてとると達成しやすい。(頻度)「毎日」が理想。腸内環境や血糖への影響は蓄積型なので、1日抜ける程度は問題ありませんが、週の大半で安定して摂ることが重要です。■超加工食品(ファストフード・スナックなど)はどこまで避ける?「一生食べてはいけない」わけではない。問題は“常食”すること。週に1回程度であればリスクはほぼ無視できる範囲。ただし、毎日・毎食のように摂ると、体重増加や炎症促進、腸内細菌の乱れを通じてリスクが上がると多くの研究で示されている。目安としては、摂取カロリーの20%以内を加工食品に抑えるのが良い(ハーバード公衆衛生大学院の研究)。■赤肉・加工肉はどれくらいまで?加工肉(ハム・ソーセージ・ベーコンなど)は週に1~2回以下。赤肉(牛・豚・羊など)は1日70~90g未満を目安に。→「週2〜3回、手のひらサイズ1枚程度」が妥当です。鶏肉や魚、豆製品をメインにするとバランスが良くなる。■砂糖入り飲料コーラやスポーツドリンク、加糖コーヒー飲料などを日常的に飲むのをやめることが最優先。月に数回程度の嗜好品としての摂取なら問題なし。水・お茶・無糖コーヒー・炭酸水などを代替に。■ アルコール「少量なら健康に良い」という神話はがん予防の観点では否定されている。できれば禁酒が良い。どうしても飲むなら週1~2回、1回につきワイン1杯(100ml)程度に抑えるのが現実的ライン。だいたいこのような感じです。要するに、習慣をどうするか、ということと捉えればよいと思います。週に1回、ジャンクフードを食べるのは別に気にしなくていいのですが、日常的に野菜不足であったり、砂糖が入った飲料を飲むのは問題を起こす可能性が高まるということです。
2025.10.14
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#がん治療研究がんのサポート役(CAF)を狙い撃ち 3Dミクロ腫瘍で見えた新たながん治療標的/早稲田大学・3Dミクロ腫瘍モデル→体内腫瘍環境に近く高精度のシミュレ―ションを可能に・既存薬の抗炎症薬「ドラマピモド」が膵がん等への薬剤の効果を高めることを確認 他https://www.waseda.jp/inst/research/news/82483【記事の概要(所要1分)】早稲田大学と米国フレッド・ハッチンソンがん研究センターの共同研究で、がんの「サポート役」とされる腫瘍随伴線維芽細胞(CAF)を狙い撃つ新しい創薬手法が開発された。従来の平面培養では見逃されていた薬剤を、実際の腫瘍に近い「3Dミクロ腫瘍モデル」でスクリーニングすることで多数発見。その中から、抗炎症薬候補だった「ドラマピモド」がCAFの働きを抑え、がんの増殖を止めるとともに、抗がん剤や免疫治療薬の効果を大幅に高めることが確認された。特に膵臓がんなど線維化の強い腫瘍で薬剤の浸透性を高める可能性がある点は画期的で、がん細胞そのものではなく「がんを支える環境」を標的とする新しい治療の方向を示した。さらに、この研究で発見された非古典的ヘッジホッグ経路「DDR1/2–MAPK12–GLI1」は、過去の治療薬が効果を発揮しきれなかった理由を説明する突破口にもなりうる。個別化医療にも応用できる可能性があり、がん治療の新しいパラダイムを開く成果といえる。---------------------私個人としては、既存の抗炎症薬が膵臓がんなどの繊維化が早いがんに効果を成すことにばかり注目してしまいます。しかし、この研究の中心は、創薬手法としての「3Dミクロ培養モデル」です。創薬の初期段階で、薬剤の効果を確かめる手段として用いられるのが、いわゆる細胞実験です。現在、がん細胞による細胞実験は、2D培養が世界基準となっており、まずはこれをやるわけです。2D培養とは、がん細胞をのみをとりだして、シャーレの上で培養させたものに薬剤が効果があるかどうかし試験するのですが、ここで効果があるとされるもののうち、実際に人体内でのがんに効果があるものは、わずか数%なのです。2D培養は、コストが安いことや試験データの取りやすさから現在もスタンダードなのですが、この試験精度の悪さはずっと指摘されるところです。その移行先として目されているのがこの3D培養なのですが、2Dと比較して3Dは、より体内に近い形でがん細胞を再現する手法と言ってよいと思います。がんというのは、がん細胞だけが増殖するのではなく、その周辺環境や血管細胞、免疫系が相互に作用して悪化していくものです。ところが、2D培養の場合は、がん細胞だけを取り出して増やすわけですから、体内の本当のがんとは程遠い姿になってしまいます。3D培養、組織を立体構造として再現しますから、体内にあるがん細胞の状態を緻密に作り出すことが出来ます。このことにより、薬剤の細胞への浸透を、より実腫瘍に近い形で確認できるわけです。2D培養は、その手軽さから、今後も初期スクリーニング手段として活用され続けるはずですが、その次のスクリーニング技術として、3Dモデルが活用されるようになってきています。つまり、2Dと3Dの併用はもう始まっているということです。効率等を考えると、今後は、3D培養が主流になっていくものと思われます。ちなみに、その膵がんへの効果が期待される「ドラマピモド」ですが、肝毒性を主因として、臨床試験が中止になった経緯があるようです。薬剤としての使用を考えると、従来のままでの使用は難しいように思いますが、何らかの方法で肝毒性の問題が解決されれば、いっきに臨床試験に進む可能性はあるように思います。10年以内での実用は難しいかも知れませんが、20年ならどうかという感じです。
2025.10.10
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#がん治療あまりに広い治療応用の可能性。なんと、指定難病からメタボまで ノーベル賞で注目が高まる「制御性T細胞」の働きと有用性を、発見者の坂口志文氏に、直接聞いてみた/現代※2020年実施のインタビューから・制御性T細胞を少し減らすとがんへの免疫応答高まる 他https://gendai.media/articles/-/158687【記事の概要(所要1分)】坂口志文氏が発見した「制御性T細胞(Tレグ)」は、免疫の過剰な働きを抑える細胞で、自己免疫疾患や炎症を防ぐ“免疫のブレーキ”として知られています。しかし、がんの治療ではこのブレーキを一時的に緩めることで、体内の免疫細胞ががんを攻撃しやすくなる可能性があります。坂口氏は「Tレグを少しだけ減らすことで、がんへの免疫応答を高められる」と説明します。つまり、免疫のバランスを無理なく整え、体に備わった力を引き出す“自然な免疫療法”です。現在の抗がん剤や放射線治療のようにDNAを直接傷つけるのではなく、もともと人が持つ免疫機能を活性化してがんを制御するという発想であり、副作用も少ないのが特徴です。Tレグを外で調整して体に戻す方法も研究されており、将来は患者自身の免疫細胞を使って「穏やかにがんを抑える治療」が実現する可能性があります。免疫を壊すのではなく“整える”というコンセプトです。---------------------2020年のインタビューということで、古い情報となりますが、既に5年前からこのようなことを仰っていたということです。当時は、どちらかと言えば「夢を語る」というような雰囲気のあるインタビューですが、これが今では実際にヒト臨床の想定にまで漕ぎつけられているわけですから、大きな進展があったと言えます。それが、今回のノーベル賞受賞に大きく関係するわけです。Tレグを増やすとか減らすとか、それだけを聞くと、空論的ですらあるのですが、実際に坂口先生の会社では、「エピジェネティック再プログラミング技術」というものを確立されています。これは、DNAの文字(プログラムそのもの)は変えないけれど、その読み方を変えることで細胞の”性格”を変えるという技術で、体への負担が抑えられる次世代の免疫療法として注目に値するものです。日本国内だけでも、これまで多くの創薬系ベンチャーが登場し、華々しい発表で資金調達を目論みながら、全く鳴かず飛ばずで消えていった例を沢山見ました。しかしこちらについては、着実に成果を積み上げられてきています。昨日は、免疫療法でがんが治る人の割合が格段に高まる、と言われた、坂口先生の会見内容を紹介しましたが、これが信用値するものだと、私は思っています。
2025.10.09
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#がん治療ノーベル賞受賞の坂口氏「がんは治せる時代に必ずなる」/m3・20年以内に免疫療法でがんが50~60%治せる未来を展望※免疫チェックポイント阻害薬使用で現状20~30%程度https://www.m3.com/news/open/iryoishin/1299744【記事の概要(所要1分)】2025年ノーベル生理学・医学賞を受賞した坂口志文・阪大特任教授は、制御性T細胞(免疫の暴走を抑える細胞、Treg)を世界で初めて発見し、その存在と意義を証明した研究で高く評価された。受賞会見で「がんは免疫を利用して必ず治せる時代になる」と強調し、20年以内に免疫療法でがんが50~60%治せる未来を展望した。坂口氏は1979年に研究を開始し、1995年に制御性T細胞を同定。2000年にはFoxp3遺伝子との結び付きで自己免疫病や炎症性腸疾患との関連を明らかにした。米国で8年間奨学金を得て研究に専念した経験も大きく、研究資金の多様性や社会の成熟が科学の発展に必要だと指摘。日本の基礎科学支援の不足にも言及した。会見では石破首相からの祝電が入り、がん免疫療法の未来を語る場面もあった。若手へのメッセージとして「興味を持ち続けることが新しい発見につながる」と述べ、自身の姿勢を「一つ一つ積み重ねること」と表現した。74歳の今も現役研究者として活動している。----------------------私は日本人として、このノーベル賞受賞をとても誇らしく思います。本庶佑先生の受賞もまだ記憶に新しいですが、同じ免疫療法につながる分野でのこの坂口先生のご受章ですから、世界中のがん治療の未来は、実は日本人から見出されているのぞと、胸を張りたくなるのです。この会見で坂口先生が仰っているのは、精神論などではなく具体的な見通しであると感じています。今回のノーベル受賞で話題にのぼる制御性T細胞は、”免疫が暴走して自分の体を攻撃しないようにブレーキをかける働き”をしています。ところが、このブレーキはがんに対しても効いてしまい、免疫ががんを攻撃できなくなることがあります。坂口先生の研究は、この制御性T細胞の働きを一時的に弱めたり取り除いたりすることで、患者さん自身の免疫を強くしてがんを攻撃させる方法につながると考えられています。既存の免疫療法である免疫チェックポイント阻害薬は、効果が出る人は2~3割ほどです。坂口先生は、これをさらに発展させることで、5~6割の患者さんが免疫で治る時代が来ると見ておられるのです。しかも、免疫の力でがんを弱らせてから手術などと組み合わせることで、さらに治療効果を高められる可能性があります。むやみに、がんを克服できるとか、そういう言葉を使われずに、時間と程度を口にしておられるところに説得力があります。これは、新しい希望だと思います。
2025.10.08
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#がん治療研究サルモネラ菌が大腸がんに効く?マウスでは治癒例も/FuturoProssimo・マウス試験、腫瘍増殖を大幅に抑制・生存率向上・腫瘍完全消失ケース有・同菌が腫瘍内で一定以上に増殖すると”自爆”→同時に免疫刺激物質を放出し対がん免疫増強※サイエンス姉妹誌掲載https://ja.futuroprossimo.it/2025/09/salmonella-kamikaze-contro-il-cancro-al-colon-topi-guariti/【記事の概要(所要1分)】シンガポール国立大学などの研究チームは、感染症の原因として恐れられてきたサルモネラ菌を大腸がん治療の「生きた薬」として利用する新戦略を発表しました。弱毒化サルモネラに遺伝子操作で「同期溶解回路」を組み込み、腫瘍内で一定量に達すると一斉に自壊し、免疫刺激タンパク質「LIGHT」を放出します。この作用により腫瘍周辺には成熟した三次リンパ組織が形成され、キラーT細胞や自然リンパ球ILC3が活性化して強力ながん免疫応答を引き起こしました。大腸がんマウスでは腫瘍縮小や生存延長、さらには腫瘍の完全制御が報告され、従来免疫療法が効きにくい大腸がんに新たな可能性を示しました。ただし現段階ではマウスでの成果にとどまり、人間の免疫や腸内環境では異なる反応が予想されるため、安全性と有効性を確かめる臨床試験が今後の焦点となります。それでも「腫瘍の内側から免疫の戦場を作り変える」という発想は、チェックポイント阻害薬やがんワクチンとの併用によって次世代治療の扉を開く可能性を持っています。-----------------日本ではまだ紹介されていないものですが、査読ありの論文誌に掲載されているものということで、取り上げてみました。掲載されたのは、Science Translational Medicine(サイエンス・トランスレーショナル・メディシン)で、自然科学系最高峰のサイエンス誌の姉妹誌とされています。ちょっと、本文もロボット翻訳をそのまま掲載されているようなものなので、言葉をならしてまとめてみました↓今回シンガポール国立大学の研究チームが発表した成果は、これまで感染症の元凶とされてきたサルモネラ菌を、逆に「がん治療のための薬」として利用するものです。研究者たちは、弱毒化されたサルモネラ株VNP20009を遺伝子操作し、「同期溶解回路」を組み込みました。この仕組みは、菌が腫瘍内で一定以上に増殖すると、一斉に自壊するようプログラムされています。単なる自滅ではなく、その瞬間に免疫を強力に刺激するタンパク質(LIGHT)を放出するのが特徴です。サルモネラは本来、酸素が少なく栄養が豊富な環境を好みます。腫瘍はまさにその条件を満たしているため、菌は自然に腫瘍組織へ集まります。腫瘍に入り込んだサルモネラはそこで増殖し、一定の密度に達すると一斉に崩壊し、LIGHTが放出されます。LIGHTは免疫細胞上のHVEM受容体に結合し、局所の免疫を一気に覚醒させます。その結果、腫瘍の近くに成熟した三次リンパ組織mTLSが形成されました。これはいわば臨時の免疫中枢であり、B細胞とT細胞が秩序立って集まり、強力ながん免疫応答を起こします。さらに、通常大腸がんの進行とともに減少してしまうILC3が回復し、腫瘍を攻撃するキラーT細胞CD8+が活性。インターフェロンγやグランザイムBといった抗腫瘍分子を分泌しました。研究は、自然発症型と化学誘発型の2種類の大腸がんマウスモデルで行われました。その結果、腫瘍の成長は大幅に抑えられ、生存期間が延長されました。さらに、一部のマウスでは腫瘍が完全に制御される、治癒に近い状態が得られました。ただし、この成果はあくまでマウスでの前臨床です。人間の免疫システムや腸内細菌叢はマウスとは大きく異なるため、そのまま応用できるとは限りません。また、遺伝子改変した生菌を体内で使うことには、感染や炎症、予期せぬ副作用のリスクが伴います。そのため、臨床応用に向けては安全性を徹底的に検証する必要があります。それでも、これまでだ大腸がんでは免疫チェックポイント阻害薬の効果が限定的であったことを考えると、このような「腫瘍そのものを免疫の戦場に作り変える戦略」は大きな可能性を秘めています。将来的にはチェックポイント阻害薬やがんワクチンとの併用によって、より強力な治療手段となるかもしれません。まとめると、これは「腫瘍に潜り込んだ上で自ら爆発して免疫を呼び覚ますサルモネラ」という発想の治療です。臨床応用はまだ先の話ですが、がん治療の新しい未来を切り開く可能性を感じさせますね。
2025.09.26
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#膵臓がん【米国】経口薬「アテビメチニブ」転移性膵管腺がん初期試験で好結果 6か月生存率94%を達成/cancernetwork・ゲムシタビン&ナブパクリタキセルと併用第2相試験・従来標準治療の6ヵ月生存67%を大きく上回る、無増悪生存率72%(従来44%)https://www.cancernetwork.com/view/atebimetinib-plus-soc-chemo-improves-survival-responses-in-front-line-pdac?utm_source=chatgpt.com【記事の概要(所要1分)】米バイオ企業Immuneeringが開発中の経口薬「アテビメチニブ」を、ゲムシタビンとナブパクリタキセルという標準の抗がん剤と併用する臨床試験(第2a相)で、有望な結果が出ています。対象は進行した膵がん患者34人。解析の時点では、まだ中央値の生存期間は出ていませんが、6か月後の生存率は94%と非常に高く、従来の標準治療(約67%)を大きく上回りました。また病気が進まないまま生存できていた人の割合も72%で、標準治療の44%より良い数字でした。腫瘍が小さくなる、あるいは安定した患者は81%にのぼり、腫瘍が消えて見えなくなったケースもあったとされています。副作用としては貧血や白血球の減少が報告されましたが、治療が原因で亡くなった例はありません。膵がんは治療の選択肢が極めて少なく、これまで標準治療に大きな進歩がなかった領域です。今回の結果は、患者さんがより長く、そして安全に治療を続けられる可能性を示すものとして注目されています。今後は標準治療と直接比べる大規模な国際試験が予定されており、承認に向けた大きなステップになると見られています。------------------「アテビメチニブ」を開発した製薬会社からの発表があったもので、この影響で同社株が50%もの高騰となっています。効果の持続と副作用の軽さが特徴のようです。以下、日本語訳です。経口MEK阻害薬 Atebimetinib (IMM-1-104) を、修正ゲムシタビンおよびナブパクリタキセル(アブラキサン)と併用する治療が、膵がん患者を対象とした進行中の第2a相試験(NCT05585320)において、生存率を中心に良好な結果を示したと、開発元であるImmuneering社が発表した。2025年5月26日時点のデータカットによると、1日1回320mgのAtebimetinibを投与された32人の患者で、6か月全生存率(OS)は94%(95% CI 77–98%)、6か月無増悪生存率(PFS)は72%(95% CI 50–85%)であった。いずれも中央値は未到達だった。標準治療の指標(第3相MPACT試験)では、6か月OSは67%、PFSは44%である。評価可能な36人の患者において、奏効率(ORR)は39%(14人)、病勢制御率(DCR)は81%(29人)だった。腫瘍の深く持続的な縮小が確認され、個別病変が検出不能になるケースもあった。参考となる既存データではORR 23%、DCR 48%であった。治療抵抗性は2例、治療中に進行を示したのは1例のみで、大半の患者(23人)は腫瘍径の縮小や安定を示した。シティ・オブ・ホープのVincent Chung医師(本試験の責任医師)は、「Atebimetinibは膵がんにおいて新たで耐久性の高い治療オプションとなる可能性がある。これまでの標準療法は効果の持続性が限られ、副作用も重く、患者の転帰は不良だった」とコメントした。この試験には転移性膵管腺がん(PDAC)の患者34人が参加。Atebimetinibを240mgまたは320mgで毎日投与し、ゲムシタビン1000mg/m2とナブパクリタキセル125mg/m2を4週サイクルの1日目と15日目に投与した。対象は18歳以上、未治療の局所進行または転移性PDAC患者で、ECOG PS 0–1、RECISTで評価可能な病変を有し、臓器機能が十分な者。患者の中央値年齢は69歳で、65%が65歳以上。65%が男性、90%がCA19-9高値を示していた。安全性については、グレード3以上の有害事象は貧血(18%)、好中球減少(15%)、低カリウム血症(3%)、嘔吐(3%)、疲労(3%)が報告され、グレード5(死亡例)はなかった。現在、Immuneering社はグローバル第3相試験を計画しており、Atebimetinib+ゲムシタビン+ナブパクリタキセル vs 標準療法の比較を通じて加速承認を目指す。Chung医師は、「何十年も標準治療に大きな改善はなく、より持続的で忍容性の高い新しい治療が切実に求められている」と述べた。ただし、Chung医師は開発企業の諮問委員を務めている。
2025.09.25
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#がん治療骨転移に新たな治療法 がんの栄養絶つ動脈塞栓術 患者の90%が症状緩和/NEWSjp・放射線治療が効果が無い場合の手段として開発・カテーテルを使って腫瘍に血液を運ぶ栄養血管に塞栓物質や抗がん剤を投与しがんの栄養補給を断ち切る方法https://news.jp/i/1343423956694663831?c=768367547562557440【記事の概要(所要1分)】がんが骨に転移すると、強い痛みや骨折、まひなどの症状を伴い、患者に大きな負担となります。従来は放射線治療が最も効果的で、約70%の患者で症状緩和が得られていますが、残りの患者には十分な改善が得られず、再照射や麻薬系鎮痛薬での対応に頼ることがありました。こうした限界を補う新しい治療法として注目されているのが「動脈塞栓術」です。カテーテルを使って腫瘍へ血液を運ぶ栄養血管に塞栓物質や抗がん剤を投与し、がんの栄養補給を断ち切ることで活動を弱める仕組みです。本来は救急医療で出血を止めるために行われてきた手技を応用したものです。骨転移に対しては、動脈塞栓術により約90%の患者で症状が和らぐことが示されており、今後は放射線治療と並んで、がんの痛みを抑える新しい選択肢として普及が期待されています。-------------------------残念なのは、まだこの療法が保険診療としては認められていない点です。また、もし自費で受けたいとしても、実際に治療可能な病院は定かではありません。「有痛性の骨転移に対する緩和的動脈塞栓術の多施設共同試験」というものが実施されており、その説明を行っているのが千葉県の国立がん研究センター東病院です。https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/diagnostic_radiology/020/020/index.html?utm_source=chatgpt.comIVRと呼ばれる画像下治療の領域に属するもので、同病院では問い合わせや相談にも応じているとのことです。また、IVRの実施施設としては、京都の福知山市民病院https://www.city.fukuchiyama.lg.jp/site/hosp/2983.html?utm_source=chatgpt.com秋田県の秋田大学病院https://www.hos.akita-u.ac.jp/departmentlist/diagnostic_radiology_radiation_oncology.html?utm_source=chatgpt.com神奈川県の海老名総合病院https://ebina.jinai.jp/facilities/facility29.html?utm_source=chatgpt.comなども相談が可能ではないかと思われます。この治療が骨転移時の疼痛緩和に実際に有効かどうかは症例ごとに異なりますが、相談してみる価値は十分にありそうです。
2025.09.24
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#緑茶東北大、緑茶中のカテキンが主要な歯周病関連細菌を死滅させることを確認/マイナビ・5種類の歯周病菌に対して効果、虫歯菌でも効果確認・歯周病予防に緑茶が役立つ可能性https://news.mynavi.jp/techplus/article/20240822-3010252/【記事の概要(所要1分)】東北大学の研究チームは、緑茶に多く含まれるカテキン「エピガロカテキン-3-ガレート(EGCG)」が、主要な歯周病関連細菌に強い殺菌作用を示すことを明らかにしました。研究では、Porphyromonas gingivalisやFusobacterium属など5種類の歯周病菌に対して、2mg/mlのEGCGを4時間作用させると全てが死滅し、う蝕原因菌のStreptococcus mutansよりも感受性が高いことが確認されました。EGCGは細菌の代謝を抑制することで増殖を止め、死滅に導くほか、菌体を凝集させて唾液中から除去しやすくする働きも示しました。特に歯周病菌は細胞壁が薄いグラム陰性菌であるため、EGCGの影響を受けやすい可能性が示唆されています。ただし、今回の実験は浮遊状態の細菌で行われたため、実際のプラーク形成や口腔内での効果は今後の検討課題とされています。緑茶カテキンの抗菌作用が歯周病予防に役立つ可能性が期待されています。--------------------------1年ほど前に取り上げさせていただいた記事です。日本にある歯医者さんの件数は約66000件にも達し、コンビニの約58000件を上回る程です。歯医者さんが、虫歯治療だけではとても維持出来ないという現状は、歯周病菌などが健康にどのような影響を与えるかの研究が盛んに行われている裏返しだなと感じるのですが、そのおかげで、口腔の状態が全身の健康と関係することが次々と明らかになってきています。こちらの研究は、歯医者さんではなく、お茶の研究なのですが、大変にタイムリーなものであると思っていました。この他にも、口腔と茶カテキンの研究は数多く進められているのですが、ヒト臨床の結果はまだ出ていません。まあこの辺は、金のかかるヒト臨床の実施で、どれほどのリターンがあるかがポイントとなってきますから、珍しくもなんともなく単価も低い緑茶では、なかなか難しいものです。それでも、商品化へと近づいているものも中にはあるのは興味深いところです。さて、ではこの東北大学の研究から、単純に緑茶を使って、口腔の健康維持を図っていこうとすると、いったいどうしたらよいのかを考えてみました。1.お茶をそのまま飲むだけでは不十分緑茶に含まれるEGCGは唾液で希釈される上、口腔内にとどまる時間が短いため、研究ほどの高濃度・持続性は得られにくい。2.口腔内にとどめる工夫・緑茶で「軽く口をすすぐ」ようにして飲む。・食後や間食後にうがい代わりにお茶を口に含むと、口腔表面にEGCGが触れる時間が増える。3.濃いめの緑茶や抹茶がよいEGCGは玉露や抹茶に比較的多く含まれます。粉末状の抹茶は茶葉ごと摂取するため、摂取量はより多くなる。4.歯磨きとの併用が効果的フッ化物入り歯磨きとカテキンを組み合わせると、相乗効果でむし歯予防効果が強まることが既に確認されているようです。だいたいこんなところでしょうか。私が少し懸念するのは、いくら緑茶が口腔衛生に役立つからと言って、あまりに摂りすぎるとカフェイン過多になってしまうのでは、ということです。また、よく言われることですが、茶渋による歯の黄ばみもありますね。それらを考えると、歯医者さんと相談の上、適度にやるのが良策と言えそうです。
2025.09.22
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#乳がん乳がん血管擬態を制御する新規分子発見、診断・治療応用へ期待-慶大ほか/医療NEWS・血管擬態がある場合は完治不可例が多い・マウス実験、腫瘍増大は血管新生ではなく血管擬態の増加によると判明https://www.qlifepro.com/news/20250919/ang-1-iso6-2.html【記事の概要(所要1分)】慶應義塾大学らの研究グループは、乳がんの進行や転移に関わる「血管擬態」を制御する新たな分子として、接着関連タンパク質Ang-1の新規アイソフォーム「Ang-1 iso6-2」を発見しました。血管擬態は、がん細胞が血管のような通路を自ら形成し、治療を難しくする現象ですが、これまで診断の指標となる分子が不明でした。研究では、乳がん細胞でAng-1を欠損させると血管擬態が促進し腫瘍が拡大することを細胞実験とマウス移植で確認。さらにAng-1 iso6-2を再発現させると血管擬態が抑制され、ヒト乳がん組織でもがん部では発現が低下していることが分かりました。これにより、Ang-1 iso6-2は乳がんの診断マーカーや治療標的となる可能性が示され、早期診断や予後予測、新しい治療法開発、さらには他のがん種への応用も期待されています。----------------------このリリースは、一つ重要な発見を含んでいますね。それは、がん細胞が増えていく原因が、血管新生よりも血管擬態だとわかってきた点です。血管新生が原因ではなかったということではなく、血管擬態が大きな役割を担っていた、と言う方が妥当かと思います。これまで、がんが大きくなるのは血管新生が主な原因と考えられており、実際、多くの抗がん剤はこれをターゲットにしたものです。ところがこの研究では、乳がん細胞でAng-1を欠損させたマウス腫瘍は有意に大きくなった、のです。このことは、がん研究の常識を一部塗り替えるほどのインパクトではないのかな、と思います。また、既存の血管新生阻害薬では効かない理由を、一部説明できる可能性もあります。この視点が確立すれば、がんは増大にあたって血管を増やす他に、血管のようなものを作る、という考えで新しい治療戦略が見いだされることになるでしょう。言わば、がんを兵糧攻めにするために血管を止めるだけではなく、この血管擬態をも止める必要が見いだされるわけです。こちらの研究の現在地は、その血管擬態に関わる”サイン”が見つかったということですから、がんの悪性度の把握や、先回り戦略に役立てられるものと言えそうです。
2025.09.19
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#食で健康に捨てるのはもったいない!ナスのヘタに含まれる注目の成分とは【管理栄養士が解説】/yoga・ヘタに含まれる天然成分「9-oxo-ODAs」がHPV関連疾患→子宮頸がんに有効な可能性(動物実験)・ナス自体、抗酸化成分豊富に含むhttps://yogajournal.jp/29015【記事の概要(所要1分)】普段は切り落として捨ててしまうナスのヘタですが、最近の研究で健康効果が注目されています。名古屋大学の研究では、ヘタに含まれる天然成分「9-oxo-ODAs」が、ヒトパピローマウイルス(HPV)関連疾患、とくに子宮頸がんに対して有効な可能性を示し、がん細胞の自死を誘導する作用や動物実験での抗がん効果も確認されました。ナス自体も皮にはアントシアニン、果肉にはクロロゲン酸といった抗酸化成分が豊富で、丸ごと食べることで健康効果が高まると考えられます。調理の際はトゲのあるガクを取り除き、固いヘタ部分は加熱して炒め物や味噌汁に使うと食べやすいです。効果の詳細は今後の研究次第ですが、これまで捨てていた部分を工夫して取り入れることで、健康維持に役立つ可能性があります。-----------------名古屋大チームによる、なすのへたに関する研究は以前とりあげさせていただきましたから、私もよく覚えています。HPV陽性の子宮頸がん細胞において、増殖抑制とアポトーシスの誘導が見られたことが報告されています。また、細胞周期、P53経路の変化など、何がその効果に関与しているかまで見出されているようです。https://www.nature.com/articles/s41598-023-44365-3?utm_source=chatgpt.com更に、同系統化合物が卵巣がん細胞など、他のがん細胞系でもアポトーシス誘導が報告されています。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25724148/さて、このなすのへたに関する研究ですが、現状どのようになっているかというと、残念ながらヒトでの効果はまだ確認されていません。がんへの治療効果を確認するために、本格的な治験を実施するのはハードルがかなり高くなります。もし、効果があらわれない場合には致命的ですから。ではこの記事は、単なるちょうちん記事で意味はないのかと言うと、私はそうは思いません。食は、味の楽しみだけではなく、健康増進への楽しみでもあるからです。なすそのものが、皮に含まれるポリフェノールによって活性酸素消去や脂質過酸化抑制作用が強いことは、古くから知られることです。また果肉にも実は、抗炎症やアポトーシス誘導による抗腫瘍メカニズムが存在しているとの報告が多数の研究により示唆されています。更に、食物繊維が便秘対策になります。そして、なずは水分を多く含みますので、口内炎などがあっても、比較的摂取しやすい食品だと言えます。つまり、がん治療中の方が、味の楽しみとしても、健康増進への楽しみとしても、摂取するのにとても向くものの一つだろうと、私は思います。へたも食べてしまうというのは、ちょっとした期待とかお守り程度のものかも知れませんが。キャベツやブロッコリーに代表されるように、体に良いよ、ということがわかっている食品は数多くあります。ただそればかり食べているわけにもいきませんから、なすもまたそのローテーションに入れて、食されるのが良いと思います。
2025.09.19
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#食で健康に美味しいだけじゃない!“カレー粉”に秘められた驚きの効果とは?【管理栄養士が解説】/yoga・クルクミンによる強力な抗酸化作用、抗炎症作用・抗菌作用、腸内環境を整えるhttps://yogajournal.jp/28923【記事の概要(所要1分)】カレー粉に含まれるスパイスには、体を元気に保つ多彩な力があります。ポリフェノールによる強力な抗酸化作用は、細胞の酸化を防いでシミやしわを抑えるだけでなく、がんや生活習慣病の原因にもなる活性酸素の働きを和らげ、体を内側から守ってくれます。さらに、抗炎症作用によって慢性的な炎症を抑え、動脈硬化や糖尿病などのリスク低下にもつながります。免疫力アップにも関与し、腸内環境を整えたり、殺菌作用で細菌やウイルスから体を守る働きも期待できます。特に注目されるのがターメリック由来の「クルクミン」で、強い抗酸化作用と抗炎症作用をあわせ持ち、肌の老化を防ぎ、全身を若々しく保つサポートとなります。海外ではクルクミンががん治療の副作用を和らげる可能性や、がんの増殖を抑える働きがあるとの研究も進んでおり、国内でも将来的な新しい治療の候補として注目されています。--------------------------あえて”カレー粉”としているところがポイントです。カレールーもカレーには間違いないのですが、その多くで風味を出すための油脂や小麦粉、砂糖、塩などがかなり含まれています。また、肝心のスパイスが少なめになりがちです。味は美味しいし、作りやすさも抜群なのですが、カレールーでは摂取できるクルクミンは少量になることが多いでしょう。ただ、カレールーを使うことで、例えば、たくさん野菜が入ったカレーが簡単に出来たりもするので、とにかく野菜を取りたい時などは便利ではあります。クルクミンの健康効果を狙ってカレーを摂取する場合、やはりカレー粉(そのままですが)がおすすめです。S&B純カレー、GABANカレーパウダーなどがあります。ではカレー粉で健康効果を引き出すためにはどんな食べ方があるでしょうか。一つは、油と一緒に摂ることです。炒め物に使う、オリーブオイルとあわせてスープに使う。などなど。私がよくやるのは、多めにポトフを作っておいて、残りを翌日カレー粉を入れるとかなり美味しくなります。大事なポイントとしては、煮込み過ぎないことです。クルクミンは熱に弱いので、仕上げに使うようにしてください。カレー粉は調味料として使いやすいので、カレー風味がお好きな場合は、どんどん使えばよいと思います。ヨーグルトとはちみつに少量のカレー粉を入れると美味しい、という説もありますので、よろしければお試しください。
2025.09.18
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#がん治療研究難治性のがん治療、"最終兵器"として世界中で注目されている「アルファ線療法」とは/マイナビ・従来のX線、ベータ線より強力・分子標的薬によりがん細胞を的確に攻撃→前立腺がんで効果確認・2030年実用化が見込まれているhttps://news.mynavi.jp/premium/article/20250918-3442681/【記事の概要(所要1分)】アルファ線療法(TAT:Targeted Alpha Therapy)は、分子標的薬と放射性同位元素を組み合わせ、がん細胞だけを正確に攻撃する新しい治療法です。従来のX線やベータ線と異なり、アルファ線は飛距離が極めて短いものの破壊力が強く、わずかな量でもがん細胞を効率的に壊せるのが特長です。これまで治療に使えなかったアルファ線を活かせるようになったのは、がん特有のたんぱく質を狙える分子標的薬の登場によるもので、診断と治療を一体化した「セラノスティクス」という新しい枠組みが誕生しました。代表的な放射性同位元素「アクチニウム225(Ac-225)」では、特に前立腺がんなどで高い効果が報告されており、他にも鉛212などの開発が進んでいます。世界的に開発競争が激化し、日本も国立機関や大学を中心に体制を強化中で、2030年頃には多くの病院で実用化が期待されています。既存の治療が効かない難治性がんに対し、新たな希望をもたらす“最終兵器”として注目されています。------------------がん細胞の表面にのみ存在している標的分子(特有のたんぱく質)にジャストで結合出来る分子標的薬を見つけ、これに、アルファ線を放出する放射性同位元素(これがアクチニウム225など)を混ぜ込んで注射します。血液を通じてそのアルファ線はがん細胞に到達して標的分子と結合し、がん細胞を強力なパワーでやっつける、と。ものすごく簡単に言えばこういうことで間違っていないと思います。アルファ線というのは、少量で大きな力を発揮しますが、これのみだと正常細胞まで破壊してしまいます。そこで大事なことは、がん細胞のみに到達させることで、分子標的薬の重要な役割となります。日本では、骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がんに対し、ラジウム223という療法が承認されています。アルファ線治療としては、これのみです。ラジウム223は、骨転移に効果を発揮するのですが、骨以外の臓器には効きにくいようです。一方、現在研究が進むアクチニウム225、つまり次世代型のアルファ線治療は、標的分子を持っていれば全身どこのがんでも攻撃は出来ることになっています。アクチニウム225の日本での臨床試験はまだ始まったばかりです。対象は高リスク局所前立腺がんです。アクチニウム225の国内製造の見通しがついており、国立がん研究所やQSTなど日本でも最高の研究機関が主体となって開発を進めています。海外データとしては、長期追跡での奏効・生存延長の示唆が報告されており、安全性も概ね良好です。安定供給への道が出来ている点で、日本でのアクチニウム225によるアルファ線治療の実現が期待できます。そして臨床試験も進んでいます。
2025.09.18
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#がん治療研究【個別化がんワクチン】モデルナ+メルクは28年までの申請視野、NECも開発進展/AnswersNews・モ+メ:悪性黒色腫・肺がん、ビオンテック:進行がん治療への応用検討・NEC:臨床試験中→頭頸部がん全16人2年以上再発なし(P1)、免疫CP阻害薬併用で更なる期待https://answers.ten-navi.com/pharmanews/30917/【記事の概要(所要1分)】がん治療の新しい希望として「個別化がんワクチン」の開発が世界的に進んでいます。これは、患者ごとに異なるがん細胞の遺伝子変異から生じる「ネオアンチゲン」をAIや計算科学で解析し、その情報をmRNA・DNA・ペプチドなどの形でワクチン化し、免疫細胞に学習させてがんを狙い撃ちする治療です。つまり、一人ひとりの「オーダーメイドがんワクチン」です。米モデルナはメルクと組み、悪性黒色腫や非小細胞肺がんを対象にP3試験を実施中で、早ければ2028年の承認申請を視野に入れています。ビオンテックも開発を進め、進行がん治療への応用が検討されています。いずれも抗PD-1抗体「キイトルーダ」との併用療法で、再発予防を目的とするアジュバント療法としての実用化が期待されています。国内ではNECがAI技術を武器に、独自のアルゴリズムで高精度のネオアンチゲン予測を行い、2種類のワクチン候補を臨床試験中です。ウイルスベクターの「TG4050」では、頭頸部がん患者16人全員が2年以上再発なく経過するというP1試験結果が報告されました。経口投与型の「NECVAX-NEO1」も安全性と免疫応答を確認し、今後は免疫チェックポイント阻害薬との併用でさらなる効果が期待されています。市場規模は2030年に世界で445億ドル、日本でも2033年に37億ドルに達すると予測されており、がん治療の柱となる可能性があります。AIと免疫学が融合したこの分野は「究極の個別化治療」と呼ばれ、標準治療が終わった患者だけでなく、手術後の再発予防や進行がんの補助治療としても活用が広がる見通しです。-------------------がんワクチンについては、今後大きな進展が確実視されている療法と言えますが、その中でも開発をリードしているのか、モデルナ+メルク、ビオンテック+ジェネンテックです。モデルナは、その名前を聞いたことがある方も多いと思いますが、コロナワクチンで名を馳せたあの会社です。現在、悪性黒色腫を対象とした臨床試験は既にフェーズ3まで進んでいます。また、非小細胞肺癌対象試験も同様にフェーズ3。この進展状況が、2028年までの申請を豪語する根拠と言えます。モデルナの強みは、mRNAワクチンの設計についても製造についても既に備わっているところです。商業科→一般化はもうすぐ、と言える状況です。薬の位置づけとしては、手術後の再発予防(アジュバント)として最も実用化が近いものと考えられます。そしてビオンテック+ジェネンテックは2番手として有力です。こちらは大腸がん、膵管がんでフェーズ2進行中。悪性黒色腫の1次治療としての試験では、フェーズ1で効果が確認できずに中止になったという経緯があります。こちらも、1次治療としてではなく、アジュバントに重点が置かれています。モデルナ勢ががん種を絞ってその効果を出しているのに対し、ビオンテックはまだその辺は模索中といった状況です。そのがんに効くか、その治療ラインで最も有効か、要するに、最も効果が出る使い方がまだわかっていないようです。モデルナもビオンテックも、手術後の再発予防→アジュバントがその主戦場になっているという点では共通しています。ご自分に該当する、という方も多くいらっしゃると思いますから、本当に、本当に期待が大きいものです。これまで、がんワクチンは効果が疑われていたものですが、個人の遺伝子変異に合わせることが出来るようになっている点で、その精度が格段に上がっていると言えます。再発予防ということで効果を示すことが出来れば、これは直接、長期生存への道が大きく開けてくることになります。免疫チェックポイント阻害薬と個別化がんワクチンの組み合わせが、次世代の主たるアジュバントになっていく可能性が益々高まっているように思えてなりません。ところで、NECがこの分野に参戦しているのは、ちょっと面白いところです。おそらく、日本ではがんワクチン最右翼ですが、ウィルスベクターや自社開発のバクテリアベクターを使用したもので、ウィルスベクターについては頭頚部がんで効果が確認されています(フェーズ1)。バクテリアベクターは、経口型、つまり飲み薬にすることが出来るようで、これが実用化されれば患者さんへの負担が激減しますね。NECのこのがんワクチンは、個人の遺伝子変異をAIで解析し、たった一つのワクチンを作り上げるというやはり個別化医療です。免疫チェックポイント阻害薬が効かない人への追加治療として期待されているようです。個人的には、経口型のバクテリアベクター版は大注目だと思っています。これが一定の効果が成せるとすれば、飲み薬でがんを治せる時代が到来しますからね。
2025.09.16
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#がん治療研究トリプルネガティブ乳がん、がん細胞とマクロファージの特定分子を介した転移機構を解明 筑波大ほか/医療NEWS・がん細胞が出す「GPNMB」が、免疫細胞マクロファージに作用しがんを守り進行させる・マウス実験→同阻害で肺転移著しく減少、がんへの免疫活性https://www.qlifepro.com/news/20250912/tnbc-2.html【記事の概要(所要1分)】筑波大学などの研究グループは、転移や治療抵抗性が強く治療選択肢が限られるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の新たな仕組みを解明しました。研究では、がん細胞が高発現する糖タンパク質GPNMBがシアル酸修飾を受けて免疫受容体Siglec-9と結合し、マクロファージを免疫抑制的な性質へと変化させるとともに、がん細胞自身の転移能力を高めることが示されました。さらに、がん細胞とマクロファージの間で自己増幅ループが形成され、腫瘍微小環境全体ががんの進行を助ける方向へと作り変えられていくことが確認されました。一方で、マウスモデルでSiglec-9の相同分子とPD-1を同時に阻害する併用免疫療法を行ったところ、肺転移が著しく減少し、免疫抑制性細胞の働きも抑えられることが分かこの成果は、GPNMB-Siglec-9軸がTNBCにおける進行と治療抵抗性の中核であることを明らかにし、将来的に新しい治療標的となる可能性を強く示しています。現在の治療に限界があるTNBC患者にとって、転移抑制や免疫環境の改善につながる新たな希望の道筋が示されたといえるでしょう。---------------がんは自分の周りの環境を上手に利用して、成長や転移を進めるのですが、その中でも大事なポイントが「腫瘍随伴マクロファージ(TAM)」と呼ばれる免疫細胞です。本来なら体を守るはずのマクロファージが、がんの働きかけによって逆にがんを助ける役割に変えられてしまうというのです。今回のこの研究は、がん細胞が大量に作り出す「GPNMB」という糖タンパク質がそのカギになっていることがわかったというものです。GPNMBは「Siglec-9」という免疫のブレーキ役のような受容体と結びつきます。するとマクロファージががんを守る性質に変化し、さらにがん細胞自身も転移しやすい姿に変わっていきます。この仕組みはがんとマクロファージの間で「悪循環のループ」を作り出し、がんがより強く広がっていく原因になっていたのだと。すごい発見です。悪の根源がわかったようなものです。そして、この情報をもとにマウス実験を行ったところ、免疫をブレーキしてしまうSiglec-9と免疫療法でお馴染みのPD-1という分子を同時にブロックすると、がんの転移が大幅に減ることが確認できたとのこと。マウス実験ですから、まだまだ可能性の領域を出ないものですが、難しいトリプルネガティブに新しい治療法になるかも、ということです。
2025.09.12
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#適度な運動95歳まで歩くために鍛えるべき「知られざる筋肉」があった 医師が教える「トレーニング法」/現代・国がん名誉総長垣添忠生氏、大腸がん、腎臓がんサバイバー、82歳で1025km踏破・前脛骨筋を鍛えること→毎日つま先立ちとかかと立ちを100回※10回ずつから始めるhttps://gendai.media/articles/-/156209【記事の概要(所要1分)】国立がん研究センター名誉総長の垣添忠生さんは、自ら大腸がんや腎臓がんを経験しながらも、82歳で「みちのく潮風トレイル」1025kmを踏破しました。その背景には、がんにかかってもここまで元気になれるという姿を示し、多くのサバイバーに希望を届けたいという思いがありました。歩く力を保つために大切なのは下半身の筋力であり、特に転倒予防に重要なのが「前脛骨筋」と呼ばれるすねの筋肉です。太ももの筋肉を鍛える人は多いものの、この筋肉を意識する人は少なく、垣添さんは毎日つま先立ちとかかと立ちを100回続けることで前脛骨筋を鍛えています。無理のない範囲で10回から始めれば誰でも取り入れることができ、継続することで歩行の安定につながります。歩くことは単なる運動にとどまらず、脳を活性化させ、人生を振り返ったり未来を考える時間を与えてくれるものです。カントやシュレディンガーのような偉人も歩きながら思索を深めたとされ、歩行は心の豊かさをも育みます。がんを経験しても、また高齢になっても、一歩を踏み出すことから新しい可能性が広がるという事実は、多くの患者に生きる力を与えてくれるでしょう。----------------垣添先生は、知り合いというわけではありませんが、カンファレンスなどでよくお見かけしてあいさつ程度させていただく機会がこれまで何度もありました。垣添氏のお話では、ご自身のがん治療の体験よりも、むしろ奥様の事が語られることが多いように思います。その体験を通して、より心情的思い入れ強くサバイバー支援にあたられて来られたのではと感じるのです。さておき、がん治療をされてから既に20年が経過しているのですが、そのご本人がおすすめされる「トレーニング」ですから、お医者様としてはもちろんですが、20年というエビデンスをお持ちがゆえに、説得力もまた感じます。歩く、ということがもたらすメリットは、思いのほか大きいものであることが、最近の研究でわかってきています。歩くことを続けるためには、やはり歩かなくてはいけないのですが、それにあたって特に気をつけて鍛えた方が良い筋肉が「前脛骨筋」なのだと。わずかなトレーニングで鍛えることが可能なようですから、実践されてはどうかと思います。
2025.09.11
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#多発性骨髄腫多発性骨髄腫と共に明るい未来を生きる:新薬「タービー」の登場とその意義/オンコロ・奏効率が従来30%から70%超に改善、完全奏効3割以上(日本人ではほぼ半数)・週1または隔週投与・余命3年宣告から12年生存中例https://oncolo.jp/news/250909ra02【記事の概要(所要1分)】多発性骨髄腫は再発を繰り返し、標準治療を使い切った後は選択肢が乏しくなる難しい病気ですが、そんな中で2025年8月に新しく登場した二重特異性抗体「タービー(一般名トアルクエタマブ)」は、大きな希望の光として注目されています。これまでの二重特異性抗体が骨髄腫細胞のBCMAを標的としていたのに対し、タービーは世界で初めてGPRC5Dを標的とし、T細胞のCD3と結びつけてがんを攻撃する仕組みを持ちます。臨床試験では奏効率が70%を超え、従来の約30%を大きく上回り、しかも完全奏効に至る患者が3割以上(日本人ではほぼ半数)という深い効果も示されました。週1回または隔週の投与が可能で、CAR-T療法の適応外の人やBCMA標的治療後の再発にも使える柔軟性があり、今後の治療の幅を広げる存在となっています。副作用として味覚障害や皮膚・爪のトラブルはあるものの、感染症リスクが比較的抑えやすく、安全性にも工夫が見られます。セミナーでは、実際に再発後も治療を続ける平山美穂さんが登壇し、診断時は絶望を感じたものの「治療を続ければ新薬の恩恵を受けられる」との医師の言葉に支えられてきた経験を語り、新薬登場は命に直結する希望であり、治療の励みになると強調しました。「余命3年」と言われてからすでに12年、仕事や趣味を楽しみながら生きる今、「平均寿命まで生きたい」という新しい願いを持てるようになったと語り、同じ患者への力強いメッセージを送りました。
2025.09.10
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#がん治療 #自由診療「不治のがんに光明」それでも日本で広まらないのはなぜ? 『はたらく細胞』監修医が語る現実/AllAbout・プレシジョンメディシン・遺伝子変異に基いて最適の分子標的薬を選ぶ治療法・高費用、医療制度の壁・米国で普及、他国でも導入機運高https://allabout.co.jp/gm/gc/513776/【記事の概要(所要1分)】がん治療の新しい可能性として注目されているのが「プレシジョンメディシン(精密医療)」です。これは、患者ごとのがん細胞が持つ遺伝子変異を徹底的に解析し、その結果に基づいて最も適した分子標的薬を選び出す治療法です。従来の抗がん剤は「効くか効かないか分からない」という不確実さを伴いましたが、この方法では、標準治療を終えたステージ4患者の半数以上に効果が見られています。まさに「もう打つ手がない」とされた患者にとって、新たな光となる可能性があります。一方で、日本ではまだ十分に普及していません。理由の一つは費用の高さで、遺伝子検査に40〜50万円、治療薬は月額60〜100万円と高額な自費診療になってしまう点です。さらに、医療制度の壁もあります。臓器別に診療科が分かれているため、本来は有効な薬があっても「胃がんに肺がんの薬を使う」といった柔軟な対応が難しいのです。大学病院など大規模な施設ではガイドラインに縛られ、挑戦的な治療が進めにくい現実もあります。その中で、江戸川病院副院長の明星智洋医師は、自ら全国のクリニックをマネジメントし、プレシジョンメディシンを実践する数少ない医師の一人です。研究会を立ち上げ、産学連携を通じて保険診療化を目指し、日本のがん医療の新しい道を切り拓こうとしています。米国ではすでに広く行われ、台湾やインドネシアなどアジア各国でも導入の機運が高まっています。プレシジョンメディシンは、臓器別の治療という従来の常識を超え、「その患者の遺伝子に合った薬を選ぶ」時代を切り開こうとしています。--------------------------------日本でも遺伝子パネルが登場していますから、進行がんで標準治療が出来なくなった場合などは保険適用となっているものです。ただポイントとしては、その結果見つかった薬が「保険で使える薬」でなかれば、治療につながらないケースが結構多くなっているようです。ということは、治療へと踏み込んだ時に、依然として自由診療の領域にはみでてしまうものと言えます。日本には誇るべき標準治療がありますから、これを基本の治療・医療として考えるのは当然の流れと言えます。ただ、この標準治療を当然のものとせずに、一旦、概念的に捉える時、プレシジョンメディシンのアプローチが少し違うところにあるのが見えてきます。標準治療というのは、臓器別やステージ別に「平均的」に効く治療法のこと、と言えます。つまり、治験で効果が測定されてその平均が測られるのですが、これで「有意」→一定の人一定の効き目があるわかった時に、標準治療として承認され得るわけです。言うなれば、集団平均に基いた治療法です。一方、プレシジョンメディシンというのは、平均がどうかとか、集団がどうかとかの概念は基本的に存在していません。対象となる患者に合わせた治療、よく言われるところのオーダーメイド医療が相当してきます。これ、個人的には、あまりにも標準治療の標準化プロセスが標準概念化しているため、「プレシジョンメディシンはどれくらいの人に効くのかわかっていないんでしょ、だったらその治療は一か八かになるんじゃないですか」という考えに落ちていきます。しかし、治療法をあみだす概念がそもそも違うことを理解しておかなくてはと思います。標準治療は全体主義的治療、プレシジョンメディシンは個人主義的治療、政治じみてきますが、このようにすみ分けて良いかも知れません。一つ、プレシジョンメディシンを考える上でフィルターがかかってしまうのは、それが自由診療に該当してくるということです。日本ではとかく、保険外治療はタブー視されます。それは、故民会保険制度の特性とも言えますが、平等に同じ医療を受けることが出来る、医療は平等に施されるという根底意識がとても強く、保険外治療は金持ちの特権というような看板が最初についてしまうところがあると思います。それから、そもそも保険、保険外の混合医療が制限されているという、制度的問題があります。保険外治療を導入した時点で、基本的には保険治療を受けることが出来なくなってしまうというものです。もちろん、これには理由がありますから、悪手扱いしてはいけないものです。しかし結果的には、治療を「保険でいく」か「全部自費でいくか」その2択がいつも存在していることを意味しています。あとは、標準治療への信奉とでも言いますか、お医者がそもそも標準治療以上に科学的根拠が最も確かなものは存在していない、としている傾向が強く、それを医師ではない人も受け入れている状況があります。実際、それ(→標準治療が最も患者に効くという科学的根拠を有しているということ)は正しいと私は思っています。ただし、そこには前提条件に伴う”限界”が存在していることを認識しておかなくては、とも思うのです。標準治療とは要するに、RCTなど多数の臨床試験で有効性と安全性が検証されて、最終的には学会のガイドラインにまとめられた治療方法です。確かに「現時点で多くの患者に最も効果があると証明されている方法」 と題することは出来ますし、科学的に最も確からしい平均的解答と言えます。しかしその平均的効果に基いているということに限界は当然に存在しています。つまり、これが先述の概念の話に関係するのですが、要するに標準治療とは、多数派に効く治療のことなのであり、それが必ず個人に効く治療ではない、ということです。多数派ではなくなってしまう要素は、人間誰しも抱えているものです。人それぞれ、遺伝子が違います。生活習慣が違います。体質が違いますから。当然のように、限界はあるのです。まもう一つの限界は、新しい治療法をすぐには試せないということです。これはもう悩みの最たるものの一つですが、試験には相当な時間がかかりますからね。それ限界をも踏まえた上で、標準治療が最適解とするのが現代日本の大勢というわけです。しかし私は個人的に、最適解ではあってもただ唯一の答えなのか、というチャレンジもまた受けるわけです。その”限界”を補う一手法として、プレシジョンメディシンが位置付けられないのか、というもう一つの答えに導かれるのです。選択肢としてあってよいものだな、という感じです。言いたいことは、標準治療と自由診療であるプレシジョンメディシンは、患者さんの治療を主体で考えた時、対立する構造にはないということです。SNSやブログ或いは書籍などで、がん治療において、標準治療以外は敵だ、程の論説が繰り広げられていますが、それは本当にそうか、と。標準治療で効果が見込めない場合には、プレシジョンメディシンという流れの一つとして捉えても良いのではないか、と。もちろん、私がもしがんと診断されたら、標準治療を優先させての上、ということでもあります。私は不幸にも、そんなにお金持ちじゃないですから、がん保険をフルに使ってやれるかどうか、というところです。その辺は、もう一度保険内容を確認する必要があるでしょう。遺伝子パネルは保険診療とされているわけです。未来の標準治療候補として、プレシジョンメディシン他、幾分の自由診療を捉えて、保険か自費か、というような制度環境は改善してもらいたいと思いますね。
2025.09.09
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#小細胞肺がん抗SEZ6抗体薬物複合体ABBV-706が多くの治療を受けた再発・難治性の小細胞肺癌に有用な可能性【WCLC 2025】/がんナビ・約80名参加治験、約58%で腫瘍縮小の効果確認・特に2次治療の場合に77%と高い奏効率、かつ効果が数カ月持続・安全性良好https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202509/590125.html【記事の概要(所要1分)】再発や治療抵抗性の小細胞肺がんに対して、新しい治療の光となり得る抗体薬物複合体「ABBV-706」が注目を集めています。SEZ6というがん細胞に多く発現する目印を標的にするこの薬は、従来の治療で限界があった患者さんにも効果をもたらす可能性が示されています。世界肺癌学会(WCLC 2025)で報告された第1相試験では、約80人の患者さんが参加し、ABBV-706を3週間ごとに投与したところ、全体でおよそ6割にあたる58%で腫瘍が縮小する効果が確認されました。特に2次治療として使われた場合には77%と高い奏効率を示し、しかも効果が数か月にわたり続いたことは大きな励みとなる結果です。さらに脳転移や白金製剤に抵抗性を示した患者さんにも奏効が見られ、治療の幅が広がることが期待されます。安全性の面でも、より少ない副作用で効果が得られる用量が明らかになり、推奨用量は3週ごとに1.8mg/kgと決定されました。これは副作用をできるだけ抑えつつ、治療を長く続けやすい投与設計であり、患者さんにとって安心材料となります。さらにこの薬は、米国FDAから希少がんに対する「オーファンドラッグ指定」を受けており、国際的にも開発が強く後押しされています。SEZ6を標的とする抗体薬物複合体は他にも研究が進んでおり、新しい治療の選択肢が広がっていく可能性があります。従来は有効な選択肢が限られていた小細胞肺がんに、ABBV-706は確かな希望を与えています。今後の臨床試験が進むことで、この治療が現実のものとなり、多くの患者さんに新たな選択肢を届けられる日が近づいていると感じさせる発表でした。
2025.09.09
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#がん治療研究免疫細胞でのY染色体喪失(LOY)ががんを促進する/nature・免疫細胞のLOYががんの治療抵抗性に関与・がん細胞と免疫細胞のLOYの同時進行を確認・喫煙はLOYを促進するhttps://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v22/n9/%E5%85%8D%E7%96%AB%E7%B4%B0%E8%83%9E%E3%81%A7%E3%81%AEY%E6%9F%93%E8%89%B2%E4%BD%93%E5%96%AA%E5%A4%B1%E3%81%8C%E3%81%8C%E3%82%93%E3%82%92%E4%BF%83%E9%80%B2%E3%81%99%E3%82%8B/131808【記事の概要(所要1分)】米国シーダーズ・サイナイ医療センターの研究チームは、がん患者におけるY染色体喪失(LOY)が、がん細胞だけでなく免疫細胞にも起き、がんの進行や治療抵抗性に関与する可能性を示しました。特に腫瘍微小環境のT細胞でY染色体を失うと、腫瘍を攻撃する遺伝子の働きが弱まり、逆に免疫抑制的な性質を示すようになります。その結果、がん細胞が破壊を免れ、患者の予後が不良になることが明らかになりました。さらに、がん細胞と免疫細胞のY染色体喪失が協調して進むことも確認されました。喫煙などの環境因子もリスクを高めるとされます。今後、腫瘍内のY染色体状態を診断に活用できる可能性があり、免疫療法の効果予測や男女差の解明にもつながると期待されています。--------------------Y染色体というのは、特に性別を決める染色体として学校で習うので、聞き覚えがある方も多いのではないでしょうか。女性はXX、男性はXY、つまり、男性にしか存在しない染色体です。つまりこのY染色体というのは、生体としての男性が男性であることを決定づけるもので、精子の形成や男性ホルモンに大きく関わるものと考えられています。加齢によって、このY染色体は喪失しやすいものなのです。つまり、老化です。そして、一度失ってしまったものを再生することは出来ません。こちらの研究によると、喫煙がその喪失に大きく関係あるようです。ですから、この研究というのは、特に男性のがん対策に関わってくるものと捉えておいてよいと思います。さて、では男性で、老化現象が見られる40代頃から、このY染色体の喪失をどう気をつけておけばよいのか、ということがとりあえずの実践課題になります。喫煙を去れている方はやめること。喫煙は、最も強いリスク因子です。環境因子としては、大気汚染や有害物質から離れておくこと。他、肥満や慢性的な炎症も関連が疑われますから、食生活や運動の習慣づけは大事なってきます。Y染色体の喪失は、その進行を止めることは難しいですが、遅らせていくことは幾分は出来るでしょう。
2025.09.08
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#食で健康に芽まで食べると「がん予防成分」がたっぷり摂れる 冷凍コーナーでも買える「長生きする最強野菜」の名前/プレジデント・日本人9万人追跡でアブラナ科摂取多い男性がん死亡16%低下・玉ねぎ(ケルセチン)・にんにくは抗腫瘍・抗炎症作用、胃がん死亡34%低下https://president.jp/articles/-/86061【記事の概要(所要1分)】がん予防に関わる食事研究の知見を整理し、「毎日の献立に取り入れると総合的にリスク低下が期待できる食材」を紹介した記事。核となるのはアブラナ科野菜(キャベツ、ブロッコリーなど)で、抗酸化成分スルフォラファンが豊富。特にブロッコリースプラウト(芽)は含有量が突出し、「冷凍ブロッコリー常備」も推奨される。日本人約9万人の追跡では、アブラナ科の摂取が多い男性でがん死亡が16%低下、全死因死亡も男女で低下が報告された。アリウム属の玉ねぎ(ケルセチン)やにんにくは抗腫瘍・抗炎症作用が示され、中国の比較試験やメタ解析で胃がん死亡34%低下、大腸がんリスク25%低下といった関連が紹介される。大豆のイソフラボン(ゲニステイン)は血管新生を抑え、複数研究の解析で胃・大腸・卵巣がんの死亡リスクが約50%低下と記載。きのこのβグルカンは免疫を高め、摂取量が多い群でがん発症34%低下、海藻のフコイダンは抗腫瘍・免疫賦活に加え化学療法の補助効果が示唆される。脂ののった青魚のオメガ3は抗炎症で、摂取が多い人は乳がん14%、肺がん21%、膵がん30%のリスク低下とされる。トマトのリコピンは抗酸化・血管新生抑制に働き、中国の研究で肝がんリスク37%低下、にんじん(βカロテン)は解析で肺がんリスク42%低下の関連が示される。サプリ単独の有効性は限定的とし、食品そのものを“バランスよく”継続して食べることを勧める—という内容。なお、いずれも主に観察研究の相関であり「がんを消す食品」ではないが、野菜・豆・海藻・魚を軸に、加工肉や砂糖の多い食品を控える食習慣が現実的な予防策になる、とまとめている。-----------------食べるものには、抗がん剤のような、がん細胞を殺傷してしまうような効果は期待出来ませんが、がん治療の助けとなるような食材は存在していると、私は捉えています。この記事に掲載されるのは、どのような仕組みでがん治療の助けになっているかまでは明確ではないけれども、統計的には食べている人の方がリスク低下の結果が見られているというものです。食事とがんは関係ない。何でも好きなものを食べるべき、というのは、私は基本的に賛成しています。それは、がんもがん治療も、体を衰弱させてしまう恐れがいつもあるため、身体の栄養状態を良好に保つことは、サバイバルにおいて必須だからです。ですから、食べれる時に食べておく、ために、好きなものを気にせず食べるのは合理的です。ただ、好きなものを食べてればよい、と言っても、カップ焼きそばが好きだからと言ってそればかり食べていれば、がんとは関係なく体がおかしなことになります。この記事で紹介される内容というのは、栄養バランスの観点からも、がん治療の観点からも、取り入れていけば良い「可能性がある」食材であると私は思います。どうせなら、こういうものを食べてはどうですか、という。食べるものとがん治療は無関係だということは、そろそろ言えない時代になってきているのでは、と。それでもむきになって、関係ない、好きにすればよい、というのは、ちょっと無理があるようにも思えますね。
2025.09.05
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#がん治療研究不要な細胞「食べさせて」除去 京都大学が新技術、がん治療など期待/日本経済新聞・がん細胞を”不要細胞”と認識させて貪食細胞に食べさせるという新手法になるか・マウス試験、悪性黒色腫の増殖を抑制・2030年代の実用を目指すhttps://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF028RO0S5A900C2000000/★ネイチャー・バイオメディカル・エンジニアリング掲載論文↓https://www.nature.com/articles/s41551-025-01483-9【要約】研究チームは、死細胞の“食べられ”シグナルを認識するProtein Sを改変し、貪食細胞(マクロファージなど)が特定の生きた標的細胞を認識して取り除くよう設計した合成タンパク質Crunch(connector for removal of unwanted cell habitat)を開発。**メラノーマ(悪性黒色腫)**モデルや、CD19+ B細胞を標的とする自己免疫モデル(全身性エリテマトーデス)で、腫瘍抑制・病勢改善を示しました。ヒト版・マウス版ともに有効性が示され、**標的細胞の“貪食除去”**を利用する新規治療プラットフォームとして期待されます。【記事の概要(所要1分)】京都大iCeMSの鈴木淳教授らが、体内の“掃除屋”である貪食細胞に不要な細胞を食べさせて除去させる新技術を開発しました。自然界で「役目を終えた細胞」に目印を付けるたんぱく質Protein Sを工学的に作り替え、生きている特定の標的(例:がん細胞)に結合する合成タンパク質「CRUNCH」を設計。結合した標的を貪食細胞が認識して取り除きます。マウスの悪性黒色腫(メラノーマ)モデルでは腫瘍の増殖が抑えられ、自己免疫モデル(CD19陽性B細胞を標的)では過剰な免疫反応が鎮まり、病勢が改善しました。ヒト版・マウス版ともに機能が示され、標的を差し替えて応用できるモジュール式のため、老化細胞の除去や難治がんなどへの展開も期待されます。既存の免疫チェックポイント阻害薬のようにT細胞を“攻め”で活性化するのではなく、マクロファージ等の“片付け”機構を直接使う新しい発想が特徴です。論文はNature Biomedical Engineeringに掲載。とはいえ現段階は前臨床(マウス)で、ヒトでの安全性・オフターゲット影響・最適な投与法などの検証がこれから。研究チームはスタートアップ設立を準備しており、2030年代の実用化を目指すとしています。-----------------免疫療法の新しい一手として今後確立される可能性があるもの、という認識です。現在はマウス試験であり、これから多くのハードルが存在しているものの、”研究の価値”とでも言いましょうか、その画期性において、十分に「凄いもの」と捉えることが出来るのではないでしょうか。つまり、新しい免疫療法の中の機序なわけで、科学的なインパクトがかなり高いということです。ただ現時点で、がん治療として期待できる効果は未知数と言えます。マウスでメラノーマがどれほど除去されたのかと言うと、20~30%程度にとどまるようです。これは、単剤でがんを制圧するほどの効果があることが示されたわけではない、のです。安全性に関する事項がクリアにされた上で、実用に向けたフェーズに進む中で、恐らく、既存療法・別の療法との併用によって成果の上積みを狙うことになってくるのではないかと思います。ただ、がんを完全に除去されないままでも、長く生きることが出来る患者さんが増えてきている昨今ですから、そういう方に新しい選択肢をもたらす可能性があります。というのは、これまで効き目を示さなかったがんについて幾分は効く可能性があることと、免疫不全下でも効果が期待できるからです。順調にこの研究が続くとして、現状の患者さんにとって可能性があるのは、まず治験参加です。これは楽観的に見積もると、数年内ではないかと思います。
2025.09.04
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#がん治療研究人工甘味料はがん免疫療法の治療効果を妨げる?/CareNet・スクラロース摂取が多い進行メラノーマ、非小細胞肺がんで低下確認→腸内細菌叢を変化させアミノ酸の腸内レベルが低下か・アルギニン、シトルリン(つまりアミノ酸)補給により回復https://www.carenet.com/news/general/hdn/61281【記事の概要(所要1分)】人工甘味料「スクラロース」ががん免疫療法の効果を妨げる可能性。対策は“あるアミノ酸”の補給?米ピッツバーグ大学の研究チームが発表した新たな研究により、人工甘味料の一種「スクラロース」(ダイエット飲料などに使われる)が、がん治療に用いられる免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体)の効果を低下させる可能性があることが明らかになりました。対象は進行性メラノーマや非小細胞肺がん(NSCLC)の患者などで、スクラロースの摂取量が多い群では、治療効果の指標である奏効率や無増悪生存期間が有意に低下していました。この現象の原因は、スクラロースが腸内細菌叢を変化させることで、T細胞の機能に不可欠なアミノ酸「アルギニン」の腸内レベルが低下し、免疫反応が抑制されるためと考えられています。マウス実験でも、スクラロースを含む食事を与えたマウスでは、抗PD-1抗体の効果が弱まり、腫瘍が増大し、生存率も低下しました。しかし注目すべきは、アルギニンやその前駆体であるシトルリンを補給することで、免疫療法の効果が回復したという事実です。これにより、ダイエット飲料などを避けられないがん患者にも、栄養面での介入が有望な対策になる可能性が出てきました。現在、研究チームはシトルリン補給がスクラロースの悪影響をどの程度打ち消すかを検証する臨床試験を計画中で、今後の進展が注目されます。免疫療法を受けている方は、人工甘味料の摂取について一度医師と相談することが望ましいかもしれません。---------------------------人工甘味料によって腸内細菌叢の多様性が失われる・・・という課題は長く続いているものですが、これが免疫チェックポイント阻害薬の成果に影響しているとなると、事は一層深刻だと言わざるを得ません。もちろん、この研究は最終的な結論を見ているものではありませんが、危険性と捉えてもよいと私は思います。ただし、何が原因で(要するに)免疫をだめにしてしまっているのかを概ね突き止めているところに、この研究の優秀さがあります。アミノ酸を補給することです。実はこれらのことは、何も免疫チェックポイント阻害薬でがん治療をされている方だけへの警鐘でも救いでもありません。スクラロースは日常的に摂取する可能性があるものですし、免疫力を良い状態に保つことは健康を維持する上で必須です。スクラロースは、カロリーオフ系や砂糖ゼロ系の食品を中心に実の多用されている甘味料です。砂糖の約600倍もの甘さを発揮し、しかも熱にも強いですから、メーカー側としてもぜひとも使いたいわけです。カロリーオフ、砂糖ゼロ系を避けるというのは、得策になってくる可能性はあるのですが、そういう表示はなくとも、スクラロースはよく使われています。調味料やソース、めんつゆやノンオイルドレッシング、のむヨーグルト、高たんぱく系のヨーグルト、ゼリー、プリン、グミ、クリームパン、ケーキシロップ、缶飲料のミルクティー、甘い缶コーヒー、缶チューハイ、口腔ケア系のトローチ、マウスウォッシュ・・・これ生活をしている上で、事実上、完全に避けることは難しいものです。だからこそ、アルギニンやシトルリンなどでアミノ酸を適度に意識しておくことは有意義かも知れません。アルギニンを含む食品は、ナッツや種子類、豆腐大豆製品、魚・肉・卵、穀類シトルリンは、なんと言ってもスイカが多く含まれます。ウリ科の野菜にも含まれますが少量です。特にアルギニンを含む食品から気づかされることは、バランス良く食事を摂るということです。結構入っている食品が多いですから、何かに偏った摂取していなければ摂れるのです。免疫のためだからとか、実際にがん治療中だからと、高容量でアルギニン含有食品を摂ったり、スイカを食べまくったりすれば、それはそれで、別の問題が出てきます。ナッツや大豆をやや意識して取り入れることが、現状での最善かなあと思います。
2025.08.31
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#がん治療研究腹膜転移型胃がんに有効なmRNAワクチンを開発、転移予防と治療で有効性を確認/MONOist・免疫CP阻害薬との併用で効果・長期的免疫記憶を司るTexprog細胞とがんを攻撃するTexint細胞療法を強化→腫瘍完全排除、再発防止実現に光・他のがん種への適用にも可能性https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2508/28/news009.html【記事の概要(所要1分)】“転移型胃がん”に挑む革新のmRNAワクチン、腫瘍を消失させ再発も防ぐ近畿大学の新戦略近畿大学と東京大学などの研究チームは、治療が難しい「腹膜転移型胃がん」に対して、腫瘍の消失と転移予防の両方に成功したmRNAワクチンを開発しました。これは、患者ごとのがん特有のネオアンチゲンを標的にした個別化ワクチンで、脂質ナノ粒子(LNP)に包んでマウスに投与。免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体)との併用により、がんを攻撃するT細胞が活性化され、がん細胞を破壊する効果が見られました。さらに、長期的な免疫記憶を司る「Texprog細胞」と、がんを直接攻撃する「Texint細胞」の両方が強化されることで、腫瘍の完全排除と再発防止が実現。これは、従来治療が効きにくかった胃がんへの新たな希望となる成果であり、今後、他のがん種への応用も視野に入れた個別化免疫療法の扉を開く可能性を示しています。
2025.08.30
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#膵臓がん「膵臓がん」を発症した際に「効果的な食べ物」はご存知ですか?医師が解説!/MedicalDOC・膵臓がんの予防・進行リスクを高める食品と、治療中に“体を支える”ための食事内容・控えた方がよい食品も紹介 他https://medicaldoc.jp/m/major-diseases/cancer/ca605/【記事の概要(所要1分)】膵臓がんは早期発見が難しく、進行すると体力を大きく消耗する過酷ながんですが、「食べ物」が治療の味方になることがわかってきました。この記事では、膵臓がんの予防・進行リスクを高める食品と、治療中に“体を支える”ための食事内容が詳しく解説されています。注目すべきは、治療を受ける体を守るために摂るべき具体的な食品です。高タンパク・低脂質の鶏肉や魚、大豆製品などは細胞修復や免疫維持に貢献し、柔らかく調理された野菜や果物は、消化しやすく体に優しい栄養源。さらに、ビタミンDを含む鮭や卵、抗酸化物質を豊富に含むベリー類やナッツは、がんの進行抑制や再発防止の可能性も期待されています。反対に、加工肉・赤肉・高糖質食品・飽和脂肪・アルコールはリスク因子として挙げられ、治療中には避けるべきとされます。--------------------------------食べ物や運動が、がん治療にどのような影響を及ぼすかについての研究がさかんになってきています。医療を受けずに食事だけでがんを治すというものではなく、がん治療を受けながら、どのような食事をすればよいのか、どのような運動すればよいのか、つまり長く生きることができるのかという研究です。医療界、好きなものを好きなだけ食べればよい、食べるものががん治療に与えるのはごくわずか、という”考え方”が依然として日本では主流のように思います。しかし、患者さんご自身にしてみれば、どうせ食べるなら何か治療にプラスになるようなものをとお考えの方も大勢いらっしゃるはずです。そういう「どうせ食べるなら」の根拠になる研究が出てきているのだと考えています。ただ、幾度となくこちらのブログでもお伝えしているのですが、食べたいものを我慢して食べたくないものを食べるというような状況があるとすれば、体力を維持していくことが優先であるケースが多いのですから、食べたいものをまず食べるべきです。その上で、十分な体力と食欲の中で、このような可能性のあるメニューを取り入れてみるのは大いにありです。状況にもよります。食欲がなく、食べなければ焦っている時などは、食べれるものをいつでも食べることが最優先です。食欲は大いにある。体重も大きな現象が見られないような場合は、メニューを気にしてもよいのでは、と。何よりも、食べることががん治療に向けての励みになるとすれば、悪い物やえらく高価なものを食べるわけでもないので良いことではないでしょうか。
2025.08.29
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#乳がん【承認】エンハーツ、ホルモン受容体陽性HER2低発現または超低発現の手術不能又は再発乳がんの治療薬として承認を取得/オンコロ ・HER2陰性のみの対象から”低発現”も対象になった意義は大→対象者増・低発現でも一貫した有効性を示しているhttps://oncolo.jp/news/250827ra02【記事の概要(所要1分)】8月25日、第一三共の抗HER2抗体薬物複合体エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)が、日本で「ホルモン受容体(HR)陽性かつHER2低発現/超低発現の手術不能・再発乳がん(化学療法未治療)」に承認されました。これまで“HER2陰性”に一括りにされ、抗HER2療法の対象外だった多くの患者さんの中から、HER2がごく少量でも発現する層(低発現~“超低”発現)を治療対象として救い上げる点が最大の意義です。日本でこの層に対する抗HER2療法が承認されるのは初めてで、治療選択の地図が塗り替わります。根拠は国際第3相DESTINY-Breast06試験。主要評価項目で、エンハーツは標準的な化学療法に比べ無増悪生存期間(PFS)を13.2か月 vs 8.1か月へと延長し、病勢進行・死亡リスクを約38%低減しました。超低発現でも一貫した有効性が示されています。一方、全生存期間(OS)は追跡継続中で、確定的な結論はこれからです。安全性では間質性肺疾患に注意が必要です。咳・息切れ・発熱などの初期サインで早期対応(休薬・治療)が重要とされています。患者さんへの実務ポイントは3つ。①病理検査でHER2低発現/超低発現の再評価が可能か主治医に相談する②エンハーツの適用可否とベネフィットとリスクを個別に検討する③ILD対策を含むモニタリング体制を確認する初回化学療法へ進む前の“強い一手”が増えたことで、HR陽性・HER2陰性と告げられた多くの患者さんには新しい希望と言えます。
2025.08.28
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#骨肉腫骨肉腫の新たな治療標的を発見、がん幹細胞のPDK1-岐阜大ほか/医療NEWS・マウス試験_PDK1の働きを抑えたがん幹細胞を移植→腫瘍の進行・転移を著しく抑制・がん幹細胞の増殖能力低下、肺転移も改善・既存治療の効果向上にも期待https://www.qlifepro.com/news/20250821/pdk1-osteosarcoma-stem-cells.html【記事の概要(所要1分)】骨肉腫の治療において、治療抵抗性や再発の原因とされる「がん幹細胞」に注目が集まる中、岐阜大学などの研究チームが、がん幹細胞の性質を左右する重要な因子「PDK1」を発見しました。この酵素PDK1は、がん幹細胞のエネルギー代謝に深く関わっており、PDK1が高く発現している患者ほど生存率が低いことが判明。さらにPDK1の働きを抑えたがん幹細胞をマウスに移植した実験では、腫瘍の進行や転移が著しく抑制されるという結果が得られました。PDK1を阻害すると、がん幹細胞の増殖能力が低下し、肺転移も改善されることが示されており、PDK1は骨肉腫の治療における有望な新しい創薬ターゲットとなる可能性があります。この研究は、がん幹細胞を標的とした治療の重要性に新たな根拠を与えるものであり、既存治療との併用による治療効果の向上も期待されています。----------------------動物実験の段階ですが、これから良い進展が得られるように期待しています。PDK1について調べたところ、骨肉腫に限らず多くのがん種での研究が進んでいることがわかりました。●乳がんがん幹細胞(Breast Cancer Stem Cells, BCSC)においてPDK1が高発現しており、PDK1の抑制は幹細胞性(スフィア形成・幹細胞マーカー発現など)を低下させることが確認されています。PDK1高発現は予後不良とも関連しています。●肝細胞がんPDK1過剰発現は放射線抵抗性、転移能、がん幹細胞様表現型の獲得と関連しており、PDK1阻害により放射線感受性が回復し、腫瘍性が減弱しました。●頭頸部がんや他のがん種PDK1およびPDK2の阻害はがん幹細胞の特徴を抑え、薬剤耐性や転移能の抑制に有効であることが示されています。ただし、骨肉腫のがん幹細胞固有の制御系が存在し、これは他のがんとは異なるもののようです。創薬時の目指す方向、つまり標的としてはPDK1は共通項になってくるでしょうが、創薬そのもの設計レベルでは、がん種別のものが必要なってくる、と理解しました。
2025.08.27
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#がん治療研究iPSから免疫の「教育細胞」作製 京都大学、がん治療など応用期待/日本経済新聞・加齢で縮小の胸腺→免疫力低下、がん再発の一因・ヒトiPS細胞から多様な抗原に対応するT細胞→試験管内で胸腺再現に成功・強力ながん再発対策や”高機能”胸腺移植に可能性https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF2543L0V20C25A8000000/ref.京都大学iPS細胞研究所リリースhttps://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/250825-180000.html【記事の概要(所要1~2分)】京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の研究チームは、ヒトiPS細胞から「胸腺上皮細胞(iTEC)」を作製することに世界で初めて成功しました。胸腺は免疫の“教育機関”と呼ばれる臓器で、T細胞に「敵(ウイルスやがん細胞)を攻撃し、自分は攻撃しない」というルールを教え込む重要な役割を担います。しかし胸腺は加齢とともに縮小し、免疫力低下やがん再発の一因になることが知られています。今回の研究では、iPS細胞にビタミンAの代謝産物「レチノイン酸」を加えることで、胸腺上皮細胞のマスター遺伝子が発現し、実際の胸腺と同様に皮質型・髄質型を含む多様な細胞集団へと分化しました。さらに、このiTECをT細胞の前駆細胞と組み合わせてオルガノイド(立体的な小型組織)を作製したところ、多様な抗原に対応可能な「ナイーブT細胞」へと分化できることが確認されました。これは“試験管の中で胸腺を再現する”画期的な成果です。従来のがん免疫療法(例:CAR-T細胞療法)は、がん細胞が抗原を変化させて免疫から逃れる「免疫逃避」が課題でした。しかし、胸腺機能を体外で再構築できれば、より多様性に富むT細胞を再生し、がん細胞の変化にも対応できる可能性があります。これは、がん再発リスクを下げる新たな治療法の道を開くと期待されています。さらに、この技術は先天的に胸腺を持たない「無胸腺症」や、治療や加齢で免疫が弱った人に対しても、免疫システムを再建する手段となり得ます。教授は「胸腺を体外で作り、そこから得られた多様なT細胞を移植する」未来像を描いており、がん患者にとっても大きな希望となる成果です。------------------------もちろん、試験管での実験段階ですからこれからまだまだ茨の道はあります。しかしこれ、個人的には、未来のノーベル賞候補ほどのインパクトを感じる成果だと思っています。老化によって胸腺が減少しますが、その老化の原因が胸腺の減少とも考えられます。それがもし、移植によって再現するばかりか、高機能化した胸腺が備われば、あらゆる病気や感染症などに対応できる可能性が出てきます。実用化をぼんやりと考える時、次の大きなステップは、どのようにして実験室から臨床に移行するか、です。そのために確保しなければならないのは、まずは再現性です。偶然出来るものではなく、何度も再現できるものではなくては使いものになりません。そして、安全性の確保。これも大きなハードルです。免疫暴走の危険性をどう抑えるか。また、iPS細胞の欠点とも言える、細胞のがん化もクリアしなければなりません。特にこの胸腺移植によって免疫の多様性が生まれますが、これがどう働くのかを長期で観察しなければならないでしょう。あとは、大量に培養出来るかという技術的問題。これ、自己細胞からでやるか、他の人の細胞からやるのかでまた変わってきますよね。そもそもどうやって胸腺を移植するよ、という外科的問題も残っています。こういう、再現性、安全性、培養・移植など技術の問題がクリアされた上で、やっと臨床応用へのステップに進めるものと考えます。道のりは、正直、長いと言わざるを得ませんが、新しく画期的な治療法として、また、iPSを応援する気持ちから、とても期待しています。
2025.08.26
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運動と食事が再発リスクを下げる-ステージⅢ大腸がん研究からの示唆-ダナ・ファーバーがん研究所/Ref.ecancerASCO2025で発表された論文から、注目すべきものをピックアップしてみました。https://ecancer.org/en/news/26547-asco-2025-pro-inflammatory-diets-associated-with-worse-outcomes-for-stage-iii-colon-cancer?utm_source=chatgpt.com運動と食事が再発リスクを下げる-ステージⅢ大腸がん研究からの示唆-ダナ・ファーバーがん研究所/Ref.ecancer・抗炎症食と高頻度運動の組み合わせで死亡リスクが最大63%低下ステージⅢ結腸がん患者で、「炎症を引き起こす食事」が死亡リスクの悪化と関連しており、観察研究の結果がその関連性を示しています。この研究は、教育付きがん学会(ASCO)2025年年次総会で発表されました。研究対象は、米国ダナ・ファーバーがん研究所らが実施したコホート研究。術後の結腸がん患者の「食事パターン」と「生存率」との関係に焦点を当てています。●研究背景と目的「がん治療後に再発リスクをできるだけ下げて、生存率を改善するには、どんな食事をすればよいか?」という質問は非常に多いです。しかし、診断前の大腸がんリスクに関する研究は多い一方で、診断後の生活習慣(特に食事)が治療結果にどのように作用するかは不明だったため、本研究に着目されました。●研究の対象と方法第三相臨床試験(CALGB/SWOG 80702)参加者約2,500人のうち、1,625人を対象にした追跡調査。対象患者:ステージⅢの結腸がんで、手術後に化学療法を受けた患者。平均年齢は約61歳。食事習慣の評価:食事内容を、18種類の食品群を元に算出される「EDIP(Empirical Dietary Inflammatory Pattern)」スコアで評価。高スコアは“炎症を促す食事”、低スコアは“炎症を抑える食事”を表します。調査のタイミング:治療グループに割り当てられてから6週間後と、14-16か月後に、食事と運動の習慣をアンケートで記録。●主な結果(生存率への影響)◯食事の影響最も炎症性の高い食事をしていた患者(EDIP上位20%):下位20%(抗炎症食を多くとっていた患者)と比較して、死亡リスクは87%も高い結果でした(ハザード比 1.87)。無病生存期間(再発や進行がない期間)には有意な差は認められませんでした。◯運動習慣の影響週に9MET時間以上(例:速歩を1時間×3回、またはジョギング1時間弱)運動していた人と組み合わせて分析。抗炎症食+高頻度運動グループでは、死亡リスクが63%も低下するという、最も良好な生存結果が得られました。抗炎症薬使用の有無やアスピリン使用、治療レジメン(3か月vs6か月)の違いは、この関係には影響しないことが確認されています。●医師のコメントSara Char医師(研究発表者):「炎症を抑える食事と運動を組み合わせることで、ステージⅢの結腸がんの生存率が大きく改善する可能性を示した」と強調。Julie R. Gralow医師(ASCOチーフメディカルオフィサー):「医師自身が患者に対して、いわば「良い食事と運動を処方」すべき時代が来た」とコメント。生活習慣そのものが治療の一環となるという流れへの期待がうかがえる。●今後の展望より若年での発症や転移がん、他のがんタイプにこの結果が適用できるか検討予定。食事や運動が体にどのように作用して、生存率に繋がるのか、その生物学的メカニズムを解明する研究も進行中です。【まとめ】ステージⅢまで進行した結腸がんでも、食事と運動という生活習慣の改善が、生存に大きな影響をもたらす可能性があることが科学的に示されました。特に、「野菜中心で砂糖や加工肉を避ける」「週に適度な運動を継続する」のは治療段階でも十分に意味のある行動と言えます。主治医と相談の上、サポーティブな生活習慣を構築することは、患者さんにとって“自分でできる治療の一歩”とも言えるのではないでしょうか。
2025.08.23
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#がん治療研究免疫不全状態でも抗腫瘍効果が期待できる「がん細菌療法」を開発 北陸先端大ほか/医療NEWS・化学療法、放射線治療などを受けた患者の多くは免疫不全状態に→免疫不全状態でも効果があることを確認(マウス)※"Nature Biomedical Engineering"に掲載https://www.qlifepro.com/news/20250821/aun.html【記事の概要(所要1分)】北陸先端科学技術大学院大学を中心とする研究チームは、免疫細胞に頼らずに抗腫瘍効果を発揮する新しいがん治療「AUN(阿吽)」を開発しました。第一三共、筑波大学との共同研究であり、成果は『Nature Biomedical Engineering』に掲載されました。この「AUN」は、2種類の天然細菌が“阿吽の呼吸”のように協調し、腫瘍内で次のような働きを行います:・がん細胞や腫瘍血管を選択的に破壊・細菌構造の変化で抗腫瘍効果を強化・副作用(サイトカインストームなど)の抑制従来のがん免疫療法は、T細胞など免疫細胞の力を必要としており、免疫不全状態の患者では効果が限定的でした。AUNは免疫細胞を使わずにがんを攻撃するため、免疫が低下した患者にも適用できる可能性があります。マウスやヒト腫瘍モデルでも明確な腫瘍抑制効果が確認されており、今後は実用化に向けたスタートアップの立ち上げも進行中です。150年の歴史を持つ「がん細菌療法」が、新たな科学的裏付けとともに現代医療に蘇ろうとしています。------------------------再びの取り上げになります。過去をあさると、2年前からこの研究については取り上げています。なんと言っても、体に負担にかかるがん治療を経ている方にも効く可能性があるということがポイントです。更に、重大な副作用が回避できることも大きなメリットです。これまでの試験は、全て細胞レベルか動物によるものばかりですが、そのどれもが素晴らしい結果となっています。特にヒト腫瘍細胞での試験でコンスタントに結果が出ていることは、今後開始されるだろうヒト臨床試験での良い結果を予想させるものです。既に第一三共という企業との取り組みとなっている点も実用化を考えると心強いところです。
2025.08.22
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#がん治療研究がん患者の死亡リスク「継続的な運動」で低下 追跡調査で判明/日経Gooday●運動量が多いほど総死亡リスク低下、ガイドライン以上の運動(週15メッツ・時以上)では最大57%の死亡リスク低下●10種がんで運動を継続していた人は死亡リスクが有意に低 他https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/column/15/050800004/080500303/?ST=doctor【記事の概要(所要1分強)】がんと診断された中高年者でも、診断から1年以上経過後に中強度〜高強度の運動(MVPA)を継続して行うことで、死亡リスクが大きく下がることが、米国の大規模な統合解析により明らかになりました。研究は、結腸がんや乳がん、肺がん、腎臓がんなど11種のがんを経験した9万人超を対象とし、平均10.9年の追跡調査を行ったもの。運動量が多いほど総死亡リスクが低下し、ガイドライン以上の運動(週15メッツ・時以上)では最大57%の死亡リスク低下が見られました。さらに、10種類のがん(例:口腔がん、子宮体がん、膀胱がん、前立腺がんなど)で、運動を継続していた人は死亡リスクが有意に低く、ガイドライン未満の軽度な運動でもリスク低下が認められるがん種も複数ありました。特に口腔がんでは56%、子宮体がんで50%のリスク減少が確認されています。この研究結果は、がん治療後の運動習慣が生存率の改善に寄与する可能性を示しており、医療従事者が治療後の患者に対して運動を勧める強い根拠となると考えられます。がん経験者にとって、無理のない範囲での継続的な運動が命を守る鍵になるかもしれません。---------------------------こちらの研究を元にした記事はここ数数週間で多く出てきていますから、既にご存知の方も多いかと思います。そこで運動を開始するのは素晴らしいことではあるのですが、必ず担当のお医者様と相談されてからでお願いします。体の状態は人それぞれ皆違いますし、体力もまた違いますから。その上で、特にこの記事からどんな運動がおすすめできるかを考えてみました。まず大事なことは「継続」です。この研究では、中強度~高強度の運動を習慣化することでそう死亡リスクが大幅に低下した、とあります。今まで全く運動をしていなかった人が、中強度~高強度の運動を開始すると、かなり高い確率でケガをされます。ケガをすれば継続することも出来ません。また、あまりにもしんどいと、やる気が無くなってしまってモチベーションがあがりません。これもまた、継続を阻害してしまうことになります。そこで私が考えるのは、「徐々に上げていく」という基本コンセプトです。これは私自身の経験からの着想なのですが、毎日継続出来る程度の強度を見つけてそれをまずはルーティンにするということです。例えば、ウォーキングするとして、私がおすすめするのは、足踏みからの開始です。スマホのアプリなどでメトロノームを用意して、1分間に120bpm、つまり120歩にセット。それに合わせて足踏みします。30分を3回(3日)連続でできるようになったら、120bpmはそのままにして今度はももを高めに上げるなど強度を高めます。それも出来るようになったら、130、140、150bpmと上げていきます。そして次は外に出ます。実際に外を歩くのですが、足踏みの延長で歩きます。前に進むというより、足踏みしながら少しずつ前に動く感じです。160bpmで徐々に足踏み前進を30分出来るようになれば、少し歩幅を広げてもう少し前進を意識すると、ほぼジョギングのような感じになってきます。そうなれば、ジョギングに切り替えても良いかも知れません。ただ、ウォーキングでももうこの時点で、結構な運動になっているはずです。「徐々に上げていく」ことで、意外と出来るようになるものです。気をつけていただきたいのは、ある一定の強度に達したら、それ以上は上げないということです。ストイックになるのは悪い事ではないのですが、ここに落とし穴があって、疲労がたまりすぎたり、何かのきっかけで全くやらなくなってしまうからです。継続のために、そういうリミットを設けておくことは大事な事です。さて、そういう徐々に・・・のコンセプトを持った上で考えられる運動です。1、速歩:1日30分×週52、自転車:1日30分×週3~43、軽いジョギング:1日30分×週34、階段の昇降や室内のエクササイズ:雨天時などこの程度だと思います。体を鍛えるためではなく、生存率を高めるための生活習慣と考えることが大切です。強度は緩くてもまずは継続すること、むやみに強度を上げてしまわないこと。これが大事だと思います。
2025.08.21
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#がん治療研究一部の肺がんで放射線療法が免疫療法抵抗性を克服/海外がん医療情報・放射線照射によって腫瘍が免疫系に「発見されやすい」状態に変化→原発巣に限らず全身に抗腫瘍の免疫反応を誘導→アブスコパル効果を誘導※Nature Cancer掲載https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/kokyuukigann/haigann/post-35452.html【記事の概要(所要1分強)】免疫療法が効きにくい一部の非小細胞肺がんに対し、放射線治療の併用が効果的である可能性が、ジョンズホプキンス大学とオランダがん研究所の共同研究によって明らかになりました。この研究は、Nature Cancer誌に2025年7月22日付で発表されたものです。これまで、免疫療法は「免疫が冷たい」腫瘍、すなわち免疫系が十分に活性化されないタイプのがんに対して効果が薄いとされてきました。しかし、今回の研究では、放射線を腫瘍に照射することで、その腫瘍が免疫系に「発見されやすい」状態に変化し、全身にわたって抗腫瘍の免疫反応が誘導されることが確認されました。これは、原発巣だけでなく、放射線が当たっていない離れた部位の腫瘍に対しても免疫応答が起きる、いわゆる「アブスコパル効果」によるものと考えられています。研究チームは、放射線療法とPD-1阻害薬(キイトルーダ)を併用した72人の患者から血液および腫瘍サンプルを採取し、マルチオミクス解析によってその免疫応答の様子を詳細に調査しました。特に注目されたのは、免疫療法に反応しにくい「冷たい腫瘍」が、放射線照射をきっかけにT細胞の増加や炎症性の変化を伴い、「温まった(ウォームアップされた)」腫瘍へと変化した点です。このような変化は、免疫療法単独では得られなかった治療効果につながっており、放射線との併用によって治療抵抗性を克服する可能性が示されました。さらに、循環腫瘍DNA(ctDNA)などのバイオマーカーを通じて、免疫応答をリアルタイムでモニタリングする研究も進行中であり、今後の個別化医療の進展にも寄与することが期待されます。本研究は、免疫療法が奏効しにくい肺がん患者に新たな治療選択肢をもたらす可能性を持ち、放射線と免疫療法の併用ががん治療の新たな地平を開くものとして注目されています。--------------------------------こちらの研究は肺がんによる研究となっていますが、この論文の内容からすると、現状の期待としては、肺がんに限定されたものではありません。免疫的に「冷たい」性質を持つがんは、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、大腸がんなどでも見られるものですし、有名なアブルコパル効果は肺がん以外のがん種での報告されています。これまでは、あくまで”現象”であったアブスコパル効果を、免疫チェックポイント阻害薬を併用することによって(放射線治療と)、確率高く起こせる可能性が出てきた、というものと受け取っています。免疫療法と放射線治療の併用ということでは、メラノーマ、膀胱がん、直腸がん、頭頚部がん肺・肝転移などで研究が進んでいます。そう遠くない将来に、この併用療法が標準治療になる可能性はあると感じています。
2025.08.20
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#がん治療研究腫瘍を光らせる「mRNAがん治療薬」で革新へ、米Strand Therapeuticsが225億円調達/Forbes・免疫が反応しなかった末期がん患者に腫瘍縮小効果・22人に投与複数例でステ4の腫瘍著しく縮小、メラノーマで全身の腫瘍消失例・2030年商業化目指すhttps://forbesjapan.com/articles/detail/81266米バイオベンチャーのStrand Therapeuticsは、がん細胞を「光らせて」免疫系に見つけさせる革新的なmRNA治療薬の臨床試験に成功。患者の腫瘍内でインターロイキン12(IL-12)を局所的に発現させ、免疫細胞の攻撃を促進する「遺伝子回路」を導入したmRNAを投与することで、免疫が反応しなかった末期がん患者にも腫瘍縮小効果が見られました。第1相試験では22人のがん患者に投与し、複数例でステージ4の腫瘍が著しく縮小。特にメラノーマの1例では、治療後のスキャンで全身の腫瘍が消失するという「衝撃的な改善」が画像で確認されました。この成果により、Strandは約225億円を新たに調達。安全性と有効性が示された同技術は、将来の標的型がん治療や個別化医療の基盤になると期待され、2030年の商業化を目指しています。この治療法は、従来の毒性の高いIL-12投与の限界を克服し、腫瘍にだけ効果を集中させるという点で画期的。mRNA医薬の新たな可能性を切り拓く事例とされています。------------------------こちらの記事で紹介された、新しいmRNAを用いたがん治療薬は「STX‑001」と言い、その第Ⅰ相臨床試験がネタ元になります。治験の概要は、アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)のポスターセッションで発表されており、「STX‑001, an LNP‑encapsulated self‑replicating mRNA expressing IL‑12, in patients with advanced solid tumors」というタイトルでまとめられていました。残念ながら現時点では、査読付き学術誌に掲載された論文は確認できていませんでしたが、今後、正式な学術誌への掲載が期待されます。ポスターセッションでの要旨は以下の通りです。ポスター要旨(2025 ASCO 年次大会、要旨番号 9556)Phase I dose escalation trial of STX‑001, an LNP‑encapsulated self‑replicating mRNA expressing IL‑12, in patients with advanced solid tumors.この第Ⅰ相臨床試験は、LNP(脂質ナノ粒子)に封入された自己複製型mRNA(STX‑001)を、免疫チェックポイント阻害薬に抵抗性のある進行固形腫瘍患者に対して腫瘍内投与することで、安全性、有効性、薬物動態および薬力学的効果を評価しています。STX‑001は、腫瘍微小環境でIL‑12を局所発現させ、免疫応答を活性化することを狙った新規治療法です。安全性:300µgまでの用量で忍容性良好。治療関連の有害事象は、免疫活性化を反映したもので管理可能(例えば、軽度~中等度のリンパ球減少や転帰良好な肝酵素上昇など)。免疫応答・薬力学:血中IL‑12およびIFN‑γの濃度が用量依存的に上昇。腫瘍組織には、PD‑L1の発現およびCD4⁺/CD8⁺T細胞の浸潤が強く誘導されたことを確認。抗腫瘍効果:進行がん患者22人中、完全奏効(CR)1例、部分奏効(PR)複数例、さらには薬剤未投与部位の腫瘍縮小(アブスコーパル効果)も報告。これらは、局所腫瘍に対する注射のみで全身の免疫効果が誘導された可能性を示唆。まとめ:STX‑001は、腫瘍局所へ自己複製型mRNAを導入することで、免疫が反応しなかった進行がんに対しても免疫を活性化し、腫瘍縮小を促せる画期的なアプローチとして注目される。安全性も良好で免疫誘導効果も確認できたため、単剤あるいは免疫チェックポイント阻害薬との併用でのさらなる開発期待。
2025.08.18
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#食で健康に黒砂糖、がん発症を抑制か~J-MICC研究/CareNet・奄美住民5004人対象、13.4年(中央値)追跡・男女の全がん・胃がん、女性乳がん発症率で黒砂糖中・高摂取群の方が低摂取群より低リスク※交絡因子調整後・全死亡、がん死亡、心血管疾患死亡では認められずhttps://www.carenet.com/news/general/carenet/57838鹿児島大学を中心とする研究チームが、奄美群島の住民を対象に行ったJ-MICCコホート研究により、「黒砂糖の摂取ががん発症リスクを抑える可能性がある」ことが示されました。5,004人を13.4年追跡した結果、黒砂糖を週1回以上摂取していた人では、がん全体・胃がん・女性の乳がんの発症率が有意に低下していました。特にがん全体では摂取頻度が上がるほどリスクが下がる傾向が明確に見られ、非喫煙者では肺がんにも抑制効果が示唆されました。黒砂糖にはミネラル・ポリフェノール・ポリコサノールといった機能性成分が含まれていますが、疫学的にその健康効果が示されたのは本研究が初。死亡率や心血管疾患との関係は明確ではなかったものの、今後のがん予防食材として注目される可能性があります。PubMedリンク: https://pmc.carenet.com/?pmid=38135478
2025.08.16
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#腸活医師10人に聞いた 自ら実践する【腸活習慣】「オリーブオイルを取り入れた地中海型和食」「コップ1杯の水」「週末にプチ断食」「瞑想・深呼吸を行う」/女性セブン・歯磨きは入念に・週2~3回の筋トレ・飼い犬を愛でる・ご飯は冷やして・トイレはがまんせずに 他https://j7p.jp/?p=146034腸活に関連した健康習慣について、お医者様が実践しておられるというのは面白い切り口です。参考になるのではないでしょうか。腸活に縛られずということでは、以前、お医者様が健康のために最も取り入れている「食品」としてトマトジュースがあがっていました。おなじみのリコピンは、トマトそのものよりも、ジュースになっている方がたくさん摂れるようです。あとは、キャベツ・ブロッコリー。この3品目は常時摂取でもよいかも知れませんね。【抜粋】・外出の2時間前には起床し、太陽光を浴びて自律神経を整える・食事は1日3食、夜遅すぎる夕食は避ける・カフェインは適度に、アルコールは控えめに・水分をとりながらウオーキングを週3回、1回20~30分行う・起床後すぐに常温の水を1杯飲み、腸のぜん動運動を促す・発酵食品、水溶性の食物繊維が含まれる食品を積極的にとる・1日1回、決まった時間にトイレに座り排便習慣を固定化・ストレス緩和のため瞑想・深呼吸を行う・起床後に白湯を飲み、必ずトイレに行く・歯磨きは入念に行い、口の中を常に清潔に保つ・週2~3回の筋トレと有酸素運動・帰宅後は飼い犬を愛でる時間をつくり、幸福感を得る・朝、必ずコップ1杯の冷水を飲む・野菜など食物繊維が多い食べ物を20g以上、できれば30g以上とる・食事時間は朝7時、昼1時、夜8時を厳守・ご飯は冷蔵庫で冷やしてレジスタントスターチを生成してから、電子レンジで温めて食べる・ごぼうやキムチなど食物繊維が多い食品をとる・食後に豆乳ヨーグルトを食べる。豆乳に青汁の粉末を入れて飲むことも・なんでも好き嫌いをせずに食べる・大根、にんじん、セロリなど食物繊維が多く含まれる野菜を毎日とる・空腹時はさつまいもなど腹持ちのいい野菜を食べる・トイレにはがまんせずに行く・腸活を過度に意識しない。ご飯とみそ汁を基本とした食事・地中海型和食®を意識する・糖分は血糖値を変化させず、腸内ビフィズス菌を増やすオリゴ糖を用いる・食後にはペパーミントティーを飲む・安眠を意識した食生活を送る・腸内細菌には独自のリズムがあり、食事の時間や生活のリズムに合わせて活動しているため、常に決まった時間に食事をとる・朝に肉、魚、乳製品、大豆をとる本間良子さん(スクエアクリニック院長)・朝に骨盤ストレッチを含む軽い運動を週2〜3回行い、骨盤周辺を柔軟に保つ・週末に“プチ断食”を行う・小麦や乳製品に含まれるグルテンやカゼインは腸漏れの原因となるため控える・夏場は手作りスポーツドリンクで、便秘の原因になる脱水を予防岡田正彦さん(新潟大学名誉教授)・腸活のために余計なことはしない・サプリメントには頼らずに、生活習慣のなかで腸内細菌を増やすことを意識・人体に必須の成分が含まれている果物や野菜は、積極的にとる・夏場は冷たい飲み物をとりすぎない
2025.08.15
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#適度な運動がん患者の無再発生存率を上げる「運動」のやり方が明らかに 世界的に有名ながん学会と科学雑誌で同時に発表<医師が解説> /東洋経済・手術・化学療法後889人10年追跡、週3-4回、1回45分有酸素運動を継続のグループは5年再発で28%、8年後死亡率で37%低下https://toyokeizai.net/articles/-/894024?display=bがんの再発や死亡を防ぐ新たな方法として、運動療法が科学的に有効であることが、2024年6月に明らかになりました。これは、アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会と世界的医学誌『NEJM』で同時に発表された、極めて信頼性の高い研究結果です。この研究では、手術と抗がん剤治療を終えた大腸がん患者889人を、運動支援を受ける群と情報提供のみの群に分け、10年以上かけて追跡調査を実施。週に3〜4回、1回45分の早歩き相当の有酸素運動を継続したグループでは、5年後の再発・新たながんの発症が28%、8年後の死亡リスクが37%も低下するという大きな効果が確認されました。これは、既存の抗がん剤以上の効果に匹敵し、副作用もなく、費用も非常に少ないという点で、がん治療における「第4の柱」として運動療法の重要性が注目されています。運動による免疫力の強化、炎症の抑制、インスリン感受性の改善などが、がん細胞の増殖や転移の抑制に寄与したと考えられています。この研究成果は、がんの治療後に「何をすれば再発を防げるか」と悩む多くの患者さんにとって、大きな励みになるものです。まずは無理のない範囲で、日常に定期的な運動を取り入れることが、再発予防と長期生存につながる可能性を示しています。
2025.08.09
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#がん治療研究 #悪性黒色腫悪性黒色腫に対する新型ウイルス療法の医師主導治験で高い治療効果を確認/信州大学・標準治療(免疫CP阻害薬)+新型ウィルス、切除不能or転移悪性黒色腫→9人中7名腫瘍縮小or消失(従来34.8%→77.8%)・副作用軽・製造・販売承認の可能性高https://wwwhp.md.shinshu-u.ac.jp/information/2025/07/post-256.php?utm_source=chatgpt.com信州大学と東京大学の研究チームは、悪性黒色腫(メラノーマ)を対象とした世界初の第三世代がん治療用ウイルス「T-hIL12」の医師主導治験で、極めて高い治療効果(奏効率77.8%)と安全性を確認しました。「T-hIL12」は、既に脳腫瘍治療薬として市販されている「G47Δ(デリタクト)」に免疫刺激物質「インターロイキン12(IL-12)」の遺伝子を組み込み、がん免疫を強化したウイルス療法薬です。治験は切除不能または転移性の悪性黒色腫患者18人を対象とし、標準治療(免疫チェックポイント阻害薬:ニボルマブ)にT-hIL12を追加投与する形で行われ、中間解析では9人中7人(77.8%)に腫瘍縮小または消失が認められました(従来の標準治療のみでは34.8%)。副作用も軽度の発熱や一時的な血液数値の変動のみで、安全性は高いと確認され、製造販売承認の可能性が極めて高いとされています。-----------------承認からしばらく経過したデリタクトの次世代版で、注目の治験と言えます。あらゆる固形がんに効果が期待されている治療法だけに、この免疫チェックポイント阻害薬との併用は期待が膨らみます。
2025.08.08
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#がん治療研究がん幹細胞の"ゲートキーパー"を発見「骨のがん・骨肉腫の根治」へ/岐阜大学・がん幹細胞の自己再生能力・腫瘍形成能の因子(言わば元凶)「PDK1」を特定・骨肉腫だけでなく様々な難治性がんの根治期待※米学術誌『Cell Death & Disease』掲載https://www.gifu-u.ac.jp/news/research/2025/08/entry06-14523.html岐阜薬科大学・岐阜大学・山梨大学の共同研究チームは、骨のがん「骨肉腫」の根治に向けた新たな突破口を見出しました。がん幹細胞の幹細胞性(自己再生能力)や腫瘍形成能を制御するカギとなる因子「PDK1(ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ1)」を特定。がん幹細胞は、治療抵抗性・再発・転移の原因とされ、がん治療の難しさの元凶とも言えます。本研究では、PDK1が骨肉腫のがん幹細胞で高発現し、エネルギー代謝のバランス調節を通じて悪性化を促進していることが明らかになりました。この発見は、PDK1を標的とすることで、骨肉腫だけでなく他の難治性がんにも有効な新たな治療薬の開発に繋がる可能性を示しています。2025年7月30日、権威ある米国学術誌『Cell Death & Disease』に掲載されました。※『Cell Death & Disease』の信頼性は?『Cell Death & Disease』は、大手学術出版社「Nature Publishing Group(Nature系)」が発行する査読付きの国際的な生命科学誌で、細胞死・がん・再生医学などの分野に特化しています。Nature系列のため、信頼性・影響力ともに高い雑誌と評価されています。よって、信頼に値する国際誌であり、今回の研究成果も学術的に重要かつ注目度の高い内容といえます。
2025.08.07
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#がん治療研究2種類の細菌が「阿吽の呼吸」でがん細胞破壊、新たな細菌療法につながる可能性 北陸先端科技大が成功/読売新聞・”免疫不全”状態の大腸がん・膵がんマウスに投与→数日でがん消失→免疫力低下状態でも効果あり・’28年実用化に向け新興企業設立計画https://www.yomiuri.co.jp/medical/20250805-OYT1T50144/2種類の細菌がタッグでがん細胞を破壊、新たながん治療法に光 ― 北陸先端科技大の研究北陸先端科学技術大学院大学の都英次郎教授らの研究チームは、2種類の細菌を連携させることで、がん細胞を効果的に死滅させる動物実験に成功しました。この新たな手法は「がん細菌療法」と呼ばれ、特に免疫力が低下した状態でも効果が期待できる画期的な治療法です。チームは、がんに自然に存在する「阿形」と、発光・発熱能力を持つ自然界の細菌「吽形」を組み合わせ、「阿吽の呼吸」でがん細胞を攻撃する様子から命名。免疫不全状態のマウスに大腸がんや膵臓がんを移植し、この細菌を投与したところ、数日でがん細胞がほぼ消失しました。現在、2028年の実用化に向けて新興企業の設立も計画されており、がん治療の新たな選択肢となる可能性が注目されています。ただし、生きた細菌の使用に対する社会的理解や安全性(免疫暴走の懸念など)の確認が今後の課題です。
2025.08.06
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#がん治療研究 #鎮痛剤 #QOLモルヒネ匹敵の鎮痛薬開発依存性など副作用なし「医療現場に変革」京都大/時事通信・ノルアドレナリンの制御機能をブロック・肺がん手術後20名対象試験で有効性確認、'26-米で大規模治験・'28実用化目指すhttps://www.jiji.com/jc/article?k=2025080500067&g=soc2025年8月、京都大学の研究グループは、モルヒネに匹敵する強力な鎮痛効果を持ちながら、依存性や重篤な副作用のない新しい鎮痛薬「ADRIANA」を開発したと発表しました。従来のオピオイドとは全く異なる仕組みで作用する新薬です。「ADRIANA」は、生命の危機時に自然に分泌される神経伝達物質「ノルアドレナリン(NA)」に着目し、その制御機構をブロックすることで、強力な鎮痛効果を発揮します。2023~2024年に京都大学病院で行われた治験では、肺がん手術後の患者など20名で一定の有効性が確認されました。今後は2026年にアメリカで大規模な治験が行われ、2028年の実用化を目指しています。現在、がん疼痛のコントロールで最強クラスの強オピオイドはモルヒネです。適切なオピオイド治療によって、80-90%の患者さんの痛みがコントロール出来るとされています。ただし、オピオイドには、長期使用による耐性、依存性リスクがあり、動物実験でこの新薬ADRIANAは、モルヒネ級の鎮痛効果が確認されていますが、画期的なことは、依存性が確認されていないことです。更に、肺がん患者さんに対する試験においては、従来モルヒネと比較して新薬の方が効果的であったようです。今後、大規模治験を経て標準治療に適用されていくように願います。急いで欲しいですね。
2025.08.05
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#がん治療研究 #膵臓がん(がん細胞や)老化した細胞が鉄で死なない仕組みを解明 リソソームの酸性度が細胞死の鍵を握る/東京大学・膵臓がんなど治療抵抗性が高いがんでがん細胞の細胞死を起こしやすくする「スイッチ」になる可能性・Nature Communicationsに掲載https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/news/release/20250730.html東京のがん研究会などの研究チームが、膵臓がんをはじめとする難治性がんに新たな希望をもたらす画期的な発見を報告しました。がん細胞や老化細胞が鉄による細胞死(フェロトーシス)を回避する仕組みを解明し、その回避の原因が細胞内の「リソソーム」という器官の酸性度の低下にあることを突き止めたのです。特に注目すべきは、膵臓がん細胞も老化細胞と同様にリソソームの酸性度が低くなっていることです。研究チームは、リソソームを再び酸性に戻す薬剤(EN6)を使うことで、がん細胞が再びフェロトーシスを起こしやすくなることをマウス実験で確認。膵臓がんモデルマウスにEN6を投与したところ、がん細胞とその周囲の老化細胞が死滅し、腫瘍の成長が抑えられ、免疫細胞も活性化されました。この成果は、膵臓がんのような治療抵抗性の高いがんに対して、「がん細胞を死なせるスイッチ」を入れられる可能性を示すもので、新たな治療戦略として大きな期待が寄せられています。Nature Communicationsに掲載されたこの研究は、今後の臨床応用や新薬開発にもつながる可能性があり、現在治療に励んでいる患者さんにとって、未来を照らす一筋の光となるでしょう。
2025.08.03
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