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 先日友人との電話中、受話器の後ろでずっと猫の鳴き声が聞こえていた。


 そんなニャン太が彼女の家にやった来たのは4ヶ月前、彼女の前の家で血を吐いて胸を汚していたのを発見された時だった。すでに3年ほど前から近所でアイドルのようだった野良猫の彼は、彼女が容態に気づくまでご近所で見て見ぬふりをされていた。
 向かいの初老の奥さんが『この子は野良に生まれてきてこうなる運命やったんや。しょうがないわ。』といい、自宅の猫は家の中で過ごさせていても、彼には餌だけ時々与えて家族として受け入れるつもりは全くなかった。
 彼女がニャン太を病院に連れて行ったとき、すでに白血球は多く、肝臓も通常の三倍でいつ死んでもおかしくないと言われていた。医師が治療の際、飼い主がいないのではどうしたらいいのでしょう、と処置に戸惑いを見せたとき、彼女は
「この子は今日からウチの猫です!ウチで最後まで面倒をみます!」
 そうきっぱりと宣言した。

 その後、彼の食欲はめざましく、缶詰はもちろん、お刺身のマグロまで平らげてしまう大食家だった。今年定年退職し、一日の大半を自宅で過ごす彼女に、影のようについて回った。彼女のひざの上でうたた寝し、これまで経験した事のないエアコンの下で体を伸ばしてくつろいだ。
 時折、そんな暮らしをしながらも外の風が懐かしく、窓の隙間から何度か脱走を試みるが彼女に見つかって失敗に終わった。彼女も外に出て行けばそれが最後になるのを恐れていた。


 そんな話をしていた翌日の深夜、思いがけない彼女からの電話があった。
「ニャン太が死んだの。」
 涙声で聞き取るのが精一杯だった。

 あまりにあっけなく、突然の宣告のように彼の死はやってきた。覚悟はしていたはずなのに、悲しみがとまらなかった。近所の人たちも集まって彼にさよならをしに来ていた。
 最後は急に痙攣を起こし、病院にかけこんだが医者は、気休めだろうけどいつもの薬か、安楽死の注射どちらにしますかと選択をせまった。彼女は少ない望みに希望を託したのだけど、帰宅後再び激しい痙攣を起こし、それが少しずつおさまり、最後は大きく伸びをして眠るように亡くなった。。。

 もっと早く家の子にしてあげたらよかったのに、と私は言った。でももしまだ彼が健康だったら? 彼女は家には入れなかったという。もうニャン太が最初で最後の子だといい、翌日お葬式も済ませた。
 私の近くの淀川河川敷も沢山の野良猫たちがいる。人の思いやりに触れることなく亡くなっていく猫たちなど山のようにいるのだろう。
 最後に家の猫として彼女のそばで過ごせたニャン太の魂は、今でも幸せに空の向こうに漂っているのかもしれない。






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最終更新日  2011年08月28日 22時41分39秒
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