April 15, 2018
XML
●この著者は「ベーシックインカム・実現を探る会」で発表者になっていたので私の知らない人ではない。私の本(当時は「未来からの伝言」)も読んでもらった覚えがある。

●この本の主要な提案はE円と名付けられた電子式減価貨幣にある。前回紹介した「ベーシックインカムの時代が始まる」も電子式減価マネー(仮想通貨)が含まれていたが、こちらの本の方が痒いところまで手が届いている。いずれもベーシックインカムの財源として、通貨発行益や減価貨幣などによる通貨改革を考えている。これらの点はベーシックインカムのトレンドなのかもしれない。

ベーシック・インカムのある暮らし “生活本位制マネー”がもたらす新しい社会 [ 古山明男 ]

●減価貨幣については20年近く前にNHKで放映された「エンデの遺言」とその出版物によって広く知れ渡ることになり、全国各地の地域通貨運動にも多大な影響を与えた。減価貨幣の歴史はベーシックインカムよりも遥かに古く、古代エジプトのオストラコンという陶片、ヨーロッパ中世のブラクティアン、シルビオ・ゲゼルの「自然的経済秩序」の影響を受けて第一次大戦後のヨーロッパで地域通貨として利用されたスタンプ貨幣などがある。減価貨幣が用いられた社会の経済は、貨幣が滞りなく循環するので経済活動がおしなべて活発になったようだ。
●国債や通貨発行益の利用に関しては、高橋是清のデフレ対策が有名だが、現在もデフレ克服、日本経済の立て直しを主要な目的として丹羽春樹、小野誠司、三橋貴明、廣宮孝信、ななみのゆう‥などの錚々たる論客がいる。

●減価貨幣にしても通貨発行益(政府貨幣)の利用にしても、「メジャー」な経済学者の殆どが話題にとりあげようともしない。ましてや国民一般になるとそのような話すら耳にすることがないので、ベーシックインカム自体への無理解の上にこれらを用いたベーシックインカムとなると、正直なところゴールが遠のくばかりになるといった感がある。遠路を牛歩の如く歩くしかないのかもしれない‥‥。

●前置きが長くなったが、この本の目次構成は次のようになっている。
第1部 ベーシックインカムのある暮らし
●ベーシックインカムによる化学技術の成果の社会還元、賃金奴隷からの解放、贈与が人を助ける、公共経済の充実などについて分かりやすく解説されていて、説得力もある。

第2部 経済成長の終わりとベーシックインカムの必然性
●1980年代以降の経済統計をグラフ化して、経済の現状の分析を行っているが、この解説も面白くて分かりやすい。この経済の閉塞状況を打開するためにもベーシックインカムは必然性があるとしている。

第3部 「生活本位制マネー」とベーシックインカム
E円を発行するBI銀行をつくり、電子式減価マネー(E円)でベーシックインカムを支給する。
E円と普通のお金は同額で買い物できることを法制化する必要がある。
E円と普通のお金の両替業が自然発生し、E円は円との割引交換できるようになる。
減価はお金の総量をコントロールするためです。つくったお金が消滅する仕組みです。
両替によってE円を「乾燥保存」(割引いた額で減価しないようにする)できる。
E円から普通のお金への両替には課税する。
お金は、価値の乗り物であり、流れ道なのです。お金は、社会のインフラの一つです。
お金の貸借はこれまで同様に円で行う。
E円の金融が発達すると新しい経済世界ができる。例えば1万E円を借り1年後に同額の1万E円を返す約束をした場合、借り手にとって無利子の借金(で直近の支払いを済ませる)をすることになり、貸し手にとっては減価を免れることができる。
このため、個人は主に時間経過によって減価(時間減価)を負担してもらうが、企業は主に(時間減価を免れる算段をするので)口座移転毎に減価させる「摩耗減価」によって減価を負担してもらう。
輸出入の決済は普通の円で行うことになる。
インフレやデフレの防止は日銀マネーを併用して生産と消費の両方から経済の調整することで行う。
円が「生産本位制マネー」であるのに対し、E円は「生活本位制マネー」と呼ぶことができる。



●ベーシックインカムの財源はつぎのようになっている。
支給額
  8万円(9歳未満4万円/9歳以上18歳未満6万円):115兆円
財 源
  E円:42兆円
  社会保障費減額の振り替え:29兆円
  消費税増税(税率16%アップ):44兆円

●消費税の増税については、ベーシックインカムとセットで考えれば「逆進性」の問題は解消され、消費税の長所を活かすことができるからだとしている。
●ベーシックインカムの導入は少額から初めて段階的に増額していこうとする点は「ベーシックインカムの時代が始まる」と同様である。

●ベーシックインカムに関してはこれまで様々な本が出版されてきた。少々難しくなるが、市民所得(ベーシックインカム)、公共通貨(政府貨幣)や減価貨幣を含めて総合的な通貨改革を唱えているジェイムズ・ロバートソンの下記の本が私の最もお勧めしたい本である。

新しい貨幣の創造 市民のための金融改革/ジョセフ・フーバー/ジェイムズ・ロバートソン/石見尚【2500円以上送料無料】

●私の「未来からのメッセージ」の中の 「配当というお金」 もこの著書の影響を最も強く受けている。ここでは完成された未来社会の姿を想定しているので、配当(貨幣)は全て減価貨幣である。財源という言葉は適切ではないが(税金の無い社会となっている)、リソースとして貨幣の時間減価、死亡時の財産返納、地球資源・環境の利用料などを考慮している。ベーシックインカム以外にも様々なお金にまつわる話を盛り込んでいるので是非一読をお願いしたい。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  April 15, 2018 03:30:32 PM
コメント(0) | コメントを書く
[未来社会へのプロセス] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

コメント新着

廣田和夫@ Re:未来社会(08/20) 「不老長寿の社会」については、以前下記…

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: