ふつうの生活 ふつうのパラダイス

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2006年12月17日
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カテゴリ: 外国映画 さ行


確か昔テレビで見たような気がするんだけど、ぜんぜん覚えていない。でも、ジャングルの中に架かった橋が爆破される話だったはずで、そのシーンだけがわずかに思い出されるのだから、たぶん見ているのだろう。

戦争映画としては、かなり有名な名作で、劇中に流れる「 クワイ河マーチ 」は、学校の運動会でもよく使われる有名な曲なので、曲を聞けば大概の人は知っているはずなのである。曲自体は快調なテンポの明るい曲で、映画のストーリーの悲惨な結末とは対照的で違和感がある。どうしてこんな軽快な曲が映画のテーマ曲にされたのかちょっと不思議。


現在のように残酷なシーンはほとんど出てこない。昔の戦争映画はほとんどヨーロッパ、アメリカが善というかかれ方をしていたものなので。そして、完全懲悪的な、最後には、爽快感を残すようなそんな牧歌的な時代の映画なのである。

しかし、今になってこの映画を見直してみれば、そんなお気楽な評価をしていていいのかどうか。日本とイギリスの将校同士の友情なんてそんなちゃっちい話とは私には思えなかった。そして、戦争映画というよりは、戦場という特異な場所を使うことによって描き出された、人間のもつプライド意識への揶揄を描いた話なのではないのだろうかと思う。

とにかく映画を見ていると、イギリス人将校のプライドの高さに驚くばかりである。それはあまりにも過渡なので、ある意味ばかばかしく、滑稽であり、思わず笑ってしまうほど。

一部隊まるまるが降伏して、タイの捕虜収容所にやってくる。アレック・ギネスの演じるイギリス人将校 ニコルスン中佐 はとにかくプライドが高い。「将校はジュネーブ条約で決められていて、労役は免除されているのだから、私は、労役なんかやりたくない」と拒否する。

しかし、日本人の 斉藤大佐 (早川雪洲 )は、それを無視して、将校クラスもみんな労役につかせようとする。

その結果、ニコルスンは、オーブンと呼ばれる独房に幽閉される。

この時斉藤大佐は「やつは自分が偉いと思っているから働かないんだ」というのである。

この時斉藤大佐は日本の軍人が話のわからないばかだから、ジュネーブ条約を無視しているように見える。しかし、斉藤大佐は、実はイギリスに滞在していたことのある教養のある人物なんである。イギリスという国の内情をしっており、イギリスという国の中の貴族というもの、身分格差などをよく知った上で、ニコルスンのジュネーブ条約遵守を拒否しているのである。

イギリスの貴族はアメリカとは対称的に戦争が始まれば、まず戦場に向かうものらしい。しかし、貴族なので、入隊の最初から、将校の位を与えられる。自分達は貴族なのだから、庶民のような労役はしたくない。戦場でそんなことにならないようにという貴族サイドの要請によって取り決められたのが、ジュネーブ条約なのだとしたら、そんな西洋のご都合主義によって一方的に決められた条約なんてものを、貴族階級を持たない日本が守らなければならない道理なんかどこにもない。
まして、将校クラスの捕虜はいっぱいいるし、彼らにも食事を与えなければならないのなら、働いてもらわないとたまったもんじゃないと思う。日本側にしてみれば。

つまり、斉藤大佐は話のわからない馬鹿だったから、ニコルスンの要請を拒否したわけではないのではないかと思う。

しかし、その状況で、炎天下に独房にいれられ、食事もないまま、それでも、労役を拒否しつづけるニコルスンのプライドの高さには恐れ入る。すごいねえ。

さて、しかしである。この捕虜収容所の重要な仕事はクワイ川に橋を架けることなのだが、なかなか思うように行かない。さすがに困った斉藤大佐はニコルスンを独房から出し、機嫌をとって、何とか橋の建設を手伝ってもらおうと考える。苦労の末、ニコルスンの説得に成功し、ニコルスンは二人の部下を使って橋の建設を始める。

ニコルスンは貴族のプライドによって労役を拒否したわけだが、橋の建設という「貴族のプライドを維持し、将校として、部下たちを指揮し、隊を統率する上でちょうどよい仕事」を得たことで橋の建設に夢中になる。

ところでここでポイントなのは、斉藤大佐はニコルスンが貴族だから、将校だから、それを認めて、彼を独房から出したのではないということだ。ニコルスンの技術力や知識に対しての敬意なのだ。ニコルスンはプライドゆえに労役を拒否していたはずなのだが、彼はそのプライドへの敬意でないにもかかわらず、斉藤大佐を許して、ご満悦になっている。橋の建設は、彼のプライドを満足させるのに十分な仕事だったようである。

しかし、ここで軍医がニコルスンに注意する。「この橋を建設することは敵(日本)を助けることになるんだぞ」と。しかし、ニコルスンは聞き入れない。

さて、同じ収容所にいたアメリカ人の シアーズ (ウィリアム・ホールデン)は脱走に成功したのだが、橋の爆破計画の重要な任務を与えられ、しぶしぶクワイ川に戻ってくる。

とうとう橋は完成し、そして、シアーズたちによって橋には爆破用のダイナマイトが仕掛けられる。

ダイナマイトの導火線にきづいたニコルスンは、発火装置のところまでやってくる。彼につれられて、斉藤大佐もやってくる。対岸でシアーズもまた、爆破の瞬間を待っている。

爆破スイッチのところにいたイギリス兵は、まず、斉藤大佐を戸惑うことなく殺す。しかし、イギリス人将校であるニコルスンをどうしても殺せない。時間は迫っている。早くしないと列車が橋を渡ってしまう。対岸にいたアメリカ兵のシアーズがやってきて、爆破をとめようとするニコルスンを殺す。イギリス兵も殺されている。

そして、最後の瞬間、傷をおったニコルスンが爆破スイッチの上にたおれかかり、橋は爆破される。

イギリス兵は日本人である斉藤大佐は躊躇なく殺せたのであるが、イギリス人将校であり、貴族であるのニコルスンはどうにも殺せなかったのである。そして、アメリカ人であるシアーズは、ニコルスンを殺すことに戸惑いがない。

シアーズは本来二等兵だったのだが、物語の中でずっと、中佐と偽っている。なぜかといえば待遇がいいからである。軍隊の階級というのは、正確な確認もなく、本人の言葉だけで信じられてしまう程度のものなのであり、それを罪悪感なく、偽証してみせるアメリカ兵のシアーズという人物の存在もまた、階級や貴族意識のばかばかしさを揶揄しているようである。ジュネーブ条約なんていうのはそんなものなのであろうか。

原作はフランス人の ピエール・ブール による。ブールは、大戦中、有色人(日本)の捕虜となった屈辱をこの物語によって描いたのであるが、そのブールの特権意識を揶揄したテーマに摩り替わった映画をイギリスが作っているとは、なんというか、その皮肉ぶりには恐れ入るばかりである。

「第二次大戦を背景に戦争の愚かさと人間の尊厳を描いた」というのがこの映画の映画評であるのだが、本当にそうなのだか。
イギリス人将校と日本人将校の友情なんていうけど、そんなものこの映画のどこにあるんだか。ニコルスンは将校らしい仕事にご機嫌なだけで、斉藤は橋が着実に建設されていることにご満悦なだけだ。

結局最後は三人とも死んでしまった。
彼らが死んだのは、戦争だからなのか。それとももっと別の理由からなのか。

















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最終更新日  2006年12月17日 18時24分20秒
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