ふつうの生活 ふつうのパラダイス

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2006年12月16日
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カテゴリ: 外国映画 あ行


何とかして。イーストウッドは最初日本人の監督でこの作品を作らせるつもりだったらしい。でも、結局自分でやっちゃったみたい。監督はイーストウッドでもいいからさ、せめて大道具係りとか、シナリオとかは、日本人入れてほしいんですけど。

だって、ヘンだよ。硫黄島の島民が住んでるあの家。なんであんなに障子だらけなの。普段見てる時代劇と明らかに違うもの。障子って結構高級品なんだよね。それに弱い。建物の一番外周部にあんなにいっぱい使いませんてば。あんな外側の野ざらしのところに障子なんてつけたら、あっというまに穴だらけですから。障子ってガラス戸とおんなじじゃないんだよ。それとあいかわらず、島民がへんな帽子かぶってるし。

しかも、準主役の西郷さんの職業がパンやだし。

いったい、日本で個人経営の自家製パンのお店なんてこんな時代にあったんですかね。いまでこそ、店舗で焼いたパンを売ってるベーカリーは日本のそこかしこにありますが。私が子供の頃は、パンといえば『山崎パン』でしたし、そのあとですよ、町のパンヤさんができたのは。

所詮向こうの人が考えるとこういう設定になるんですよねえ。ぱんやなんてハイカラすぎるよ。日本でパンヤなんて貧しい一般庶民の商売なんかじゃないはずですから。せめて、豆腐やとかにしてくれたらよかったのにね。

こういう時代考証とか、いろいろとちゃんとやってほしいなあ。


で、ストーリ自体も前回の『父親たちの星条旗』ほどには感動もなく、気がついたら、見終わっていたというか、えーっとこのての話はいまさらっていうか、いままでテレビドラマで見てきた話の方が面白かったかなあとか。

私的にはいまいちかなあと。

硫黄島


主役は二人。栗林中将(渡辺謙)と、ただの平の兵隊さんの西郷さん(二宮和也)と。

この西郷さんがね。今までの日本の戦争ドラマにでてくるキャラクターと違うなあと。うーん。アメリカ人が日本人に化けて日本軍に混ざっているような感じがなぁ。

ものの考え方とか、しゃべり方とか感覚がね、今までの日本のドラマに出てきた純朴な普通の青年兵とちょっと違うんだな。

『墓穴を掘る』なんていうしゃれもね、日本人でこの当時でこんなこと思いつけるやついたのかなあと。今の日本でも、かなりめだつかな。二宮くん演じる西郷はいかにも今現在の日本の若者そのもので、立ち居ふるまいから、しぐさ、口の利き方まで。それも、まじめな青年じゃなくて、学校の教室の中にいたら、優等生ではなくて、あきらかに不良の部類に近いポジションのような。

この時代にこんなタイプの人間は珍しい気がして。

栗林中将や、バロン西の場合は将校で、しかも、洋行の経験があって教養もあるから、時代に対しておかしいことにきずいているのだけれど、西郷のようにごく普通の人間で特別な教養もなく、将校でもなく、外国も知らない、ごく普通の青年が、この時代この状況で、陸軍内部の感覚に染まらずに、この戦いの場で最後まで生き抜いたということがすごい。

すり鉢山内部での集団自決の場で彼とその友人だけが自決せずに逃げ出している。その後もアメリカに投降しようと考えもする。

なぜかといえば、彼が集団にそまらないタイプの人間だったからなのかなと。

学校の集団の中には、先生のいうことよくきき、学校の校則にも素直に従う優等生タイプの人間がいる一方で、規則に従うことをよしとせず、反抗し、ルール違反を繰り返し、不良のレッテルをはられる人間がいる。

思うに西郷くんはまさにこのタイプ。

集団自決でなんの疑問も持たずに真っ先に死んじゃうのが、優等生タイプのやつだろうなあと。

でも、いまどきの学校に優等生なんていないけどさ。

それで、西郷くんは、「硫黄島なんてさっさとアメリカにやっちゃえばいいんだ。」とか、考えるんですね。

実際、5日だろうが、30何日だろうが、守ってみたところでどうなったものでもないというのが、本当のところだなあと思うので、彼の発想はそういう時代を超えた価値観に瞬時に跳んでいたともいえる。



一方で将校であり、外国に行ったりもしている、その時代にしては、なかなかハイセンスな栗林中将もまた、当時太平洋戦争のばかばかしさには気づいていたわけで、それにもかかわらず軍人として、忠実に自分に与えられた仕事をこなしている。

彼がアメリカに行った折にかかわった多くのアメリカ人は彼にとって友人である。その友人を含む同じアメリカ人を非常に緻密な計画によって、二万人も殺している。彼が硫黄島でのゲリラ戦を計画し実行している段階で彼自身その戦略によって多くのアメリカ人を死に至らしめることは十分想像できただろう。

友人であるはずのアメリカの人間をより数多く殺すための計画。戦争なのだから、仕方ないといってしまえば仕方ないのだが、それでも、そういうことができるこのまさに精神の二重構造を内包しつつ、精神的に破綻をきたさないという、職業軍人としての怖さ。平和な世界なら、友をどううまく殺すかなんて計画を立てるのは明らかに異常性格なんだけどね。

そうして、その友人であるはずのアメリカ人を殺さなければならないのは、栗林にとって友人以上に大切な、家族、妻、子供を守るためのものだからだ。けれどそれは、もしかすると、言い訳に過ぎない。実際彼の妻と子供たちはこの時すでに、長野に疎開していたのだから。

友人を敵として殺さなければならない栗林の心の中の葛藤は、『父親たちの星条旗』で、主役のドクが衛生兵として、一緒に戦う同胞を、友人を、助け続ける姿と対称的だ。

ドクは、国家が見捨てる一兵士の命を救うのは、友として、同じ戦場で働く同胞としての自分なんだと。

そして、国家の命令によって、友を殺さなければならない栗林の心の葛藤と見事な対称をもってこの二つの物語は描かれる。

国家の命令によって、国債を売り、国家の命令によって、友を殺し、国家の命令によって友を助ける。

一個人の意思では抗いようのない国家とはではなんだろう。

戦争とは、国と国との戦いと一般には思われる。

けれど、本当にそうかといえば、必ずしもそうともいえない。古代中世の国レベルの戦争と、現代近代の戦争とはすでに様相を異にしてきている。

戦争を仕掛けているのは、国の中のごく一部の集団に過ぎない。太平洋戦争においては、日本陸軍の上層部であって、陸軍でも、下の方の普通の兵士はもちろん戦争なんかしたくないし、当時の日本の政府だって海軍だって戦争なんかしたくなかった。

今現在すでに戦争をしているのは、国同士ではなくて、それぞれの国の中の極一部の勢力が国という仮面をかぶって戦争を仕掛けているに過ぎない。
そこにお国のためというもっともらしいお題目がついて、世界平和のためというお題目がつく。まきこまれる普通の人間はたまったものじゃない。それでも友や、恋人や子供のために、仕掛けてくる相手を振り払わなければならない。

たとえ国家が切り捨てたとしても、友達だから、助けるんだというドクと、大本営から切り捨てられたとしても、妻と子供のために戦いつづけようとする栗林は、おなじみたい。

ただねえ。こんな優秀な頭脳がこんなばかげたことに使われて、捨てられたことの腹立たしさはなんともいいがたい。もったいない。ばかばかしい。



ついでに、これ→    映画『硫黄島の砂』の感想

それから、これも→   映画『父親たちの星条旗』の感想
















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最終更新日  2006年12月16日 16時11分04秒
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