退陣することがほぼ決まった菅総理には、茨の花道をその花のように虚飾を捨てて、芳しい香りを残すぐらいの余裕を見せてほしいものだ。
「悠々として急げ(フェスティナ・レンテ)」という古語は、もともとある王様の政治の座右銘だったそうだ。
初夏、白い花が群をなして控え目な様子で咲くが、香りは高く遠くからでもその存在ははっきりと知られる。
野茨
開高健の「悠々として急げ」を再読している。角川文庫で初版が昭和54年(1979年)の発行のこの本は、実に面白い。
まえがきに、「地球は狭くなったと、いわれる。しかし、狭いものにはたいてい皺がある。地球も戦争、条約、汚染、資源枯渇、人口爆発と、皺はふえるばかり。身のまわりを見ても口を開く前に閉じたくなる時代である。
そこで、これから十二回、皺ののびる対談をやってみようと、思い立った。」とある。
その中には、人工人糞の研究者が登場。日本特産で人糞処理の微生物「テングノムギメシ」というものがあり、それを人糞に放りこむとものすごい勢いでメタン発酵し、ほとんど純粋のメタンガスを発生させるという。それで、そのガスを使って発電すれば究極のエネルギー再生だという話がある。
また、微生物を使って水を作る(ラクダは体内でそれをやっている)話とか、トイレに行きたい時に外国ではどんな言い方をするとか(ドイツではマイヤーおばさんはどこだ?、アメリカはスミスはどこだ?、イギリスでは古い友人と握手したいとか古い親戚に会いたい、というらしい)、人糞にまつわる話が一杯詰まっている。
風呂と山と温泉が三度の飯より好きで、全国に1500ほどある温泉を一つ残らず入ろうと頑張って、1140に達した男の話。
ノミの研究者の話ではレジリンという物質(タンパク質)がノミの跳躍の基だとか、ノミのサーカスはハンガリアのノミ芸人が一番上手いとか、世界的コレクターはロスチャイルド家の末裔で世界の2000種の内の1500種が標本にあるとか、和ノミは小さく洋ノミは大きくて中国のノミは悠長だとかノミの生きざまなどノミ談義に花が咲く。
そうかと思えば、カニバリズムも出て来る。中国では昔、ごく当たり前に人肉を食べていたという話。
また、一個の米粒に1500字まで自家製の筆で書き込むミクロの書道家の話。
水についての考察。
得意の釣りの話では「釣魚大全」の初版本についてに始まって、もう釣りの話なれば”水を得た魚”だ。
おもちゃにも造詣の深いだまし絵の権威・福田繁雄との対談。
競走馬の話では雄(夫)の年齢が上がるに連れてオス(男の子)が生まれるようになる話などなど。
幅広い知識と諧謔の精神で、時には横道にそれながら、悠々と対談が進められていく。
浪速茨
32年前(実際はもう少し前だろう)に出版された本だが、今、読み返してみても面白い。当時とは違った思いが湧いてくる。
無駄なように思える事が、実は未来に大きな影響を与えるということが良く分かるし、文化とはそもそもそういうものなのだと気づかされる。
兎に角真面目に一生懸命やる。人が何と言おうと自分の信念を曲げないという生き方。
そんな人が今は非常に少なくなったのは確かだ。
効率優先、成果主義には余裕がない分拡がりというものが生れない。
悠々として、人のやらない事をやるのは、ある意味で贅沢な事だ。私の中にもこの”人のやらない事”への憧憬は間違いなく潜んでいるが・・・・。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題してスタートすることにしました。
2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
★ 「ジグソーパズル」 自作短歌百選(2006年5月~2009年2月)
◆ ジョーク、冗談、ユーモアは生活の調味… 2014.10.22
◆ 消えていってこそ虹 2014.10.21 コメント(2)
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