Easy Going~気楽に行こう~

Easy Going~気楽に行こう~

2011/08/23
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テーマ: 闘病日記(4014)
カテゴリ: デジタル関連
という訳で、声に関する2つ目のネタ。
書店のバイトを辞めた後、PCサポートセンター(サポセン)で働いていた時の話。

「言語障害のお客様がいる」という話が聞かれるようになった。とにかく聞き取れないらしい。
そのサポセンに掛かってくる電話は全て録音されていて、全て自由に聞き直せることができるようになっていた。んで、そのお客様とのやりとりを聞いて「えー、ほんとだー、何言ってるか全然分かんないー」などと盛り上がっている人たちもいた。
私は、そういう輪には加わってなかった。別にコレというポリシーがあってヒアリングしなかった訳でもなく、関心はあったけれど、まぁみんなのリアクション見てるだけで十分だった。

ある時、普段から仲良くしてる人が、そのお客様の電話を取った。
彼女は「聞き取れないから」と、サポート電話の前の人にも協力してもらっていた。サポート電話は2本あり、そこからも、そのやり取りを聞くことだけはできた(話に加わることはできない)。
普段は、クレーム電話を取った場合のヘルプに使われていた。
んで、しばらく彼女は格闘していたのだけれど、とうとうキレて「もう何をおっしゃってるのか分かりませんので、すみませんが切ります」と、こちらから電話を切ってしまったらしい。


そうかと思えば、その後に他の人がその方からの電話を取り、「俺は聞き取って、ちゃんと案内したぜ」と自慢気に話していたりするのだった。

そうこうしていたある日、そのお客様からの電話を、私が取ってしまった。
電話がかかってくると、電話を受けたこちらのPC画面にはポップアップでお客様の履歴が表示されるようになっていた。「言語障害のお客様、なおFAXは持っていないとのこと」などの説明や、これまでの経緯が記載されていた。

で、お話を伺うのだが・・・確かに、本当に何を仰ってるか聞き取れない。かなり手強い。
録音されているデータを皆で聞いていた時に、自分も参加しておくべきだった。
ただ、お客様も、ものすごく頑張ってお話しされているのが分かる。というか、これは多分、電話でモノを伝えるのは、ものすごく大変な状態の方なんじゃなかろうか、と思った。

新卒で入社した印刷会社に、耳の不自由な先輩社員がいた。
当時はまだ珍しかったFAXが、その方の家とご実家には、早々とそれぞれ置かれてあった。
携帯メールはもちろん、PCでのメールやり取りさえない頃だった。
その先輩社員とは、時々筆談で話をした程度だった。他の人の場合と違い、彼と話をしようとすると筆談しかなく、お互いに作業を完全に中断することになってしまうので、話をする機会は残念ながらほとんどなかったのだった。
手話を教えてあげようと言われていたが、結局習わないままだった。


ご家族と同居していてFAXが不要なら、ご家族の方が替わって電話されるだろうとも思った。
あえて、このお客様は、ご自分で電話をされている。しかも、何度も何度も。

これは、私の一方的で勝手な思いこみに過ぎないのだけれど、なんか「普通の人並みに、電話だけでトラブルを解決してみたい」みたいなお気持ちなんじゃないかと思った。
その頃、私自身が精神科に通院している最中だったかどうかは覚えていないけれど、まぁ精神科に通院した経験はあった。それで「おきちがい」だの「精神錯乱」だの言われたりした経験があった。だから、職場の人には、精神科に通院していた(している)ことは隠していた。
私は「普通の人並み」に仕事したいと思っていた。


カチッと、自分の中のスイッチが入る音がした。

とにかく、何を仰っているかは、まるで聞き取れない。
思い切って、「今から、私の方でいろいろ思い付くまま伺いますので、はい・いいえでお答えいただけますか」と頼んでみた。そして、思い付くままトラブルを挙げていった。
「ハードに関するトラブルですか」「(違うっぽいお返事)」
「それでは、アプリ系のトラブルでしょうか」「(そうですっぽいお返事)」
こんな調子で、ずんずん切り分けして行った。

そしてようやく、TV閲覧ソフトの音が出なくてお困りだと分かった。
とにかく、お話を聞きとるのに、通常のクレーム電話の5倍以上は集中して話を聞いていたので、こちらもヘトヘトになっていた。でも、お客様は出し辛い声でお話しされてて、もっと頑張って下さっているんだからと、頑張った。
もう乗りかかった船である。

ここで、改めて過去の履歴を確認したところ、このお客様は、OSをWindowsMEからXPにアップグレードされているのだが、前に対応した人が、間違ったことを案内していた。
実はMEのうちに各種ドライバをXP用のを当てなおしてから、XPをインストールしなくちゃいけないのだけれど、XPをインストールしてからXP用ドライバをあてるように案内していた。
そのせいで、TVチューナドライバのトラブルで音が出てないようだった。

少し悩んだ。
一応「お客様、FAXはお持ちではないんですよね」と伺い、「(そうです)」とお返事があった。
「おそらく、MEからXPへのアップグレードが、うまく行っていないようです。本当に申し訳ないのですが、今から手順を申し上げますので、メモを取って頂けますかそして、その手順で、もう一度XPをインストールして頂けますか
そしたら「(はい、分かりました)」っぽいお返事を頂けた。
こちらの手落ちということは、結局言わなかった。スミマセン<(_ _)>

MEからXPへのアップグレードの説明は、私の、数少ない得意分野だった。
XPアップグレードDVD・XP対応ドライバCDが、申し込まれたお客様に届いた時に、一般的にはアップグレードの手順書も入っているものだと思うのだが、なぜかその情報がPDFかHTMLかなんかでドライバCDに入っていて、紙での書面として入っていなかった。
それで、このことでのお怒りの電話を取った。んでも、これは怒って当然だよなと私も思ったので、そのお客様の要求通り、そのお客様がお使いの機種と同じ実機で、こちらでもXPへのアップグレードを一緒にさせてもらったことがあった。
いやーいい経験したわーと思っていたら、またアップグレード関連の電話を受けた。
次のお客様は、一緒に付き合って作業してもらったら時間を取ってしまって悪いから、FAXか何かで手順を送ってくれないとのことだった。
そんな訳で、今度は手順書を作成するために、再度XPへのアップグレード作業をした。細かくメモを取りながら。
だから、もうすっかり完璧だった。
ちなみに、そのお客様宛に私が作成した手順書は、その後、他のみんなにもシェアされた。

そんな経緯があったので、私にしては珍しく、自信を持ってご案内できたのだった。

そんなこんなで一通りご案内が済んだ。
その後、いつもの調子で「他にも、何かご質問があれば伺います」と言った。
これは、実は他の人は言っていない言葉で、「はざやさんって、いつもそんな事を言ってるのー」と笑われた事もあるのだけれど、まぁなんとなく、いつも言っていた。
そういうことを言っても、大抵のお客様は「いえ、大丈夫です」と仰って対応終了になるのだけれど、このお客様からは、また質問が出てきた。
その瞬間の私は、おそらく思いっきり「しまったー」という顔をしたと思う。でもそこが電話のいいところで、表情なんて伝わらない。
幸い、「ドライバってなんですか」というようなご質問で、それは簡単に説明できた。

唐突に、 「ありがとごじゃーます」 と言われた。

思えば、この電話を取ってすぐの時は、本当に何を仰っているのか分からなかったのだけれど、いつの間にか、次第に少しずつ聞き取れるようになっていた。
それは、こちらが慣れてきたのかもしれないけれど、それ以上に、お客様の喉の緊張が取れて、聞き取りやすくなってきていたのだと思う。
そして、その「ありがとごじゃーます」は、無駄な力の抜けた、すっとこちらの心に滲み込んできた言葉だった。
「あ、いえ、とんでもないです、こちらこそ、本当にありがとうございます」
そう答えながら、机におでこをぶつけそうなくらいにお辞儀をして、そしてなぜか私は涙ぐんでいた。お役に立てたとか嬉しいとか、そんな程度じゃない感情が湧き上がっていた。

そうして電話対応は終了した。
とにかくヘトヘトになっていた。そのくらい全神経を耳に集中していた。
ここで「ありがとごじゃーます」で疲れが吹っ飛んだとか書けば美談になるけど、そんな生易しいものではなく、とにかくとんでもなく疲れた。

その後、念のため何日間かは、そのお客様から再度お問い合わせが入っていないか確認した。1ヶ月経っても再入電がなかったことを確認して、ようやくホッとできたのだった。

そして月日は流れ、私も障害者手帳を持つ身になった。←実は持ってたりするのです。
こうして手帳を持っていると、あの時とは違う気持ちで、あのお客様のことを思い出す。
こちらがとんでもない対応をしたこともあったのに、それなのに、よく何回も何回も、お電話掛けてきて下さったなーと、ひたすら尊敬する。
今の私に、そこまでの根性はあるだろうか・・・正直ないなー
まぁ身体障害者と精神障害者の違いってのは実際あるのかもしれないけれど、でもいろいろ見習わなきゃなって思う。

という訳で、またしても余談。
実は、今使っているパソコンマシンのOSはWindowsVISTAなのだけれど、このVISTAへのサポートが来春で打ち切りになってしまう。
(⇒http://news020.blog13.fc2.com/blog-entry-1700.html)
まぁ来春まではサポートしてもらえるとは言っても、使えなくなると分かっててギリギリまでVISTAを使い続ける性分でもない。
んな訳で、そんなことをする予定は全然なかったのに、このマシンを急遽Windows7にアップグレードすることにした。
アップグレード前にいちおーバックアップを一通り取っておかなきゃなーとか、この際きちんと整理までしてDVD-Rに焼いとくかーと考えているところ。
うーん、今の私に、自力でできるかー
サポセン勤務してた意地と根性で、自力でやろうと思ってはいるけどね





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最終更新日  2011/08/25 11:48:28 AM
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