Easy Going~気楽に行こう~

Easy Going~気楽に行こう~

2016/08/05
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テーマ: 父(10)
カテゴリ: 記憶
先日のNHKの「サラメシ」。
オリンピック直前特集で、これまでメダルを獲った瞬間のいろんな選手の映像が流れた。
力強いガッツポーズや、仲間と抱き合って飛び跳ねて喜ぶ姿や、はち切れんばかりの輝く笑顔。
真似して、私もひとりでガッツポーズをしてみた。
もしかして、これでいいのかな。



このところ、立て続けにモヤモヤ悩んでいた。

ひとつめ は「ポケモンGO」の日本での配信直前。
「自閉症やうつ病がポケモンGOで改善する」という記事が、Twitterで大拡散されていて、「精神科医も認めている」などと行き過ぎた表現になっていた。
自閉症の人を見たこともない人が、行き過ぎた記事を善意で拡散するのも仕方ないけれど、「自閉症が良くなるんだからポケモンGOやらせなさいよ!」になりかねない。……そんなカンタンに治るなら苦労しない。


短大の時に1年間、週一で養護学校で研修していた。そこは重複(2種類)・複合(3種類以上)の障害を背負った子ども達を受け入れていた。
接する機会がないと「ポケモンGOで自閉症が改善」を鵜呑みにするほどに、本当に何にも知らないものなんだ。
仕方ないけれど、一障碍者として、やるせなかった。


そんな矢先に、 ふたつめ 。知的障害者施設での殺傷事件。
凄まじい衝撃そのものは、今もまだうまく言葉にできない。
それに加えて、違う所でも苦しんでいた。
知的障碍者さんと接点なさそうな方々がお心を寄せたツイートを、上っ面で薄っぺらく感じて、味方のはずの方々を絶対敵だと感じてしまっていた。それで自己嫌悪して、健常者という集団への不信感にも気付いて、とてつもなく辛くなっていた。

「知的障碍のお子さんが笑うことで親御さんが嬉しいなら、それだけで、そのお子さんには生きている価値がある!」
親御さんが面会に来ないお子さんに生きる価値はないんだろうか……。そんな感じで、ケンカ売ってまわりたい訳ではないのだけれど、ひとつひとつにケチをつけて突っかかっている感情があった。
「ひとりひとりが生きてていい!死んでもいい命なんてない!」


私は中学の時、リンチまがいの凄まじいいじめを受けていた。
朝8:00に数分でも遅刻すると、8:30の授業開始まで殴る蹴るされていたし、授業が自習になると授業中は男子5~6人に囲まれてリンチだった。
休み時間も、いつもリンチだった。女子トイレの個室に逃げても、上からバケツで水をぶっかけられた。
常に「死ね」「死ね」と言われていた。
入学式の写真の、私の顔をくり抜かれたものが、教室に貼られていた。

すべてのいじめは、担任公認だった。
「私に死ねと言ってた健常者の皆さま方が、生きてていい!とか、なんだそれ?」
違和感というか、反感だった。

事件のあまりの衝撃で、心が中学の時に退行していた。
今の現実は、畑で友人もできて楽しく暮らせている。そんな大切にすべき今の現実の日常が、心から抜け落ちていた。

そして、もうひとつ。
母が死んだことで少し楽になれた私は、父にも早く死んでほしいと思っていた。
私は、知的障碍者を殺傷した精神疾患の容疑者と同じなのだろうか……。
そんなふうにこんぐらがって辛くなって苦しんでいた。


そこに、思いもしなかった みっつめ の出来事。
8/2の朝、 「昨日、父が死んだ」 と真ん中の妹からメールで連絡。

一呼吸おいて折り返し電話。
ものすごく怒っていて怖かった。30秒も話さずに電話は切られた。
末の妹は、連絡来ないし、こちらからも連絡し辛い。
主人には、いつもより早く帰ってきてもらった。と言っても22時すぎ。
真ん中の妹に主人から電話してもらったら、もう寝ていたのを起こしてしまった。父の遺体の顔は見てきたそうだ。

8/3の朝早く、父の後見人から電話があった。まだ寝ていて出られなかった。
折り返し電話しようにも頭がぼーっとしていて、着信した電話番号を掛けようとして、何度も何度も押し間違える。
自分は怯えているのかもしれないと、主人に折り返し電話を頼んだ。
葬儀はやらず、入所施設の「お別れ会」で済ませたこと、今日の10時から火葬してお骨は拾わない、などのご連絡だった。


これまで、父の事は思い出せなかった。
ずっと解離してきた記憶を、自分の意思で手繰り寄せようと思った。

妹たち(双子)が産まれた日の事を思い出した。
私は小学校3年生で、その日は9/1で、2学期の始業式だった。
おそらく、その日の朝ごはんはなかった。
11時ごろ帰宅したら、うちに誰もいなかった。お腹空いたなあと思った。
父が帰ってきたのは、もう暗くなってからだった。妹たちが産まれた病院に連れて行ってもらった。
真ん中の妹は、母と一緒の部屋で寝ていた。(ここでの母の事は全く覚えていない。)
末の妹は未熟児だったため、母とは離れて保育器の中にいた。
そんな赤ちゃんを見ながら、お腹空いたなあと思っていた。
その夜は、お腹が空いたまま寝た。

「お腹空いた」を思い出したのは初めてだった。驚いた。
父はもちろん昼食は食べて、夕食もおそらく自分だけ食べたのだろう。

ごはんが「ない」のが当たり前だったのだろうか。
小学校低学年では、夏休み中は毎日下痢して、夏休み後は体重が2~3kg落ちていた。
子どもなりに考えて「アイスクリームを食べたからお腹を壊したんだ」と思いこんで、アイスクリームを食べないようにして、それは大人になっても続けていた。
今思えば、栄養失調の下痢かもしれない。学校給食で命をつないでいたのかもしれない。

「オレもこんなことやりたくないけど、おまえが悪い子だから、いい子にしたろうと殴る蹴るしたっとるんや!」
私を悪い子と思いこませて、父が暴力を正当化していた事柄を、いくつもいくつもフラッシュバック。
思い出すたび、私は悪くなくて父が悪いと、今の価値観で記憶を上書き。
ひとつひとつを思い出すたび、心底からムカムカして苦しい。
そんな記憶が、まだまだたくさんありそうで途方もないと感じているのに、フラッシュバックを抑え込めず止められない……。

子育ては洗脳だ。

改めて、それでも良く生きてきたなあ。
凄まじい暴力で何度となく半殺しにされた(暴力そのものは、まだ思い出せない)。あの半殺しを全部足したら、何回分殺されたのだろう。
あんなにごはんをまともに食べてなかったなんて。全く覚えていなかった。ショックだった。
服や下着も満足ではなく、朝起こしてもらえず、お風呂もちゃんと入れず、子どもが成長する家庭じゃなかった。
十分に食べてもいないのに「誰に飯喰わせてもらっとると思っとるんや!」と暴力をふるわれていた。
ある時は「父にごはんを食べさせてもらっとる代わりに、殴る蹴るさせてやっとるんや」と母に言って、母にも殴られた。

自分が悪いから、あれもこれも直さなくてはいけない。その強迫観念は今も強い。
自分が悪いから、死ななくちゃいけない。死ぬべき存在だ。これ以上迷惑をかけないよう、自殺しなくてはいけない。それなのに自殺できないなんて、私は悪い。こんな、自殺願望とも希死念慮とも少し違った強い強迫観念は、今は随分薄らいだけれど、油断すると鎌首をもたげる。
こういうのは全部、父や母の暴力や育児放棄の正当化。私の過剰適応。
私は、自殺しなくちゃいけないほど悪くはない。

何度も何度も同じことを、振り返って、なぞり直して、今回もまた。
繰り返すことで少しずつ、自分の基盤が固くなって、根幹が太くなる。
今はまだ、知的障害施設殺傷事件で、もろく崩れかかった。私はまだまだ弱い。
それでも今、生きている。自殺せず生きてこられた。



オリンピックでメダルを獲得してガッツポーズをしてる選手を、ちょっと真似したくなった。
両腕を高く掲げてみたら「やったー!!!」と、これでいい気がした。
私は、生き抜いたことで、父に勝った。
長い長い戦いだった。戦いはこれからも続く。
今は勝利者なんだ。戦いの勝利を喜びたいんだ。爆発させたいんだ!!!
そんな気持ちを素直に受け入れたら、涙が滲んだ。嬉し涙だった。

父が死んでガッツポーズなんて、「正しい方々」にはバッシングされそうで怖いけれど。

葬儀もなく、お別れ会も知らず。
父が死んだことを受け入れるために、何らかの「喪の作業」を意識的に行うことが必要。
リオオリンピックでメダル獲得した選手を見るたびに、私もガッツポーズしてみようかな。
そんな「喪の作業」しか思いつかない。





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最終更新日  2016/08/05 08:11:29 PM
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