hikaliの部屋

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February 21, 2007
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 昔の仕事で、自分の書いたストーリーに、イラストレータさんの書いたイラストがついた。
 仕事として事細かに指定を書いて、あがってきたイラストを見て驚く。
 わたしの書いた指定と違うものができあがってきたのだ。
 わたしは窓口の人に、これは設定を変えなければならなくなるとクレームを付けたが、時間的コスト的余裕などなく、しかたなくわたしは用意していた物語の一部を破棄して、そのイラストに合うように書き直した。
 たぶん、30枚分ぐらいは書き直したはずである。
 わたしは共同作業である以上、こういうことは起こりうると諦めた。
 そんな中、お客さんから、イラストが物語と合ってないとクレームが付く。
 わたしが付けた致命的なクレームとは違い、イラストレータさんの雰囲気が合ってないんじゃないかというクレームだった。
 いくら商売でも、そんなことを言われても対応のしようがない。

 致命的なほどな差違ではなかったし、わたしはそのイラストレータさんに合わせて、物語の雰囲気を変更していたから、差違があると言われれば、わたしの技量のせいでもあるからだ。
 ちなみにわたしが付けたクレームは、
「この子は外国人ではありません! 名前が明らかに日本人じゃないですか!」
 というものだった。

 その仕事はゲームの仕事だったので、リアルタイムでお客さんの感想が届く。
 進むうちにどうも、キャラクターに心酔した方が現れて、夢に出てきたと、どう考えてもポエマーだろと思える内容の文章を送りつけてきた。
 いくら長時間鮮明にイメージして描いていても、書き手の夢に出てくることはない。
 ちなみに、送りつけてくる人はA4封筒で20枚とか平気で送ってくるので、A6封書であったそれは、序の口の部類に入る。
 わたしはそれを読んで嬉しいというよりも、うーん、という感じだった。
 なんとなくドリームが入っているようで、どうしたらこの人を傷つけずに済むかを考えるのが非常に大変だったからだ。
 わたしは仕方ないので、その雰囲気に多少すり寄せて、描写でフォローする。

 こういうのを全部受け入れて、どうまとめ切るかが勝負みたいな仕事だからだ。
 わたしの経験則を言えば、そういうイレギュラーがあった場合の方が、できがよくなる傾向にある。ひとりの個人というのはなんとなく欠落した部分があり、静かにしていて、地道にコツコツやっている人のところにやってくるあらしは、なぜか豊饒を落っことしていってくれる物であると思う。
 わたしは、あらしがすぎるとまた静かになる。
 そしてまたコツコツとやりはじめる。

 Webデザインの仕事をしていたときは、常に暴風雨に巻き込まれたようだった。

 社内FIXであれば、席の後ろに張り付かれる。
 こういうのになれてくると、結局、どこで合わせるかとか、FIXのとれそうなところとかを探りながらの仕事になる。
 高度に、デザインが必要な場合は、なんとかいいわけをつけて、シャットダウンして一発OKを狙いに行くが、逆に言うとそういう状況になるって事は、あまりにも複雑な利害関係がありすぎて、その辺クオリティでぶちこわすぜ、そこんとこよろしく、という場合であって、結構やばい場合であることが多い。
 思いの外、商業ベースのクリエイティブというのは、利害関係者の合意の仕事であって、合意を取るのが最下のデザインまで丸投げになってしまっている場合、わたしのような散々に振り回される状況に陥る。
 これは文章でも、デザインでも経験しているので、たぶんなにをクリエイトするかによって左右されることはないと思う。
 わたしがWebデザインでよく言っていたのは、
「それじゃあ、FIXとれないよ」
 という事であり、こうやって文章を書きながら思うことは、自分の書きたいことと読んでくれる人との興味のバランスであり、少なくともわたしが軽い文章を書きたいか、重い文章を書きたいかではない。
 だから、この文章のバランスをわたしは支配していない。

 書きたい文章が当然にわたしはあって、それを書くこともわたしにはある。
 シャットダウン → 一発ノックアウト
 スキームの文章であり、前述したとおり、このスキームが必要なときは、結構勝負を掛けにいっているときである。利害関係が複雑すぎてがんじがらめのとき、誰もが一発OKを出すクオリティで、文句が出なかった瞬間の隙を狙って、全部のFIXを一気に取ってしまう、豪快な場合である。
 この際、ちょっぴりでも、窓口の想像を下回ると(難癖をつける隙を与えると)、ずるをしようとしたかのように、ねちねちとどうでもよいところまでちくちくやられる。
 この場合は、一時撤退して、純粋に相手の要望を全面的に受け入れ、どんなにひどい物ができあがったとしても、わたしは一切文句を言わないことにしている。
 もう、抵抗しても無駄だからだ。
 そして、この場合、相手が敏腕の営業であった時のみ、かちっと火花が爆発するような助言をくれたりする。
 辛抱強く話を聞き、適切なところでわたしの感触を伝えていると、次第に、そのクリエイトするべきビジョンが見えてくる。
 あれ、この人けっこう勉強してるな、そう思う。
 わたしが喜んで協力するタイプはこのタイプである。
 これまで、4人いた。
 そのうちの2人までが同じ会社だったので、今振り返って、ちょっと驚く。

 思いの外という言葉を使うことに、こうやって話してくると、かなり違和感を感じるのであるが、クリエイティブというのは、共同作業である。
 普通の企業人が提案書を通すのと大して変わりなく、営業と違って制作サイドはツーカーチームプレイなので、フランクで、クリエイティブである。
 対立もあれば、重箱の隅をつつくような話もある。
 ただ、例えばサイト一個みたいな小さな制作物が多いので、スパンは短く、失敗しても次で何とかしましょうでごまかせる。
 多くのクリエイタ志望が誤解しているのがこの部分で、FIXが取れなければ何も進まないし、あなたのことなんて誰も大切にしていないのである。
 うまくFIXを取れる人が、大切にされる。
 ただ、まあ、大切にされる=こき扱われるなので、幸せではない。
 大切にされない=話も振ってもらえないよりはいいかもしれないが。
 Webデザインは、立場の割には極端に安いのが玉に瑕だ。
 まあ、Webやりたい人なんていくらでもいるし。

 森博嗣さんという著名なミステリー作家がブログを書いていて、その中に「薄い本」というエントリーがあった。
 有名なブログなのでちょくちょく拝見し、書店で本をとったが、ちょっとわたしには合わないかなと思ってすぐに平積みに戻した。
 今日、そのエントリーを読んで、
「今の僕が、薄いスマートなものが書きたい「季節」だ、というだけである」
 という言葉に引かれた。
 書きたい文章を書くことは、けっこう難しい。
 薄いのは、なかなか書けない。
 もし何でというのであれば、全5巻ぐらいでめちゃくちゃ面白い漫画って思いつきます? の言葉を投げたい。
 わたしはたくさん知っている。

 ■【HR】 薄い本
 http://blog.mf-davinci.com/mori_log/archives/2007/02/post_981.php





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Last updated  February 22, 2007 12:28:41 AM
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まなかなまなかな@ Re: 三井アウトレットパーク入間へ行ってきた。(01/18) 蘊蓄野郎だな!うざい。
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