全3件 (3件中 1-3件目)
1
![]()
待望のDVDが届きました!非常に美しい装丁でとても嬉しいです。早速本編を見始めたのですが、先を知っているのでオープニングからボロ泣き。そして第一話の扉を開けるシーンでも泣き。やっぱり素晴らしいドラマですよね・・・。敬吾も元気だし、不破じいも岩田さんも生きているのでその後の悲劇を思い出して胸が締め付けられます。そして放映時は全く気にならなかった、草太が湿布を貼られているシーンにもドキドキ(>_
February 21, 2007
コメント(6)
翌日。俺の運転する車の後ろで、不破と類子が絶えず何かを話している。新婚のそれの、浮き立つような会話を俺は右の耳から左の耳へと聞き流した。不破の両手は類子の手をそっと握っている。俺は一度も類子と目を合わさずに山荘へと車を飛ばした。玄関で出迎えた千津さんは驚きのあまり目を丸くした。不破は照れ隠しか、何も言わずに口をへの字に曲げて山荘の中に入った。類子は微笑んで言う。「またお世話になるわ。よろしく」類子と不破が通り過ぎると、千津さんは慌てて俺に尋ねた。「どういう事なのこれ?!また飛田さんを雇うにしても、だんな様自らお迎えに?・・・それとも・・・いや、まさかねぇ」槐「山荘の人達全員を階段の下に集めて下さい。だんな様から、飛田類子さんと結婚したことについてのご報告がありますから」千津さんは目を白黒させて厨房に飛んでいった。山荘の住人達が階段の下に集まる。不破は階段の途中に立ち、誰もが無言で類子を待っていた。憮然とする川嶋さんの横で、千津さんが小声で岩田さんに言う。「もしかしてこれから飛田さんを『奥様』って呼ばなきゃならないの?」岩田さん「しっ。だんな様に聞こえたら大変だぞ」加奈子が面白く無さそうに床を蹴っている。草太は欠伸をしながらただその場に立っていた。レイさんが扇を振りながら歩いて来て、俺に小声で囁いた。「しばらく姿が見えないと思ったら、うまくやったものね。流石に蠍は動きが早いわ。あなた、どこまで知ってたの?」槐「・・・私は何も。彼女を迎えに行って式の手配をしただけです」レイ「一度はプロポーズまでした女をあの醜い恒大さんに取られるってどんな気分?」槐「ああ、そんなこともありましたね。残念ながら私は女の事は忘れるのが早いんです」レイ「そう言えば、加奈子はあなたの子を妊娠しなかったようね」槐「・・・それも忘れました」ふふ、とレイさんが笑う。その時、敬吾が扉を勢いよく開けて山荘に飛び込んで来た。敬吾「・・・おい!親父が結婚したって本当か!!」山荘の住人達、そして階段の上に立つ不破が敬吾を見る。敬吾は怒りに燃えて言う。「・・・どういう事だよ、これは。みんなを集めて何の真似だ!まさか、結婚の報告でもしようって言うんじゃないだろうな」レイさんが笑顔で言う。「そのまさかよ。恒大さん、再婚なさったの。お相手は・・・」その時、階段の上からドレスを着た見違えるほど美しい類子が降りてきた。目も眩むような豪華な宝石、そして高級なベルベッド生地のカクテルドレス。その品格のある美しさに、俺は酩酊を覚えた。敬吾が憎らしそうに言う。「・・・あんた、看護師の」類子が微笑んで言う。「お久しぶりです、敬吾さん」不破「今日から、類子がここの女主人だ。今後、この屋敷内のことは全て、彼女の指示を仰ぐように」類子「今夜は内々で夕食会を開くつもりですの。皆さんも是非、お席についてくださいね。楽しみにしています」敬吾は類子を指差し、声を荒げて言う。「・・・認めないぞ!俺は絶対認めないぞー!!」川嶋が敬吾を止める。「敬吾さん。落ち着いて、落ち着いて」川嶋「しかし社長、役員達に報告しなければなりません。どういう事か、詳しいお話を」不破は言う。「上へ行こう。・・・以上だ、下がっていい」・・・類子の艶やかな笑顔を見て俺は決心した。ゲームのプレイヤーとして、完全なるゾーンへと入ってみせる。類子の声も、笑顔も。そして不破の妻としての時間も。何もかもはゲームの駒であり、それによって俺が心を動かす必要は全く無い。冷静に今置かれている状況を把握して俺は確実に勝利へと向かう。類子と俺は共に同じ道を選んだ、この世にまたとない愛を選んだ。その『愛』という言葉さえ忘れて、俺はゲームを終えてみせる。山荘の住人達がその場を離れると、残った俺に敬吾が言った。「・・・話がある」敬吾は俺の手を引き、地下室へと向かった。俺は素直に敬吾に従う。・・・昔からそうだ。こういう時に少しでも足を止めようとすると、敬吾は掴んだその腕に更に力をこめて絶対に離さない。子供の頃はよく敬吾の爪の跡が手首に残っていた。地下室に入ると、敬吾は俺を壁にと押し付け、首元を掴んで俺を責めた。俺は思わず顔を顰める。敬吾の腕が俺の胸を圧迫し、息が出来ない。「・・・お前!知ってたんだろう、この事。何故黙ってた!親父が少しでも妙な真似をしたら、すぐ知らせろと言ったはずだ!裏切ったのかよ!」敬吾が力任せに俺を振り切ると、俺は咳き込んで胸を押さえた。敬吾「・・・分かってるよ。昔からお前が澪の事を好きだってことは。だから、嫉妬して、親父に寝返った。そうだろう?この卑怯者!お前、どうなるか覚えてろよ!くっそー!!」敬吾は捨て台詞を吐いて部屋を出て行った。・・・俺は思わず笑みを洩らす。そうやって大口が叩けるのも今のうちだ。ゲームのシナリオに、お前の運命はしっかりと刻まれている。今からお前が何をしようが、俺にとっての脅威にはなり得ない。俺は身支度を整えてワイン蔵へと行き、極上のシャンパンを選んだ。ドン・ペリニヨンのヴィンテージを手にして厨房に向かおうとしたその時、玄関の前で軽装で出かけようとする草太と加奈子に出くわした。草太は笑顔で言う。「槐さん。今夜俺非番だから、ドライブして来るね」類子と不破が結婚して用済みになった加奈子は、やけにサバサバとした表情で堂々と草太の隣に立っていた。槐「今夜は奥様の夕食会だろう。お前達も席に着かないと」加奈子は長い髪を指先にクルクルと絡めながら言った。「みんな出ないって言ってるもん。ドンペリは楽しみだけど、類子さんより下座に座るなんて、私イヤ」・・・類子は歓迎されていない。それは分かりきっていたことだ。だから俺は、この手で守る。全力を賭して、類子を守る。俺と、類子の輝かしい未来の為に。ダイニングルーム。千津さんは食卓の用意を整えると、急に額を押さえて俺に言った。「何だか頭が痛いのよ。沢木さん、後はよろしくね」そそくさと出て行ってしまう千津さんに、俺は溜息をつくこともしなかった。千津さんの姿が消えてしばらくすると、廊下の向こうから腕を組んで歩いてくる類子と不破の姿が見えてきた。淡い水色のドレス、淑女風にセットした髪。類子は野心に燃える目を胸の奥底に沈め、資産家の妻としての誇りを凛とかざして優雅に足を進めていた。ダイニングルームに不破が足を踏み入れると、そこに俺以外の誰もいない事に気付き、その顔に怒りを浮かべた。類子は顔色一つ変えずに、不破に言う。「こうなる事は私、分かってましたわ。でも今日は記念すべき日ですから、お怒りはお鎮めになって。せっかく美味しいシャンパンを飲むんだもの、笑顔でいただきましょう」そして類子は笑顔で俺に言った。「沢木さん、シャンパンを注いで下さる?」上座に座った類子にシャンパンを注ぐ。類子「ありがとう」俺は類子に一礼をした。長いテーブルに座っているのは、不破と類子の二人だけ。用意された皿やグラスが、冷たくそこにただ佇んでいた。不破が言う。「乾杯しよう」類子は微笑んでグラスを手にした。誰も来ない夕食会。・・・ゲームの新しいステージが、今始まる。(ひとこと)類子は不破に抱かれながら思います。「どこにいようと、私が不破の妻である限り貴方は私から離れられないわ。貴方が大金を手に入れられるのは、私の夫、不破恒三が死んだとき。それまでは、たとえ澪さんを愛していようと、私からは決して離れられない。・・・愛か金か。貴方の魂の重さを見せてもらうわ、槐」類子のゲームのターゲットが槐に変わった瞬間でした。二人の気持ちは完全にすれ違っています。ちなみに今回は、変な方向に暴走しかけました(^-^;)慌てて自分にストップを掛けたのですが・・・(笑)※本当に更新遅くてすみません_| ̄|○
February 6, 2007
コメント(26)
類子がすがるような目で俺に尋ねる。「・・・でも、貴方はそれでいいの?。このまま私があの男と結婚して、貴方は平気なの?槐。あの日、あなたと一緒に星を見た夜、私にはある予感があった。あれが愛だと思ったのは、私だけ?」俺は少し黙った後、淡々と答えた。「忘れたのか。俺は、愛だの恋だの、そんなもの信じちゃいない」類子「・・・やはり、愛よりお金ってわけ」槐「俺たちは、金を得るために手を組んだ。その共通の目的のために、心を一つにしようと誓ったんだ。それこそが、俺たちなりの愛し方。どこにでもあるような甘ったれた愛など求めちゃいない」類子。俺達は至上の愛を選んだんだ。その辺に転がっている安っぽい愛などどは違う、この上なく崇高で、理想の高い愛し合い方をするんだ。お前ならきっと分かってくれると俺は信じている。不破の部屋。夕陽の差す中、不破が言う。「教会の手配は済んでるんだろうな」槐「はい、明日の午後3時。確かに予約してあります」不破「・・・久しぶりだ、こんなに明日が待ち遠しいのは。まだ見ぬ海の、大海原に出航する日に似ている。しかし俺が目指すのはマグロの群れじゃあない。類稀に見る、勝気な美しい女神の島だ。・・・いいか、このことは誰にも内緒だ。特に、敬吾には気をつけろ。もしバレたらお前もクビが飛ぶ」槐「心得ております」部屋を出ると、そこにはレイさんが立っていた。レイさんは微笑んで言う。「紅茶が届いたの。キャッスルトンの夏摘みダージリン。一緒にいかが?」テラスでレイさんはティーカップを手に言う。「素晴らしいと思わない?このマスカテル。もうその辺のお茶なんて飲めないでしょ」槐「そうですね。子供の頃からレイさんに仕込まれましたから。紅い色をしたただの水のような代物はもう飲めません」レイ「お茶はね、喉を潤すものじゃないの。少し口に含んで喉を過ぎる、その時に香る芳香と味の移り変わりを楽しむものなの。喉を潤したいだけだったら水道の水を飲めばいい。・・・女だってそう。もちろん、男もね。性欲を満たしたいだけだったら適当な相手を見繕えばいいの。でもその味を、その芳醇な香りを楽しみたいのだったらとびきり上等な物を用意しなきゃ」レイさんは誰かを思い出すような口調で話した。そう言えば、最近は加奈子にあまり執心してないようだ。どちらかと言うと、何か物足りないような、空虚な日々を送っているように俺には見えた。レイ「そう言えば槐、あなたここのところ毎日出掛けてるようね。さては女が出来たのかしら?」槐「そうだと言いたいところですが。だんな様の御用で、新しい看護師を探しに行ってるんです」レイ「・・・へぇ。それでいい人は見つかったの?」槐「それがなかなか。何しろ、こんな山の中ですから」レイ「それはそうと、あの類子って看護師、今どこにいるか知らない?」槐「さあ。どうかしましたか」レイ「小谷教授に尋ねても、連絡先も分からないって言うのよ。自分で紹介した看護師なのにおかしいわね」槐「レイさんは何故そう、あの看護師にこだわるんですか」レイ「私は期待してたのよ。あの女が何かやってくれるんじゃないかって」槐「それは残念」レイ「ええ、でもまだあきらめたわけじゃないわ」レイさんが俺の頬を撫でる。・・・この香り。レイさんは最上級の紅茶を飲むときは絶対に香水を付けない。代わりにその肢体から香るのは、部屋で焚いた微かなアロマキャンドルの香、ソルベ・ド・テ。少しばかりの酩酊を覚えながら、俺は部屋へと戻った。翌日。海岸に臨む教会の鐘が鳴る。誰もいない聖堂の十字架の前で、正装をした不破の靴紐を俺は跪いて結び、靴を丁寧に磨いた。不破はネクタイを気にする。「おかしくないか」槐「はい、大丈夫です」不破「・・・しかし、遅いな」槐「ちょっと見て参りましょう」入り口の扉を開けると、ウェディングドレスを着た類子が姿を見せた。・・・その清楚な美しさに、思わず息を飲む。槐「花婿がお待ちです」類子「ありがとう」類子のブーケが風に香る。俺とのゲームを全うする為に、醜悪な怪物にその身を投げ出す類子。しかし、心までは捧げるわけではない。籍を入れて誰もが認める不破の妻になっても、どんなに不破にその身体を貪られても・・・お前の心は俺が支配する。俺がお前を全力で守る。俺の中で、お前は綺麗な身体のままで俺に抱かれる・・・しかし類子、お前は俺の愛を本当に理解しているだろうか?一抹の不安が走り、俺は横を通り過ぎようとした類子の手を思わず掴んだ。類子「・・・何?貴方言ったわ。金という目的の為に心を一つにして力を合わせること、それが私たちなりの愛し方だって。たとえそれが、世間からは吐き捨てられるような苦い味だろうと私は立派に飲み干してみせる。私達の愛を全うするために」類子は決意の目に、俺は少し安堵して掴んだ類子の手を放した。・・・その手を放さなければ良かったと、後々俺は後悔することになる。ウェディング・マーチ。俺は扉のすぐそばに立ち、二人の挙式を見守った。扉の中に花嫁が入る。類子は真っ直ぐに前を見据え、ゆっくりと十字架に向かって歩いた。不破と類子が並ぶと、神父が声を掛けた。「新郎新婦、一歩前へ」秘密の結婚式。二人の誓いは、偽りの誓い。類子の誓いの言葉は、俺への永遠の忠誠の言葉・・・式が終わると、予約していた麻布のフレンチレストランで不破と類子は食事を取った。貸切のレストランで寛ぐ新郎新婦をもてなすのは、ごく少人数のギャルソン達。華やぐ光が溢れる窓の外、俺は車の中で時間を潰した。不破と類子を麻布のマンションに送る。玄関で白紙の婚姻届を不破に手渡すと、不破は満足そうにそれを眺めて言った。「これで晴れて、類子は俺の妻になる。明日、山荘で住人達にこのことを報告するからお前は朝8時に迎えに来てくれ」槐「・・・承知しました」不破に肩を抱かれた類子が、少し寂しそうな表情を見せたような気がした。しかし、いつの間にかその目には陰りが消えていた。どこか空虚に見える瞳。その視線はその日は二度と俺の目には向けられなかった。俺は車を駐車場に置くと、歩いて近くのダーツバーに向かった。マンションを探している間に偶然見つけたこのバーは、山荘の地下室のような、どこか落ち着く空気を醸し出していた。このまま一人でベッドに伏せる事を考えると、何故か心臓が痛んだ。・・・俺は決意を固めたはずだ。類子と二人でゲームを全うすると。類子が不破と結婚するのも、類子が不破に抱かれるのもゲームの一手に過ぎない。だから俺が心を痛めることなんて何もないはずだ。カウンター席に座ると、俺はいきなり強い酒を煽った。食欲がなく、一日何も食べていない胃にアルコールが染みる。今頃類子は不破に抱かれている。不破のあの手で、あの唇で・・・しかし、類子は立派にゲームの駒としての役目を果たしているはず。それは俺を愛してるからだ。自分を抱くのは金で出来た単なる肉塊、そう考えながら時が過ぎるのを類子は耐えているはず。それは一重に、俺とのゲームに勝つ為だ・・・俺は、静かに目を閉じる類子を思い浮かべた。星空の下で、アンタレスの輝きを瞳に湛えた類子の、透き通るように薄い瞼。そっとそれを閉じると長くしなやかな睫が星の光に影を作り、俺の唇に合わせるようにその影を振るわせた・・・「・・・類子。」その名前は、口腔で小さく転がるように響く。その心地よさに俺はその名を何度も反芻した。後悔なんかしていない。俺は計画通りにゲームを進めているだけだ。目の前の若いバーテンが、肘を突いて両手で額を押さえていた俺の顔を覗き込んで言う。「・・・お客さん、明日車で信州に帰るって言ってましたよね。そんなに飲むと運転出来ませんよ?」うるさい。俺に構わないでくれ!そう言おうとして目の前の男を見ると、視界が一瞬霞んで思わず自分の目を疑った。俺を心配そうに見つめる目が、驚くほど類子に似ていた・・・。
February 6, 2007
コメント(0)
全3件 (3件中 1-3件目)
1


