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June 27, 2012
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梅雨の時期に読むのにぴったりの作品かもしれません。

葉室麟さんの直木賞受賞後3作目です。


霖雨/葉室麟 オンライン書店boox

霖雨
タイトルの“霖雨”とは聞き慣れない言葉だと思い調べてみたら、「いつまでも振り続く長雨」であった。何とも陰鬱なイメージが浮かぶが、<底霧><雨、蕭々><銀の雨><小夜時雨><春驟雨><降りしきる><朝霧><恵み雨><雨、上がる>まで章タイトルを順番に並べると、どうやらその雨にも終わりが来そうである。しかし最終章ではまたもや<天が泣く>と雨が降る様を描写したタイトルに戻っている。さて、一体どんな話なのであろうか。

舞台は豊後日田、現在の大分県日田市にあたる。頃は天保、江戸時代の四大飢饉の一つである天保の大飢饉が起こったあの時代だ。咸宜園という私塾を開いた広瀬淡窓とその弟で、淡窓の代わりに家業を継いだ久兵衛が主人公であり、彼等は実在の人物だ。但し、兄・淡窓に至っては、その門下からは、「蛮社の獄」で処罰された蘭学者・高野長英、長州藩出身で幕末に活躍した大村益次郎、長崎で写真業を開業した上野彦馬など、明治初期の有名人が多数出ているにも拘らず、彼本人に関してはそれほど知られていないのが実情である。

学者であるだけに理想主義に走りがちな兄、現実主義に徹しながらも兄の思想を軽んじない弟。タイプの異なる兄弟が、時に厳しいことを言ったりしながらも、強い信頼感で結ばれて困難を乗り越えてゆく。タイトルにもあった“雨”は大きな志を持って世を良くするため優秀な人材を育てようとする淡窓や、彼の代わりに家業を継ぎつつ、藩の実力者達と強力なパイプを持ち灌漑事業をやり遂げている弟久兵衛に降りかかる様々な難題を表している。まず、藩内外で評判の咸宜園を自分の手中に収めようとする郡代<官府の難>、事業の失敗により久兵衛を責める庶民、淡窓と同じ学者出身の大塩平八郎の乱…。

最初は降りかかる雨=難題を「粘り強く耐えて、時を待つしかありませぬ。上がらぬ雨は無いと申しますから」と、ただやり過ごす事ばかり考えていた二人だが、やっと雨が上がった時には「この世に生まれて霖雨が降り続くような苦難にあうのは、ひととして育まれるための雨に恵まれたと思わねばなるまい」と、その困難すらも貴重な経験であったという認識に変わっており、人間的成長を感じさせる。

但し、ここだけ書くと、他を恨みもせず自らを反省して過ちを犯さない兄弟はまるで聖人のようだ。非の打ちどころもない分、さして面白みもないキャラクターになってしまうが、咸宜園にやってきた訳あり女性・千世(架空の存在)を絡めることで、彼等の迷いや悔恨、突っ走ってしまう所など人間的な部分を描くエピソードを加味し、バランスを取っている。そうはいっても、久兵衛と千世との間に恋愛らしき感情が芽生えるのだが、兄弟と“雨”との対決に頁が割かれているため、千世の心情がとぎれとぎれになってしまった点が恋愛面としては物足りなかった。






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最終更新日  February 27, 2017 11:13:52 PM
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