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「やっと、お父さんの会社が見えてきたよ」 道路前方にあるビルから突き出た看板に書かれた社名を確認して、ほっとする克哉。ごたごたはあったものの痴漢は冤罪であったということになって晴れて無罪放免(?)となったのだが、時間に間に合うかどうかギリギリのところだったのだ。まあ本当に冤罪だったのかどうかというのは怪しいところなのだが。(今、4時56分です。なんとかギリギリ間に合いましたね) まったく何もしてなかったにも関わらず、微妙に偉そうなクルル。「痴漢に間違われて時間を取られちゃったけど、5時までに着けて良かったよ。それにしても大事な書類って何だったんだろう?」 手にした封筒を改めて見てみる。今の克哉なら封筒の中身を透視する魔法を使うことくらい簡単に出来るのだが、持ち合わせた良識がそれをすることを拒んでいる。まったくもって良い子である。(それよりも5時まであと3分ちょっとしか無いのよ。走ったほうが良いと思うんだけど) 奈里佳2号がまじめで、至極まっとうな意見を言う。しかしこういう時こそ【遊んでいる】時だったりする。「やだよ。走ったら胸が揺れて痛いんだもん」 すでにちょっとだけ走ってみたから分かるのだが、ブラジャーをしていない胸は揺れると痛い。それを学習するのに時間はかからなかった。(揺れて痛いというほど大きな胸にはなってないんじゃない? どっちかというと膨らみかけってとこかしら) とぼける奈里佳2号。「小さくても揺れるものは揺れるの。それに膨らみかけだからこそ痛いってこともあるでしょ」 克哉は乏しい性知識を総動員する。確か前にクラスの女の子がそう話していたのを聞いたことがあったのだ。「とにかく小さくても胸は胸! アソコが女の子になっているのはまだしも、学生服の上からでも微妙に胸が膨らんでいるのが分かっちゃったら目立っちゃうでしょ」 この場合、アソコが女の子になっているのは許容範囲内なのかというツッコミはしないほうが良いのだろう。(なるほど。まあ、それもそうかもね。……ハイ♪ これでどう?) 奈里佳2号のかけ声が頭の中に響くと同時に、今までささやかながらもしっかりと膨らんでいた乳房がすうっと消えていき、少年特有の胸に戻って行くのが感じられた。「やった。小さな胸でもあると無いとでは大違いだね。無くなってみるとすっきりするよ」 心底から安堵した様子の克哉。はたして問題の核心はそこだったのだろうか?(そうそう、無くなってみるとすっきりするのよね。じゃあ、アソコは女の子のままで良いわね。だってすっきりしていたほうが良いのでしょ?) 言質は取ったとばかりのにやにやとした口調の奈里佳2号。「あッ! もしかしてアソコも男の子に戻してって言えば戻してくれたの!?」 今さらな発言をする克哉。やっぱり鈍すぎるのかもしれない。というか鈍いだろう。(もう遅いも~ん。克哉ちゃんには、やっぱりアソコだけ女の子っていう状態が一番お似合いだと思うのよね) 精神同居状態で自分の身体を持っていない奈里佳2号は、克哉をからかうくらいしか楽しみが無いのだろうか。こういう時の奈里佳2号はやけに明るくハイになっている。「お、克哉! こっちだこっち!」 奈里佳2号に抗議の声を上げようとした瞬間、それよりも先に父、範彦が克哉を呼ぶ声が聞こえてきた。見ると会社のビルの前に出てきて手を振っている。もちろん周囲からの注目を浴びまくりだ。克哉は返事をするのも恥ずかしいので、軽く手を振り返して小走りに駆け出した。「はい。これが要るんだったんでしょ?」 恥ずかしいのが先に立ち、少々つっけんどんな言い方になっているのだが、それがまた可愛く見えるのだから本来は男の子のくせに克哉も罪である。ともかく克哉は手に持っていた茶封筒を父親に差し出すのだった。「おお、これだこれ。いや、ありがとう」 封筒を確認すると克哉の手を取り、大げさに喜ぶ範彦。「ねえ、お父さん。それって中身は何なの? やっぱり会議とかの為の大事な書類なの?」 父親のあまりの喜びように、克哉も封筒の中身が気になってきた。「いや、会議用の資料というわけじゃないんだが、大事なものなんだよ。今日は若いのを連れて飲みに行くことになっているんだが、その若いのっていうのがこの手のものが大好きらしいんだな」 微妙に言葉を濁す範彦。心なしかやや視線が逸れている。「この手のものって?」 なんだかイヤな予感がむくむくと持ち上がってきた克哉は、やや上目づかいに父親の顔を見上げる。もちろんオプションとしてほっぺたをやや膨らますことも忘れてはいない。「だから何だ。ついうっかりと克哉のことを話したら、是非とも見てみたいということになったという訳なんだな。これが」 視線は逸れているというか既に泳いでいる。「僕の何を?」 なんとなく聞かなくても答えは既に分かっているような気はするのだが、やはりここは確認してみないといけない。克哉は、そう問いかけると父親の顔から視線を固定したまま押し黙る。ちょっと可愛くて同時に怖い。 逆にそんな克哉を見ながら範彦は、『息子のくせに弓子の若い頃にそっくりになってきたな』と考えてちょっとにやつくのだった。「もう、教えてくれないなら見ちゃうからね」 どう考えても仕事絡みの資料ではあり得ないと判断した克哉は、たった今範彦に渡したばかりの封筒を奪い取り、その中身を見るのだったが、それはごく普通のフォトアルバムであった。というかフォトアルバム以外の何ものにも見えなかった。「会議で使う書類かと思ったら、やっぱり全然違うんだ。で、何が写っているのかな……」 低く、おどろおどろしい声の克哉。(ほほう。息子のこういう写真を他人に見せるのが趣味なんだ♪ お父さんもなかなかさばけているわね) 奈里佳2号は魔法を使ったのか、まだめくられてもいないアルバムの中の写真を既に見ているらしい。なんだか楽しげな雰囲気とともに、そのイメージが伝わってくる。 しかし克哉にとっては楽しいはずは無い。恥ずかしいやら怒れてくるやらで、見る見る顔が赤くなってくる。既に中身を見なくても中にどんな写真が入っているのかは分かっているので、克哉は写真を見る為というよりも父の悪事(?)を暴く為に、アルバムの表紙をゆっくりとめくりはじめた。「見ないほうが幸せになれる思うけどな」 範彦も既にばれているだろうと思ってはいたが、なかなかに往生際が悪い。「なっ・・・・・・」 克哉が見たもの、それはかわいい女の子の服を着た自分自身の写真だった。範彦から頼まれるままに色々な萌えポーズを取らされた時に撮影された写真の数々だったのだ。しかものりのりでポーズを取っているのならただの痛い写真なのだが、近年では若い女の子の間では絶滅が危惧されているほどの見事な恥じらいの表情を見せているあたり、その手の好事家の間ではとんでもなく高い評価が得られそうな代物である。「お父さん! 家族以外には誰にも見せないって約束だったじゃないっ! どうして!?」 範彦を問いただす克哉。髪の毛が逆立つほど興奮しているのが、どこかかわいい。「確かに約束した。それは間違いない。だがな克哉、俺は『息子の恥ずかしい写真を家族以外の誰にも見せるつもりはない』とは約束したが、『娘の写真』を見せないとは一言も約束してないぞ。確かこの写真を撮ったときの克哉はアソコだけ女の子に部分変身していたはずだろ?」 腕を組み目を瞑り、うんうんとうなずきながら答える範彦。(あははははっ、そう言われてみればこの写真に写っている克哉ちゃんって、アソコだけが女の子になっている時の写真だから、息子じゃなくて娘よね。こりゃ確かに『息子の恥ずかしい写真』じゃないわね♪) ツボに入ったのかそれとも単にふざけているのか、大受けで笑い続けている奈里香2号の声がうるさく克哉の頭の中に響く。「き、詭弁だよ。それはっ!」 そう抗議はするものの、後の言葉が続かない克哉であった。既に頭はフリーズ寸前である。「じゃ、これは返してもらうからな。じゃ、そういうことで」 息子、いや娘に対して容赦のない父であった。範彦は克哉の手からアルバムをひょいっと取りあげたのだった。あ~あ、嫌われても知らないぞ。「あぁ~ん、お父さんのばかーーーっ!!」 哀れ克哉は泣きながらその場を走り去ってしまった。見送る父、範彦が萌え死ぬほどのかわいらしい声を上げて。親馬鹿というか馬鹿親である。「もうこんな生活いやぁーーーっ」 オフィス街に克哉の声がこだまする。(そう? 私はけっこう楽しいと思うけどな。この生活)(ええ、良い退屈しのぎになりました) 一方、克哉の頭の中では『ごちそうさまでした』という雰囲気ののほほんとした奈里香2号とクルルの声が響いていた。 こうして世界を救う使命を持った魔法少女、しかしどう見ても悪の魔法少女にしか見えない正義の魔法少女奈里香の正体である克哉の平凡(?)な一日は過ぎていくのであった。 克哉の明日はどっちだっ!おわり
Apr 20, 2009
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