日本の薬害エイズは、当時の 厚生省と製薬会社の怠慢 によって起こりました。同性愛や、麻薬の廻し打ちによる感染ではなかったのです。 非加熱製剤 の投与を続けた結果、被害が拡大しました。
被害者は血友病患者であり、本来なら HIVとは無関係 な人々なのです。後日、薬害として始めて血友病の専門医や厚生省の責任者、および企業の経営者が刑事責任を問われることになりました。
製薬会社が社会的責任を放棄し、利益の追求に走ったらどうなるか。結果は火を見るよりもあきらかでしょう。「ナイロビの蜂」は、 巨大産業のエゴとそれに便乗する国家権力の悪 を背景にした ラブ・ストーリー です。
制作=2005年 イギリス映画 128分 監督=フェルナンド・メイレレス。 原作=ジョン・ル・カレ「ナイロビの蜂」角川文庫。 出演=レイフ・ファインズ、レイチェル・ワイズ、ユベール・クンデ、ピート・ポスルスウェイト、ダニー・ヒューストンほか
ナイロビ駐在の英国一等書記官ジャスティン( レイフ・ファインズ )は、講演で知り合った活動家のテッサ( レイチェル・ワイズ )と結婚します。テッサは妊娠しますが、死産でした。隣のベッドでは、黒人の少女が女の子を出産します。産後の処置が悪く、母親は死亡。
劣悪な環境下で、死と隣り合わせで暮らす現地の人々。テッサは医師のアーノルド( ユベール・クンデ )と共に、スラム街の子供たちを診察して歩きます。何度か不審な死を目撃するテッサとアーノルド。大手製薬会社スリービーズが怪しいとにらんだテッサは、調査に乗り出しました。
証拠を集めにロキへ向かったテッサとアーノルド。が、2人はついに帰りませんでした。テッサは湖畔で惨殺され、アーノルドは行方不明。上司のサンディ( ダニー・ヒューストン )から訃報を知らされたジャスティンは、妻の無惨な死体と対面します。
原作者がスパイ小説の大家ですから、 「寒い国から帰ってきたスパイ」 (ハヤカワ文庫)の系列かと思いましたが、社会派サスペンスでした。ただし、社会色は意外に薄いです。巨大産業への告発や、原住民の悲惨な生活は、あまり描写されていません。どちらも 背景 に押しやられています。
大企業のエゴはテッサのセリフで語られているだけで、うっかりすると、殺し屋の集団に見えてしまいます。国家権力の暗部も、好色な上司が代表しているだけでした。原住民の生活は、 美しい風景 の中に埋没されています。悲惨な環境が、イメージとして伝わってきません。
反面、声高に叫ぶのではなく、こういう 間接的な表現 が、深く心に訴える場合もあります。静かな感銘が見る人の内面に染み込むかもしれません。そういう意味では、この方法は成功している、とも言えます。夫婦愛の前に立ちはだかる障害、それが社会悪という構図なのです。
ドラマチックな展開はありません。すべてが 予想の範囲内 で進行します。ただ、ラストは意外でした。ジャスティンがとった行動が、 志し半ばで散ったテッサの霊 を慰めることになるのか、議論が分かれるところでしょう。
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