劇場通いの芝居のはなし

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2019.07.20
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カテゴリ: 演出ノート(3)
ブラッドベリ作品の「おばあちゃん」は、確かにおばあちゃんらしい性格付けになっています。3人の子どもたちそれぞれに合わせて、違う顔と対応の仕方を見せます。わざと間違って名前を呼んで、相手の意識を自分の方に引っ張ったり、優しく言い聞かせたりして、相手を納得させてゆきます。穏やかで経験を積んだ先達のようです。子ども達に、人生を教える存在とすら言えそうです。

『広くて素敵な宇宙じゃないか』のおばあちゃんは、おばあちゃん然としていません。言葉より行動で、子どもたちを強引に、自分の方へひっぱってきます。行動は素早く、足は速く、力は強い。スーパーマン型のアンドロイドです。話し聞かせるおばあちゃんでは、若い人向けの舞台には向かないという判断があるでしょう。おばあちゃんの「威力」を、後半のSF活劇で見せるためにも、こういう設定が必要です。
そうなるとこのおばあちゃんは、老人でなくても良さそうです。芝居の設定では「おばあちゃん」ですが、表現する上ではおばさんでも、おねえさんでも良いでしょう。わたしは「シアター生駒」では20代の女性に、「いかるが」では男性におばあちゃんを振りました。そして、老人で演じなくて良い、元気よく動いて欲しいと注文しました。

おばあちゃんが登場するときに、傘と鞄を持っている。明らかに「メリー・ポピンズ」がイメージされています。おばあちゃんの「超能力」は、メリーがもっている「魔法」に近いものです。
後半の活劇部分で、おばあちゃんの「敵」になるのは、やはりアンドロイドのヒジカタです。彼は介護の仕事をしていたときに、自分が担当する人物が死んでしまうのを阻止できず、それがトラウマになってしまった。アンドロイドは人間を救うことができない。アンドロイドは無力だ。だから自分が死んでも、それが人間を助けるためになるなら、かまわない。
こう考えて彼は、末妹・クリコの願いをうけて、東京中の発電所を破壊して、太陽エネルギーで生きているおばあちゃんたちアンドロイドを停止させようとします。
クリコの家庭内の問題を、アンドロイド全員に対する、東京全体に影響する事件にするのは、とてもおかしいのですが、そこは目をつぶります。
ヒジカタの理屈は成り立たないのですが、彼の心情は受け止められる。ですから、彼を「悪人」にせず、悩める若者として演じるべきでしょう。

この芝居のクライマックスは、発電機が爆発し、クリコをかばって倒れたおばあちゃんにクリコが近づく。おばあちゃんは、クリコのために自分は死なない、クリコをひとりぼっちにしないと約束して、いっぱいの星が輝く夜空をともに見上げる場面です。ここまでをとどこおりなく薦められれば、自然に感動が生まれてきます。
ただ、まだ後に場面が続きますので、あまり盛り上げすぎるのもいけません。





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Last updated  2019.07.20 09:00:11
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