経堂界隈

経堂界隈

September 28, 2006
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カテゴリ: 路地裏
今年の2月、朝刊を眺めていたところ(読むというほどの集中力を費やしていない)茨木のり子さんの死亡が伝えられていて、はっとさせられました。
申し訳ないことですが、女性詩人にして童話作家、エッセイスト、脚本家と、その広い活動の幅と深みを、私は、それほど深く存じ上げていたわけではありません。しかし、私の拙い文章は、紛れもなく、茨木さんの「はじめての町」に触発され、始まったものです。
初めて訪れる町、目にする景色、人々の話し声、
新しい街、新しい施設、新しい店をたずねるときの期待はいかばかりだったのでしょう。
「変りばえしない町 それでもわたしは十分ときめく」

今、かつて、それぞれに個性的であったそれぞれの町は、「変わりばえしない」どころか、同じものが同じように並ぶ場所となってしまっています。人々がそれを望んだから?たぶんにその可能性は高い。
考えないこと、考えが足りないこと、まではしょうがない。でも、気がついたあとで反省して直さないことの罪は重い。茨木さんなら「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ(「自分の感受性くらい」から)」と、お叱りになるか?

しかし、一方で何十年かの時間をかけて出来上がったこと、には、いいとか悪いとかは別に、個人ひとりひとりの力では、太刀打ちできない重み(強さ)があることも確かだ。
だが、全国を同じような街並みにしてしまった元凶のチェーン店たちにも栄枯盛衰があり、マック、セブン・イレブンにしても、消費者金融にしても、世間の批判にさらされたり昔日の勢いはないようです。そこにチェーンの栄枯盛衰だけでなく、個性の復権を見るか、淡い期待。



「はじめての町」

           茨木のり子

はじめての町に入ってゆくとき
わたしの心はかすかにときめく
そば屋があって
寿司屋があって
デニムのズボンがぶらさがり
砂ぼこりがあって
自転車がのりすてられてあって
変わりばえしない町
それでもわたしは十分ときめく


見なれぬ川が流れていて
いくつかの伝説が眠っている
わたしはすぐに見つけてしまう
その町のほくろを
その町の秘密を

はじめて町に入ってゆくとき
わたしはポケットに手を入れて
風来坊のように歩く
たとえ用事でやってきてもさ

お天気の日なら
町の空には
きれいないろの淡い風船が漂う
その町の人たちは気づかないけれど
はじめてやってきたわたしにはよく見える
なぜって あれは
その町に生れ その町に育ち けれど
遠くで死ななければならなかった者たちの
魂なのだ
そそくさと流れていったのは
遠くに嫁いだ女のひとりが
ふるさとをなつかしむあまり
遊びにやってきたのだ
魂だけで うかうかと

そうしてわたしは好きになる
日本のささやかな町たちを
水のきれいな町 ちゃちな町
とろろ汁のおいしい町 がんこな町
雪深い町 菜の花にかこまれた町
目をつりあげた町 海のみえる町
男どものいばる町 女たちのはりきる町






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Last updated  September 29, 2006 11:47:41 AM
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