<注意>
このワーキンググループで発表された内容で、上記の内容とすでに重った部分は、多くを省略しました。
NHKの番組でも取り上げた通り、児童ポルノを見ることは、単に小児を性欲の対象としてとらえるように助けるだけでなく、 性犯罪などをひきおこす引き金にもなってしまいます。
いわゆるトリガーポイントになってしまうのです。実際、榎本クリニック(以下機関と呼称)を受診した ペドフィリアを有する患者の95%以上が、児童ポル ノを所持した経験
がありました。
性暴力は、単に性欲だけではなくて,それ以外の様々なきもちよい要素(快楽)が、ぎゅーっと集まった(凝縮した)行為です。※それが専門的に支援する必要性を高めています。
おどろくことに、 性犯罪を犯す人たちは、世間ではまともにみえる人たちがとても多い
とされています。たとえばチカンをした人は、四大卒で妻子がいるサラリーマンが最も多くなります。そして、盗撮も四大卒で妻子がいるサラリーマンが最も多いのです。
世間では「ペドフィリアの人間を治療しろ!
」「刑務所から二度と出すな!
」などと、ペドフィリアを有する人だけが注目されています。しかし、 本当にかれらを治療して、健全な社会復帰をうながす場合は、ソーシャルワークとしての対応も必要不可欠です。
つまり、 社会内での治療だけでなく、彼らが社会内で再び再犯せずに生きていく社会側の基本的な仕組み作りが大切になってくる
わけです。
性犯罪治療の領域で一番遅れているのは, 薬物療法
だと思われます。抗精神薬に よる薬物療法を行い、それによって性欲を減らして,いわゆる認知行動療法プラスアルファの『転ばぬ先の杖』(≒補助)として,治療に取り組んでいる患者も存在します。機関では8割の患者が薬物療法を受けており、例えばADHDが有する衝動性を上手にコントロールできているケースがあります。
精神疾患の治療においては、同じ病気を持つ者同士が心を開いて語り合い、共有し合うという仲間同士の活動(自助グループ)が有効になることが多いです。しかしペドフィリアの話は、本当に話題にしにくい特徴があるため、 この自助グループ活動が機能しません。
エビデンスに基づく治療と、根気強いセラピストによる支援の継続が両立すれば、どんなハイリスクな性犯罪者も必ず変わることができると言えるそうです。
エビデンスに基づいた治療の三原則とは、リスク,ニーズ, 治療反応性の原則となります。
ペドフィリアを有する人たちには、発達障害圏の人が増えています。いわゆる自閉症スペクトラム、ADHDやASDの人たちです。この辺りを背景に持った、軽度発達障害や軽度知的障害の方が増えてきています。さらには重複した複数の障害を有している人も増えています。こういう対象者に特徴てきなのは、従来の認知行動療法はあまり効かない
ということです。
ですから彼らの治療にかかわるためには、 学習スタイルや彼らの思考パターンをしっかり理解した上で対応していかないといけません。
でないと治療を受けることを止めてしまいます。
治療上取り組む順番は重要
です。具体的には、リスクマネジメントが第1段階。その次に認知のゆがみの修正。最後に被害者への責任について取り入れてやっていきます。そうしないと、 患者の人たちが被害者の声に耳を傾けなかったり、逆に反発したり、自責の念にとらわれて自分を責めすぎてしまうなどの状態が引き起こされやすくなります。
いずれも、治療の上ではとてもマイナスとなってしまいます。
「リラプスプリベンションモデル(再発予防モデル)」では、問題行動が再発しやすい状況や引き金を特定して、それに対する対処行動を学習します。
併せて認知のゆがみの修正も図るという方法
です。
リラプスプリベンションモデルは実践的です。やりやすくて、効果がでやすいということです。再発というのは,その瞬間で起こるのではなくて, 日常生活のつながりのプロセス(≒流れ)の中で起きています。 彼らの日常生活の人間関係などがきっかけになりやすい
ので、刺激に対する反応の仕方を学び、実行するわけです。具体的には
①スケジューリング
(時間の流れを意識しながら学習計画を立ててみる)
②モニタリング
(自分の工夫・行動の様子を自分で観察してみる)
③コーピング
(実際の工夫の実行)
④シェアリング
(自分の観察結果を他の人(例:カウンセラー)と共有する)
という方法になります。 新しいことを学び,それを実行して,うまくいったときに自己肯定感が上がる(自信を感じる)。こういう体験は、ペドフィリアを起こしにくい自分へと成長させる上で、とても大事です。
コーピングには耐性があります。
例えば電車の中で最初は保冷剤を握れば、衝動が収まっていた人も、次第に保冷材ではおさまらないようになっていくことはよくあります。ですから、コーピングは1種類じゃだめです。機関では300種類から選ぶようになっています。
グッドライフモデル
理想の自分のイメージをえがき、どのように実現していくのか?それを考える哲学の部分
だと言えるでしょう。
キーパーソン
(NHKの番組では「メンター」と言ってました)には条件が3つあります。
①トリガーにならない人。
同居している家族でも、本人にストレスを与えるなどして、引き金になるような人がいるからです。
②その人の過去の犯罪歴を知っていること。
だからこそ、今感じていることを、ありのままに安心して伝えることができるわけです。
③危ないときにちゃんと相談できる人
です,
ペドフィリアをしないようにする新しい自分への成長を目指すことは、すばらしいことです。しかし、 実行することは決して簡単なことではなさそうです。
実際機関においては、2000名の受診者の内、約半数がすぐに治療をやめてしまうそうです。
(でもこの記事を読んでくださっているあなたなら、きっと続けられると私は信じています
)
確かにペドフィリアを有する人も、不幸な過去があったのかもしれません。今も苦しみを感じているのかもしれません。とはいえ、ペドフィリア自体が子供の心身に大きなダメージを負わしてしまうものであり、社会正義や道徳などから著しく離れたことでもあります。 かれらには虐待経験などの考慮すべき背景があるのは事実かもしれませんが、加害行為の責任とは分けて考えるべきでしょう。重要なのはまず加害行為を止めることなのですから。
大げさに(過剰に)ペドフィリアを有する人を病気の人扱いして、病人として囲い込んでしまうことは、本人が自分の責任として加害行為の責任を負って生きていくことなどを妨げてしまいます。
【まとめ】
ペドフィリアを有する人は、自身が傷つき、自信を失い、苦しんでいる可能性があります。しかも発達障害などのハンデもたくさん有しているかもしれません。
そんな自分を救う為に。苦しさをやわらげるために。自分よりも圧倒的に弱く、傷つけてこないはずの小児を性の対象として支配し(かかわり)、心身に大きなダメージを負わせて、小児を人間としてあつかわない状態になっています。
そうした状態に対して、ペドフィリアを有する人自身が、適切な治療や支援を受けたり、確実な方法(エビデンスベースドの方法 リプラスプリベンションモデルや認知行動療法等)を実行していくことが大切です。
小児を守り、人としてかかわり、きずつけないために。
自分の苦しみをいやし、無くし、幸せになるために。
終章:ペドフェリア傾向の自分を知りやす… 2025.11.01
7-2ペドフェリアの行動を止め、治療する為… 2025.10.31
7-1 ペドフェリアの行動を止め、治療する… 2025.10.31