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cozycoach @ Re:徳川忠長 兄家光の苦悩、将軍家の悲劇(感想)(11/20) いつも興味深い書物のまとめ・ご意見など…
2020.11.14
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 量子コンピュータは、重ね合わせや量子もつれと言った量子力学的な現象を用いて、従来のコンピュータでは現実的な時間や規模で解けなかった問題を解くことが期待されるコンピュータです。

 ”量子コンピュータが変える未来”(2019年7月 オーム社刊 寺部雅能/大関真之著)を読みました。

 量子系においてエネルギーを消費せず計算が行えることを示されたことに端を発し、1980年代に始まった量子コンピュータの現在と未来を俯瞰しています。

 量子ゲートを用いて量子計算を行う原理のものについて研究がさかんですが、他の方式についても研究・開発は行われています。

 従来の一般的なコンピュータの素子は、情報について0か1のビットで扱いますが、量子コンピュータは量子ビットにより、重ね合わせ状態によって情報を扱います。

 量子コンピュータは、量子ビットを複数利用して、古典コンピュータでは実現し得ない規模の並列コンピューティングが実現すると言われます。

 本書は、量子コンピュータとは何か、世の中で何が起ころうとしているのか、ということについて、コンピュータと社会の接点を伝えています。

 寺部雅能さんは1983年生まれ、2005年に名古屋大学工学部電気電子情報工学科を卒業、2007年に同大学院量子工学研究科修士課程を卒業し、2007年に株式会社デンソー入社しました。

 2011年にENSO Automotive Deutshcland GmbHに出向し、現在、株式会社デンソー先端技術研究所担当係長を務めています。

 専門はコンピュータアーキテクチャ、車載通信、センサ信号処理、MOT、標準化です。

 大関真之さんは1982年生まれ、2004年に東京工業大学理学部物理学科を卒業、2006年に同大学院理工学研究科物性物理学専攻修士課程を修了、2008年に同大学院理工学研究科物性物理学専攻博士課程を早期修了しました。

 2008年に東京工業大学産学官連携研究員、2010年に京都大学大学院情報学研究科助教、2011年にローマ大学物理学科プロジェクト研究員となり、現在、東北大学大学院情報科学研究科准教授を務めています。

 専門は、統計力学、量子力学、機械学習で、手島精一記念研究賞博士論文賞受賞、日本物理学会若手奨励賞受賞、文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞、ITエンジニア本大賞技術書部門大賞受賞などを受賞しています。

 近年、量子コンピュータという言葉を新聞やビジネス誌、インターネットなどで聞くことが多くなってきました。

 解説書も増えましたが、その記事や本は専門的すぎたりふわっとした内容だったり、どちらかに偏ったものが多く、量子コンピュータがいったい何で何の役に立つのか、ピンとこないことが多いのではないでしょうか。

 量子コンピュータの歴史は、1980年にポール・ベニオフが量子系においてエネルギーを消費せず計算が行えることを示したことに端を発します。

 1982年、ファインマンも量子計算が古典計算に対し指数関数的に有効ではないかと推測しました。

 これらに続き、1985年、ドイッチュは、量子計算模型と言える量子チューリングマシンを定義し、1989年に量子回路を考案しました。

 1992年に、ドイッチュとジョサは、量子コンピュータが古典コンピュータよりも速く解ける問題でドイッチュ・ジョサのアルゴリズムを考案しました。

 1993年に、ウメーシュ・ヴァジラーニと生徒のイーサン・バーンスタインは、万能量子チューリングマシンと量子フーリエ変換のアルゴリズムを考案しました。

 1994年にピーター・ショアは、実用的なアルゴリズムであるショアのアルゴリズムを考案し、量子コンピュータの研究に火をつけました。

 1995年に、アンドリュー・スティーンやピーター・ショアにより、量子誤り訂正のアルゴリズムが考案されました。

 1996年に、ロブ・グローバーにより、その後、様々なアルゴリズムに応用されるグローバーのアルゴリズムが考案されました。

 同年、セルジュ・アロシュは、実験的観測によって量子デコヒーレンスを証明し、量子デコヒーレンスが量子コンピュータ実現への障害となることが実証されました。

 1997年に、エドワード・ファーリとサム・グットマンにより量子ウォークが考案され、1998年に、量子コンピュータ用のプログラミング言語である、QCL (Quantum Computation Language) の実装が公開されました。

 2000年代にはハードウェア開発に大きな進展があり、イオン・トラップ型量子コンピュータの研究が進展しました。

 2011年に突如として、カナダの企業ディー・ウェイブ・システムズが量子コンピュータの建造に成功したと発表しました。

 このコンピュータは量子ゲートによるコンピュータではなく、量子焼きなまし法による最適化計算に特化した専用計算機です。

 2014年にグーグル社は、UCSBのジョン・マルティニスと連携し量子コンピュータの独自開発を開始すると発表しました。

 2016年にIBMは5量子ビットの量子コンピュータをオンライン公開しました。

 そして、2019年にIBMはCESにおいて世界初の商用量子コンピューターを開発したと発表しました。

 グーグルは世界最高速のスーパーコンピューターが1万年かかる計算問題を、量子コンピューターは3分20秒で解くことに成功して量子超越性を世界で初めて実証したと発表しました。

 実は、量子コンピュータが「何に使えて、どんなことに役立つのか」まだ世界中の誰もわかっていません。

 こんなことに使えるだろう、役に立つだろうと信じて、世界中の研究者たちが研究を進めている段階です。

 どんな技術も、はじめは世の中との溝があるもので、AIともてはやされる機械学習も、画像認識というわかりやすい成果が出てきてはじめて世間からの注目が集まりました。

 そういったわかりやすく実用的な応用と量子コンピュータがめぐり合うのはこれからです。

 本書は、今のうちから量子コンピュータをもっと身近に感じてもらおう、という想いのもと執筆さました。

 なぜ研究段階である今の時点からかと言えば、機械学習が世の中を大きく変えていこうとしているように、量子コンピュータが世の中に与える影響もきっと大きなものになると考えられるからです。

 量子コンピュータの基礎を突き詰めても、前に進まないことばかりです。

 その利用先を考え始めたときに、初めてどこに向かうべきかを見いだすことができました。

 工場内の無人搬送車の最適化問題の定式化、それを量子アニーリングを利用して解くというのは奇跡でした。

 それが当たり前になって、活用しているところが現れ始めていることも、昨日見た景色と今日見た景色が変わるという最高の体験です。

 現在も、量子コンピュータの新しい利用法が生まれ、そしてさらに性能を引き上げる要素技術の発表がなされ、時々刻々と未来へと突き進んでいます。

 今のうちから量子コンピュータに注目しておけば、きっといろいろな業界の未来を先取りすることができるのではないでしょうか。

 1章で量子コンピュータを取り巻く世の中の動向を、2章で量子コンピュータが何かを示しています。

 3章で自動車業界および製造業の未来がどう変わるか、実証実験の事例を踏まえながら示しています。

 そして4章では、社会でさまざまな分野をリードする13の企業の方々に、量子コンピュータで変わる未来の展望を聞いています。

 最後の5章に、こういった新しい分野でどうイノベーションを起こしていくのか、産学共創の視点で展望を描いています。

 人工知能に人間の仕事が奪われるかも、なんてささやかれるこの時代、次の変革は量子コンピュータで起こるのかもしれません。

 量子コンピュータの分野が非常に面白いのは、まず、世界で誰も作り上げたことのないものを作ること自体にも魅力があり、そのできたものを利用する体験にも価値があるという。

Part 1 量子コンピュータとは
Chapter 1 量子コンピュータはもう目の前に!?
Chapter 2 量子コンピュータは難しい?
・特別寄稿コラム D-Wave Systems Bo Ewald氏
Part 2 量子コンピュータで世界が変わる
Chapter 3 量子コンピュータで変わる車と工場の未来
・株式会社デンソー
Chapter 4 量子コンピュータで世界を変える企業が描く未来
・株式会社リクルートコミュニケーションズ
・京セラ株式会社・京セラコミュニケーションシステム株式会社
・株式会社メルカリ
・野村ホールディングス株式会社・野村アセットマネジメント株式会社
・LINE株式会社
・株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
・株式会社みちのりホールディングス
・株式会社ナビタイムジャパン
・株式会社シナプスイノベーション
・株式会社Jij
Chapter 5 量子コンピュータと社会のこれから ―リーンスタートアップと共創が世界を変える―



量子コンピュータと量子通信 3-量子通信・情報処理と誤り訂正ー [ Michael A. Nielsen ]





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Last updated  2020.11.14 08:57:38
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