クリーニング屋では地元屈指の人相の悪さを誇る通称「萬田はん」を付き合わせたので、店員のお姉さんたちは僕らに視線を合わせてくれず、下45度に眼球が固定されてしまっている。
「いらっしゃいませ」と小声でテーブルにやってきた店員さんが、恐る恐る手を伸ばしてお通しを置き、ササッと逃げて行った。そこに置かれた器には、イナゴが盛られていた。

僕の住む地方では、イナゴはおろかゲンゴロウ、カマキリ、カブトムシ、ザザムシも食べるご一行様がいるので、イナゴ程度でうろたえてはいられない。ビールとの相性もいいので、イナゴ並みにピョンピョンとジョッキを追加する。
萬田はんは、「そうは言ってもかっちゃんはん、ぼちぼち栄養のあるもんでも食いまひょ」と急かすので、仕方なく店を代える。
「で、どこへ行くのさ?」
「そうは言ってもかっちゃんはん、寒い時期には焼き鳥でっせ」
萬田はんは、安上がりなコースが好き。ただ、焼き鳥で温まるという彼の神経が、僕の分析の域を超えている。
焼き鳥屋で、萬田はんの話はピョンピョン弾む。先ほどのイナゴが、ぼちぼち効いてきたようである。