monologue

monologue

PR

プロフィール

kocrisp

kocrisp

コメント新着

ミリオン@ Re:モロヘイヤDAYその2(08/23) おはようございます。 卵かけご飯は美味し…
ミリオン@ Re:モロヘイヤDAY(08/22) こんにちは。 チーズケーキは美味しいです…
ミリオン@ Re:うだうだな一日(08/21) おはようございます。 お昼寝は楽しいです…
ミリオン@ Re:最も嫌な起こされ方(08/20) こんにちは。 うどんは美味しいですね。食…
ミリオン@ Re:銀座であれこれ(08/19) こんばんは。 フルーツは美味しいですね。…
2009年04月20日
XML
カテゴリ: 癌患者の娘
夕べも胸痛で眠れなかったし、頭痛が治まらなかった。
薬を2回飲んで、明け方近くにやっと痛みが治まったので、
うとうとしながら起床時間を迎えた。

昨日から父はナースステーションに近い部屋へ移った。
窓際のベッドだけど山はあまり見えなくなってしまった。
病室に着くと、父はいびきをかいて寝ていた。
起こさずに隣で座ってじっと父を見ていた。

周りの患者さんも末期癌の終末期の人たちばかりで
看護婦さんの行き交いがいつも以上だった。

ずっと眠り続けている人、起きているけどぼーっとしてベッドに座っている人、
自力でタンが出せないので、機械を使って無理矢理出して苦しそうな人…
こんな部屋の中で父は最期を迎えるなんて…
私がもっともっと働いて稼いでいたら
個室でのんびり過ごす事が出来たかもしれないのに…
遠くても経済的に気にならなければガン専門のホスピスへ入れてあげて、
設備も何もかもが整った場所で楽しく過ごせたかもしれないのに
私は本当に無力ですねかじりで情けない娘だ。

父の寝顔を見ていると、「こんにちは」と言って
主治医がエコー検査の機材を持って来た。
お腹が膨らみすぎているので、様子を見に来たようだった。

機械を片付けた後、主治医と話をした。
お腹に管を入れて溜まっている水を抜こうかと思うと言われた。
水を抜いても別に水が減るわけではない。
ただでさえ低たんぱくで栄養障害のためのむくみで
今食事量がどんどん減っているという事は、

ただ、父は水が溜まっている事や、むくんでいる事を一度も辛いと言わない。
今日も先生が聞いてもなんともないと言った。
痛みはないけど、時々呼吸が苦しくなるのが辛いと言った。

それならば、今せっかく麻薬のおかげで疼痛が治まっているのに
新たな痛みを与える事が父にとって良い事なのかがわからなかった。
父はもとから延命治療を望んでいない。
水を抜いても例えば数日程度しかもたず、ただ痛いだけなら、
父の気持ちが休まるどころか、これも延命治療に近いものなのではないか、
私は必要性がないと思うと主治医に伝えた。
もう少ししたら母が来るし、父が意識のしっかりしている時だったら
話をしてから決めたいと言った。
最近の記憶障害や眠る時間が増えた事は、麻薬のせいかを確認した。
麻薬も、父の体力の低下もどちらもありえるとのことだった。
この先、もしセデーションに入る際には家族に必ず伝えて欲しい事もお願いした。
まず今日は水を抜くのは待って欲しいと言うと、主治医は納得して帰っていった。

(セデーション…最期を迎える時が近づいた時に、
眠る薬を使って意識を意図的に落とすこと。「鎮静」)

母が来たら、真っ先に今の話をしようと思い、待っていると母が来た。
なぜか一緒に父のお兄さん(長男)夫婦が来た。
最寄り駅でたまたま会ったらしい。
長男夫婦は私が先日知らせた斎場の下見へ行ったそうだ。

叔父さん達に父のそばにいるようお願いをして、
私は母を廊下に呼び出して、今さっき起きた事を話した。
母は私の考えに反論する事無く、それがお父さんの為だろうと
納得しているようだった。

話を終えて病室へ戻り、4人で父の様子を見ていた。
時々起きて水を一口飲んで、またいびきをかいて寝て、
数分するとまた起きて…と同じ動作を何度も繰り返していた。
言葉を発する事無く、大丈夫?と聞くと頷くだけ。

父に「また来るね」と挨拶をした長男夫婦が帰る前に呼び出し、
母にした話と同じ話を叔父さん達にもした。
二人も水を抜かない事について、お父さんの為だという意見は一致した。
これで後は主治医からセデーションを薦められた時こそが最期になると伝え、
場合によってはそんな事もなく突然異変が起きるかもしれない事も話した。

この話をしている間も、私は自分の感情をコントロールする事に精一杯だった。
何度も涙が出そうになってこらえた。
だけど、長男の嫁は容赦なかった。
叔父さんが土曜に来たAさんについて私にこう言った。
「Kocrispちゃん、この前は悪かったね。
あの人の言った事は全部忘れていいから。嫌な思いをしちゃったよね」
私は「なんでしたっけ?私は何とも思ってないですよ」と返した。

この言葉以降、嫁はAさんバッシングが止まらなくなってしまった。
「貴女のお母さんとAさんはいつもグルになって私を苛めるのよ!
私がどれだけ辛い思いをしたかわからないわ」
「お婆ちゃんがガンになった時、何で自宅で介護をしないんだって
さんざんお母さんとAさんに責められたのよ!」
などなど、延々と話し始めた。
この期に及んでそんな話やめてほしい。
母は人を苛めたり、陥れるような事だけは神に誓ってしない人だ。
バカ正直で、世間知らずで、自分の気持ちを抑えられないだけだ。
Aさんの事だって、母は最初から相手にしていないはず。
二人が吊るんで嫁を苛める意味がどこにあるんだか。
それでも「母の事は許してあげてください。いつもいつも本当にごめんなさい」
私は二人に頭を下げた。それしかない。
そうして欲しいんでしょ。だったらそうしてあげる。
こんな事くらい、何の屈辱でもない。
くだらない人に希望通りの行為を返してやるだけ。

叔父さんはずっと昔から、こういう雑音を聞き続けてきたんだろう。
黙って聞いているから、皆が叔父さんへあれこれと言っている。
母も、この嫁も、Aさんも…
叔父さんも辛いだろうけど、父も含めて
こうやってどうでもいい事を言わせ続けて野放しにしてきた結果、
見境なく私にまで余計なおしゃべりをしている事も止める事が出来ないのだろう。
もうちょっとしっかりして欲しいけど、きっと無理なんだろうな…
「もう行こう」と嫁に言って話を切り上げようとするしか出来ないんだ。

病室へ戻ると「遅かったのね、何話してたの?」と母に聞かれた。
「さっき先生と話した事を言ったよ」
「それだけでこんなに時間はかからないでしょ」
「お母さんは別に知らなくていいよ。何でもないから」
「どうせあの人(嫁)の事だから、おかしな事を言ったんでしょ。
さっきお兄さん(叔父さん)に言っておいたわよ。
Aさんが土曜にKocrispをつかまえてあれこれと話した事について
あんたは何も言わないけど、どうせあのAさんの事だから
何を言ったか検討がつくわよ。
お兄さんに私だったらAさんは帰していたわって言ってやったわよ。
Kocrispはお父さんに言われた事をやっているだけなのに
あの子とAさんは面識がないのに、娘を困らせるような事をしてって
しっかり言っておいたからね!」

ああ…また余計な事を…(T_T)
私はそんなの望んでも頼んでもないよ…
私は母に「もういいよ。今日ここへ来たのはこんな話をする為じゃないでしょ」
どうにか母をなだめた。
みんな、何に怒っているんだろう…
父の最期をしっかり見送る事だけ考えて欲しいのに
何をそんなにいがみ合うんだろう。

今度は緩和ケア専門の先生が来た。
呼吸が苦しいのがオキシコンチン錠(麻薬)では治まらないので、
別の麻薬…モルヒネの点滴に切り替えてみようと思うと言われた。
そうなったら、父がどうなるのか聞いた。
痛みはなくなるし、呼吸が楽になる。
そしてほとんどうとうとしたままになる。
最近記憶障害もあるというので、服用するタイプの薬を誤飲したり、
口から何か入れた際に器官へ入ってしまうのが危ないと言われた。
点滴から薬を入れるのが妥当だと言われた。

しばらく母と先生と3人で話し合った。
モルヒネは量の調整が難しいと聞いた事がある。
そのまま眠るだけの人もいれば、幻覚や睡眠障害に悩む人もいるという。
常にぼーっとしているので、もう車椅子でトイレへは行けず
ベッドからは動けないそうだ。
話がほとんど出来なくなり、意識はあっても朦朧としている時間が長くなるそうだ。
食事も点滴になって、必要最低限の栄養を身体へ入れる事になる。
それでも、痛みは消える。呼吸も楽になる。
父は苦しまなくなる。

母は明らかに混乱している様子だった。
私も何が父にとって最善なのかがわからなくなった。
わからなくなったけど、父が訴える辛さを取り除く事を優先させるしか
ないのではないかという結論を出した。

母もお父さんの呼吸が楽になるのなら、
食事が出来なくても話が出来なくても仕方ないと言った。
さっそく今日からモルヒネに切り替えましょうという事で
先生とは話を終えた。

病室に戻ると、すぐに看護婦さん達が「点滴の準備をします」と言い
父の腕へ点滴をする準備を始めた。
私は耳元で父に言った。
「あのね、今までは痛み止めに飲んでいた薬を
今度からは点滴にするんだって。そうすると呼吸が楽になるかもしれないって。
点滴は痛いし、腕の自由がきかなくなっちゃうけど、いいかな?」
父は頷いた。黙って看護婦のされるがままになっていた。
もう耐え切れなくて涙が落ちそうになった。
話題を変えた。
昨日父に頼まれていた皐月賞の馬券の事を話した。
父の馬券ははずれだったけど、私はワイドを当てた。
「私、ワイドで取ったよ」
「おお、そうか…良かったね」
会話は短かったけど、一瞬だけ父はいつもの父に戻った。

私は間違った選択をしていないか、
本当は父は眠りたくなんてないんじゃないか、
お腹の水を抜いて、痛い、辛いといってからやめさせる方がいいのではないか、
自力で呼吸が出来なくなるまで、流動食でも食事を口から取る方が良いんじゃないか…
何が父にとって一番良い選択なのか
今も頭の中でぐるぐる巡り続けている。

以前にも使っていた生理食塩水をまず体内へ流して
その後でモルヒネを追加していた。
これで本当に良かったのか、止めるなら今なのか…
父は黙って天井を見つめていた。

母に「これでいいんだよね?」と聞いた。
母は「お父さんの呼吸が楽になるなら、それしかないじゃない」と言った。
どんな事をしても、私達がどんな選択をしたとしても
後悔は出てしまうかもしれない。
そう思うけれどやっぱり割り切れない。

点滴をされた腕を何度も何度も見つめては
またいびきをかいて寝てしまう父をずっと見ていた。
目を覚ますとまた腕を見つめて天井を見ている。

帰る時に父の手を握って
「明日は仕事だからここへは来れないけど、明後日は来るね。
ゆっくり休んでね」と言った。
父はいつも私が帰る時と同じ、「いつも悪いね」と言った。少し微笑んでいた。
笑顔を見る事が出来て、何だか救われた。
私も笑顔で返して、病室を去った。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2009年04月20日 20時50分15秒
コメント(0) | コメントを書く
[癌患者の娘] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: