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テーマ: お勧めの本(7899)
カテゴリ: 読書日記


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マニキュアで窓ガラスに描いた花吹雪を残し、夜明けに下駄音を響かせアイツは部屋をでていった。
結婚十年目にして夫に家出された年上でしっかり者の妻の戸惑い。
しかしそれを機会に、彼女にははじめて心を許せる女友達が出来たが……。
表題作をはじめ、都会に暮らす男女の人生の機微を様々な風景のなかに描く『紅き唇』『十三年目の子守唄』『ピエロ』『私の叔父さん』の5編。
直木賞受賞。

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この作品は、大学生とかそんなときに読んだ小説ですが、つい最近、ブックオフであったので、懐かしくなって、買いました。

連城三紀彦という作家は、個人的にかなり好きな作家で、流麗な文章というのか、流れるような長い独特の文体が好きなのです。

本書は直木賞受賞作品で、この人は、短編の名手。
人生の断面を鮮やかに切り取ってくれます。
映像的な情景が浮かぶような、そんな文章で綴ってくれます。

本書の5編は、どれも出色の出来です。
「男女の人生の機微」を描きながらも、ある意味ミステリ的な逆転もある。

だから、ミステリにもなっている。
と、いうよりも、人間心理こそ、まさにミステリだと気づかされる作品です。
それは、この作品だけではなく、連城作品全部に通じているといってもいいでしょう。
人間の心理の綾を描かせたら、ほんとにこの人はうまいなあと、今回読み返していて改めて思いました。

せっかくなので、各短編、ダイジェスト的に所感を。

●『恋文』
これは、映画化にもなった短編。
結婚前に一年ほど交際していた女性が、白血病になり、余命あとわずか。
そのことを知った、夫は、妻をおいて、その女性を最後まで看取りたいと、家を出ます。
妻の揺れ動く心情を軸に、ある種の三角関係を描いているわけですが、妻が夫にだす「恋文」とは…。
この短編は、最後の一言に向かって収斂されていくような感があり、見事です。


●『紅き唇』
新婚三ヶ月で、子宮外妊娠で妻を亡くした男のもとへ、その妻の母親が転がり込んできます。
そして居座ってしまう。
血のつながりのない男と死んだ妻の母親の奇妙な生活が始まりますが…。
紅い口紅をめぐっての過去と現在の想い。母親の心情が鮮やかに浮かび上がるラスト。


●『十三年目の子守唄』
自分の母親が、旅行で知り合った男性を連れて帰ってきて、籍まで入れてしまう展開ですが、何とこの男性が、自分より年下という破天荒な設定。
自分より年下の男が、「父親」という存在になるのですが、それに反発しながらも、その奇妙なつきあいを通じて、自分が、全く知らなかった事実に、突き当たることに…。

●『ピエロ』
美容院を経営する妻と、その妻の借金を返済するために会社を辞めてしまう夫。
それは、妻の店を繁盛させようと、妻の夢に託す、「髪結いの亭主」
タイトルのとおり、「ピエロ」を演じる夫の、飄々とした姿が鮮やかで、二転三転する人間心理の逆転劇に、これはミステリだと思わず快哉をあげてしまう名編。

●『私の叔父さん』
これは、個人的にはこの5編のなかで、一番好き。

40代の売れっ子カメラマン。独身。
19年前、男がカメラの助手の頃、4歳違いの兄弟のように仲良くしてた姪が、東京へ一ヶ月遊びに来ることになります。
7年ぶりの再会。18歳になった姪。
その間、男の部屋で、姪とともに暮らすことになるのですが。
少女と女の間を揺れ動く微妙な年頃。
男は特別意識はしないようにしていましたが、やはりどこかで意識はします。
帰り際の姪が口にした衝撃的な言葉に、男は…。
姪は、それから、実家に戻って、結婚して娘を産みます。
しばらくして、再開。
娘を抱いた写真を、男に5枚撮ってもらいます。
それが最後の出会いになります。
2ヵ月後、姪は交通事故であっけなく逝ってしまいます。
19年後、娘が、上京。
その間、男の部屋に泊めてくれというので、ふたりはその間一緒にいますが、娘の口から、「お母さんのこと愛してたでしょう」と言われて…。

これは、読みながら何度か涙があふれてきて泣きそうになりました。
喫茶店だったので、泣くわけにもいかず、我慢しましたが…。
姪の気持ち、男の気持ち、そして娘の気持ち。
それぞれの気持ちが細やかに情感たっぷりに描かれており、これもまた、人間心理の反転が描かれています。
そして写真に秘められた秘密。これは、鳥肌がたつような想いでした。

一番初めに読んだときもこの最後の一編が、一番胸に響いて、今回手に取ったのも、この短編を読みたいがために買ったというのが本当のところです。
数ある、連城作品の短編のなかで、ベスト3には絶対入る大好きな短編。





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Last updated  September 22, 2007 08:31:09 AM
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