図書館に予約を入れて7ヶ月。
やっと手にすることができました!
ゴールデンスランバー
俺はどうなってしまった? 一体何が起こっている? 首相暗殺の濡れ衣を着せられた男は、国家的陰謀から逃げ切れるのか? 二年ぶり千枚の書き下ろし大作。
仙台で金田首相の凱旋パレードが行われている、ちょうどその時、青柳雅春は、旧友の森田森吾に、何年かぶりで呼び出されていた。昔話をしたいわけでもないようで、森田の様子はどこかおかしい。
訝る青柳に、森田は「おまえは、陥れられている。今も、その最中だ」「金田はパレード中に暗殺される」「逃げろ!オズワルドにされるぞ」と、鬼気迫る調子で訴えた。と、遠くで爆音がし、折しも現れた警官は、青柳に向かって拳銃を構えた――。
精緻極まる伏線、忘れがたい会話、構築度の高い物語世界――、伊坂幸太郎のエッセンスを濃密にちりばめた、現時点での集大成。 (「BOOK」データベースより)
昨年の本屋大賞や、「このミス」など、数くの高評価を得ていた一冊。
恐る恐る読みはじめ、後半は怒涛に飲み込まれるような読書になりました。
事件とは、かかわりのないかに見える人々の描写から始まります。
仙台市街のとあるビル。
幼い娘の育児に専念している主婦と、会社員時代の同僚が蕎麦屋で昼食をとりながら、近況や思い出のおしゃべりをします。
その日、仙台市では、若さで人気と期待を集める、就任したての首相がパレードをすることになっていました。パレードは店内のテレビでも中継されています。
日本中の見守る中、事件は起きるのです。
全国中継される中の、首相のパレードカーの爆破は、テロによる劇場型犯罪かに見えるものです。
それに応えるかのような警察の捜査と、発表。
ほどなく犯人は判明、指名手配されます。
犯人と名指しされた男は、しかし、真犯人ではなく、仕立て上げられた――冤罪です。
しかも、冤罪と言うにはあまりにも手が込んだ、多数の状況証拠で固められているのでした。
<逃亡者>を主人公にしたドラマは、冤罪をかけられた主人公が、逃げながら真犯人をつきとめ、事件の真相を暴くのがふつう。
でも、このストーリーでは、そうはなりません。
真犯人も、自分を落とし入れた人物も、その目的もわからない。
わからないまま、逃げなくてはならないのです。
決してタフな男ではなく、むしろ優しすぎるといえる彼が逃げるのを、祈る思いで読み進みました。
平凡な日々から引き剥がされるように渦中の人とされ、あまりに残酷です。
一方、逃亡の折々にちりばめられる、彼自身や友人の学生時代の記憶が、なんとも温か。
記憶の日々と現実の違いが痛々しいのですが、思い出の中で語られた言葉に支えられるように逃亡を重ねてゆきます。
記憶の中のエピソードや思わぬ人とのつながりが、予想外の伏線になり、広がり、流れて、やがて収束されるのがたまらないほどの読み応えでした。
納得の結末、とはいかないものの、その余韻がなお、背筋を寒くさせながら、いつまでもこの「事件」を忘れられないものにしています。
この本を読んだ後は、新聞の報道や、テレビのニュースショーを見ても、これまでとは違う視線になりました。
ほんとうに…忘れられそうにありません。凄い1冊、でした。
♪♪♪ この伊坂作品のBGMとなっているのは、ビートルズのアルバム『アビー・ロード』です。読むと聞きたくなります。そして、聞けばきっと、この「事件」を思い出すでしょう。
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