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ハケむらが、気になるー! と、いうことで、 ネイル工房さんで セルフレベリング力 (ジェルネイルを始めて知った言葉) が高いジェルを購入してみた。 【ゆうメール送料無料】グラデーションカラージェル グラデーションカラージェルと いうくらいだから、 グラデーションもしてみたかった。 やってみた感じがこちら。 白いのは白パケの ブランチドアーモンド。 親指はそれぞれ カラージェル➕ゴールドラメ。 【ゆうメール送料無料】ネイル工房発!ジェルネイルがもっと楽しくなる★ラメライン用カラージェル〜ネイルアートをもっと美しく手軽にできるカラージェルです。 ハケムラのごまかしにw C007:ピンク 薄目のナチュラルピンクを 想像して購入したが、 結構はっきりぱきっとピンク。 発色がいい、とはこういうことか。 B004:パープル ちょっと血迷ったw 寒色系が欲しがったけど、 間をとってパープルも買ってみたが、 もっとパステルなやさしい色を 想像してたのに こちらもぱきっとした色。 そして、口コミでもあるように、 ちょっとどころじゃなく 硬いテクスチャー。 白パケ知ってからだから余計に。 しかも、ハケムラやっぱり気になるー😢 塗りかたが悪いのか? しかも、 全然グラデーションにならなかった! 最初は白パケとだからかなーと思って グラデーションカラージェル同士で やってみても同じ😅 水色も購入したのに、 全然ダメだ~ 慣れか?? ワンカラーベタ塗りじゃなく、 アートならやりやすいかもだけど、 選んだ色でどんなのできるかなー😵
2017.09.20
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初ネイルをどきどきしながら やってみて、 付属の手順書みても わからなかったこと。 ベースジェルを 書いてある時間通り硬化しても ベタベタしてる。 カラージェルもね。 調べたら当たり前らしい。 次のジェルが くっつきやすいようにとのこと。 知らなくてツルツルになったかなーと 触って指紋はつくし、 さらに硬化してもベタベタが続く。 性格的に まあいいや、やっちゃえーって 続けたのでよかったが、 神経質だったら 片手で必死にぐぐってたなー プレミアムベースジェル3g HEMA完全フリー! サンディング不要!プライマー不要!オフもカンタン!ジェルネイルの持ちを良くします/3週間綺麗なジェルネイル ベースジェルは何かと使うので 増量してるタイミングで買えてラッキー😃💕
2017.09.13
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ジェルネイルといったら アートでしょ! ということで、 【ゆうメール送料無料】ネイル工房発!ジェルネイルがもっと楽しくなる★ラメライン用カラージェル〜ネイルアートをもっと美しく手軽にできるカラージェルです。 ゴールドラインが書けるものを購入。 アートがうまくいかなくても ごまかしが効くw 手元にあった G007:パステルオレンジ Pastel Orange G007:パステルオレンジ Pastel Orange V001:ブランチドアーモンド で思ったよりかわいくできたー💗 ハケムラもきにならないし! 意外と何もアートせず ワンカラーのほうが難しいかも😵
2017.09.13
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もうすぐ6ヵ月、というときに ついにハイハイをし始める。 ベビーベッド内は もう手狭になってきた。 和室に移動だ! しかし、畳に爪を立てる~😵 しかも、よたれが畳にたれる~😵 むー、やはり全国各地のママが よくた使うジョイントマットを 敷くべきか… でも30*30で約100枚必要で ザッと1万くらい。 高いなー。 大判のほうが継ぎ目がなくて ごみもたまりにくい との情報を得たけど、 結局値段的には同じ。 悩ましい。 長く使えるからいいとするか… そんな中、これが! YZK-1018【税込】 山善 お遊びマット ASOBO [YZK1018]【返品種別A】【RCP】 大きさは畳1畳分くらい。 厚さ4mmのクッションあり。 さわり心地もまずまず。 かわいい。 勉強にもなる。 キルトマットも考えたけど、 これなら水に強い! よだれ問題解決! ジョイントマットより安い! これでいいんじゃない?! たしかにジョイントマットは きっちり敷き詰められるし、 見映えがいい。 カーペットと思えばいいかな。 45cm角 ジョイントマット カラーマットジャイアント4枚組 ただ、数が多くて面倒w 結局二枚お遊びマットを買って、 並べたら今のちびすけには 十分な運動場! YAMAZEN お遊びマットプレイマットASOBO(あそぼ)100×180cm知育柄 とりあえずのところは これで良しにしよーっと😍
2017.09.11
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もちろん気になるのは 届いたキットでうまくできるか。 あと、どんなカラーなのか。 やっぱり色は画面越しだと わかりづらいのでドキドキ。 キットの中にジェルネイルの 手順を書いた紙も入ってて それを見ながらトライ。 一応心配だったので、 ↓この本も参考にしてた。 【バーゲン本】大人のワントーンジェルネイル Stylish NAIL特別編集【送料無料】【半額】【50%OFF】 初めてなのにピーコックという 模様にも挑戦。 結果はこんな感じ。 とりあえず色の感想。 G007:パステルオレンジ Pastel Orange 肌に馴染む色。 優しい色で、大人かわいい感じ I003:スモーキーベージュ Smoky Beige 殆ど白みたいな色だけど、 すこーしパールが入ってて 上品な落ち着いた色。 ブランチドアーモンド と比べるとベージュ感がわかる。 V001:ブランチドアーモンド Blanched Almond ようはオフホワイト。 白は白でもパキッとした 真っ白じゃなくて、 優しい色って感じでよかった。 パステルオレンジベースの ブランチドアーモンドラインの ピーコックも ブランチドアーモンドベースの パステルオレンジラインの ピーコックも 色の相性もよく、いい感じ ハケむらはあったけど 初めてにしては上出来でしょう! ちなみに、カラージェルは すべて白パケと言われる ベタ塗り向きのものです。 黒パケはアート向きらしいです。 【ゆうメール便送料無料】ジェルネイル♪全230色 ネイル工房発!伝説カラージェル そのうちちゃんと マイカラーチャート作るぞー
2017.08.31
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右も左もわからないけど、 0からジェルネイル始めました。 ごちゃごちゃ凝ったネイルが したいわけじゃない。 シンプルにワンカラーでいい。 そんな私にぴったりの スターターキットを出してたのが 「ネイル工房」さん。 ★送料無料★ジェルネイルスターターキット★選べるカラージェル3個/ハイブリット18WLEDライトも付いてくる!(【18wLEDスターターキット】:【ホワイト】 ::G007 ;:I003 ~:V001) しかも、キャンペーンで ベースジェルが増量でした あと、必要なのは キューティクルオイル 【5個以上でメール便送料無料】ミネラル成分豊富!ジェルネイルの後のケアで長持ち実感♪さかむけ対策にも…アロマの効果で癒される / ネイル工房キューティクルオイルペン5ml ジェルオフ用のアセトン。 100%を勧められたので とりあえず少量で買えるもの。 選べる国産ジェルリムーバー(アセトン100%)ジェルクリーナー(クレンザー)60ml どちらかご選択ください 化粧品登録/クリア ジェル ジェルネイル ネイル 消耗品 アセトン ネイルオフ 便利グッズ 送料無料 gln07 アルミホイルは お弁当用のカップがある。 ワイプはキッチンペーパーで よいらしい。 とりあえずこれだけ。 カラージェルは こんなにたくさんのカラーから 選べる! と思いきや、 ピンク系は人気で欠品してるのか 選べず。 【ゆうメール便送料無料】ジェルネイル♪全230色 ネイル工房発!伝説カラージェル10個以上で111円(税別) 悩んで悩んで、 G007:パステルオレンジ Pastel Orange I003:スモーキーベージュ Smoky Beige V001:ブランチドアーモンド の3色をチョイス。 さてどうなるかな。
2017.08.29
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続きはベリーズカフェさんの場所を借りて続けますありがとうございました。http://www.berrys-cafe.jp/pc/index.htm?c=n
2014.12.30
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※翌日は朝から携帯が鳴った。「祥ちゃん、面白いことがわかったわよぉ。出来るだけ早く会いましょ。今日!ダメなら夜電話!」一番最初は晴香さん。かなりのハイテンションで一方的に話をして、あとはメールで、とこちらの返事も待たずに切れた。忙しい朝なのにその時間を割いてでもどうしても話したかったらしい。午前の授業が終わって、みんなで学食に行こうとしたら携帯に呼び出される。今度は川原から。「晴香さんをけしかけたの祥子先輩っすよね。勘弁してくださいよ」先輩呼びに戻っている上、川原の弱りきった声にすぐ謝罪を述べて、晴香さんの横暴を聞いてくださいと泣きつかれた。それに関しては、全面的に私が悪い。ごめん。奢るから許して。「先輩、力を貸してください」3番目は由香里。川原の電話が終わって先に向かわせた友人たちと合流しようとしたところで鳴った。一瞬だけ、おなかの空き具合と相談したが、早く出てすぐに用事を終わらせてから落ち着いて食べられることを選択して通話する。昨日寝る前に送ったメールは『元気?最近どうよ』とひろーく、やんわり聞いたつもりだったが、いきなりのSOSとは緊急性があると判断して、そのままお昼なしを覚悟する。今聞くよ、と返事した電話口で、由香里はすぐに涙声になった。「ありがとうございます」「由香ぴょんがそんなになるって、何事?事件?」可愛らしい容姿の反面、決まったことは遣り通す強さがあった。その彼女が困っている事態なのだ。途切れながら事情を話す由香里の話を繋ぎ合わせるとこうだった。にほんブログ村
2014.12.20
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川原の身に置き換えたら、元カノから連絡でもあったのだろうか。彼女って、まさか、由香里と別れちゃったとか。それとも、由香里の前の彼女?閉店時間までいたのだから、もうすぐ日付が変わってしまう。これ以上考えていても、無駄に時間が過ぎるだけだと自分の頭で考えるのは、諦めて、晴香さんにメールを打つ。『起きてますか?』ダメなら今日は諦める。掛かってきたらラッキー。待っている間に全速力で自転車を漕いで家を目指す。トラブルなく家に着いて自転車を停めている間に着信音が響く。起きている受験生の弟と母へ、ただいまもそこそこに部屋に駆け込んで通話を押す。「祥子です!」切れる前に声を滑り込ませ、ぜいぜい息を整えながら部屋のドアを閉める。「わ、音量!ってか声量。何興奮してるのよぉ」「興奮じゃなくて、自転車で帰ってきたとこなんです」荷物を適当に下ろして、身体も硬い床に倒す。頭とか、身体にお店の匂いが染み付いている気がして、ベッドには直行できない。「急にごめんなさい。ちょっと相談で」先ほどの川原と同じ台詞を伝える。「晴香さん、元彼から連絡来ます?」「ええ、突然何よぉ。私より祥ちゃんは今広瀬さんでしょう?」「あーそうなんですけど、今みたいなこと、川原に聞かれて」「びっくりしたぁ。そうか、後輩君ね。この間大変そうだったからなぁ」「この間?」「誠とデートしてたんだけど、しょぼくれている後輩君発見してね、声掛けたの。そのあと彼女っぽい子と駆けっこして、消えた」ざっくりしすぎる説明にハテナが浮かぶ。「まあ、それと関係あるかはわかんないけど、川原が結構真面目な顔して悩んでたんですよ。でも、口を割らなかったんで、もし晴香さんのほうに流れたら聞いてあげてください」「祥ちゃんに言えないことでしょう?私に流れると思えないけど」当然の指摘に、言うべきか一瞬迷ってから晴香の背中を押す一言を伝える。「・・・晴香さんに言ったら、食指が動くかと」「ものすごく動くわよ!待ってて!」「あ、今もう深夜」最後の声はどこまで届いただろうか。通話終了を知らせる電子音を止める。川原には余計なお世話だとも思う。ただ、一人で解決できないことは、みんなで解決するものだから。私に相談できなくても、晴香さんに相談できるかもしれないし。あんなに深刻な顔をした川原は見たことがなかった。いつまでも床に転がっているわけにも行かず、お風呂に入る準備をする。晴香さんに相談役をお願いしたはいいが、変な迷惑を川原にかける心配が持ち上がる。時計の長針は12を指す短針を越えた。お湯が張られたままの湯船と追い炊き機能に感謝しながら、お風呂を堪能する。そもそも、私が明日になってから晴香さんにお願いしたらよかった、と自分の失敗に気づいてお風呂に沈む。鼻までお湯に浸かったところで、由香里を思い出した。彼女なら何か知っているかもしれない。ただ、もしかしたら別れている張本人かもしれないので直接は川原のことは聞けないが。まだ、この間デートのなんやらって話をしてた気がするんだけれど、一体何が起こったのか。惚気話を聞かされるか、別れ話を聞かされるか。どっちにしても、由香里のほうが捕まってくれそうだ。話も聞きやすい。お風呂を出たらメールを送って、あとは何も考えず就寝した。※にほんブログ村
2014.12.19
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店のラストまでのシフトで、閉店をしたスタッフ全員で裏口から出て、それぞれにお疲れ、と声を掛け合って解散になった後だった。私と川原が、それぞれ自転車と原付を回収して愛車に跨る直前。二人になったところで川原から切り出された。「祥子さん、ちょっとだけ聞いていいっすか」「うん、いいよ。どうしたの、改まって」自転車のサドルにお尻を乗せて、川原に顔だけ向ける。川原から私に聞きたいことなんて、珍しくてどんな爆笑相談かと笑う構えをしていたら、思ったより深刻そうな顔で、安請け合いしたかと少し後悔する。「刈谷先輩と、連絡取ったりしてます?」川原は顎下に来るヘルメットのベルトを弄りながら俯いたまま聞いてくる。想像したような重い相談でもなく、ほっとする。逆にひと目をはばかるほどの質問とも思えず首をかしげる。バイト中は特に変わった様子もなかったし、キッチンの仕事も戦力になって注文もこなせていたし、何回か接客もしていた。体調も悪くなさそうだったけれど、笑顔も元気もない川原の様子に心配が顔を覗かせる。「ほとんどないよ。そもそも学年違うし、学校も違うようになっちゃったし、別れてからは全然」「そうっすよね。すんません、やなこと聞いて」「ううん。もう大丈夫。平気」元気は少し欠けているけれど笑顔を上げてくる川原のいじらしさに、いつものように頭を撫でるべく手を上げた。しかし、手の届く距離まで下がるはずの頭が下りてこない。行き場を失った手は川原の顔の辺りで止まる。「祥子さんだけですよ、俺の頭いつまでも撫でるの」「届かないんだけど」「俺、でかいっすから」今日は下ろす気がなさそうな川原の頭を撫でるのは諦めて、ハンドルを握る。こちらとしては、ちょっと物足りない感じ。ハイタッチと頭を撫でるのは1セットだったから。「ごめん、嫌だった?」「んー、ちょっと恥ずかしくなって。もう大学生なんすよ」照れたように川原はヘルメットに覆われた頭を自分で撫でる。残念ではあるが、大人への一歩として喜んであげなければならないところか。自分も、大人の女を目指すために頑張るのと同じと考えて。「で、聞いて何かわかった?」「うーん」はっきりしない返答と苦笑いが川原から戻ってくる。元彼と連絡を取っているかの有無を確認するということは、「私に告白?!私広瀬さんが好きだから、川原の気持ちには応えられないよ」元彼とよりを戻すかどうかを確認したかったのでは、と自意識過剰が働いた。まあ、冗談だけれど。「なんで俺いきなり振られなきゃなんないんすか。ただでさえ傷心なのに」原付ごとよろりと倒れそうに見せる川原の顔が歪む。あまり嬉しくない話題に持っていってしまったようだった。これ以上空気が重くならないように、川原の傷を深めない話題を探す。「何、刈谷先輩の方!?やだ、私ライバルだったの?!」ふざけて笑いを誘いたかった。いつも川原となら馬鹿馬鹿しい話で笑い転げられる。そういう雰囲気に持ち込んで、どこが地雷かわからない場から逃げる。ウケ具合は小さかったが、狙ったとおり川原は話を終わらせる姿勢で原付のエンジンをかける。「引き止めてすみません。ありがとうございました。お疲れっす」それでいいはずなのに、無理に笑う川原の顔が沈んでいくの見ていると引き止めずにはいられなかった。発車する前の腕を掴む。「川原、待って。大丈夫?何があった?」「大丈夫っすよ。先輩こそどうしたんですか。俺なんかに構ってないで、広瀬さん攻略するんでしょ?」カラッと明るい笑顔と声を作ってこちらに向ける川原に突き放される。追求できない空気に、ゆっくり手を離す。「気をつけて帰ってくださいね、祥子さん」こちらを気遣ってくれるのは、川原の優しいところ。引き止める手立てもなく、手を振る。川原の両足は地面を離れて、原付は車道に出ていく。よく懐いてくれた可愛い後輩だったが、男と女で、先輩と後輩で、言えないこともたくさんあるだろう。元彼からの連絡について聞きたかったということはどういうことなんだろう?改めて考えてみる。にほんブログ村
2014.12.17
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「彼氏です」胸を張って言う男に、すぐさま言い返すことができなかった。真偽を問うべく由香里に目を向けると目をつぶって顔を逸らしてしまう。彼氏と名乗る男に目を戻すと、そいつは由香里に駆け寄る。「そういうこと・・・」呟いて二人から一歩離れて、見えない大きな壁に阻まれた気分になる。『宗治君』なる男は由香里の肩を抱いて引き寄せると、由香里は抵抗せずその腕に収まる。俺と突然別れようという話が出たのは、新しい彼氏が出来たから。「なんだよ。由香里、全然寂しくなかったんだな」怒鳴りつけたい気持ちをぐっと抑えて静かに伝える。由香里は肩を震わせて顔を上げず、男だけが困惑した顔でこちらを仰ぎ見る。でかい男が威嚇をしていて、明らかに華奢な筋肉のない男に守られている、弱い女。そんな構造になっている自分に気分が悪くなる。「いい加減にしろよ」背中が壁に当たるまで後ろに下がって、小さくなっている二人を眺める。男だけが状況がつかめない顔をしている。「いつから付き合ってるんすか」ストーカーではないことはわかったので、あんまり乱暴な口調は失礼にあたる。俺も脚を畳んで視線の高さを近づける。黒髪で小奇麗にしている真面目そうな印象の男はおずおずと応える。「1ヶ月くらい前から」1ヶ月前といったら大学に入ってすぐの頃。大体、完全に音沙汰がなかったことなんてない。その後にデートの誘いをしていた。「告白してすぐ付き合ったんすか」「すぐ返事くれたから」生真面目に答える男にも苛立ちを感じたが、由香里への怒りが数倍大きく沸いてくる。知らなかったということは、あえて教える気もなかったのか。由香里の確信犯。しかも、すぐに返事をしたということは、二股であることか、浮気であるとかを考えていなかったということ。もしくは、その時点で別れていると思っていたか。きっと『宗治君』は彼氏持ちってことを知らなかったのだろう。「今日は何で追っかけてきたんっすか」これがなければ、うやむやなまま、由香里の思惑通りだったのに。納得はいかないし、腑に落ちる別れではないけれど、それしか道がないと思って進むだけだった。「由香里ちゃんが、嫌がらせのメール送られてて、その人と話をつけてくるって言うから。一人じゃ危ないって引き止めてたんです」「何の冗談だよ」「違うの!休みに健太と二人きりで会う建前で」あまりの大ぼらに呆れかえる。違うといくら由香里が言ったところで、何も変わらない。大事なのは、今の彼氏だと公言したようなもの。好きだと思っていた気持ちが、大きく揺らぐ。元々色落ちが激しかったところだったが、それでも、必死に上塗りして取り繕っていたつもりだった。それをこんな乱暴な壊し方をしなくてもいいのに。「だから、俺はストーカー男になったわけか。ホントありえねえ」由香里の勝手に振り回された上、犯罪者にされるなんて。「新しい彼氏さん、ご心配なく、今、ちゃんとお別れしましたんで、さようなら」手痛い裏切りをする女と一緒にいたくなくて立ち上がる。なのに、なぜか由香里が噛み付いてくる。「健太だって、健太だって私のこと好きだったわけ?」早くその場を去りたかったのに、由香里の涙声に止められる。「祥子先輩のこと好きだって知ってたけど、私なりに振り向かせたくて必死だったのに、健太の気持ちが全然わかんなかった」踏み出しかけた足を戻して、新しい彼氏に抱かれたままの由香里を振り返る。可愛い顔をしてキツイことを言う芯の強いところとか、悩んでたら何も言わずにそっと隣にいてくれる優しさとか、好きだったんだけど。合宿で隠れてキスしたこととか、思い出して楽しかったと思っていたのは俺だけだったのかと思って、泣きたくなる。「祥子先輩関係ねえじゃん。付き合ってたのは俺と由香里だろ。そいつに言ってた嘘が減るように、一発殴ったら正気になるか?」今日のことをなかったことにできない。最後が泣きはらした真っ赤な目の由香里というのは至極残念。しかも、知らない男の腕に抱かれて。「新しい男の前で、俺の話なんてそいつが嫌な思いするだろ。やめろよ」いい思い出を、いい思い出のままに出来なかったことも含めて記憶の底に閉じ込めてやるしかない。伝わらなかったことを最後に伝えておく。「俺は、由香里のこと好きだったよ。由香里はどうだったかわかんないけど」背を向けるとわっと泣きじゃくる由香里の声ガ届く。もう振り返らなかった。俺の居場所は、由香里の傍にない。どうしようもなく突きつけられた現実。涙を拭くのも、震える肩を抱くのも、背中をさするのも、新しい男の仕事だ。今日のために必死になってこなした昨日の課題をやらなければよかったと後悔する。この後、何も予定がなくなってしまったのだ。人通りの多い休みなのに、一人だった。ちゃんと好きだった。顔を見たら薄れ掛けていた気持ちは確かに好きだった。どうしようもなく、寂しくて悔しい気持ちのどこが好きじゃなかったと言えるのだろう。憂鬱って初めて思った。何度か人にぶつかりそうになりながらも、歩きながら適当にバスケ仲間に一斉送信する。一刻も早くこの場から離れたくて、一刻も早く誰かに会いたかった。『バスケやりてえ』1基だけバスケットゴールが設置してある公園を指定して。急だから誰も来ないかもしれない。休日の昼間だと、ちびっ子がいるかもしれない。そいつらにバスケの楽しさを教えるのもいい。体を動かして、何も考えなくていいようにしたい。携帯をポケットに突っ込んで、足早に駅へ向かった。にほんブログ村
2014.12.15
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「今日は、俺と会って『別れましょう』で解散予定?」俺が何か言うことで状況が改善される糸口も見つからず、由香里から目を逸らす。由香里も肝心なことはだんまりを通している。「うん」何故泣くかわからないが、カバンからハンカチを取り出して、由香里は肯定する。長居しても好転しそうにない空気といい、似合わないデパートの中のイートインスペースの居心地悪さも手伝い、伝票を手に取る。「出るか」無言のまま、由香里がついてくる。ぐずぐずしている由香里の分もまとめて支払いをしていると背後で悲鳴が上がった。振り返ると由香里の手を引いて、追いかけてきていた男が走り出すところだった。「こんニャロ!」急いで財布を適当にポケットに突っ込みスタートダッシュをかける。バスケは短距離走の連続なんだ、簡単に負けるか!意気込んだ割りに、たいした速度でもなかった上、エスカレーターで詰まったところをすぐに追いつき男の手から由香里を引き剥がす。「逃げんなよ」由香里と男の間に入って、由香里は背後に回して隠す。男の腕とベルトを掴んで逃げないように力を入れる。エスカレーターから降りると、人の少ない場所へ移動する。休みのデパートで無人の場所などないが、人通りの少ない通路を選ぶ。逃げるならすぐに捕まえる構えで、一度男から手を離す。「てめえ、誰だよ。なんのつもりだ」「そ、そっちこそ、どういうつもりですか!」ことによっては警察に突き出すつもりで、手は離さずにらみつける。「あの、健太やめて」由香里が間に入ってくる。捕まえた男をかばうというのか。「何でだよ、こいつから逃げてたんじゃないのか?」「そうなんだけど、理由があって!」「そ、そうですよ!いきなり掴みかかるなんて、聞いていた通りやっぱり野蛮ですね」「はぁ?」由香里に害をなすと思っていた男から理不尽なレッテルを貼られて、不満たっぷり塗りつけた顔を向ける。「宗治君もやめて。ちゃんと話できたから」「それはよかったです。では、貴方。金輪際、彼女に近づかないでくださいね」「なんだよその言い方」腹立たしい言い草に詰め寄ろうとする俺を、また由香里が止める。「由香里もなんなんだよ。こいつのことやけにかばいやがって」「由香里ちゃんから離れてください。女性に暴力振るうような男性に近づく必要ありませんよ」知った顔をして偉そうにしている男が見に覚えのないことばかり言い募る。殴りたくなるこぶしを左手で押さえて、10センチは低いだろう男を見下ろす。「暴力ってナンだよ。てめえ、知った口利きやがって、何様だよ」「彼氏です」にほんブログ村
2014.12.13
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話を続ける由香里に声を掛けると、慌てて頷きコーヒーカップを両手で包んで見つめてくる。なんでこういう時に、くそ可愛いと思ってしまうんだろう。目を閉じて机に肘を突く。これで目を開いたら、『嘘だよ』なんて言ってくれないだろうか。エイプリルフールは1ヶ月も前だ。大体、久しぶりのデートでいきなりダッシュして、その後突然振られるって、悲惨すぎないか。目蓋を開けても、変わらず困り顔の由香里がこちらを見ている。「嘘だろ?」こぼした言葉に、由香里はじわりと涙を浮かべる。勘弁してくれ。なんで由香里が泣くんだ。由香里の言葉を頭の中で繰り返して、今までの自分の行動を振り返る。「寂しかった?」連絡が途切れがちだったことがいけなかったのか。高校では嫌でも毎日会っていて、自由登校になって会う時間が減り、卒業したらさらにっくり減ったのは確か。由香里は大きく一つ頷き、動きに合わせて涙がこぼれる。取り合えずポケットティッシュを差し出して涙を拭いてもらう。俺が何か悪いことをしたような気分で、背もたれに由香里の振りかけた重りごと背中を預ける。初めての彼女で舞い上がっていた。高校の時と同じように付き合えると思っていたが、それは俺だけだったということ。「それ以外は?」寂しい思いをさせたのは確かだが、それ以外はどうだろうか。2,3ヶ月くらいの間。その間全く連絡しなかったわけではない。受験勉強で手一杯になって、卒業したら野郎どもと最後の思い出、と遊びに繰り出し、バイトを始め、大学に入ったら遊べると思ったら意外と多い課題に手を焼いている間に由香里が伝えられずに思っていたこと。それを今聞いておかなければ、突然別れるに至った経緯に納得がいかない。「これから、もっと連絡するように気をつけるよ」女々しく別れないで欲しいと思うのは、勝手すぎるだろうか。喧嘩をしたわけでもなく、一方的に言い渡されて了承する戸惑うくらい、彼氏をやってきたつもりだった。ちょっと先輩に気持ちがぐらつくことはあったけれど。「もう、そういう時期じゃなくて。正直、もう自然消滅かな、って思ってたのに、連絡が来るから。はっきりしておこうと思ったの」「時期って何。俺、全然そう思ってなかったんだけど」勝手に思って、納得しろっていうのはかなり強引なのではないか。赤みの残る目元にいたたまれなさを感じる。反省して、改善したら元に戻れる問題ではないとは。そこに至るまでに、何かできなかったのだろうかと矛先を定められない苛立ちが湧き上がる。苛立ちを隠さぬまま由香里に目を向けると、怯えたようにまた涙を溜める。にほんブログ村
2014.12.11
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「話せる?」「うん」ようやく呼吸は落ち着ちついたが、緊張した面持ちの由香里にストーカーやら不審者のトラブルを予想する。俺で力になれることがあるだろうか。警察に一緒に相談に行くとかも必要かもしれない。証拠がないと動いてくれないという話も聞くから、警察で対応してもらえるまでは、しばらく付き添ったりして。勝手にあれこれ想像している俺の前で、由香里はもじもじとし始める。「あの、ね。実は・・・」言い辛そうに由香里は口を重く開く。こんなときに頼りがいがあるのをアピールしなくては、と由香里に胸を張って言う。「大丈夫。俺、力になるから。何があったの?」「ちゃんと話そうと思って。なかなか言えなくて、ごめん」肩をすぼめて小さな体をさらに小さくする由香里に庇護欲を掻き立てられる。もしかしてなかなか連絡が取れなかったのは、悩んでいたせいだったのかもしれないのに、たいして追求しなかった俺もいけなかった。「こっちこそごめん、なんか言わせ辛かったんだね。気にせず相談してくれたらいいのに」由香里の困り顔が持ち上がり、小さく口を開きかけるが、また唇を閉じる。コーヒーが運ばれて、また場が中断する。体の大きさだけで威圧感を与えてしまうが、由香里はそんなことをものともせず積極的に近寄ってきてくれた女子だった。バスケ部のマネージャーをして耐性ができたのだと思うが、最終学年3年最初の試合で涙を飲んでいた後に、告白された時には驚いた。振り返れば、女の子らしい視点で、細かいことをに気づいて、癒し系の女マネだった。怒ると怖いが。彼女のおかげで受験と部活のキツイ日々も癒されたし、受験一色に塗られるはずの3年後半の高校生活に、華やかな色が添えられて充実した一年だった。その由香里が、これほど困っているのだから力にならないはずがない。由香里も覚悟を決めたのか、大きく深呼吸をして由香里が背筋を伸ばす。こっちもつられて背筋を伸ばす。「健太、ホントごめん。別れて欲しい、です」にほんブログ村
2014.12.10
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「健太!健太ー!」立ち上がって声の主を探す。長い髪を揺らして必死な様子で走っている由香里を見つけて少しにやけた。遅れたからってそんなに必死にならなくてもいいのに。「由香里、こっち!」手を伸ばせば目印になる長身はこういったときに便利だ。由香里も気づいたようで、真っ直ぐにこちらに向かってくる。「走るよ、ついて来て!」俺の前で止まることなく、手首を掴まれて、引っ張られるまま走り始めた。「何、どうしたの?」「後で!」すでに息の上がっている由香里は短く言い放って走るのに専念する。何故だかわからない突然のマラソンに仕方なくついていく。途中でさっき自分の元を離れたばかりの晴香さんたちに追いつき、「ども」とすれ違い様に声をかけた。駆け足の俺たちに目を丸くしていたが、その姿もすぐに遠くなる。なかなか足を止めない由香里は理由を言わないので、後ろにちらりと視線を向ける。日常生活でいきなり鬼ごっこもないよな、と思ったが、同じように走ってくる男に気づく。「ね、由香里ちゃん、なんか追いかけられることした?」「した!だから一緒に撒いて!」足を緩めることも振り向くこともなく、由香里は叫ぶ。追いかけてくる男との距離はまだある。少し迷って、体重を掛けて方向転換する。「由香里、こっちきて」体重は当然俺のほうが重い。由香里をなんなく止めてデパートの中駆け込む。「ちょっと、健太どこに行くの!」「座れるとこ。隠れるなら人の中だけど、俺でかいから動いてると目立つんだよ」エレベーターは密室になるから避ける。エスカレーターも人が多くて駆け上れないのでダメ。人の少ないデパートの階段を駆け上がり、別棟への連絡通路を渡ってまた階段で、今度は駆け下りる。地下まで降りるとイートインスペースを併設している店に空席の有無を確認する。席がなければ、もう一走り、と思ったが運よくすぐに入らせてもらえた。思ったより広い店内で入り口からすぐに見えない席に案内されたのが幸い。すっかり温まった身体を椅子に落ち着け、向かいに倒れこむように座るゆかりを見やる。どれだけ走っていたかわからないが、顔を伏せて息を整えている。追手の姿を心配したが、こちらからも店の入り口は見えない。由香里の回復を待ちながら、店のメニューを開く。特に問題なく呼吸が落ち着いた俺はこういう時にバスケ部で培った体力に感謝する。顔は伏せたままだが、ようやくちゃんと座ることに成功した由香里にメニューを押し出す。「由香里、生き返れそう?俺コーヒー」「お、同じの」そわそわしているオーダー待ちのスタッフにコーヒーを頼んで由香里に向き直る。久々のデートが思わぬスタートで聞きたいことは多い。近況よりも先に、現状と今後の対策が先決。にほんブログ村
2014.12.09
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川原健太は袖を引いて腕時計を見てはため息を落とすのを繰り返していた。待ち合わせによく使う金時計前。ゴールデンウィーク初日の今日はいつもより人でごった返している。久しぶりのデートで、待ち合わせ時間の15分前には到着したいたのに、俺をあざ笑うような『ごめん、ちょっと遅れる』との由香里のメールが届く。久しぶりにできると思った王道の「待った?」「ううん、俺も着いたとこ」も使えない。待ち合わせの時間から30分は過ぎると思わず愚痴をこぼれる。同じように待ち合わせをしていた両隣もいなくなり、次の両隣も合流相手を見つけて立ち去った。「由香里のやつ『ちょっと』ってどれだけだよ」一人寂しく、その場にしゃがむ。携帯でゲームをしたくても体力を使い果たしてできない。情報検索しても目引くニュースもなく、肩を落としたところに影が落ちた。顔を上げると、たっぷり化粧をした派手な美女、もとい、見目麗しい晴香さんが見下ろしていた。「やっぱり、後輩君だぁ。誠ぉ、ちょっと待ってぇ」隣の人に声をかけて、晴香さんは俺と視線を合わすようにしゃがむ。「パンツ見えますよ」俺は短いスカートから覗く膝から目を逸らして忠告する。晴香はちっとも気にしたようすもなく、そのまま続ける。「後輩君が覗かなければ大丈夫。ねぇ、何してるの?」「待ち合わせっすよ。晴香さんこそデート中に彼氏放っておいていいんっすか」「放ってないわ。手が繋がってるもの」当たり前のように言われて、晴香の腕を目で辿ると確かに二人の手は繋がっている。手を繋いでいる男と目が合うと、男は会釈して恥ずかしそうに口元を手で覆って顔を背けた。ずいぶんごっつい黒縁メガネをしていて、インテリ系の神経質そうな印象。晴香の彼氏ならもっと遊んでそうなイケメンを連れているイメージだったので、意外かもしれない。「じゃあ、俺のことを放って置いてデートしてくださいよ」「ちょっと声かけただけでしょ。この間祥ちゃんと話をしててね、後輩君なら祥ちゃんの元彼の話知ってるだろうと思って。今度聞かせてねぇ」なぜ今更刈谷先輩の話なんか、と怪訝な顔を向けたが、晴香は気に留めることもなくさっさと立ち上がって彼氏の手を引く。手を振って歩き出す晴香さんの後を、彼氏は律儀にこちらにもう一度会釈をして歩き出す。ヒールを履いている春香さんと並ぶとあまり身長が変わらない小柄な彼氏。持ちもの、というと聞こえが悪いが、見た目もかなり重視しそうなのに、あまり身長の変わらない男を選ぶのも予想外だった。突然現れて、あっという間に去った二人を見送った俺の耳に由香里の叫ぶ声が聞こえる。「健太!健太ー!」にほんブログ村
2014.12.08
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真面目な顔で晴香はこちらを見据える。笑い飛ばせる空気ではなかった。「晴香さんもあんまり広瀬さんと接点ないじゃないですか」「じゃあ、祥ちゃんは?」苦し紛れの反論は、自分の首を絞めるだけだった。視線を泳がせて言う。「これから、ですねー」「だったら、私の情報聞いて」晴香は姿勢を正し、組んでいた足もそろえて正面を向く。「歓迎会にしてきてた腕時計。あれは有名ブランドのペアウォッチ。歓迎会の後で調べたらやっぱり間違いない思う。一人暮らしっぽいけど、地元を教えてくれないのよね。何か怪しい。最近の恋愛映画について、映画館に行ったという証言ゲット。女がいそうでしょ?あとは」「ストップ」次々と晴香の口からこぼれる情報に待ったを掛ける。聞こえてしまった情報も、聞きたいと一瞬でも思って声を掛けるのが遅くなった自分にも蓋をしてしまいたいが、過去は覆せない。「そこの再確認も含めて、自分でやります」「おせっかいでごめんね」ぺろりと舌を出して見せる晴香の憎めない顔に、和解の意味を込めて先ほど奪った分のケーキを向ける。こういう時に躊躇なく差し出したフォークに食いつく晴香のあとくされのなさは気持ちがいい。「連絡先わかったし、まずは連絡してみる」小さな決意を伝えると、晴香が大きく目を開いてポカンとした顔をする。なにかまずいことでも言っただろうか。連絡することの表明を思い返しても特に問題点を見出せずに首をかしげる。「1週間経ってるのよ、あれから連絡してないの?」確かに、アプローチを返してくれたはずなのに、広瀬さんからも私からも一切の連絡はない。「し、してません」「はぁ?」晴香が呆れた声を上げるのは少しだけ仕方ないと、自分でもわかっている。自信がない状況も手伝い、電話をしようとしても通話ボタンが押せずに不貞寝。メールは何度も作り直して、結局送れないまま下書きフォルダに眠っている。練習試合の日程決めや他校交流会のセッティングならできるのだが、どこからどのように話したらよいかわからず、うだうだ一人で悩んでいる。「祥ちゃん、押しが足りないわ。今日までに広瀬さんからの連絡は?」晴香は両手のこぶしを目の前で震わせてた間から、キツイ視線を投げつけてくる。「あ、ありません」「祥ちゃんも祥ちゃんだけど、広瀬さんも広瀬さんよ!」「晴香さん、早速デートに誘ってみます。晴香さんのおかげで前向きになれたし」だから、落ち着いて、と怒りの収まらない晴香をなだめる。立ち上がりそうな勢いだった晴香は深く椅子に腰を下ろし直すのをみて、祥子もソファーに体重を預ける。「祥ちゃん」今までの勢いと打って変わって、晴香は小さく名前を呟く。すっかり暗くなった外の景色に目を向けたまま晴香は続ける。「うまく行ってほしいとは思ってるけど、もし駄目だったとしても、落ち込まないでね。祥ちゃんは、真っ直ぐな気持ちでぶつかって、笑っていて。それに」一度言葉を切って、携帯を操作する。「すぐ連絡してね。祥ちゃんに合いそうな男はいっぱいいるの」晴香は携帯の画面をこちらに向けて、得意げな笑みを浮かべる。携帯には晴香と見知らぬ男が一緒に写っている。すぐに携帯を戻して、楠君に、将太、三橋さん、恭平様と晴香は次々に名前を挙げる。「わかりました。一番に連絡します。胸を借りることにかもしれませんけど」「もちろん、Dカップはいつでも開けとくわ」「晴香さんD!?」「なによぉ、文句ある?」「い、いえ。楽しみにしておきます」「Dカップが楽しみって、ちょっとえっちじゃなぁい?」晴香が茶化して、笑い合う。全く違うタイプだけれど、根底の価値観が似ているから、一緒にいられる。自分が怒ることに対しても、笑うことに対しても。結果はどうあれ、背中をおしてくれた晴香と健闘を祈ってコーヒーカップで乾杯をしてみた。にほんブログ村
2014.12.06
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普段なかなか使わない言葉に笑って手を振る。「探偵じゃあるまいし」「本気で言ってるのよ。広瀬さんだって、彼女がいるかもしれない。結婚指輪してなかったけど、キッチンに入るから指輪してないだけで年齢的には妻子持ちの可能性も捨てられないわ」「晴香さん、ドラマの見すぎ」力を入れて話す晴香に、苦笑を返す。しかし、晴香は不満顔でテーブルを指で叩いて続ける。「実話よぉ。だからその辺り確認しておかないと怖いわ。合コンだって彼女持ちが来るんだから。その辺クリアにしとかないと」「晴香さんの経験?」「合コンで第一印象が良かった男は妻子持ちだった。彼女と喧嘩中で腹いせに来たって人もいたわ」「なんでそんな人が来てるの。主催者?」即答で帰ってきた実例に、呻いてしまう。もっと軽やかで爽やかな経験をしてほしいところだが、なぜか晴香は面倒を引っかけやすいらしい。可愛くて、しなやかで女性らしいところが晴香の魅力だが、魅力的な女性には自信家の男性か、そういった面倒を持ち込む男のほうがアプローチしやすいのかもしれない。「隣の畑が青くないかチェックしに来たか、つまみ食いでしょ」「どんな神経してるの、そんな男はこっちから願い下げ」「だから、そう言えるように確認しておかないとぉ。アクセサリーとか、女子の話題にどのくらいついていけてるとか、最近の行動」「よく見てますね」「でもって、わかった時点で暴露よね」誇らしげに胸を張る晴香の強かさはうらやましい。自分が知る友人たちを思い浮かべる。バスケバカばかりの部内の連中は、ドロドロしたイメージからは程遠い。大学の同級生も、サークル仲間も、仲睦ましい彼氏彼女や爽やかな片思い。そもそも、経験値が少なく変化球の対処もできない私に、反対されるとわかっているような案件を、持ってくる人がいるわけがない。「ごめん、晴香さんと住む世界が違うのかも」「そうねぇ。祥ちゃんは潔癖っぽいし。でもこれからたくさん見ると思うわよ。世の中にいっぱい転がってるから、イヤでも出会うわ。今の祥ちゃんみたいに、すっぱり割り切れることばかりじゃないしぃ」言われたことが、友人たちのどの顔も全く心当たらないので、理解への白旗を揚げる。晴香にだって、想像がつかない。・・・想像したくない。自然と意識が回避しているところが、潔癖といわれてしまう所以か。「祥子ちゃん」もんもんと考えてしまった私は、静かに呼ばれて意識を晴香に戻す。「正直ね、広瀬さんのことクロの可能性が限りなく濃厚だと思ってるの」にほんブログ村
2014.12.05
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別れてから1年以上経っているのに、きっぱり切れてない気持ちが残っていて胸が重いのか、先輩への未練なのか。胸元のボタンを弄りながら、晴香の横顔を伺う。綺麗な横顔はそのままに、晴香の視線だけこちらに向く。「一応確認ね。元彼から賭けの話、聞かされたの?」晴香の静かな声に、すぐ首を横に振る。バスケ部員、それも同輩たちが話をしているところを通りがかってしまったのだ。アレがなければ、こんな気持ちになってなかったと思う。足早に立ち去って、詳しく聞きだすこともできなかった。「別れた後で、そういう話をしてるのが聞こえちゃって」「まずそこね。本人が言ったわけじゃない。ってことは、真相は不明」晴香は人差し指を一本立てて見せる。つづけて中指も並ぶ。「2つめ、祥ちゃんは『大事にされてた』と感じてたんでしょう。感覚って大事。それは本物よ。女の勘を信じなさい。だから祥ちゃんは愛されてた」断定されて、納得がいくかどうかは疑問だが、これが晴香さんの考え方なのだろう。しっくりはこないが、気持ちは軽くなる。「最後に、自分の気持ちは、自分が一番知ってるじゃない。疑っちゃ駄目よ」好きだったのは間違いないでしょ?と、晴香がフォークに突き刺したタルトを目の前でぐるぐる回す。その手首を掴んで、タルトを口の中に入れて奪い取る。完全に塞がっていた喉のつかえはいくらか小さくなっていて、甘さを味わってから喉を通すことに成功する。「確かに」付き合っている間は、やっかみだろうと外野に何を言われても平気だった。この後ろ向きでネガティブな思考はどこから生まれたのだろうかと思う。好き同士だった期間がなかったように言われて、思い出を必死に見ない振りをすることで、自分を守ろうと思ってたのが逆効果だったのかもしれない。「その裏づけしたいなら、後輩君呼ぶのがいいと思うわよ。素直に教えてくれそう」「素直でしょうけど、どうでしょ。川原は知らないんじゃないかな、後輩だし」頬杖を付いて、川原の裏のなさそうな顔をを思い出す。由香ぴょんとうまくいっているといいのだが。「あら、祥ちゃん、それは後輩君をちゃんと評価できてなーい」過ごした時間だけ言えばこちらの完全勝利なのに、まるで正当評価できていないかのような晴香の発言に祥子は肩を竦める。意外な一面は、いつまで経っても人それぞれ持ち合わせているのだろう。晴香にしか見せていない一面があるのかもしれない。「気が向いたら聞いてみますよ。晴香さんはずいぶん川原のこと気に入ってますよね」晴香と同じようにカップを持ち上げる。からかうような眼差しを送るが、晴香はなぜか切なげにため息を吐く。「うん、祥ちゃんとお似合いだなぁって思って」晴香の発言にがっくりとうなだれる。以前も新しく入った新人バイト君と私をくっつけたがる発言をしたが、また病気が始まったようだ。「なんですかそれ。今度はどんな妄想を始めてるんです」「後輩君って、広瀬さんなんかよりずっとお勧め物件なんだけどぉ」「なんかとは何ですか。誠君で目がかすんで、広瀬さんの良さがわからないだけです」今度は私が晴香に横顔を見せる。むぅと言いながら晴香の頬が膨れた。「不細工になってますよ」「不細工にしてるんだもの。あのね、言っておきたいんだけど。祥ちゃんが広瀬さんのこと好きなのって、釣り橋効果だと思うんだよね」揺れるつり橋を渡るドキドキを、恋と錯覚する。確かに、広瀬さんを好きになるきっかけはお客さんとのトラブルだった。スマートに対処する姿が感動的にかっこよかった。「つり橋効果から始まる恋もあるでしょ」錯覚や刷り込みでも、その気持ちは抱えているうちに形を変える。「うん、それは全然きっかけとしては問題ないんだけどぉ、私が言いたいのは、広瀬さんの身辺調査した?ってこと」にほんブログ村
2014.12.03
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キャプテンを張っている刈谷先輩が好きだった。弱小高校だったので、いつも1回戦敗退だったが、試合ではみんなを引っ張り、最後まで諦めない。マネージャーとのやり取りも多い。試合中も練習中も頑張っている姿をずっと目で追うのだ。記録をつけるためだけれど、好きになるのは時間の問題。ただ、先輩にとって私はただのマネージャー以外の何者でもなかった。先輩から告白された時は舞い上がっていたけれど、部活を引退して受験の先輩と、元々部活で手一杯の私。時間はあまりなくて、隙間を縫ってデートを重ねた。受験生であることを考慮して、先輩の都合を優先して呼び出しに応じる、という結構無理なスケジュールも頑張った。なのに、先輩が卒業して新しい世界を知ると、受験生の私に遠慮してか、連絡が徐々に減り、半年もしない内に、好きな人が出来たと、振られた。そもそも告白自体が、先輩たちの遊びで、告白したらOKするか賭けをしていたのだ。うっかりOKが出たから先輩としては、据え膳喰わぬは、の精神でそのまま付き合ったと後から聞いた。先輩から告白してきたから、当然気持ちがあるものだと思っていたのに最後は都合のいい女だったことを知り、さらに落ち込んだ。受験生としては、勉強には打ち込めるようになったが。「一方的に好きなだけで、相手は私のことをそんなに好きだと思ってないって頭に過ぎるんですよ。ラブとライクの境に戸惑っているってとこですかね」好きじゃないけど、相手もいないし、好意を寄せてくれてるから取り合えず付き合っておこうかな、って感覚が寂しかった。欲しい気持ちが、向けてられている気持ちと違う。そんなものはよくあると頭ではわかっている。それでも付き合いたい。好きだから一緒にいたいって気持ちもある。その矛盾を抱えて動けない。唇を固く結んで晴香の反応を待つ。笑われるか、一蹴されるか、いずれにしても経験豊かに見える晴香にとっては理解しがたい恋愛以前の問題じゃないだろうか。しかし、予想していた笑いも痛烈な言葉もなく、深い同意。長いまつげが伏せられたまま晴香は何度も頷く。「誰しもが通る道だとだよねぇ。結構多いんじゃない?誠だってぇ、最初は私が押せ押せだったから、乗っかっただけだしぃ、私のほうが絶対好きの荷重は大きいと思うでしょう。祥ちゃんって、そんなことで引っかかるぅ?」「最終的にどっちも好きの感情になったならいいと思うんですよ。だけど、なんていうかライクまでも到達してなくて、『どっちでもいい枠』から出てない状況かなって」お試し期間もありだと思うが、それがずるずる続くのは結構辛い。気持ちが昇格したというなら、そう言って欲しい。「付き合ったら、好き同士になりたい思うじゃないですか。同じだけの気持ちがほしいって」自分の考えなのに、めんどくさい。「言いたいことはわからなくはないけど」晴香は言葉を続けようとした私を遮るように言った。その上、突き放すようにそっぽを向く。「give and take精神は長続きしないわよぉ」ギブアンドテイクって、ひどい言い方じゃないだろうか。むっとした気持ちのままフォークをタルトに突き刺す。「別に、見返りを求めてるわけじゃないですよ」タルト生地がうまく切れず、力をこめる。「ただ、ゲーム感覚で付き合うなんて」フォークと皿が甲高い音を立ててぶつかる。音も気になったが、心の底に滞っていたどす黒い気持ちに気づいて顔をしかめる。先輩が私のことを好きじゃないのに付き合って『くれていた』とか、精一杯の好意を踏みにじられた気分がぶり返して来る。違う、そうじゃない。ちゃんと愛されてたと思いたい。好きだった気持ちも甘酸っぱい思い出も、なかったことにしたくない。口元までタルトを運びかけて、苦々しい気持ちが喉をつかえさせるため、フォークを皿に戻す。「大事にされてたと思ってたんですよ。なのに、私の気持ちまでなかったことにされたみたいで」にほんブログ村
2014.12.03
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「待ち伏せされて、二人で抜けようと、言われました」「どっちに。未成年の後輩君?広瀬さん?」「どっち?!」即座に鸚鵡返ししてしまう。いつの間に選択肢が増えているのか。「何で、どこから川原が登場?」「だってぇ、血相変えてかなちゃん引っ張ってったのは後輩君でしょう」「川原は、たまたましゃがんでる私を見つけてくれただけで。だいたい、川原には彼女いるし」晴香の勘違いを納得して、またソファーに沈む。そう言えば、川原は廊下の壁に頭をぶつけて痛がっていた。一つ一つ行動が大きすぎるのだ。折角の体格なのに真っ直ぐすぎてフェイントがちっとも出来ない万年補欠。応援に力を入れすぎたときみたいにかすっかすの声も情けなくて笑えた。思い出して口元が緩む。「ふーん、見込み違いか。なんかお姉さん的には残念なんだけどぉ。じゃあ、広瀬さんね。両思い万歳ってことじゃない」晴香はつまらなさそうにフォークでタルトをつつきまわし始める。むしろ川原だったらよかったというような引っかかる物言いに、味方が誰もいないところにパスを出された時のような空虚感を覚える。たっぷり入れたミルクがすっかり混ざりきるまでコーヒーをしつこくかき混ぜて、狭いコップの中を見つめる。少しだけ浮上した気持ちも渦に飲み込まれて沈んでいく。「気持ちがついていかなくて、ちょっと怖くなっちゃった、が一番近いかな」「それってただの贅沢じゃない。もう大人なんだしぃ。初めての彼氏ができるってわけじゃないでしょ?あの日にどこまでされたの?広瀬さんのテクは?泣いてたのはそのせい?」「ちょっと一遍に言わないで」質問をたたみ掛けてくる晴香のテンションについていけず、一息入れる。最初こそ気分が悪くてしゃがみこんでいると信じて駆けつけてくれたのだろうが、安心してこぼれた涙について言及したいのだろう。しかし、あれは自分でも驚いたこと。「アレはその、ちょっと思い出し泣き。歓迎会でのことじゃなくて」「元カレのこと?」晴香は形のいい足を組み替えて、先ほどまでの鋭い追及の声より少し柔らかく訊ねてくる。隣に置かれているクッションを胸に抱えて小さく頷く。晴香はこういうことには千里眼かと思うほど的確に言い当てていく。人のことを良く見ているし、情報網も幅広い。「だから言ったでしょ?やっぱり祥ちゃん、前の彼のこと引きづってるのよぉ。いつもはぐらかすんだから。そこから話しなさい」「まぁ、正直最近まで引きずってる自覚がなかったんですよ、この間まで」適温になったコーヒーを含み、コップ越しに晴香に目をやるが、頷きもせず続きを待っている。言えないわけじゃない。ただ、あまりにも子どもっぽく、根に持っているのを認めたくなかった。「元カレ、部活のキャプテンで、一個上だったの話ましたよね」前置きをして、続ける。にほんブログ村
2014.11.29
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「さあ祥ちゃん、今日は吐いてもらうわよぉ」おしゃれでおいしいと定評のある落ち着いた雰囲気のカフェ。土曜日の夜という、いつもならバイトをしている時間。今日はメンバーが足りなくて、ランチタイムの助っ人になったので、この時間に晴香に拉致られた。仕事上がりに一緒になった晴香に捕まるのは、心当たりがありすぎて、当然といえば当然。落ち着いた音楽が静かに流れる店内で、晴香のホットコーヒーと私のカフェオレが届くと、晴香が身体を乗り出してきた。「吐くって、吐けるものもないですけど。だいたい、腹ペコじゃないんですか?」「もう、減りすぎて気持ちが悪いくらい。だって、あれから1週間よ?なんで何も言ってこないのよぉ。タクシーでも敢えてそっとしてあげてたお姉さん、気になって飢えそう」晴香は好奇心を隠しもせず、両手で頬を添えて笑顔を強める。壁際に追い詰められたネズミはこういう心境だろうか。天井に視線を投げて、頭の中を整理する。「その、何とも言えなくて」大人とのやりとりに慣れない自分の経験のなさを嘆くべきか、これからの伸び率を信じて進んでいいのか、ため息混じりにこぼす。期待の眼差しを向けてくる晴香を通過して、気持ちとともに視線が落ちる。楽しいと言っていいのか、浮かれていた歓迎会から1週間経っても、心の整理が付かない状況が続いている。あからさまに好意を向けていた広瀬さんに、アプローチを返してもらった。はずだ。自分の記憶が正しければ。記憶がトンだわけではない。ちゃんと覚えている。家に帰るまで、詳細に。ただ、酒量の限界がわからず、勧められるままに出されたアルコールを飲んで、酔っ払っていたのは間違いない。そこそこ飲める口だったようで、気持ち悪くも、頭が痛くなることもなく、隣にはいい男が座っていて、実に気分がよかった。ホストクラブはこんな感じかもしれない。カラオケという場所がお互いの距離を近くした。全然声が聞こえないから、遠慮なく顔をを近づけて話を聞いた。背もたれに回された腕の中に居るという、ひと時の恋人の距離感を疑似体験して、幸せな気分だった。それ以上の進展は、望んでないと言えば間違っているし、望んでいる、と言っても語弊がある気がした。簡単に落ちる女、とか尻の軽い女と思われるのも嫌だし、広瀬さんがそんな軽い男だとも思っていなかった。幻想を抱いていただけ、とも思いたくなかった。言葉通り、いい店で静かにお酒を傾けるっていいかも、と大人の飲み方を教えてもらうのも、紳士に送ってもらうこととか、頭の中は暴走していた。とにかく、判断力が著しく鈍くなっていたのは間違いない。「話がまとまらないのは、仕方ないと思ってください」「OK、come on」英文科所属の発音で、色気たっぷりに片目をつぶる晴香に観念して、ソファー席に座り直し腕を組む。にほんブログ村
2014.11.28
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別口で短編をいくつかあげていたら、終わらなくて困る。規定の文字数以内に収まらないという事態に頭を悩ませていました。基本的に、脳内プレーヤーが育って、突然自分たちの好き勝手に行動し始めると制御が付きません。あ、そうだったの?って思ったことを唐突に言われて、ええ、だったらあの時にこんな伏線欲しくない?ってことでまた前に戻ったり。ああ、楽しいですよ。とっても。つらつらと脳内の妄想が形づいていくのは。でも、不思議なことに、形が出来て、手を離れた瞬間、自分のもので、自分のものでなくなる。むしろ、途中から暴走して手に負えなくなるのは昔からのこと。力技でねじ伏せて無理矢理終わりに持っていくしかないけれど、そのまま暴走してくれるのも面白いかなぁとも思う。『手の届く距離』も『突然の日常』もこうなって欲しい。こういう方向で、とは考えているけれど、素直にその道を走ってくれるかどうかは、彼ら次第。短編は暴走しても、力技でにねじ伏せます。けど、長編は暴走が暴走なのか寄り道なのか、実は別の物語の始まりなのか、一緒に進んで初めてわかったりします。怖いですねぇ。久しぶりに大先生のお話を読んだら、くすぐったい気持ちと懐かしい友人に会ったようなちょっと照れくさい気持ちと悔しい気持ち。続き早く~!
2014.11.26
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「あ、川原君。北村さん見なかった?」戻ってきた広瀬さんが目立つところに突っ立っている俺に声をかけてくる。どんな顔をしたらいいかわからず、俺はそっけなくトイレのほうに指を向ける。「気分悪くなっちゃったみたいっす」びっくりした顔をするところを見ると、広瀬さんはやっぱりお持ち帰りするつもりだったけれど、祥子さんが体調を崩したと見るので間違いないだろう。顔には出さず、心の中で舌を突き出してやる。下心玉砕ザマアミロ。いや、もしかしたら気持ちが通じて相思相愛だったけど、タイミングが悪かっただけかもしれない。嫉妬心全開の自分に自己嫌悪しつつ、女子たちが顔を突き合わせているのに視線を戻す。広瀬さんは俺の隣に立って、3人の姿を見て、難しい顔をする。ちらりといたずら心が芽生えた。「残念だったっすね」あまり大きな声では言わなかった。そもそも使いすぎてガラガラの声は通りにくい。カラオケ店の廊下なんて騒音が飛び交っているのだから、聞こえなかったことにされてもおかしくはない。でも、反応したら面白いし、聞こえてて反応しない選択もある。大人の反応ってどんなものか、興味があった。祥子さんの選んだ人の反応が。顔を動かさずに、視線を向ける。広瀬さんも同じようにこちらを向いていた。一瞬にして余計な一言を言ってしまったことを理解して、じりじり逃げるように気まずく目を逸らす。判決を待つ犯罪者のような追い詰められた気分で身動きも取れない。「連れて帰るわ」いつもの間延びした口調ではなく、凛とした晴香さんの声に顔を上げた。真っ直ぐこちらを見つめてくる美人の意図がわからず、きょとんと見つめ返してしまった。「祥ちゃんに何したの?」「へ、何もしてないっすよ」「事情聴取は後日ね」見に覚えのない犯罪の犯人のように言われて一瞬慌てたが、すれ違いざまに肩を叩いてきた晴香さんの手は優しかったし、こちらに向けた目は怒っていなかった。祥子さんに目を戻すと、ゆらりと立ち上がるところだった。慌てて駆け寄り、支えるつもりであいている腕を掴む。伏せられていた顔が少し持ち上がり、弱い笑顔を見せるところが、祥子さんらしい。バスケの試合も、負けてる時のほうが、声が大きかった気がする。顔色は思ったより悪くはないし、帰れると思っての行動なのだろう。「無理しなくていいっすからね」「ありがと。休んだらちょっとよくなったから」祥子さんのペースでゆっくり店の外へ足を進める。腕を掴んではいたが、体重をかけられることはなく、自分で歩けている祥子さんに安心する。店を出る前に、晴香さんが荷物を持って追いつく。「一緒に送りますよ?先輩ん家知ってるし」「タクって帰るから大丈夫。いいヤツねぇ、後輩君。はしゃぎすぎの声が情けないけど」「一応主役なんだから、みんなのところ戻りな。かなっぺも川原も」心配そうに手を握っていたかなっぺの手をそっと離して、今度はしっかり顔を上げて笑顔を見せる。少し無理してるが、言葉からも強く追うことはできず、タクシーに乗り込む2人を見送る。残された、一応主役の一角であるかなっぺをつついて、寒い外から店内に促す。「ありがとな、俺だとどうしたらいいかわかんなくて助かった」「川原君に引っ張られたときはびっくりしたよー。しっかしすごい声だね」少し重かった空気を晴らすように笑う。その声もひどかったけれど。振り返った先に、広瀬さんはいなかった。見送りにもこなかったのだろうか。てっきり彼氏に昇格したのかと思ったが、そうではなかったのか。少なくとも、口説いていたのではないのか。一応、今いる中では一番大人だったはずなのに、動かなかったことも引っかかり、喉の違和感と同じようにべったりと胸に嫌な気持ちが張り付いた。にほんブログ村
2014.11.21
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釈然としない気持ちを押し出したくて、天井を仰ぎ見るとゴンッと頭と壁がいい音を奏でる。天誅?天罰?思わぬ痛みに声を押し殺して視線は床に落とす。その上から、さらに爆笑が降ってくる。「何やってんの、川原」「あ、祥子さん。うぁ」「すっごい声。頑張って歌ってたよね」自分の発した情けない掠れた声にびっくりする。爆笑の主はいつもより低い位置にある俺の頭を遠慮なくかき混ぜる。挨拶代わりだと思っているのだろうか、一応セットしてる髪型を崩された恨みを込めて見上げるが、俺からの視線も返事も必要がなかったようで、視界に移ったのは祥子さんの背中で、楽しいのを隠しきれない軽い足取りでトイレに向かってしまう。人の幸せそうなのは、見ていてほっこりする。しかし、今はそうも言っていられない。祥子さんの登場で余計にもやもやが増える。メールの文面をもう一度読み返して、シンプルすぎるか、短すぎるか、後ろめたさを償うべく、ハートマークでも選択してみようかと10秒悩んで文字だけのメールを送信した。取り合えずのすれ違っている彼女のことは後で考えることとして、思い出した喉の違和感を癒すべくドリンクバーに戻る。他の知らない人たちに紛れて、俺も休憩スペースの隅にしゃがみこんで一息つく。しっかりと冷えたウーロン茶が、急激に使われてびっくりした喉を通って行くのを感じる。ひんやりと冷たさを伝えるコップを眺めながら、空けたら戻ろうとくるりくるりと氷が動くように振る。そのまま、外からも喉を冷やすようにコップを首に当てる。心地よさに目を閉じると、部屋のドアが開閉されるたびに漏れ出てくる音が大きくなることがわかる。音が大きく聞こえる度に人の出入りがあるのだろう。「広瀬さん?」「ああ、ちょっと待ち伏せしてみた。少しいいかな」無防備に届いた声にびっくりして目蓋を開ける。目の前に広がる状況は変わらず、休憩している人数に変化もなかった。声の主は、先ほどトイレに行ってしまった祥子さんと広瀬さんなのだろう。もたれている壁のすぐ裏がトイレだったかも、と腰を上げかけたら会話が進んでしまう。「何かありました、広瀬さん」「この後、抜け出さない?」盗み聞きしているわけでは、断じてない。慌てて部屋へ戻ろうと思ったが、考えたらトイレの前を通らないとみんなの元に戻れない。折角いい雰囲気なんだから、これを邪魔してもいけないだろう。迷った上で、息を殺してその場にとどまることにした。「二人で飲みなおそうよ」「えっと・・・」「君のこと、もっと知りたんだ。いいだろう?」「・・・その、嬉しいです・・・けど」「素直で、かわいいね」「・・・え、広瀬さ・・・」俺は悪くない、と必死に言い訳しながら、耳を塞ごうにも、コップを落とすわけにもいかない。片方だけでも塞ごうと空いている手を耳当てるが、不自然に途切れた声はしっかり届いた。当然、想像するのは、二人のキスシーン。いやいや、もしかしたら誰かが来たのかもしれないし、さすがに往来のある場所でナニをするわけにはいかないって気づいたのかもしれないし、って現実逃避・・・したくなるだろう!しかも、よく知っている祥子さんだ。もう大人なんだし、そういうことになってもおかしくはないけれど、こんなところでしなくても。しかも、こんな早くにくっつくとは思わなかった。目の当たりにしているわけではないが、容易く想像できてしまう自分の脳内を必死に別のことに置き換えようとするが、全身の血が顔に上ってくるのを感じた。頭を抱えて、できるだけ壁に張り付く。頼むから、ドリンクバーのコーナーに来ないでくれと祈るばかり。別に、由香里とも致すことは致しているので、何もわからないガキではない。でも、ここは公の場であって、あまりあからさまなことはしないでほしい。ましてや、古傷を掘り繰り返された気分になっている自分の、由香里への罪悪感が頭を重くする。「荷物持ってこれる?下で待ってるから」ああ、お持ち帰り決定か。可愛い女子大生に好意を向けられて気分が乗らないなんて男はいないしなぁと、膝の間に頭を落として頭を抱える。足音が一つ遠ざかって、もう一つは・・・耳を澄ませても聞こえない。各部屋からの音楽も大きくならないので、人の出入りもない。たっぷり30秒は待ってから立ち上がる。何か変だ。トイレに続く細い廊下に祥子さんがしゃがみこんでるのを発見して慌てる。「祥子さん!大丈夫っすか」「気持ち悪い」「あー誰か女の人呼んできます。すぐ戻りますから」ふるふると頷くを確認して、ダッシュで入り口に一番近い席に座っていたかなっぺを引っ張って先輩の元に連れ出す。それに気づいた晴香さんも後からやってくると、両隣に女子が来たことで安心したのかぽろりと涙がこぼれるのを見てしまう。気まずくて少し離れたところまで移動してかなっぺの手が祥子さんの背中を優しく撫でるのを眺める。「あれ、川原君。北村さん見なかった?」にほんブログ村
2014.11.20
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ファミレスでよく見かけるドリンクバーの機械が鎮座している一角に、ソファーや椅子がいくつか並び、休憩スペースを兼ねていた。先客には他の部屋の人だろう知らない顔がいくつか。片隅で話しこんでいたり、飲みすぎてぐったり座り込んでいたり。携帯を確認すると、由香里からのメールが届いていた。さすがにカラオケの中では着信音に気づくはずもなく、メールはまだ10分ほど前に届いたばかりだった。祥子さんに散々からかわれたのもあって、どこか釈然としないところもあるけれど、女性の意見を受け入れてデートの誘いをしたのは1週間ほど前。それから、一向に返事がないままだった。高校を卒業してからだいたいそんな感じだったので、あまり苦にすることもなく、バイトに明け暮れ、たまに高校のメンバーと会ってストリートで3on3をしてみたり。束縛しない俺に感謝しろよ、なんて思いながら、メールを開く。『返事遅くてゴメンネ。この間の言ってたお店、行ってきちゃったんだ。超可愛かったけど、健人には合わないかも…』確かに、キャラクターとコラボした喫茶店に俺みたいな大男が行っても、浮いてしまうかもしれない。基本的には女性向けの可愛らしいキャラクターの店に興味もあまりなかったので、正直なところほっとしていたりするのだが、デートプランを蹴られたからと言って、簡単に引くわけにも行かない。時間を確認したら夜の10時半を過ぎたところ。メールも届いたばかりだし、電話しても大丈夫だろう、と通話ボタンを押す。目的のドリンクバーに背に、少しでも静かなところに足を向けながら、ありきたりの呼び出し音が3回聞いたところで、突然切られた。留守番電話に繋がることもなく、呼び出し音の回数的にも、意図的に切られたと考えて間違いない。もう寝ていた?出られないところに居た?今は出たくなかった?何にしてもタイミングが悪かった?どこにも繋がっていないことを知らせる無情な音を発する機械が画面の明かりを消して、ぼんやり間抜け面の俺を映す頃に、ようやく携帯を再度操作してメールを作成する。音のないほうへ、と向かっていた足はそれ以上進める必要はなくなり、すぐ傍の壁に背中を預ける。『由香里のいいときにデートしよう』もう、プランもへったくれもない。一緒に出かけることがデートなんだ。会ってから一緒にプランを考えるってのもありだろう。大体、デートをしようと思ったのは、由香里が寂しがっているからで、俺は・・・。そこまで自分に言い訳して、また自己嫌悪する。別にデートなんてしたくない、なんて彼女に思ったら失格だろう。気持ちが冷めてる、というのか。付き合い始めの浮かれた気持ちは、正直見当たらない。付き合って1年も経てば、そんなもんだろうと勝手に解釈して、連絡の少ない自分の後ろめたさに目をつぶる。釈然としない気持ちを押し出したくて、天井を仰ぎ見るとゴンッと頭と壁がいい音を奏でる。天誅?天罰?思わぬ痛みに声を押し殺して視線は床に落とす。その上から、さらに爆笑が降ってくる。にほんブログ村
2014.11.18
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女は強く、怖い。これは妹に対しても思うし、もちろん、祥子さんを始め、由香里も、部活のマネージャーは代々それぞれの味で怖いし、我が家の最大権力は母親だ。歓迎会で、歓迎される側だっていうのに、当日は晴香さんからは手伝えと言われ、いいように使われるし、祥子さんは忙しそうに立ち回って、やっと腰を落ち着けたと思ったら携帯ばかり気にしていた。祥子さんが話していた気になる男が、広瀬さんだと言うことは、すぐに気づいてしまった。祥子先輩が誰を見ていて、携帯は誰のために気にしていたのか。嬉しそうな顔といい、視線を向ける量といい、以前キャプテンと付き合っていたころとそっくりだった。晴香さんが女性陣の情報網を使って広瀬副店長プライベート情報を集めていて、女子の団結力を垣間見た。この飲み会は、合コンではなく、歓迎会だったはず。まあ、飲み会の大事な仕事はあらかたやってくれていたので、この場を楽しく過ごしているし、あんまり文句も言えない。2次会はカラオケというベタな選択をされて、元々盛り上がっていたメンバーは次々と曲を予約し、大声を張り上げないと、隣の人の声も聞こえない。盛り上げ隊としては一緒になって大騒ぎしながら、広めのカラオケ部屋に12、3人が詰められているのを観察する。カラオケ開始早々から、晴香さんは店長の隣に拉致られホステス嬢バリの笑顔と接客術を見せている。祥子さんと話をしなきゃ、と言っていたが、話は出来ただろうか?2次会に場所を移してすぐにつぶれたのが1人。祥子さんは広瀬さんの隣をしっかりキープしているし、遠くから見てる限りでは、広瀬さんも祥子さんの好意がわかってて距離を詰めてる気がする。年が少し離れていると思ったが、この調子ならうまく行きそうな予感。それと同時に、どこかでがっかりしている自分に苦笑する。高校生の時に抱いた想いは、思っていたより根深いようだ。苦い気持ちを吐き出すように、廻ってきたマイクに声をぶつける。1つだけ気になるのが、晴香さんの言葉。歓迎会の時、途中で10分したら迎えに来いと言われた謎の指令を遂行したら、誰ともなしに悔しそうに呟いたのを拾ってしまった。聞かなかったことにするには、いつも可愛らしく振舞っている晴香さんらしくなく、どこか苛立っているように見えた。「あの人、限りなく黒だわ」その後、晴香さんは、感謝の言葉で意図的に距離を置かれ、女子たちに混じってしまったので、俺はお役御免。詳細は不明だが、不穏な言葉には間違いない。何をチェックして、何が黒だったのか。お酒は飲めなくても、その場の雰囲気に馴染むのも、馬鹿をやるのもシラフで大丈夫だったので、女性陣のことは考えないこととして、俺は仲のいいキッチン組に溶け込んだ。久しぶりのカラオケで、十八番の歌を歌いきったところで、喉に違和感を感じた。はしゃぎ過ぎたのを自覚する。ドリンクは飲み放題のプランなので、各自自由にドリンクを取りにいくシステム。声を出しても、つぶれるだけだとこれ以上しゃべらないように手振りで外に行くことを示して、狭い椅子と机の間をすり抜けて部屋を出る。扉一枚隔てると、あっという間に周りの音量が退く。騒音に慣れた耳は、小さな音を拾い辛くなっていて、こもったように聞こえる。好きなバンドのライブに行った時もこういう風になったことがある。一晩寝たら治るだろうと楽観的に考えて、ガラガラの声を潤すためにドリンクバーを目指した。にほんブログ村
2014.11.14
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「高島さんのお守り、大変だね。お姉さん気質?」「お守りだなんて、晴香さんの方が結構姉御肌ですよ。ただ、今日は幹事ですし、晴香さんにも楽しく過ごしてもらいたいじゃないですか。男兄弟の真ん中なんで、女の子らしい晴香さんがかわいいし」「へえ、意外だなぁ。北村君女の子らしいから、男兄弟いるって感じしないよ」「今日は特別なんですって」中学に上がっても、兄弟で結構派手に喧嘩もしたので、どちらかというとスカートよりはズボンを好んで履いていたし、お下がりも多かった。高校に上がってからは毎日部活三昧で、ジャージと制服ばかり。デートも制服デートばかりで、大学に入ってから私服のスカートが増えたものだ。「じゃあ、そんなおしゃれしちゃって、誰のためだい?」「そりゃあ、絶賛女子力アップ期間なんで、自分のためですよ。あ、ここは広瀬さんのためって言わなきゃいけないとこでしたね」冗談に聞こえるようにあっけらかんと話す。広瀬さんも、冗談として扱ってくれる。大人の余裕、なのか真意は図れない。ホントは広瀬さんに見せるためですよ、と視線だけは熱を伝える。しかし、どれだけこちらが暑い眼差しを送ったところで、言葉がなければ人間通しの心はなかなか伝わらない。こちらが広瀬さんに好意を持っているのは伝えていい。しかし、恋愛感情を持っているのは見え隠れするくらいの位置がいい。見せてしまえば、相手は安心してしまうし、追う気持ちがなくなってしまう。かといって、見せなければ、諦めてしまうかもしれない。全面に恋愛感情を押し出して、妥協してまで付き合ってほしいとは思わない。「そうこなくちゃ。夜はまだまだこれからだよ?大丈夫かい」「部活やってたせいか、体力だけはあるんです。さすがに男子と同じメニューはこなせないですけど、ロードワークの日は自転車で付いていったりしましたよ。広瀬さん、部活してました?」「うぁ、おじさんのほうがバテそうだ」ああ、何気ない会話がこんなに楽しい。広瀬さんのことをやっと知ることができる。これでメールのやりとりを増やして、広瀬さんがよければ一緒に出かけたりとか。私のことを知ってもらって、二人ともが楽しめる場所を見つけて出かけたい。どっちかが我慢して付き合うのではなくて。相手の勝手を、楽しいと刷り込まれちゃダメで、ちゃんと私のことを好きになって、私のことも考えてくれる人。広瀬さんが、そういう人であってほしい。言葉には出せない想いは、きっと視線が伝えてしまう。元から、隠し事は苦手だから、あまり見ているとばれてしまう気がして、目の前のコップに向かって話してしまう。「北村君、店員さんと高島さんが話してるよ。そろそろラストオーダーかな?」「時間的にそうですね」広瀬さんの予想通り、ラストオーダーを取って、2次会に流れる算段がなされる。夜遅くまで働いている人たちは、夜に強いのか、半数くらいは行くようだ。仲のいいホールの女子たちも半数ほど行くとのことで、明日も授業があるし、帰ろうと思っていた気持ちを揺さぶられる。「北村君も行こう?あんまり飲めなかったでしょ」「それを言うなら広瀬さんが飲み足りないんですよね?」「そうそう、もうちょっと付き合ってくれないかい。店長より、可愛い女の子見ながら飲んだほうが楽しいじゃないか」後から来たとはいえ、次から次へとビールジョッキを空けているはずなのに、ちっとも顔色の変わらない広瀬さんにぽんぽんと肩を抱かれる。このスキンシップは?!と思う端から、セクハラ~と店長からヤジが飛んでくる。大げさに驚いて広瀬さんの手は慌てて離れる。さらに訴えないでください!と店長と広瀬さんが揃って謝り、悪乗りして他のスタッフも便乗する。されるのは困るけど、するのは好き~と隣にいた仲のいい女子に抱きついて巻き込むとブーイングと歓喜の悲鳴が同時にあがり、てんやわんやとなる。この雰囲気は楽しいし、好きだけど、折角のきっかけを捕まえられないのを悲しいと取るべきか、嬉しいと取るべきか。少なくとも、好意は抱かれている、と解釈することで満足しよう。何も、今日全てのことを知る必要はないし、今まで十分時間がかかったのだから、これから時間をかけて距離を近づけたらいい。タイミングを見計らって集めていた会費で会計を済ませる。席を離れたついでに親に一報遅くなる旨を連絡しておく。兄がいるせいか、門限なども設けられず、無事に帰ってきなさいね、とだけ言われて暗黙の信頼を得る。少なくとも、今まで積み上げてきた成果もあるだろう。解散を伝えて、店を出るよう追いたてて、忘れ物がないか確認しておく。調子が悪そうな人もいないし、トイレに人がいないことを確認した。取り合えず、今のところ酔いつぶれている人もいないし、帰る人は各自帰れそうなことに安心する。解散のメンバーに挨拶をしていると、晴香に腕を取られる。「ほら、祥ちゃん行くよ。ちょっと忠告があるから、私に付き合いなさい」「忠告?」「取り合えず寒いから、行くよぉ」すでに2次会に向かっているメンバーが、結構先まで進んでしまっている。川原がこちらを振り向いて手招きするのが見えて、晴香と顔を合わせて言葉もなく、二人で走り出した。にほんブログ村
2014.11.13
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「もう、そんなに笑う?」笑いを引きずって転がっている晴香の姿にふて腐れるしかない。人の心配より、よっぽど自分の心配をしたほうがいいだろう。酔っ払うと口数も増えるし、よく笑うし、楽しそうだが、晴香はあまり顔色が変わらない。そのほうが危ないんじゃないかと思う。サークルの先輩たちだってそう言っていた。「祥子ちゃん、なんでそんな初心なのっ。最近私の周りにはいない可愛すぎる子だわぁ。広瀬さんって天然?聞いてる限りじゃ、計算してる気がするけどぉ」「相手にされてないのか、意識されてること込みなのか、ナチュラル過ぎてわからない。あーもう、自分でも子供っぽいのわかってますよ!」広瀬さんが来たので、歓迎会の参加メンバーは全員来たはずだ。お腹を空かせた人たちもひと段落しているし、残っている料理の皿を片付け始める。晴香は話しながら背を指でくすぐるように突いてくるが、酔っ払いの行為だと、諦めて張るかが好きなようにしてやる。別に何か理由のある行動ではないはずだ。害がないことは気が済むまでしてもらったらいい。「広瀬さんって女の子の扱いに慣れてるのかしらねぇ。それはそれで心配だわぁ、元彼引きずってる祥子ちゃんに預けるには不安要素大ねぇ」いったいどんな話を聞いていたらそういう結論になるのかひどく疑問に思いながら、晴香の手を捕まえて引き起こす。一応幹事の片割れを申し出てくれているはずだが、いつも以上にスキンシップを図ってくるところを見ると機能を果たしてくれない気がする。酔っ払って甘えているのだろう晴香を放置して広瀬さんのところに行くわけにもいかない。ムキになっても、酔っ払い相手では効果がないことはわかっているので、後日詳しく問い詰めてやるとして、いい具合に賑やかな場を見るともなしに見る。適当に盛り上がってくれているので、まずまず合格だろう。あとは、自分の下心をもうちょっと出せば完璧だ。そう、次の男の人に目を向けるくらい、別に元彼のことなんて忘れて、次に進んでるんだ。「だから、引きずってない」「すんません、遅くなりました。何引きずってるってなんすか?」ピッチャーに入ったウーロン茶を持参してきた川原が向かいの席に戻ってくる。折角もらってきてくれたものをありがたく受け取る。聞かれてしまった呟きは首を振って答える。「晴香さんの勘違い。私も聞きたいくらい」晴香と二人分のウーロン茶を確保してから、ウーロン茶いる人ぉー!とピッチャーを回す。晴香にウーロン茶を飲むように促すと、素直にウーロン茶に一口だけ口つけただけで、するりと私の右腕に左腕を絡ませて立ちあがる。つられるように一緒に立ち上がると有無を言わさず場所を移動し始める。川原もびっくりして、ぽかんと口を開いている。。「ちょっ、ちょっと晴香さん?どこに・・・」「広瀬さんのとこよ、当たり前でしょ。ってことで、後輩君、10分したら私のこと迎えにきてくれるぅ?」「10分?む、迎えって・・・」「何でもいいから。いい男は黙って女の気持ちを汲むの!行くわよ、祥ちゃん」「晴香さん、絶対酔っ払ってますから、私のことは放っておいて・・・」「祥ちゃんも、いい女は黙ってついてくる!」「ええ~晴香さーん」可愛そうに、晴香さんのテンションについていけずアワアワしている川原が遠ざかる。不満の声を上げてみても、晴香さんの行動を止める手立てにはならず、広瀬さんたちが盛り上がっているグループに割り込む。晴香はあっさり輪の中に溶け込み、広瀬さんの隣をゲットし、引きずられるままさらに晴香の隣に腰を下ろす。こちらの勝手を快く許して場所を確保してくれる広瀬さんたちになんだか申し訳ない気がしたが、折角のチャンスでもあるのは確かで、複雑な気持ちにこっそりため息をつく。そんな私の気持ちを知ってか知らずか、晴香さんはガンガン広瀬さんのプライベートを聞き出し、店長と晴香さんの失敗談をさらし、一緒にいるメンバーを笑わせる。・・・合コンは任せて、と以前言っていたことを思い出して、納得する。百戦錬磨なのだろう。「晴香さーん」「えー、そんなに寂しかったのぉ、後輩君かわいいなぁ」「もう、好きに言って下さい」律儀に時間通り晴香を迎えにくる川原に、勝手な言い分を押し付けて晴香は席を立つ。ぽっかり空いた広瀬さんと自分の間に目を落とすと、広瀬さんが距離を詰めてくる。「高島さんのお守り、大変だね。お姉さん気質?」にほんブログ村
2014.11.12
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「出迎えてもらっちゃってごめんね。幹事もありがとう。順調かい?」「結構盛り上がってますよ、店長なんて時間ぴったりに来て、だいぶ出来上がってます。広瀬さんは今日飲めます?」「もちろん、そのために今日は必死で仕事頑張ったんだよ」結局遅くなっちゃったけどね、と広瀬さんは肩を竦める。お酒の席も、お酒も好きなんだろうとは思っていた。広瀬さんの歓迎会で、かなりの量を飲んでいたのが記憶にある。みんなの元に案内しようとしたら、広瀬さんに慌てて止められる。財布を取り出して、シラフのうちにお金払っとくね、と伝えていた会費の倍近い金額を渡される。「歓迎する人たち分はみんなで負担だし、伝えた会費、社員さん価格でちょっと多めなんで、そんなにもらったら申し訳ないですよ」慌てて、多すぎる金額に差し出された手ごと押し返すと、押し返した手をお札とともに広瀬さんの手をしっかり握られる。あっという間に重なった手と広瀬さんの笑顔に視線を行き来させる。「社会人というか、副店長の見栄張らせて。ここで押し問答すると寒いでしょう?早く店に入ろう」手を握ったまま広瀬さんが店に向かうので、引っ張られる形で店に入る。店に入ってしまえばすぐに手は離されて、手のひらにお札と握られた感覚だけが残る。スマートすぎる対応にいろんな経験値が追いつかず、お酒の力だけじゃなく顔が火照る。顔が見られないように、少し顔を伏せたまま広瀬さんを席に案内すると、広瀬さんは完全に酔っ払っている店長に呼ばれてあっさりにぎやかな雰囲気に溶け込んだ。幹事の仕事として広瀬さんとグラスが空いている人のドリンクを追加注文しから、今の話を一刻も早く話したくて、机を挟んで川原と話している晴香の隣にすべり込む。まだ早鐘を打つ胸を落ち着かせるべく、残り少ない自分のサワーを勢いよく飲み干す。「あら、祥子ちゃんったら豪快。大丈夫ぅ?」「祥子さん、強そうなイメージありますけど、今だいぶ顔赤いっすからね」「幹事だし、そんなに飲んでない」頬を膨らませて、反論する。隣の晴香に空けたジョッキを遠ざけられ、向かいに座る川原はウーロン茶を頼みに立ち上がる。なんという息の合った連携プレーだろう。過保護気味な二人の様子に、そんなに酔っ払って見えるのだろうか、と膨らませた頬を戻してさする。今空けたサワーとビールを1杯ずつ飲んだくらいだ。意識もはっきりしているし、足元がふらつくわけじゃない。自分の頬をつまみながら晴香にきいてみる。「そんなに酔っ払って見えるかな?」「何変顔してるのよぉ。ベロベロじゃあないから、大丈夫。それより、お待ちかねの副店長の横に行かなきゃいけないでしょう。今日一番の課題だったじゃない」摘んだポテトフライを顔の前に突きつけてくる晴香の手を掴んで身を乗り出す。「そう、その広瀬さん!たった今、大人でかっこよすぎるのを目の当たりにした。聞いて晴香さん」「何、もうすでに進展あり?私は、あーいうのタイプじゃないから、ちょっとしか興味ないけど、聞いてあげるわ」「進展はないけど。ちょっとは興味あるじゃない」「何されたの。耳まで赤いわよ、祥子ちゃん」耳をつついてくる晴香越しに、ハイスピードで飲んでいる広瀬さんを盗み見る。手を繋ぐぐらい、元彼とだって繋いでいた。でも、さっきの広瀬さんとさりげなさ過ぎるスキンシップのうまさにノックアウト。付き合ってる前にこういうことできるってことは、遊びなれているとも考えられるのだけれど、今はその考えをねじ伏せて甘い余韻に浸る。さきほどのやり取りをかいつまんで説明すると、人差し指を自分の唇に当てて、ぐるりと視線を回してから、ぐっと距離を詰めて声を落として晴香さんが囁く。「それだけ?」「それだけです」真面目に返事をすると、晴香さんはお腹を抱えて笑い始める。何事かと浴びてしまった注目を、適当に誤魔化して散らす。あまりに笑い転げる晴香が、掘りごたつの中の足をそのままに、自分の座っている後ろのスペースに上体を倒す。「もう、そんなに笑う?」にほんブログ村
2014.11.11
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震えた携帯は『広瀬修二』と表示されていた。すぐに気づくように、机の上に置いておいて正解だった。隣に座っていた晴香に声を掛けて、急いで盛り上がっているお酒の席を後にする。電話に出ると、近くまで来ているはずだが、店が見つからないとのこと。「大通りを一本入ったとこで、コンビニを曲がったら店が見えるはずなんです。わかりづらくてすみません。店の前まで行きますね」歓迎会の幹事に名乗りを上げて、やっと広瀬さんの連絡先を手に入れた。新しく入った人のフォローができるようにしているシフトでは、元々あまりかぶらない勤務がさらにかぶらなくなり、年度が変わって忙しいのか、すれ違いもわずかな回数しか持てずにいたところでの歓迎会で、二つ返事で参加表明をしてくれた広瀬さんに会うのを楽しみにしていた。店の外に出ると店内の熱気との差に思わず腕をさする。5月のゴールデンウィーク明けとはいえ、7分袖1枚では少し肌寒かった。慌てて席を離れたので、羽織ってきた上着は置いてきてしまったし、つないだままの電話で広瀬さんが指定したコンビニの近くにいるので、もうすぐくるはず。「あ、言ってたコンビニあったよ。ココ曲がるんだね」「曲がったら、わかると思うんですけど」少しでも大人っぽく見えるように履いた春色パンプスで足踏みをしながら指定したコンビニのある方を見ていたら、携帯を片手にきょろきょろ見渡しながら角を曲がってきたスーツ姿の男性が現れる。たぶん広瀬さんだ。「私は広瀬さんらしき人見つけました」違ったら恥ずかしいが、ぴょんぴょんと飛び跳ねて手を振ると携帯越しに「あ、僕も北村君、見つけた」なんて言われると甘い囁きのように聞こえてドキドキしてしまう。人影は視線を定めて真っ直ぐこちらに向かってくる。飛び跳ねるのも手を振るのも止めて、直接の声は張り上げないと聞こえないから、電話は切らずに、そのまま電話で話す。「広瀬さん、今日はスーツなんですね」「うん、ごめんね。本社から直接来ちゃったから」「いえ、忙しい中来てもらえて嬉しいです。それに、なんか新鮮」「新鮮?そっか、店にはスーツでは滅多に行かないからね。最近スーツが多くて、窮屈なんだよね。本社に行く機会が多くて。北村君の私服も新鮮かな」広瀬さんも、電話を切らずにそのまま話してくれる。向けられる視線、穏やかなトーンの声、ゆったりとした時間を独り占めしている気分に口元が緩む。グレーのピンストライプスーツにドットのネクタイがおしゃれ。その隣を歩けるだろうかと、こっそり自分の姿を見下ろす。着慣れないフレアスカートは、少し甘すぎるだろうか。「バイトでは制服姿がほとんどですもんね」「服と化粧で、女の人は別人になるね」直接の声が届く距離になり、お互い通話終了ボタンを押す。背伸びして、少しでも近づきたい。目に映して欲しい。意識して欲しい。「今日は特におしゃれしてきたんです。広瀬さんのおメガネに叶いますか?」「なるほど、それで美人度が上がってるわけだ。叶うもなにも、もったいないくらいだ」スカートのすそを少しつまんでみせると、お世辞だろうけれど、嬉しすぎる褒め言葉に舞い上がる。広瀬さんの表情はにこやかなまま、変わらない。照れや熱を目の奥に感じられない。社交辞令だ。わかってる、だから。近づく勇気と、こちらを向かせる魅力が欲しい。せめて、好みでもわかれば、と思ったことも、さらりとかわされてしまう。にほんブログ村
2014.11.10
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ノロノロと皿のペンネを片付けを再開していた祥子さんが、悪魔が浮かべるようなニヤリ顔をしたことに、何やら地雷を踏んだ確信した。ヤバイ。「恋バナって女子の特権かと思ったけど。由香ぴょんとうまくいってるんだ?」「げっ、何で知ってるんすか」あっさり彼女の名前を出されて、彼女を特定されていることにたじろぐ。そう言えば由香ぴょんこと、彼女の由香里もバスケ部のマネだったので、当然縦で繋がっていたか。そうすると、仲のいいマネ同士相談するかもしれない。最後に先輩に会ったのは半年くらい前だったが、由香里を通じてずっと繋がっていた、ということだろうか。どこまで何をどのように語られていたかは、知るはずもない。悪いことをしているわけではないので、別に知られて困ることもないはずなのだが、なんとも言えない羞恥心に顔を伏せて、両手で髪をかき混ぜる。バイトが終わったら、忘れずに連絡することを頭のチェックリストに書き込む。「女の情報網、舐めんなよ。馴れ初めから、最近返事が遅いし、連絡くれないんです、って相談も、記念日にかっわいいチャームもらったってことまで、詳細に存じ上げてますよ」「それって、最初からじゃないっすか・・・てか、チャーム?」「あげたプレゼント覚えてないの?ありえないね。そんなんじゃ、川原はリア充だと思ってるかもしれないけど、由香里ちゃんには寂しい想いしてるよ。あとでメールしとこっと」「自分で伝えるんで、勘弁してくださいよ」明らかに意地の悪い満面の笑顔。間違いなく楽しそうなその顔を恨めしく眺めながら、完全に形勢逆転されたのを痛感する。誕生日にネックレスをプレゼントしたのを覚えているが、『チャーム』とは何ぞや。ネックレスの同意語だろうかと、取りあえず納得する。2つ年下の妹にも、ついこの間、似たような状況を作られたのを思い出す。確か、レポートに追われて由香里からメールが何回か来たのに、繋がっていない携帯に向かって口頭で謝って放置してた。絶対俺みたいな彼氏はいやだと妹に言われても、こっちこそ願い下げだ、と反発してやったが、今思えば結局、レポート提出日まで動かなかった自分を責められているのだろうか。もう、首を縮めて小さくなるしかない。祥子さんは完全勝利の得意気な顔を組んだ両手の上においてこちらを見据える。「なんだったら、相談に乗ってあげるわよ。どっちとっても可愛い後輩だし、お姉さんだし」祥子さんの顔を見ないように机に顔を伏せて、白旗の代わりに両手をあげる。降参だ。相談した内容は、彼女に筒抜けになるというオプションつきになってしまう。祥子さんには絶対相談しないし、愚痴も言わないようにしよう。机に吐いていた場所を額から頬に変えて、機嫌よくラストスパートのペンネに手を伸ばす先輩を見やる。「年のこと言われたら、一生勝てないっすよ」ましてや、1月生まれの俺と、4月生まれの先輩では、1学年の差だが、2歳差になる期間のほうが長くなるというのに。同い年になるチャンスもない。4月生まれといえば、日にちまでは覚えていないが、部活で誕生日月の人はまとめてジュースか購買のパンをおごってもらえる権利が発生したので、自然と覚えた。「そういや、先輩二十歳になるんすよね」「そう!つい最近なった。次の飲み会はおおっぴらにお酒もタバコもOKになったのよね。あ、思い出した、来月のシフトが出たら、歓迎会するからね」「へえ、ココのスタッフみんな結構仲いいし、楽しみっす」「社員の人たちも来るし、かなっぺは即答でOKくれたし。それもどうなの、って話だけど。村上姉さんはお子さん連れてなら、少しだけ顔を出すかもって言ってた」俺を含めてキッチンスタッフが3人、先週入ってきた女子スタッフかなっぺ、先々週入ってきた村上さんはランチタイムメインで入るお母さんだ。「川原、ご馳走様でした。さて、ラストまでもうひと頑張り。皿は持って行くけど、洗うのはよろしく」二人分のパスタ皿を取り上げて、スタッフルームを出て行く祥子さんの後をジョッキを持って追いかける。キッチンの先輩スタッフに祥子さんが「川原、結構使える腕持ってますよ」なんて褒めてくれるのは少しくすぐったく思う。直接言ってもらうよりも嬉しい気持ちを、たぶん祥子さんは知っている。目の前にいる先輩ともっと話をしたいと一瞬思った自分に小さな罪悪感を抱く。(由香里ちゃん、ごめんね)もちろん、嫌いになったりしていない。好きだよ。大事な彼女だよ。ほんとに、そう思ってる。でも、昔抱いた淡い気持ちって、どうしても美化されてしまうから。一瞬の、儚くて甘い思い出をくすぐられただけだから。連絡していなかった、彼女にたくさんの言い訳を並べて、由香里ちゃんを祥子さんと晴香さんが話していた新しいカフェにでも連れて行こう。そういえば、雑誌に期間限定のイベントがあると書いてあった。興味があれば、それにも一緒に行こう。きっとそれで機嫌も直るばっちりのデートプランだ。たぶん。連絡をする理由も出来て、やっと安心してまた皿洗いに向かった。にほんブログ村
2014.11.08
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「うっさい」小さな弱みを握った気分になり、楽しくて興味津々で身を乗り出すと、祥子先輩はピシャリと乱暴な言葉を返されるのみ。「女子力のある人は『うっさい』なんて言わないんじゃないっすかねぇ」「あー、もう!川原と話してると高校生に戻ったみたいになんのよ!今は丁寧にしゃべるようになったもの」祥子先輩は手にしていたフォークを皿の上に放り出して大げさに両手で顔を覆ってしまう。思ったより攻撃力の高い発言だったらしい。先輩は、時々荒っぽい言葉遣いになりやすいが、それが女性らしいイメージを崩すことはなかったので、苦にする必要もないと思うのだが、そこは女性としては考えてしまうところのようだ。確かに、あんまり乱暴な言葉遣いも、過ぎれば気になってしまうが、生まれた家庭環境が一番の言葉遣いを左右する要因じゃないかと思う。「時々言葉が荒い時があるのは気楽に話してもらってるんだと思ってました。俺は気にしたことなかったっす。大丈夫ですよ。見え張ったらしんどいじゃないっすか」自分の皿に残る最後の一口を含んで、先輩の出方を眺める。顔を隠してしまった両手はそろそろと両目が覗く分だけ開かれる。自分が知らない1年の間にずいぶん乙女チックな思考回路が育ったのだなぁと、年上の先輩に向かって失礼な感想を抱える。元々あった乙女発言を部活には持ち込まなかっただけかもしれないけれど。「・・・川原のくせに、生意気」「すんません。今リア充してるんで、恋人募集中の祥子さん相手なら、恋バナは上から目線っす」調子に乗って胸を張ってみる。一応今のところ、可愛い彼女がいるのだから、大きく出られる話だ。実際のところは、付き合っているといっても、蜜月とはいえない状況が続いていて今は微妙なところだったりする。最後に会ったのがいつか、思い出せず、頭を過ぎる悪い予感に一瞬顔をしかめるが、いい方向にだけ思考を向けて幸せそうな顔を作ってみる。ノロノロと皿のペンネを片付けを再開していた祥子さんが、悪魔が浮かべるようなニヤリ顔をしたことに、何やら地雷を踏んだ確信した。ヤバイ。にほんブログ村
2014.11.07
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「おまたせしました」「早いね、ありがと。あーお腹すいた」弄っていた携帯は、すぐに机に放り出して、用意してくれていたウーロン茶をこちらに押しやった。大人しく給仕を待っている先輩の前に出来たてのアラビアータを献上すると、目の前に置かれた皿に目を輝かせて礼儀正しく両手を合わせていただきますとつぶやく。一年もバイトを続けていれば、そんなに珍しい食べ物でもないのに、嬉しそうにフォークを手にする姿はに、思わず顔がにやける。採点する、と言われたので、少し気になりながらも、できるだけ平静を装って自分もペンネを口に運ぶ。ピリッと辛味が効いたトマトソースにオプションの目玉焼き乗せもいい味を出している。半熟にした黄身が絡まって、我ながらうまくできたと思う。先日、家でも、覚えた料理を家族に振舞ったら甚く感動された。元々、台所にほとんど入ったことのない俺が、突然料理をしたことにもびっくりしたんだと思うけれど。もぐもぐと口を動かしながら、祥子先輩は立てた親指と笑顔をこちらに向ける。評価は上々のようだ。思った以上に気にしていたようで、ほっと胸をなでおろす自分に笑ってしまう。家族以外で直接味の評価を目の前で受ける、ということは結構緊張するものだ。すでに店のお客さんに出してるので、プロの味になっていないとおかしいのだが。俺は何も考えず、条件反射のように先輩の方へ頭を垂れると、先輩も同じように何の違和感なくわしゃわしゃとゆるくパーマのかかった髪を撫でる。背の小さい先輩とハイタッチをしても、喜び具合がうまく伝わらない、ということで、祥子先輩の代から、「手が届かない!」「伏せ!」「お座り」なんて言われて、部員はみんな一通りさせられている。特に嫌な気分にもならなかったので、そのまま癖になってしまったようだ。考えたら恥ずかしい気がして、金輪際やめようとこっそり心に決める。「んーおいしいっ、すっかりプロの味だ。ってか、川原の分だけ卵乗ってる。それもおいしそう!」「作ったモンの特権っすよ。先輩、キッチンに全然立たないですよね。いつも誰かに頼んでる」「作ってもらったものの方おいしく感じられるってことを知ってるんです」わからなくもない理由を掲げて、視線を逸らしてしまう。何やら隠したい本音があるのかもしれない。先輩は一口にはやや多い量を口に詰めて口を塞いでしまう。昔から先輩はわかりやすいのだ。隠し事ができなくて、すぐに気持ちが顔に出る。料理もできないはずはないのだ。バレンタインにクッキーの差し入れてくれたり、常に空腹の男子部員に割とマメに何かと食べ物を差し出してくれていた。店では作りたくない理由があるけれど、今は口外したくないということだろう。あくまで彼氏だった、キャプテンがいたから努力していたのかもしれない。特にしゃべらなくても、気まずくはないが、バイトを始めてなかなか話す機会がなかったので折角の機会を大事にすることにした。こちらからは顔半分しか見えず、代わりになんとか縛れる長さの髪の尻尾が咀嚼とともに揺れる。部活の時には見られなかった尻尾に興味を引かれるまま口に出す。「髪縛ってるとあんまり思わなかったんですけど、髪伸びましたね、祥子先輩」「今までずっとショートだったからね。絶賛女子力アップするの」祥子先輩の視線をこちらに戻すことは成功したが、不満顔はそのままで、突き出した唇にペンネが放り込まれる。女子力アップと髪を伸ばす相関関係はあまりわからなかったが、明らかな不満に満ちた視線が刺さってきたので、曖昧に相槌を打って次の話題を紡ごうとした声を遮られる。「川原、私のこと、いつまで先輩呼びするつもり?」「ええ?!進学早々留年の予感っすか」「もう!」意外な希望に笑いをかみ殺して、茶化す。俺の頭を叩くべく伸ばされた左手を逃れて、腰を掛けていた椅子を先輩から安全な位置に離して座りなおす。2年一緒の部活だった気安さのせいか、他のスタッフよりすぐに手が出る気がする。「じゃあ、祥子さんでいいっすか?」ほかのスタッフも大抵名前で呼んでいるので一番の選択肢。今までも名前に先輩付けしていただけで、少しの違和感はあるが、抵抗はない。祥子さんから当然二つ返事で了承が返ってくるものだと思っていたら、思案顔で思いっきりため息まで吐かれた。ちょっとだけ傷つく。「そうなるよねぇ。名前で呼んでくれないってことは、距離を縮めたくないってことかな」フォークを持ったままの右手で頬杖をついて、視線は遠くに向けられる。名前呼びに関しては支障がないが、俺の呼び方は問題ではないようだ。祥子さんの目線の先は冷たいロッカーが並ぶばかり。「男っすか」「うっさい」にほんブログ村
2014.11.06
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手の届く距離 3cm-1「ヴォレンティエリ!」イタリア語で、「喜んで!」という意味。週4でバイトに入り、3週間もすれば、なぞの呪文に聞こえていた言葉が、イタリア語で交わされる注文で、脳内変換に時間がかからず何をすればいいかわかるようになった。そして、注文が入ればまず、何をおいてもこの合言葉これを言う。残念ながらイタリア語をマスターするにはかなり道が遠いが、意味不明のカタカナを口にしていた初日とは、大分変わった。「返事は板についてきたね、川原。北村、休憩入りまーす」忙しさのピークが過ぎたところで、キッチンもホールスタッフも一人ずつ順番に休憩に入るようにしている。遅い晩御飯を摂ったり、タバコを吸いに行く人もいる。そのタイミングなのだろう。部活でもそうだったが、相変わらずフットワークの軽い祥子先輩がキッチンに入ってくる。ホールではくるくるとよく動き、よく笑い、楽しそうに仕事をしている。「川原君、採点してあげるから、ペンネアラビアータ、ペルファボーレ」「ヴォレンティエリ」「心がこもってない」どう転んでも本当に先輩だが、やたら偉そうに先輩風を吹かせて注文をしてくる。頭一つ以上小さい先輩の仁王立ちではたいした迫力でもないが。本当の注文が入るときのように、声を張り上げずに例の呪文を返すと、バシバシと軽くない抗議の手のひらを肩に受ける。高校の時の名残なのか、俺に対してはかなり手荒な対応をしてくる。大体一通りの料理も教えてもらったが、一番の仕事はせっせと皿洗いがメインの仕事。濡れたままの手で水滴を飛ばして応戦する。「遊んでないで、キッチンも休憩回すぞ。川原、祥子ちゃんの注文作って休憩入ってくれ」「わっかりましたー」素直に、皿洗いで冷たくなった手で水を止めて、個人的なオーダーに取り掛かる。自分の分もアラビアータを作るべく、覚えた料理の二人分量を手早く作る。賄いは基本、セルフサービスだ。自分の分は大盛り、プラス目玉焼きを乗っけるアレンジ。以前、勝手にオリジナルパフェを作って食べていた先輩スタッフには驚いたが、基本、何でもありのようだ。残るキッチンの二人に声を掛けてから二人分のアラビアータを持って、スタッフルームに向かう。にほんブログ村
2014.11.05
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スタッフルームを出てすぐ向かいある事務所という名の鍵のかかる倉庫のような小さな部屋がある。金庫とパソコンが幅を利かせて、二人入ったら少し狭いくらいの、無理に急ごしらえしたようなスペース。エアコンもなく、大抵ドアが開けっ放しになっている。そこでパソコンで事務仕事をしている社員で副店長の広瀬修二。彼が今の想い人。バイトの充実する夕方からのシフトで一緒に仕事をすることはほとんどないため、少しでも話せるこの時間は貴重。「広瀬さん、お疲れ様です」「ああ、北村君。お疲れ様」ホールに出る前に、部屋に入ることはないがドア枠に体重を掛けて立つ。この距離感が、今の自分には精一杯。パソコンに向かっていた作業の手を止めて広瀬さんが柔和な笑顔をこちらに向けてくれるだけで、ちゃんと対応してくれる優しさ、と都合よく解釈する。体型だけ見れば、元カレの先輩と比べたら、薄っぺらく筋肉のあまりなさそうな頼りない体型。2ヶ月前に着任した時は軟弱なイメージしかなかったが、飲み会では豪快に飲み、優しい一面やトラブルがあればスマートに対応する姿に大人の余裕を感じられずにはいられなかった。同じコックシャツを着ていても、疲れている顔をしていても、絶賛片思い中ならばどんな姿も素敵に見える。「ココにいるってことは、そんなに忙しくなかったってことですか?」社員は何でもこなさなければならない。シフトで人が足りない時にはキッチンにもホールにも入っている。それ以外にも、事務仕事や店長業務があり、常に忙しく動き回っている。店にいないときは、本社に行っていたり、いつ休んでいるのだろうと、不思議になることもある。「そうだね、平日だし。たいしたことなかったよ。おかげで来月のシフトもできたかな」広瀬さんが両腕分だけパソコンから離れると、背中が狭い室内の壁にすぐ行き当たってしまう。デスクワークで固まったのだろう首を回しながらパソコンの画面を指差す。毎月配られるシフト表がパソコンに表示されている。なんとなく社員用としてのスペースに踏み込めず、画面まで後2歩のところから足は踏み出さないまま、できるだけ身体を中に入れて画面に近づく。広瀬さんにも、もう一歩近づきたいが、その勇気は今のところまだ持ち合わせていない。細かい字のシフト表は良く見えないまま。「今日もらえます、シフト表?」「明日だね、店長に見てもらってからじゃないと。急ぎで見たい予定あるかい?希望は通したつもりだけど」「いえ、いいんです。明日楽しみにしてます。もう行きますね」肩を竦めて、もたれていたドア枠から離れる。広瀬もひらりと手を振ってくれるのに、自分も同じように返す。広瀬さんの勤務をチェックしたい、なんて言えない。他にもチェックしたいことはたくさんある。休みはいつか、仕事が一緒の時はないか。すれ違えそうな日はいつか。ランチから働いているスタッフに声を掛けながら、ディナータイム忙しさに向かう。2ヶ月経っているのに、まだ連絡先も聞けてないという、じれったさ。バスケの試合なら、ガンガン情報収集して、弱点くらいの1つや2つ見つけて、相手の陣地に踏み込む流れを考えてるのに。それもこれも、元カレの怨念かと被害妄想までしてしまう。自信のなさが、知ることが怖くした。片思いの時ほど、楽しい時はないけどね!と自分を誤魔化す。今日だって、バイトに入るまでのあの短い時間で、少し話ができただけで、至福の時、などと自分でも馬鹿馬鹿しいくらい惚けている自覚がある。こんな乙女な思考回路だっただろうか。らしくないと思う自分の腑抜けた気持ちを打ち消したくて、注文を取ってホールから戻ってくる晴香に抱きつくことで解消する。「ええ?祥子ちゃん?どうしたの?」「晴香さんのあまりの可愛さにあてられて」適当なことを言って、また誤魔化す。晴香が可愛いことは自他共に認めるところだが。「祥子ちゃんが素敵なのは知ってるけど、今の一番は誠なの。ごめんね」あとでゆっくり話しきいてあげるから、と軽くかわされる。時間が経てば経つほど、泥沼に足を取られていく気がする。軽く頭を振って、ようやく仕事モードになった。にほんブログ村
2014.11.03
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バイトの開始時間は17:00から。ディナータイムに合わせてシフトが組まれている。 大学の授業が4限までしかない日なら、この時間に間に合うのだ。 店の外まで漂うトマトとチーズのおいしそうな匂いに幸せな気分に浸る。チェーン店だが、カジュアルイタリアンの店でのバイトは休憩時間にお店で出しているメニューをいただける特権があるのだ。 スタッフルームに入ってすぐ右手にあるタイムカードから『北村祥子』と書かれた自分のカードを引き出して、専用の機械に飲み込ませると、時間が印字されたタイムカードが戻る。「お疲れ~、祥子ちゃん」 先客の高島晴香がマスカラで睫を盛る手を止めずに声だけを向けてくる。あまり広くないスタッフルームに一つしかない机に化粧品が広げられている。「お疲れ様です、晴香さん」 年齢も、学年も、バイトの勤務年数も、一年先を行く晴香に挨拶を返して、貴重品と短い丈の上着くらいは入れられるロッカーに荷物を入れ、代わりに制服を取り出す。 スタッフルームの一角にカーテンで仕切られたスペースで、着替えを済ませると、マスカラをアイラインに持ち替えて鏡と対峙している晴香の隣に腰をかける。常にバッチリメイクを心がけている彼女がいるおかげで、自分も頑張らなければ、と思うようになった。一番いい状態の自分を保ち続けるには努力が必要だ、という名言をいただいたのは、バイトに入ってすぐだった。脂とり紙を使ってから、軽くパウダーを直して、口紅を塗り直す。結局毎日しても、あまり上達しない化粧道具は、それ以上どのように使ったらよいかわからず、早々に化粧ポーチにしまわれる。晴香は丹念にリップブラシを使って口紅をひく。 女の自分が見ても、無駄に色っぽい。一年後、自分もこうなっているとは・・・残念ながら思えない。 女子よりは、女性、という形容が合う晴香は、自分の周りにはあまりいないタイプの人間だが、なんとなくうまが合って、バイトを始めてから、一緒に遊びに行ったりもしている。「ねえ、祥子ちゃん。オレンジのチークととピンクチークとどっちが好感度高いかなぁ」「いつもより気合入ってません?これから仕事ですよね」「さっきねぇ、今日から新しく入るって聞いたの。4月から大学生1年の男の子ですって」 少し舌足らずの晴香は二色のチークを片手に、風が起こりそうなたっぷりとしたまつ毛を何度も瞬かせて、嬉しそうにこちらを向く。女子の自分もかわいい、と見惚れてしまうような女らしい晴香さんには当然のように彼氏がいるわけで。「誠君はどうなったんですか、晴香さん?」「誠とは、もちろんまだいい感じよぉ。大人男子って感じで落ち着いてて素敵。でも、年下もいいと思わない?ときめきって大事でしょ」「年下か・・・、あんまり考えたことないですね。元彼は1個上でしたし」 まだ見ぬ新人に想いを馳せる晴香の思考回路は理解できず、首を傾げる。冗談だとは思うが、あまりにも楽しそうに目を輝かせてる姿はきっと『誠君』には見せられないと思う。晴香を真似て、自分の正面に立てた手鏡には、眉間にしわの寄った難しい顔が映ってしまう。バッチリメイクの晴香と比べるとシンプルな顔でも、好きな人の前では、少しでも綺麗でいたい。早く大人っぽくなりたい。大学に入ってからちゃんと化粧をするようになったが、晴香みたいにはうまくできない。実践あるのみ、だとは思うが、努力をする決意をしてから1年。今の想い人は7つも年上だ。想いだけはつのる。 二人で他愛のない話をしていると、バラバラと集まるバイトスタッフの中に、知っているけど、ここでは初めて会う顔がスタッフルームに入ってくる。ひょろりと背が高く、短い髪の青年。「あれ、川原?」 記憶に上がった名前を呼んでみれば、背の高い彼はすぐに反応して、びっくり顔で周りを見渡す。視線が合うと元々のタレ目の目を細くして嬉しそうに声を上げる。「祥子先輩!」「あら、新人君と知り合い?」「あー、はい。高校の時バスケ部のマネやってて、その時の後輩です」 一番よく見かけた制服姿ではなく、ジーンズにパーカーというラフで、なんの変哲もない姿だが、ひょろりと背の高い姿は予想通り、よく見知った人物だった。「川原健人っす、よろしくお願いします」 高校の時から変わらず、犬みたいになつっこく近寄ってきて、川原は並んで座っている晴香さんにも頭を下げる。 周りにいるスタッフにもひょこひょこ挨拶をしている姿をみて、晴香さんが立ち上がる。 背筋を伸ばして立つ晴香より頭ひとつ以上大きい川原が並ぶと、なんとも晴香がかわいらしくみえる。「おっきいねぇ、新人君」「178cmっす。平均よりはでかいですけど、バスケやるなら身長はあって困るもんじゃないですから、もっと大きくなりたかったですね」 手を伸ばした晴香の意図を汲んで、すぐに川原は頭が触りやすいように少し体を屈める。祥子には部活でよく見かけた懐かしい姿。今日あったばかりの晴香にも同じようにするところを見ると、よくしつけられた、やはり犬のようだ。 撫でてもらった箇所を照れたように自分でも触りながら頭を戻して、着替えてきます、と川原は与えられていたロッカーに向かう。早速同じように他のスタッフにも頭を下げている。「顔はぎりぎり男前に入るかしら。何より従順。かわいいわぁ、点数高いじゃない、祥ちゃんの後輩君」「そうですか?素直で可愛かったのは確かですけど」 耳打ちしてくる晴香は化粧ポーチを片付けはじめる。仕事に入るべく、自分の化粧ポーチもロッカーへしまう。 川原を見て、久しぶりに思い出したバスケ部の思い出に、少し切なくなる。元彼はバスケ部の先輩で、別れてからもうすぐで1年経つし、次の恋に向かっているが、忘れかけていた甘酸っぱい思い出はむずがゆい。「さ、今日も頑張るぞ」今の想い人に会うべく、スタッフルームを出た。にほんブログ村
2014.10.31
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手の届く距離 1cm初めて会った時は、まだ意識していることを否定する子供だった。次に会ったときは、お互い決まった相手がいて。その次に会ったときは、貴女には思う相手がいて。いつも手に届きそうな距離に居るのに、その手をすり抜ける。ちっともこちらに気づかない横顔へ、ただ熱い視線を送る。少し手を伸ばしたら届くのに、今の立ち位置が心地よすぎて、最初の一歩が踏み出せない臆病者。気持ちは一方通行から変わらない。何度も伸ばしかけた手は、たくさんの理由をつけて止められる。進むことも引くこともできず宙に浮いたまま。にほんブログ村
2014.10.29
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2 朝起きると、久しぶりに懐かしい天井を見た。 小学生の頃は夏休みの数日を過ごしていた祖父母の家。 中学に入ってからは、さして遠くもない祖父母の家は泊まりに行く場所ではなくなった。 だから、畳に布団も久しぶり。 夜に何回か友達や部長から連絡があったが、すぐに返事をしたくなくて放置。 担任にだけは父親が生きていて、今のところ集中治療室で意識不明とだけ説明した。今日、学校に行く旨も。 幸いなことに、祖父母の家は実家と電車の駅3つ分離れているだけだ。 普段自転車通学している俺としては、普段使わない電車で通学になるため、電車の時間など下調べをしておいた。 自宅からの通学より30分早く出る。少し早すぎるくらいだが、念のため、だ。 普段は睡眠時間が削られるのは痛いと思うところだが、今日はあまりよく眠れなかったので、気ならなかった。 頑張れば祖父母の家から自転車で行くことも可能だったが、病院に向かうため自転車は学校の最寄の駅に置いたままにしてしまった。今思えば慌てていたので鍵をしていたか不安だったが、いつもの習慣は無意識に行われていたようで、ツーロックはちゃんとかかっていて、愛車はどこにも連れされれることなくそのままの場所で待っていた。 自転車にのると、昨日と何も変わらない、同じ一日の始まりに感じる。「直樹、おはようさん」 自転車置き場で鍵をかけていると、すぐ隣に中学から一緒につるんでいる村田龍之介が同じように自転車を止めに来る。一重で目つきが悪いので、第一印象が悪く、すぐに怖そうな人、などと言われてしまう。関西弁がそれに輪をかけてしまうが、どちらかというと繊細で優しい部類に入ると思う。中学からこちらに引っ越してきた彼の、12年分身にしみた関西弁はそう簡単に抜けない。「顔色が悪んやない?」 開口一番の指摘が俺の顔色って、いい奴だ。寝不足だし、いろいろ心情的にキツいし、思わずほろりと甘えたくなってしまう。自転車の鍵をかける龍之介を待って、並んで校舎へ向かう。「昨日、父さん事故って入院しちゃってさ」「そやから昨日早退したんか。大変やったんと違う?」 俺自身の心配をしてくれる龍之介には自然とぽつぽつと話しができてしまう。 下駄箱では知り合いから挨拶を掛け合い、それぞれの教室に向かう。 当然、学校の場所が変わるわけでも、校舎の色が変わるわけでもない。 そこここで仲良し同士が顔を寄せ合って笑いあっている。 何も変わらない。何も起こってない。 全く意識していなかった日常を、一つずつ感じる。 教室のドアを開けると一瞬声が止まり、好奇の入り混じった視線を感じる。これは昨日と違う。 昨日の今日で、自分の身の振り方をどうするべきかわからず、口の中で挨拶をしつつ、向けられる視線を振り払うように目を伏せる。 ふと引っかかる。 いつも、って俺、どうしてた? 意識しだすと、『普通』がわからなくなってくる。「何してんねん」 入り口で立ち止まってしまった俺の背中を、龍之介がつつく。 慌てて足を進めると、龍之介はさっさと自分の席に向かう。 またざわめきを取り戻す教室にほっとしながら自分の席に向かう。「なーおき、はよっ」「のわっ」 後ろからやってきた田村昌斗の元気な声とともに体ごと背中にのしかかられる。元バスケ部の昌斗は無駄にでかい。思わず声が出てたたらを踏んだ俺の背中から、昌斗はすぐに離れたが、ヘッドロックの要領で、強引に席まで引きづられる。俺を座らせると、昌斗もすぐ前の椅子を跨ぐように腰掛ける。自分の席ではないのに我が物顔だ。「おはよ。朝から元気が有り余ってるな」 俺の顔を覗き込んでいた昌斗に、やっと挨拶の言葉が出た。 だからだろう。2枚目とは言いがたいが、愛嬌のある顔の昌斗は目を輝かせて、待ってましたとばかりに口を開く。「思ったより元気そうじゃん。直樹お前なぁ、昨日連絡しても返事ねぇし、どうなったんだよ」「デリカシーがない男はもてへんで」 向かい合う俺と昌斗の隣に荷物を置いて身軽になった龍之介が立つ。 そうだ、いつもの感じだ。「うっせーな、無愛想な龍よりはもてるんじゃね?」「あり得へんな」「何だよ、その根拠のない自信!」 背もたれを抱えるような形ででぎゃんぎゃん噛み付く昌斗に龍之介が短く切り込む。両手をズボンのポケットに入れたまま立っていると龍之介のほうがずいぶん堂々として、大人に見える。二人とも同い年のに、兄弟に見える。「直樹が出て行った後さぁ、一応授業再開したんだけど、ざわざわが止まんなくてさ。でもしょうがねえじゃん?先生がめっちゃ困って何回もさ『あー気持ちはわかるが、今は授業中です』って、すげーウケた。国語の先生だから気持ちがわかっちゃうわけ?って」「昌斗がざわざわの筆頭やろ」 にぎやかな昌斗と静かな龍之介の掛け合いが心地いい。 昨日のことを話す隙を与えないくらい昌斗はしゃべり続けた。それはおしゃべりな昌斗にとっては至って違和感のないことだとは思うが、今は感謝した。 すぐに担任が来て無秩序だった教室が、わたわたと秩序を持ち出す。龍之介は片手を上げてそつなく自分の席に戻る。昌斗も本来の席の主にお礼を言って、借りていた席から立ち上がる。「俺だって、これでも心配したんだってこと」 言いながら、昌斗は俺を乱暴にぐしゃぐしゃとかき混ぜながら自分の席に戻っていく。 昌斗と龍之介の正反対に見える優しさに、胸の重さを少しだけ忘れさせてもらった。代わりに甘やかされているような、何かくすぐったい気持ちに思わず顔を伏せるしかなかった。にほんブログ村
2014.10.27
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病院で見た父さんは口にチューブが突っ込まれていて、たくさんの線が繋がっていた。 点滴とか色とりどりのコードとか。面会謝絶ではないようで、祖母ちゃんがそんな父さんの手を握っていた。 目を閉じて、しゃべらないし、声をかけても反応しないけれど、心電図は動いていて、呼吸もしていて。 『生きていた』。「直樹、ごめんねぇ。浩介、あんた直樹を一人にするんじゃないよぉ。頑張るんだよ」「祖母ちゃんが謝ることないよ」 震える肩をさすりながら、俺は事故を起こした父さんに心の中で毒づく。 祖母ちゃん泣かせんなよ、親不孝親父。 車で単独事故を起こしたらしい。幸い他に被害者はなく、物損があっただけ。見た目、そんなに大きな怪我もないように見えるが、衝撃で折れた肋骨が肺に突き刺さったらしい。一応手術をして肺の穴はふさいだとのこと。 ピーピー機械が鳴る集中治療室で横たわっている父親を見ても、実感が沸かなかった。少し小さく見える病院のベッドの上で、なんだか窮屈そうに見える父親の姿を見ていられず、祖母に声をかけてからその場を離れる。集中治療室のすぐ外にあるソファーに腰掛け一つ大きく深呼吸。重苦しい空気を入れ替えるような大きな呼吸。入れ替えたいと思った空気は病院特有の消毒液のようなにおいを伴う。 病院の匂いは一つ年下の弟、和樹を思い出す。頻繁に体調を崩しては、母親が和樹を抱いて病院へ向かい、その後ろを必死に追いかけた思い出。なぜか同じ兄弟なのに、俺はどちらかというと丈夫にできていたようで、自分の受診より付き添いできた記憶が多い。 そんな弟にも連絡しなければならないだろう。やっと思い立って、電話を使ってよいスペースへ移動すると、そこには祖父がどこかに電話をかけていた。電話が終わるタイミングで声をかける。「おお、直樹。無事着いたんだなぁ、すまんなぁ学校の途中で」 のんびりした口調は祖母ちゃんと似ている。祖父ちゃんの身長は中3の夏には追い越した。項垂れる祖父の白髪の間から頭頂部が透けて見える。現実感を伴わない俺より、息子の生命の危機を聞かされ、あれこれ手配している祖父母のほうが、きっとショックに違いない。自分のできるのは丸まった背中を少しでも伸ばせるように背中を叩いてやることだけ。「大丈夫だよ、呼んでもらってよかった。和樹にも電話した?」「和坊な、もちろんしたよ。浩介の会社にも電話したし。和坊から百合子さんに連絡してもらうように頼んだよ。ああ、全く、大きくなっても世話のかかる息子だ」 うつむき加減で声が少し震えた祖父ちゃんだったが、冷静に連絡すべき人へ連絡を手配していた祖父ちゃんをこっそり尊敬した。しかし。「ってか、母さんには連絡いらないんじゃないの?3年も前に別れた旦那のことなんだし、もう関係ないだろ」 百合子さんと祖父ちゃんが呼ぶ女性は、離婚した父さんの元妻であり、俺の母親だ。ましてや、母親は少し気性の荒い人で、すぐに怒ってヒステリーを起こし、父親と頻繁に喧嘩をしていた。やっと縁が切れて、別の道を歩んでいるというのに、関わりを持たせるのはどうかと。 困ったような顔をする祖父ちゃんに、言い過ぎたか、と気まずく視線をそらして話を代える。「明日は会社無理だよなぁ。父さん仕事中に何してたんだろ。開発部って内勤じゃないのかよ」「おや、浩介のやつ、休みだったぞ」「え、今日父さん休みだったの?」「は、お前知らなかったんか」「親父のスケジュールなんて把握してるかよ」 どこで何をするか、未成年の自分が父親に知らせておくことならわかるが、父さんが俺に言うことは必要も感じなかったし、ほとんどなかった。父さんは母親と離婚してから男手一つで黙々と俺と一緒に生活を続けた。帰りが何時くらいになるか。夕食はいるかを確認するくらいで、お互い自立したというか、あまり干渉しない生活を送っている。 親子二人きりで生活しているのに、少し干渉しなさ過ぎたか、と苦々しい気持ちで天井を仰ぐ。「それより、お前はどうするんだ、直」「え?どうって?」「これから」 顔を戻すと、俺より少し小さい爺ちゃんが、じっと見上げてくる。 口の中で「これから」とつぶやいて、その言葉の意味が広がる。 すぐに答えられず、息を飲む。「祖母ちゃんが今日は病院に泊まっていくから。直坊は今日、祖父ちゃん家来るか?」 自宅ではなく、祖父母の家に来ることを促されるように言われているように感じた。 これから、って。これからって。 そう言えば、担任に電話しなきゃ。 夕飯どうしよう? 今晩帰ったら、俺が最後だからチェーンかけなきゃ。 それから・・・ ぐるぐると思考が廻る。いつまでも逃げてるわけにはいかない。 一番、考えたくないことに突き当たる。 ・・・父さんと俺のこれから?「・・・先生に電話して、帰る」 たっぷり沈黙してから、ポケットの携帯に手も視線も向ける。 考えてもすぐに結論が出る話でもないし、そもそも考えなきゃいけないのか? まだ、何も起こっていないのに。 けして気が長いほうではないが、ちりちりと苛立った感情を抑えるようにポケットの中の携帯を握り締める。「直、父さんが心配なら祖母さんと一緒に泊まっても・・・」「帰る」 今度は祖父ちゃんの言葉を遮ってまで即答した。 父さんの心配?心配なんていくらでもしてやる。一緒に住んでいるたった一人の家族だ。 そうじゃない、心配ももちろんあるが、今自分の中に強くあるのは子供っぽい怒り。 自分でもわかるくらい簡単に、ぶつける先のない苛立ち。 学校に電話をかけようと携帯を取り出した俺の左手を、祖父ちゃんが止めるように掴む。「直樹、祖父ちゃんとこにおいで」 今度は、促すのではなく、強い言葉で。視界の端につかまれた祖父ちゃんのしわしわの手。「大丈夫だって、俺、もう高校生なんだよ?子供じゃないんだから」 言葉通り、しっかりしなければ、と思う気持ちも、これからが見えない心細い気持ちも、何でこんなことになってるかと怒れる気持ちもごちゃまぜになって、安心させるような表情が作れず、祖父ちゃんの顔は見られなかった。「直」「死んでねぇんだろう。明日も学校あるし、自分家帰る」 名前を呼ばれても顔を上げられなかった。 高校生の大の男が、父親が危篤って事態はなかなか経験できないだろう。 でも、今、目の前に問題として横たわっており、考えなきゃいけないことは多い。 それでも、今はまだ、何も起こってないって思いが強くて。 『かもしれない』なんて、ただの不安だ。「直坊、今は一人にならなくていい」 思ったより強い力で祖父ちゃん右腕を掴まれ、祖父ちゃんと面と向かう形に体を向きなおされる。 目に入る 自分より少し小柄な祖父の目が潤んでいるのを見て、自分の言葉が今の祖父にも自分にも辛いものだったことに気づく。祖父ちゃんにとって、俺の父さんは息子なんだから。家族なんだから。 回された暖かい手に、ぐっと涙は飲み込んだ。「ごめん」 同じ喪失感を予感しているだろう祖父に現実をさらに突きつけるようなことを言って。 祖父ちゃんが俺の背中に手を回す。小さいころ、手を広げた祖父ちゃんの胸に飛び込んでいったのを思い出す。「ごめん」「大丈夫だよ、直坊」 祖父ちゃんは俺のことをあまり『直坊』とは呼ばない。子供だって言われている気がして嫌だ、と話したことがある。しかし、今は。 まだまだ子供な俺でごめん。 目の前に迫った肩にそっと額を乗せる。にほんブログ村
2014.10.23
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少し肌寒くなってきたいつもの朝。 にぎやかな話し声の飛び交ういつもの教室。 軽口を言い合い、どつきあって、楽しくやってた。 何も変わらない学校の一日。 授業中に集中せず、こっそりサボっているオレは右耳のイアホンを隠すように頬杖をついて、淡々と流れる授業を眺めている。 一応、黒板に書かれる文字くらいはノートに写しておく。 古典は苦手だ。 使わない古い言葉の物語を読み解いて何になるというのだ。 おえらい研究者の人たちが一所懸命解読してくれたらいいじゃないか。 それよりは計算式で導き出される答えが、はっきりしていていい。 せめて起きているために、と思って耳にしていた女性ボーカルとギターの早引きを追っかけて、意識が半分以上音楽に寄る。 あ、だめだ、とまぶたが落ちる直前だった。 「竹島」 眠ってしまったことを責める声かと思い、慌てて目をしっかり開けて、前を向く。 イアホンを隠した手はそのまま。 しかし、声の主は教壇で授業をしていた先生ではなく、教壇に近い出入口から顔を出しているクラスの担任。 心なしか、いつもより顔が固い気がする。「竹島、ちょっと急ぎでこっちこい。帰り支度して」 教室を出るように言われる、ということはとり合えず居眠りを咎められるわけではなさそうだ。 予想のつかない事態に、携帯を探す格好をしてイヤホンをこっそりはずしてから立ち上がる。 ざわつくクラスメイトを残して後ろの出入口から廊下に出ると、担任が駆け寄ってくる。 帰り支度って、学校も授業も途中で帰らせるような緊急事態? 予想のつかない事態に、ドキドキしながら、できるだけ平然とした顔をして、ざわつくクラスメイトを残して後ろの出入口から廊下に出ると、担任が駆け寄ってくる。「なんすか?」「携帯に連絡入っているだろ?」 表面上は学校での使用を禁止している携帯電話を使えというようだ。マナーモードにしているので気づかなかったが、何度も祖母からの着信があった。 この10分くらいに何度も。「えっと、ばあちゃんから何回も・・・」「お父さんが事故に合われたそうだ。危ない状態のようなので、取りあえずすぐに病院に向かえ」「はっ?」「ほら、急いで」 言われたことがすぐに理解できなかった。 下駄箱へオレを追い立てる担任にせっつかれ、病院に向かった。 これが、当たり前の崩壊の始まりだった。 にほんブログ村
2014.10.16
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目次順番に読みやすいように随時更新していきます突然の日常 (未完)ストーリー:高校生の直樹に訪れた衝撃的な一日からの立ち直りプロローグ1 2 3 4 手の届く距離(未完)ストーリー:大学生の一途な恋 こちらを先に手がけています(2014/11/14) 1cm 2cm-1 2cm-2 3cm-1 3cm-2 3cm-3 3cm-4 4cm-1 4cm-2 4cm-3 5cm-1 5cm-2 5cm-3 5cm-4 6cm-1 6cm-2 6cm-3 6cm-4 6cm-5 6cm-6 7cm-1 7cm-2 7cm-3 7cm-4 7cm-5 8cm-1 8cm-2 8cm-3にほんブログ村
2014.10.15
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ダイレクトメールなど、不要だけれど、住所や名前が書いてあるもの、どうしてます?うちは、シュレッダー。私は手動の。彼は電動の強力なやつ。しかし、先日すごいものを見つけた。ナディアパークで以前見かけた消しポン。正直、最初はたいしたことない、と思いきやためしに押せるのがあったので、チャレンジ。すごい!ちゃんと消える!まったく個人情報が見えない!すんばらし!!で、たまたまホワイトデー近くだったので、彼に「プレゼントとして買って~vv」とおねだりしてみたが、プレゼントっぽくないから、と却下。・・・ううう、おねだりしたら買ってくれた♪ってのを経験したい・・・普段おねだりすることなんて、ほっとんどないのに~><で、なんでこんな話をしたかというと、今日、テレビで消しポンについて紹介をしている番組があった。自分が注目していたものだけに、おお!と思って。やっぱりいいんだ~と再確認。次見かけたら買おう~っと思っていたが、もしかしたら品切れとかになってそう・・・テレビの影響って大きいからな~
2008.03.24
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半年待って、やっととどきましたよ。でも、いい感じに仕上がりました♪で、クチュリエのフラワーアレンジメントの写真が変わって、そろそろやめようかな~と思っていたのですが、これなら作りたいな~とまた思って、フェリシモの戦略に乗せられました^^;
2008.03.04
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頑張ったな~というのが感想。やりきった!って達成感はあります。・・・もうしばらく刺繍はいいや~(苦笑)
2008.02.24
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ニードルポイントで刺しゅうするラブリーポーチ ってやつが花柄のなんでもいいから~ってやつで届きました。久々に刺繍。やり始めるとやっぱりハマるのが私。せかせか必死にやってます。途中経過をば。こんな感じ。バラの一個をアップしてみると。こんな感じ。遠めでみたほうがいい感じかな?さて、本当はもう少し進んでますが、あと半分!細かいところは概ね終了しているので、ざくざくハーフステッチをやっていきます♪
2008.02.16
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手作り手作りと言い続けられて、プレッシャーをかけられて、一ヶ月ほどをすごし、仕事明けに頑張って作りましたよ。さくさくクッキー♪われながら、なかなか上出来☆彼も大絶賛してくれて、作ってよかった。うまくできてよかった^^;
2008.02.14
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ジョニーさんの姿に誘われて、見に行きました。 予告を見た瞬間、「あ、シザーハンズ」と思わせる風貌。 「あ、ティムバートン。。。」と思わせる色使い。 ジョニーさんはジョニーさんらしい おかしくなってしまっている風貌も表情も とってもジョニーさんはまり役!って感じ。 相手役は『チャーリーのチョコレート工場』でも出ていた ヘレナ・ボナム=カーターさん。 この人結構すきなんだよね~。 なんとなく。 なんとなく。 娘役のジョアナをやってた女優さんは ホント綺麗。 抜群に光り輝いていた。 光り輝かせていたんだろうけど、 ちゃんと光り輝いてた。 美しい~~~~~~!って感じ。 ミュージカルで、ジョニさん、いい声ですね。 で、ストーリーなんですが、 正直、好きな話じゃなかった。 もっと最後は救済とか光がある話かと思ってたんですが、 そういうことは0。 まあ、見方にもよるんだろうけど、 復讐に燃える悪魔の理髪師っていうのはいいんだけど、 それ以上もそれ以下もなく。 話の冒頭でその話もいきさつもわかって 復讐する!って話なのもわかって、 それ以上もそれ以下もない。 話がそれ以上何もない。 予告編がすべて。 「いらっしゃいませ。 そして、永遠にさようなら。」 という、なるほど、といわざるを得ないような すばらしいキャッチコピー。 キャストを愛でるのには素敵な映画です。 <ちょっとネタバレ> しかし、ね。 やっぱり無実の人をバッタバッタ殺していって、 復讐は意外とあっけなく。 そして、複線が弱い。 もう少し複線張ってもよかったかな~ 時間的に無理だったのかもしれないけど。 そりゃ、最後は自分の身に悪が降りかかっても それは仕方ないでしょ。 因果応報。 みたいな映画。 基本的に平和で、幸せな最後を希望。 なので、☆は1つ。久しぶりに次々と見たい映画が相次いで小池徹平くんと玉木宏さんの出る「KIDS」大型のファンタジー映画「ライラの冒険」話題の「陰日向に咲く」ネッシーの話?「ウォーター・ホース」感動作だという「テラビシアにかける橋」いよいよ始まるデスノートの「L」の話時間がなくて全部は見にいけそうにないけど、見れるものはぜひ映画館でみたいなぁ
2008.02.05
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そして、最後に早雲山にロープウェイで上って黒卵と黒カレーを食べて帰ってきました♪黒卵は有名ですね。殻が真っ黒のゆで卵。黒カレーもなのかな?あんまり辛くなくて、おいしかった~vカレー皿がなかなか斬新でおしゃれな感じ♪ちなみに、ご当地キティは当然黒卵をかぶってました。
2008.01.14
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箱根にも初めて行きました。箱根駅伝で有名なあの箱根。まず、行ったのは『ガラスの森』どこにでもありますね。ガラスとオルゴール。でも好き^^中に入ると広々と庭。いいですね~でも、寒い。凍結注意の看板があるほど。気温は3度。仕方ないですね。緑の○のように山には雪が積もってるほどですから!青○の木も素敵でしたv近くに寄ると枝に小さなガラスがいっぱい飾ってあってそれが反射してキラキラvキラキラツリー♪(安直・・・)いい仕事してますね~ピンクの○は不思議なことにシャンデリアですと。電気をつけたらどんな感じなのかな~そして、たまたま仮面を貸してくれるフェアをやっていたのでお借りしましたvマントに仮面姿の人があちこちにうろうろ。楽しかったです^^
2008.01.14
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