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2014.12.09
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「健太!健太ー!」
立ち上がって声の主を探す。長い髪を揺らして必死な様子で走っている由香里を見つけて少しにやけた。
遅れたからってそんなに必死にならなくてもいいのに。
「由香里、こっち!」
手を伸ばせば目印になる長身はこういったときに便利だ。由香里も気づいたようで、真っ直ぐにこちらに向かってくる。
「走るよ、ついて来て!」
俺の前で止まることなく、手首を掴まれて、引っ張られるまま走り始めた。
「何、どうしたの?」
「後で!」

何故だかわからない突然のマラソンに仕方なくついていく。
途中でさっき自分の元を離れたばかりの晴香さんたちに追いつき、「ども」とすれ違い様に声をかけた。駆け足の俺たちに目を丸くしていたが、その姿もすぐに遠くなる。
なかなか足を止めない由香里は理由を言わないので、後ろにちらりと視線を向ける。
日常生活でいきなり鬼ごっこもないよな、と思ったが、同じように走ってくる男に気づく。
「ね、由香里ちゃん、なんか追いかけられることした?」
「した!だから一緒に撒いて!」
足を緩めることも振り向くこともなく、由香里は叫ぶ。
追いかけてくる男との距離はまだある。
少し迷って、体重を掛けて方向転換する。
「由香里、こっちきて」
体重は当然俺のほうが重い。由香里をなんなく止めてデパートの中駆け込む。

「座れるとこ。隠れるなら人の中だけど、俺でかいから動いてると目立つんだよ」
エレベーターは密室になるから避ける。エスカレーターも人が多くて駆け上れないのでダメ。人の少ないデパートの階段を駆け上がり、別棟への連絡通路を渡ってまた階段で、今度は駆け下りる。地下まで降りるとイートインスペースを併設している店に空席の有無を確認する。席がなければ、もう一走り、と思ったが運よくすぐに入らせてもらえた。思ったより広い店内で入り口からすぐに見えない席に案内されたのが幸い。
すっかり温まった身体を椅子に落ち着け、向かいに倒れこむように座るゆかりを見やる。
どれだけ走っていたかわからないが、顔を伏せて息を整えている。
追手の姿を心配したが、こちらからも店の入り口は見えない。

顔は伏せたままだが、ようやくちゃんと座ることに成功した由香里にメニューを押し出す。
「由香里、生き返れそう?俺コーヒー」
「お、同じの」
そわそわしているオーダー待ちのスタッフにコーヒーを頼んで由香里に向き直る。
久々のデートが思わぬスタートで聞きたいことは多い。近況よりも先に、現状と今後の対策が先決。



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最終更新日  2014.12.09 10:26:35
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