趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

January 7, 2011
XML
カテゴリ: 国漢文
【本文】おなじ女、内裏の曹司にすみける時、忍びてかよひ給人ありけり。頭なりければ殿上につねにありけり。雨のふる夜曹司の蔀のつらにたちよりたまへりけるもしらで、雨の漏りければ、むしろをひきかへすとて、

おもふ人雨とふりくるものならばわがもる床はかへさざらまし

となむうちいひければ、あはれとききて、ふとはひいりたまひにけり。

【注】
・おなじ女=右近。
・曹司=つぼね。私室。
・蔀=日差しや風雨をよけるために、片面に板を張った格子戸。

【訳】同じ女性が、宮中の個室に暮らしていた時、こっそりと人目をさけて彼女の所にお通いになる人がいたとさ。役所の長官だったので、殿上の間にいつも居たとさ。ある雨が降る夜、彼女の部屋のしとみ戸の正面に立っておられたのにも気づかずに、雨が漏ってきたので、むしろを裏返しに敷くというので、

もしも、愛する人が、今夜の雨が急に降り出したように、とつぜんやって来てくれていたなら、私の部屋の雨漏りして、また、彼が来ないので流した涙に濡れた寝床の敷物は、ひっくり返さないですんだのになあ。








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  January 7, 2011 02:01:13 PM
コメント(0) | コメントを書く
[国漢文] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: