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坂本良子が目の前にいる。夢ではない。過去ではない今、こうして目の前にうろたえた彼女が確に存在した。背が高く、すらっとした美人。生徒には人気があり、誰からも好かれ明るくて優しいと評判の音楽教師。あれから十数年を経た今、その面影はどこにもない。ボサボサの頭によろよろのシャツ、でっぱったお腹に…… それはもう別人のようだった。肩から下げているのは、まだレジを通していない品物入りのバッグ。彼女はあの日、音楽室で泣いた。自分の誕生日を覚えていてくれた生徒に、そして誕生日ソングの合唱に涙を流して喜んだ。それから二日後、俺の前に現れた彼女は、こう言った。「君がみんなに私が泣いたってことを、馬鹿にして言いふらしたのね」断定的なもの言いだった。犯人はすぐに分かった。いじめられっ子だった俺。青痣の耐えなかった体。ロボットのような毎日を送り、全てを諦めていた心。そんな俺が「違います」とはじめて勇気を振り絞った訴え。彼女は憶えているのだろうか?「見逃してください」ハッと我に返る。今の彼女が俺に訴える。あの時の彼女は答えない。そしてその場を去っていく。卒業までの間、ずっと彼女に避けられていた。それじゃあ今の俺は?自分に聞いてみた。わからない。ただあの頃の自分に彼女がダブって見えた。それと同時に「逃げていたのは自分だったのかもしれない。たぶんそれは全てに対してずっと今まで」そんなことを思った。「お客様どうされました?」今の俺はこう答える。「……」彼女は無言のままだった。「何かあったらお申し付けください」それだけを言い残しその場を去った。彼女が鞄から品物を棚に戻すのが遠目に確認出来た。 もう坂本に会うことはないだろう。そしてもう思い出すこともない。そんな気がした。あの時自分はどうすれば良かったんだと後悔したり、今ならこれが一番良い方法だったなんてわからない。答えはたぶん永遠に分からないのだろう。でもそれで何が悪いのだと思った。積み下ろしの荷物を取りに、いったん店を出て倉庫へと向かった。九月の夜空は季節に似合わず、身に凍みるほどに冷たかった。 珍しく? いや、ここでは初めて真面目なお話を書いてみました。
2007.03.27
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調子が悪い最近。。今日はとくにひどく、熱は47度しかないのですが、喉がちょっといたいです。肌も象牙のように弱く、100メートルは4秒もかかる。お腹が痛いとコンビニに行けば、誰かが入ってやがる。お金を払ってでも、トイレのコンビニを作ってくれと考えてしまう。とにかくリア・ディゾンが気になる。彼女をなんとか出来ないものかと、深夜真剣に考える。ドラマを見ると、ついつい主人公の気持ちになりすぎてしまい、注意される。石田ゆりこは職場を辞めるべきだ!!やはり風邪でしょうか? ではおやすみなさい。
2007.03.21
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「嫌ならいいよ」と俺は不機嫌だった。「ごめん...」彼女のそんな声も耳には届かない。今さらなんだって言うんだ。一人ごちた。そもそも今回の旅行は彼女の方から持ち込まれたものだった。そのくせなにもしない。結局行き先から宿まで一式を、すべて俺が手配をしたのだ。なのに宿が嫌だとぐずりだした彼女。彼女の希望で温泉付きの部屋をとった。それなのに……。俺はたまらず「一人で泊まるから」と言って宿の敷居をまたいだ。「ごめんってば...」彼女も後をついてきた。そして俺はそんな彼女を無視して、目の前のタッチパネルを押した。『505号室です。エレベーターからどうぞ』 館内を無機質な声がこだました…。
2007.03.11
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十年振りに息子が帰ってきた。娘の格好をして。「お父さん。聞いて欲しいことがあるんです」しごくまじめに息子は言う。「なんだ」と私は答えた。言いたいことは分かっている。でもそれは息子の口から聞かなければならないのだ。そして息子は言った。「私は、いや俺はゲイなんだ......」 息子は元気に派手な衣装を着て、仲間達と踊っていた。仲間はみなゲイだった。華奢で本物の女性にしか見えないものもいる。筋肉りゅうりゅうでゴツゴツしたものもいる。髭の濃いものも髪の毛が薄いものも。そして息子はそんな中の中心にいた。そしてみな綺麗だった。外見うんぬんじゃない、性別がどうとかじゃない。素直にそう思うことが出来たのは、彼ら、いや彼女達が一生懸命だからだ。ダンス大会は終わった。息子のチームは惜しくも二位だった。泣き崩れる息子達。でもそんな息子達が誇らしく思えた。息子とその仲間達は大会終了後、私のいる応援席へと駆け寄ってきた。思い切り抱きしめてやりたい。本当にそう思った。みなが一応に泣き崩れていた。勿論息子も。そんな姿を見て私は涙を拭い、彼等、いや彼女達に精一杯の大声で言った。 「男が女の腐ったみたいに泣くもんじゃねえやい……」
2007.03.06
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桜舞い散る中を振り返りもせず、ただ校舎をズンズンと歩む。なんだか歌詞にでもなりそうだ。そしてなぜか懐かしい。その先には......栄光が待っている。そう未来を信じて真っ直ぐに進もう。春の陽気に誘われて、ちょっと寄り道したけれど、明日はきっと晴れるから♪ とうとう俺はここまでやってきた。さあ、顔を上げて前へ進もう...ん?この風景何処かで見たような。デジャブ!?今はもうそんなことはどうでもいい。未来を掴むのだ。そして俺は顔を上げた。「あ、あった~」思わずガッツポーズを取った。大学受験に合格したのだ。喜ばずにはいられなかった。そしてすぐにこの喜びをと、母に電話をかけた。「もしもし母さん?志望校に合格したよ」思わず声が裏がえる。それに対し、母も興奮を抑えられぬ勢いでこう言った。「おめでとう!やったわね。八度目の正直よ!!」
2007.03.04
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先月兵庫県にある城崎温泉に行って参りました。喉が乾いたのでジュースをと思い… ……!?。 心臓が高鳴りました。。
2007.03.03
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