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「そろそろ吐いたらどうだ。お前の会社にも今連絡をとってるところだ。意地を張っても仕方がないぞ」
不機嫌にそう発する中年男。こいつは刑事だ。そして俺は取り調べ室で尋問されていた。だがなぜこんなことになったのかわからない。
「あんたね~。被害者の女の子は間違いないって言ってんだよ」
中年の刑事はねちっこく聞いてくる。
「だから俺は何もしてないですよ」
そう答えるしかなかった。本当に何も悪いことはしていないのだ。
「でもね。あんた触ったんでしょ?」
もうこの台詞は何回聞いたことだろう。そして「触りましたよ。でも何がいけないんですか?」と俺の返答も同じだ。
「それが痴漢だって言ってるんだよ。分かるかい?」
「触っただけでですか?」
「そうだよ。あんたあの子と初対面だろ? 無理やり触られたって言ってるよ」
「だからなんなんですか。初対面でも触ったらいけないんですか?」
「当たり前だよ。お前は馬鹿なのか? 彼女にすまないとは思わないのか?」
中年刑事は机を強く叩いて威嚇してくる。
「すまないも何も、ちゃんとすいませんと最初に謝ったんだからいいでしょ」
俺も段々と腹が立ってきた。
「謝ったらなんでもしていいのか!!」
中年刑事はさらに上をいく。
負けじと「あたりまえでしょうが」と返す。
「お前は素人の子を風俗と勘違いしているんじゃないのか?」
「いい加減にしろよ!!」
とうとう我慢出来ずに俺が立ち上がろうとしたその瞬間、いきなり取調室のドアが開いて若い刑事が顔をのぞかせた。
そして「警部。その人は白です」と言った。
「なぜだ?」と警部は慌てて聞き返した。
「はい。その人はコンサート会場の警備員さんです。会社に確認とれました」
中年刑事は不服そうに頷き、 若い刑事に向かってこう返した。
「ボディーチェックは犯罪にはならないのか?」
それを聞いて俺は中年刑事にこう言った。
「意地を張っても仕方がないぞ」