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昭和二〇年四月二十一日十七時 「隊長、生き残っているのは我々だけです。味方の砲撃が全て沈黙いたしました」 「いま、この洞窟にいるのは何名か?」 「女子救護班三名、女子協力隊一名、そして彼女が背負っている赤ちゃん、一人であります。 負傷兵十五名のうち八名は、夜襲攻撃を敢行して全員死亡」 隊長は下腹部からはみ出た小腸を中に押し込み、サラシで固く巻いた。 「知念上等兵、きさまに命令する。この会計隊の重要書類を死守し、泳いで本島にたどり着き、国頭支隊長、宇土大佐に届けるのだ、わかったか!」 知念上等兵は敬礼してその命令を復唱した。隊長はそれから三名の女子救護隊と、女子協力隊、つまり、一般主婦と乳飲み子の母に向かって叫んだ。 「貴様ら女は最後の最後まで生き抜け。死ぬのは男だけでいい、分かったかー」 隊長はそう叫んだあと、生き残りの負傷兵を率いて軍刀を振りかざし、轟音炸裂する洞窟の外へ飛び出して行った。髪を切り落とした軍服姿の女達は、急造爆雷を背負いその後を追った。赤子を背負った若い母親も竹槍を持ってその後に続いた。 伊江島での最後の突撃を敢行した負傷兵の中に私の父もいた。その事を母に知らせてくれたのは、本島へ泳いで辿り着いた知念上等兵で、戦後四年目の夏であった。
2010年07月21日
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