★モイラの名画座★

< 新しい記事

新着記事一覧(全1143件)

過去の記事 >

2007.02.16

女は二つの顔を持つ★「昼顔」

(10)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

「アンダルシアの犬」など、斬新で幻想的、前衛的な映像で観客を魅了した（混乱させた、とも言えますが）名匠ルイス・ブニュエル。
そんなブニュエル監督が、フランスの美人女優の代表格のような（と、モイラが勝手に思ってる）、カトリーヌ・ドヌーヴを主役に撮った傑作が、この「昼顔」（'67年　仏・伊）！

昼顔　カトリーヌ・ドヌーヴ【中古DVD/レンタル落ち/送料無料】

何不自由ない医師の若妻セブリーヌ（ドヌーヴ）は、夫との性生活に恐怖心を抱き、夜、夫を避けていた。
彼女は少女の頃、中年男に性的いたずらを受けたことがトラウマとなり、
彼女の肉体は異性とのふれあいを拒んでいた。
しかし心はうらはら。夢の中で、見知らぬ男に肉体を鞭打たれたり、屋外で全裸に近い姿で男たちに投げ出され、「淫売！」とののしられながら顔や体に泥をぶつけられ、汚されたり‥‥
そんなアブノーマルな性的夢想に、彼女は心からの喜悦を覚えるのだった。
肉体と心の矛盾を抱え、悶々としていたセブリーヌは、ある日、上流階級夫人仲間の一人が、夫に内緒で売春をしていると聞き、
今まで肉体の奥底でたぎっていながらも目をそらしていた肉欲に火がつく。
そして、自分もその売春クラブに足を運び、上流階級夫人でありながら、昼は若く、匂いたつような美しい肉体を、男たちに提供する娼婦となる‥‥！

昼は娼婦。夜は上流階級の貞淑な妻‥‥
わずか２４歳で、こんなむずかしい役に挑んだカトリーヌ・ドヌーヴには、まったく脱帽です！
彼女の目鼻立ちは、整っているけど、色気に乏しく、肉体も豊満とは言いがたい。
どちらかと言えば「少女っぽい」顔立ち、体つきなんですよ。
だからこそ、娼婦を演じても、淫靡で薄汚い雰囲気がぜんぜんない。
むしろ男たちと一回限りのまぐわいを続けていくうちに、どんどん美しく変貌する。
この映画を観ていたら、「女は二つの顔を持つ‥‥」
そんな言葉が、モイラの脳裏をよぎりました。
「貞淑な妻と娼婦の顔を使い分ける女」って、ある意味、男性の理想の女性像じゃないかな？
ただ、男性はそういう女性を、自分の妻にするようなことはしませんね、絶対！

「昼顔」と呼ばれる娼婦になったドヌーヴも美しかったけど、
泥で男たちに汚される彼女は、もっと美しかったですね。
美しいものは、完膚なきまでに汚され、おとしめられると、皮肉なことに、その美しさがさらに輝いて見える‥‥そんな気がしました。

公開当時は「変態的」とも言われたこの作品。
ひとつ間違えば、とんでもなく汚らしい映画になってしまうところを、
そこは名匠ブニュエル！ヒロインの心理描写を丹念に描き、彼独自の映像美を駆使していることで、
絢爛たるエロティシズムを描きながらも、非常に格調高い名作に仕上がっています。

★もっとルイス・ブニュエル監督！★