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2007.03.09

ピエロの仮面の下の哀しみ‥‥★「透明人間」

(8)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

透明人間が主人公の映画は、古今東西数々ありますが、
1954年に東宝が製作した「透明人間」は、とても哀しいお話です。

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クリスマスが近い頃、銀座の街をピエロの化粧と扮装でプラカードを掲げて歩くサンドイッチマン・南条（河津清三郎）。
その銀座で、車が見えぬ人影を轢き、死んだ男がなんと透明人間だったという、奇怪な事件発生！
実は太平洋戦争中、軍部は兵士を透明人間に仕立てて、特攻隊を結成する作戦を秘密裏に行ない、２人の兵士が実験台になった。
ところが、透明人間になることには成功したものの、二度と普通の人間の身体に戻れなくなってしまった。
一生、人の目に見えない姿のまま暮らす‥‥その重い十字架に耐え切れずに、男は車に飛び込み自殺したのだ。

この透明人間の自殺を皮切りに、透明人間をかたった強盗団が現れ、次々と凶行を重ね、東京中を恐怖に陥れる。
そんな時、南条を慕う盲目の少女の祖父が、「孫娘の目の手術代がほしいだろう‥‥？」と、強盗団に金で誘惑され、その手先にされた挙句、無惨に殺されてしまう。
少女にクリスマスのプレゼントに、オルゴールを贈ると約束していた南条は怒り狂い、
たったひとりで強盗団に立ち向かう決意をする。
実は‥‥彼こそが、かつて軍部によって透明人間にされた特攻隊員のたったひとりの生き残りだったのだ！
透明人間による怪事件を追う新聞記者・小松（土屋嘉男）の前で、メイクをとり、ピエロの服を脱ぐ南条‥‥
すると‥‥何も見えなかった!!

存在するのに、人には見えない‥‥ こんな哀しいことはないでしょう。
一生、人の目に見えぬ姿のまま、生きなければならないという残酷な運命を背負いながらも、
誰にも迷惑をかけずに、世の片隅でひっそりと生きようとする南条の生き様には、涙があふれます。
日比谷の野外音楽堂で、密かに思いを寄せるナイトクラブの歌手・美千代（三条美紀）に、自分の正体を打ち明けるシーンは、胸が熱くなりました。
「こんな身体だから、普通の男と女の交際など望みません‥‥」と、南条は小声でつぶやきますが、
美千代は「あなたが透明人間かどうかなんて、問題じゃないわ！」と言い返す。
三条美紀さん、妖艶な上に、強くて潔い女性を、見事に演じていましたね。

円谷英二先生の透明人間の特撮も、見事でした。
見えない相手に演技をする役者さんたちも、なかなか骨が折れたと思います。
モノクロームの映像が、時代を感じさせますが、それゆえにカラーよりも美しく、不思議な世界を再現しています。

もうこれ以上は書きません。あとは作品をごらんになってみて下さい。

★もっと円谷英二！★