★モイラの名画座★

< 新しい記事

新着記事一覧(全1143件)

過去の記事 >

2007.04.10

悪徳金融業者に闘いを挑む！★「錆びた鎖」

(2)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

日本人離れした容貌がトニー・カーティスに似ていることから、トニーと呼ばれ、
得意の水泳で鍛えた逞しい肉体と、どこか憂いを秘めた独特の表情が、当時の若者たちの人気を集めるも、
不慮の事故でわずか２１年の生涯を閉じた赤木圭一郎‥‥
きょうは彼の主演映画「錆びた鎖」 ('60年　日活）をとりあげます。

錆びた鎖(DVD) ◆20%OFF！

横浜の荷役会社・長岡企業の次男坊英二（赤木圭一郎）は大学生だが、勉強よりも、逞しい肉体を使って汗を流して働くのが好き。
きょうも朝早くから、顔なじみの沖仲士たちと一緒にはしけに飛び乗り、
陽気に歌いながら、もりもりと荷役の仕事に励む。
一方、兄の健一（小高雄二）は、社長の父（小沢栄太郎）の片腕としてデスクワークに励む秀才型。ハンサムで人あたりがよく、何より育ちのよさを感じさせる。
対照的な兄と弟だが、兄弟仲は良い。
ところがある日、父は悪徳金融業者に手形を騙し取られた挙句、不審な死を遂げる。
健一は焦って、手形をなんとか取り返そうとするが、そこは世間知らずの秀才、
海千山千の悪党どもに勝てるはずもなく、父の会社はまたたくまに悪徳金融業者の手中に‥‥
英二の怒りが爆発！彼は一介の沖仲士となって、自ら悪党どもの懐に飛び込み、敢然と闘いに挑む‥‥！

秀才で世間知らずの兄と、優等生じゃないけど、世間を多少は知っている弟。
この設定は、ジェームス・ディーンの「エデンの東」からいただいたものだそうです。
トニーがのちに、ジミーと同じような死に方をして、「日本のジェームス・ディーン」と呼ばれるようになったのも、因縁だったのでしょうか？
主演の赤木圭一郎の、演技力は稚拙ながらも、溌剌とした逞しい青年役は見事でしたね。
♪真っ赤に燃えた太陽が、たぎる血潮のシンボルさ‥‥
という主題歌を、冒頭、はしけに乗るシーンで歌うのですが、この歌が哀調のこもった「黒い霧の町」や「霧笛が俺を呼んでいる」とは違って、底抜けに明るく、若さがはじけるようで、とても良かったです。
マドンナは、眼が大きいことからリャンピンと呼ばれた笹森礼子。
美人じゃないけど、かわいらしい彼女が、沖仲士が行く酒場で、焼酎をぐいぐいあおってぶっ倒れ、あとでトニーに担がれるシーンが、笑えました。
秀才の兄・小高雄二も好演。その恋人役の白木マリも、なかなか色っぽかった。彼女は「必殺！」シリーズの気の強い奥さんのイメージが強いけど、当時はグラマーで売っていた人だったんです。
でも、一番いい味出していたのは、沖仲士の親分・西村晃。
この人は日活アクションではよく悪役として出ていましたが、今回は善玉。
「俺ぁ今の若えモンは嫌えなんだ！」と言いながら、トニーを助ける気のいいおじさんを、それは上手に演じていました。さすが名優と呼ばれた人ですね！

モイラが赤木圭一郎の名前と顔を知ったのは、わりと遅く、１３歳の時です。
その年の夏、通っていた私塾のキャンプに東北のとある村に出かけ、
村の小さな小学校に寝泊りしたのですが、
その職員室になぜか、赤木圭一郎のLP （なつかしい言葉！）があり、
「帰ってきたトニー」というタイトルと、彼の顔を目にしたのです。
モイラはトニーのややはにかんだようなジャケットの顔に、思わず目が釘付けになりましたね。
「うそ‥‥日本の映画界にこんなカッコイイ人がいたの?!」
それからというもの、中学時代は赤木圭一郎がモイラの理想の男性でした。

監督は「渡り鳥」シリーズの斎藤武市。
アクション映画というより、さわやかな青春映画です。

★もっと赤木圭一郎！★