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2007.04.11

残酷さと清らかさ★「処女の泉」

(4)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

スウェーデンの巨匠と言えば、イングマール・ベルイマン監督。
牧師の息子として生まれた彼は、神と人間の関係、ことに葛藤、対立を、自身の作品の中に描き出しています。
その中でもひときわ評価が高いのが、1960年の「処女の泉」でしょう。

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この映画は、「３人の羊飼いが、１人の処女を妻にした」という、スウェーデンの古い伝説を題材にしたものです。
伝説の中では、羊飼いは３人とも大の男なのですが、映画では1人は１２，３の少年になっています。

時は中世。スウェーデンのとある村に、地主の館があり、
主人（マックス・フォン・シドー）には、２人の娘がいます。
姉娘インゲリは醜い上、未婚でありながら妊娠し、
それゆえ、キリスト教の信仰の厚い家族から疎まれ、北欧で古くから伝わるオーディンの神に救いを求めています。
一方、妹娘のカリンは美しく、特に長い金色の髪の美しさは目を見張るよう。優しい心の持ち主で、信仰心が厚く、「結婚するまでは、男性に体を許さない」を信条としています。
そんなカリンは、父と母から蝶よ花よとかわいがられています。
ある日カリンは、インゲリを伴い、馬に乗って村はずれの教会に出かける途中、
森の中で、３人兄弟の羊飼いと出会います。
心優しいカリンは、腹をすかせた羊飼いたちに昼食のパンを分けてあげ、食前の祈りを神にささげますが、
羊飼いの兄２人は、無垢なカリンに襲いかかり、レイプします！
そして、処女の清らかな肉体をむさぼるだけむさぼった挙句、斧で殴り殺すのです！
カリンに反感と嫉妬を抱き、レイプの一部始終を木陰からじっと見ていたインゲリも、これには大ショック！
主人は無垢な愛娘を惨殺された恨みから、「汝の敵を愛せよ」というキリスト教の教えにそむき、
羊飼いたちに壮絶な復讐をします…！
そして、復讐が終わったあと、神の奇跡が…！

北欧の深く、清浄で美しい森の中、清らかな乙女が暴漢に次々レイプされる場面は、ショッキングでした。
カリンが美しい処女だから、なおのことレイプの場面が凄惨に目に映るのです。
キリスト教の信仰に裏打ちされた少女の優しさがあだとなったという設定は、まことに皮肉というか残酷というか…
「信仰とは何か？神は人間にとった何なのか？」を、常に作品の中で問いかけたベルイマン監督らしい設定です。
父親は愛娘を惨殺されたことで、おのれの信仰心を試されたのですね。
彼は、「真にキリストをあがめる者ならば、復讐は自分では行わず、神に託すものだ」という聖書の教えにそむくのです。
この映画は、「神は人の心を本当に救うのか…?!」という問いかけをしているようです。
だけど、ラストの神の奇跡には、救いがありましたね。
処女がレイプの果てに無惨に殺され、サタンに支配されていたように暗かった森が、
いっきに清らかな森に戻ったようでした…

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