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2007.04.18

平和を脅かす者は許さぬ！★「大魔神怒る」

(15)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

米国ヴァージニアでの大学構内大量銃殺事件、長崎市長暗殺と、このところ市民の平和を脅かす事件が相次いでいます。
こういうときにこそ、この人（？）が登場してほしいものです。
その名も‥‥ 大魔神！
きょうはそのシリーズ第２弾「大魔神怒る」（'66年　大映）を紹介します！

【中古】大魔神怒る　デジタル・リマスター版／本郷功次郎,藤村志保,三隅研次（監督）,伊福部昭（音楽）【中古】afb

時は血で血を争う戦国。しかし美しい八雲の湖の中央には神の島があり、そこには平和を守る魔神像がまつられ、湖の両側の名越一族、千草一族の領民は、情け深い領主のおかげで平穏に暮らしていた。
両一族は仲がよく、千草家の嫡男・十郎（本郷功次郎）と名越家の娘・早百合（藤村志保）は婚約し、湖の両側の地には、よりいっそう平和な時が流れるかのように見えた。
ところが、かねてから湖の両側の地を狙っていた隣国の領主・御子柴弾正が、名越の領主を惨殺、千草一族まで倒し、領地をことごとく手に入れ、
領民たちを鞭打って人夫にこき使う圧政を行うようになった。
さらには魔神像を破壊し、八雲の湖に捨て、十郎と早百合を処刑しようとした。
早百合は磔にされながらも、凛として顔をあげ、神に祈った。
「神様、今こそ私の命を捧げる時です。どうか千草と名越の地を、圧政からお救い下さい‥‥」
すると‥‥美しい水をたたえた八雲の湖が突然、ざばばばばば～～～～～ッと真っ二つに割れ、無惨に壊されたはずの魔神がぬううう～～っと登場！
そして、顔をゆっくり手で撫でると‥‥ うわああああああ～～～～ッ!!柔和な埴輪の顔が、火のような怒りをたたえた恐ろしい顔にいいいい!!
息を呑む御子柴弾正とその配下！
怒り狂った魔神は、どしーん！どしーん！地響きを呼ぶ大きな足音をたてながら、御子柴一族に徐々に近づく‥‥！

有名な湖のシーンは、大映京都撮影所内に大規模で緻密なセットを作って撮ったものです。
三隅研ニ監督
御子柴一族が何台もの大砲を撃って大魔神を殺そうとして、
ものすごい爆音のあと、煙がもうもう。魔神の姿が見えず、「ああ、死んだかな」と思ったら‥‥
煙の幕の向こうから、目を吊り上げた魔神の姿がぬう～～～っと見えた時の恐ろしさときたら！
モイラは名画座で、思わず悲鳴をあげそうになったものです。
うまい演出だなあと舌を巻きました。
早百合役の藤村志保さん、清楚で上品な美しさに満ち溢れていましたね。涼しげな目元をたたえた端正な顔立ちと、美しい立ち居振る舞い‥‥この人ほど、時代物に似合う女優さんも珍しいんじゃないでしょうか。
十郎役の本郷功次郎さんも、若くて正義感溢れる領主の息子を、上手に演じていたようです。
名匠・三隅監督の演出もさることながら、吉田哲郎のシナリオも秀逸です。
観客を泣かせるところはしっかり泣かせ、怖がらせるところは思い切り怖がらせる‥‥メリハリがきいているんですよね。
ややワンパターンな感じも否めませんが、娯楽作品のシナリオは、こうでなければなりません。
「ゴジラ」シリーズなども手がけた伊福部昭の音楽も、非常に効果的でしたね。

「大魔神」シリーズは全部で３作。
時代劇と特撮を融合させ、「民衆が苦しむと血の涙を流して立ち上がり、顔が変わり、暴れだす魔神像」という非常にユニークな設定が、日本のみならず世界の特撮ファン、ひいては一般の映画ファンの大喝采を浴びました。
「大魔神」は不滅です。

★もっと大魔神！★