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2007.04.24

女死刑囚と弁護士の心の交流★「ラストダンス」

(2)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

先進国の多くが、人道上の問題から死刑制度を廃止、もしくは制度そのものはあっても、執行をしなくなりましたが、
いまだその制度を掲げている日本、そしてアメリカのいくつかの州。
中でもアメリカの死刑囚の数は多く、死刑執行の方法も絞首、電気椅子、薬物注射、ガスとさまざま。
きょうはアメリカの死刑制度に鋭くメスを入れた傑作で、「お色気女優」扱いされていたシャロン･ストーンが新しい役どころを開拓した「ラストダンス」 ('96年　アメリカ）を、ご紹介します。

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名家育ちの若き弁護士リチャード（ロブ・モロウ）は、31歳の女性死刑囚シンディ（シャロン・ストーン）の恩赦の仕事を与えられるが、実際には恩赦の権限は知事にあり、その知事は死刑囚に恩赦を与えた前例がなかった。

19歳の時にボーイフレンドと強盗殺人をはたらき、死刑を宣告されたシンディは、過去３回、死刑執行命令が出されていたが、そのたびに控訴、執行は中止されていた。
ところが４度めの執行命令が出された時、彼女は「死ぬ時ぐらい自分で選びたい！」と控訴を拒否。
すべてに絶望し、今はただ鉄格子の中で、死ぬ時だけを待っているシンディ。
そんなシンディをなんとか救いたい一心で、リチャードはただ一人、彼女が起こした事件の再調査を始めた。
シンディの娘時代は悲惨。14歳の時、母の愛人に麻薬を打たれてレイプされ、それからというもの、麻薬に溺れ、ありとあらゆる非行を重ねてきた。
そして、シンディに殺害された被害者の一人は、町の有力者の息子で、おまけにシンディの母はその有力者の部下の愛人だった。
さらには事件当日、シンディは麻薬で心神喪失状態だった。
心神喪失なら死刑は適用されないはずなのだが、息子を殺された町の有力者の圧力で、シンディに有利な証言証拠はことごとく排除され、死刑判決が下ってしまったのだ！
リチャードが奔走する中、シンディの死刑執行の時は刻一刻と迫る‥‥！

出世作「氷の微笑」とはうって変わって、すっぴんで女死刑囚を演じたシャロン、素晴らしい演技でしたね！
冷たい鉄格子に阻まれた狭い独房で、通信教育の課題のタージ・マハルの絵を黙々と描いている姿が印象的でした。
思春期まっただ中の時、身体と心に深い傷を受け、絶望の淵をさまよってきた女性の悲しみと怒りが、あふれるように出ていましたね。
新進気鋭の弁護士リチャード役のロブ・モロウも、存在感にあふれていましたね。
お坊ちゃま育ちの弁護士と、あばずれと言われた女死刑囚‥‥対極に位置した二人が、徐々に心を通わせていくのが、モイラの胸を熱くしました。
シンディが少年院に服役中の弟に、「人生は計画を持たなきゃだめ」と諭すシーンも良かったですね。自らの人生の失敗の轍を、唯一の肉親の弟だけには踏ませたくない‥‥姉として、人としての優しさを見せた名場面でした。
シンディが死刑執行のため、別の監房に移される時、普段彼女と口論していた女囚たちがいっせいに食器を鳴らせて、彼女を見送るシーンも、ジーンときましたね。
それにしても、死刑賛成派と反対派が、監房の前で堂々とデモを繰り広げ、そのそばでレポーターが「こちら監房前です。シンディ・リゲットの死刑執行○時間前となりました！」とレポートしている一種のテレビショーのような有様には、あきれますね。
「死刑執行は見世物じゃないよ！」と言いたい。
日本のように、すべてを秘密裏にするのもどうかと思いますが（わが国では、死刑囚の身内にも事前に執行を知らせないそうです）、
こうもおおっぴらにテレビ中継されるのも、ねえ‥‥

監督は「ドライビング・MISS・デイジー」のブルース･ベレスフォード。
地味な映画ですが、一見の価値ありです！

★もっとシャロン･ストーン！★