★モイラの名画座★

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2007.06.06

今観ても新鮮なサイレントSF映画！★「メトロポリス」

(6)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

今から８０年以上前、世界の映画人や映画ファンをあっと言わせた
素晴らしいSF映画がドイツで作られました。
その映画とは‥‥
ドイツ映画の絶頂期の巨匠フリッツ･ラング監督の「メトロポリス」 ('26年）！

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近未来‥‥地上は高層ビルの群れ。その間を縫うように走る高速道路。
ここはすべてが機械化された、機能的で快適な科学都市・メトロポリス。
そこで裕福な資本家階級は、楽園のような暮らしを送っていた。
ところが地下では、労働者階級の人々が奴隷のように働かされ、
疲れ果て、地獄のような日々を送っていた。
彼らは地下教会のような場所で、マリアという女性の、「バベルの塔はいかにして崩壊したか」という旧約聖書を引用した教えだけを心の糧とし、
奴隷的支配からの解放を願っていた。
そんな時、資本家階級のマッド・サイエンティストが、マリアの顔に似せたアンドロイドを地下に送った。
アンドロイドに扇動され、暴動を起こす労働者たち！
果たして、メトロポリスはどうなるのか‥‥？

８０年以上前の映画ですから、当然サイレントです。
しかーし‥‥ 映像は新鮮そのもの！　
いくらベンツやフォルクスワーゲンを生み出した自動車大国のドイツとは言え、
この時代の映画に、高速道路が登場するんですから、びっくり！
その上、若い女性の形をしたアンドロイドまで出てくるわけですから、
すごすぎます！
古今東西、近未来を舞台にしたSF映画が星の数ほど創られましたが、
原点はすべてこの「メトロポリス」‥‥ と言っても、過言ではないでしょう！
事実、スピルバーグ監督はこの映画を何十回も観て勉強しているし、
漫画の巨匠手塚治虫のSFものにも、
この映画の影響が現れている箇所が、少なくありません。
チャップリンの「モダン・タイムス」も、この映画からインスピレーションを受けているような気がします。
ストーリー展開も、階級闘争だけでなく、科学への批判なども織り込み、
ラストの大スペクタクルが、また素晴らしい！

この作品は、もともと約３時間の大作だそうですが、
ラング監督は２時間３０分に編集しました。
ところが、ベルリン以外の地で上映するための２時間ほどの短縮版が作られ、
さらにフィルムがアメリカに渡ると、もっと短縮されて１時間３０分ほどになり、
日本で上映されたのは、そのアメリカの超短縮版でした。
モイラはその短縮版を、（短縮版と知らずに）高校生の時、地元の図書館で観て、
そのあと'85年に、フレディ・マーキュリー、ジョン・アンダーソンなどの米英のミュージシャンがBGMをつけ、
フィルムにも色をつけたものを、映画館で観ました。
二度目に観た方は、BGMがあまり画面と合っていない部分もあり、やや不満でしたが、
大画面で観る名作サイレントSFは、なかなか迫力がありましたね。

傑作無声映画