★モイラの名画座★

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2007.06.07

格調高い娯楽時代劇！★「用心棒」

(6)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

あまりの出来の良さに、外国の映画人が無断でシナリオを拝借し、
上質のマカロニ・ウエスタンに仕立てた超名作娯楽時代劇。
それは‥‥ジャ～～ン！世界のクロサワの'61年のこの作品です！

　用心棒 / 三船敏郎

ある宿場町へふらりとやってきた中年の素浪人（三船敏郎）。
宿場町は新田の丑寅（山茶花究）、馬目の清兵衛( 河津清三郎）と、
二つのやくざの勢力争いで、毎日死人が出るありさま。
素浪人は丑寅兄弟に雇われた無宿者３人を鮮やかに斬ると、
清兵衛に用心棒として、剣の腕前を買ってほしいと願い出た。
ところが‥‥彼は丑寅兄弟にも同じ願い出をした。
出入りはいつかと火花を散らせる両やくざ。素浪人や宿場町の運命やいかに‥‥?!

この作品は、以降の「浪人もの」の原点となったと言っても、過言ではないかもしれません。
当時、時代劇は五社の中で東映が最も得意としていたのですが、
「絢爛豪華」「主人公は清廉潔白」「勧善懲悪」の東映時代劇パターンとはまるで違う、
「薄汚れた身なりの中年の浪人」「金ほしさにやくざの用心棒になる主人公」「血しぶきの上に、腕も吹っ飛ぶアクション」といったシチュエーションに、
観客はあっと驚き、拍手喝さい、東映時代劇のスタッフは大ショック、脅威を感じたと言います。
それにしても、出だしの宿場町の場面からして、迫力満点でしたね。
浪人が町の真ん中に立つと、風がビュウウ～～と吹いてきて、砂塵が舞う‥‥
まるでジョン・フォードのウエスタンを観ているようでした。
なんと言っても売りは、目もさめるばかりの殺陣と、少々残酷なまでの派手なアクション、
それを見事に撮った的確なカメラワーク！
ストーリーも二転、三転、両やくざの一家、後ろ盾をする大店のぼんくら主人たち、
やくざの前ではてんで腰砕けの十手持ち、やくざを毛嫌いする些か頑固な飯屋の親爺、
女房を博打のカタにとられた百姓、出入りになると商売繁盛だとうそぶく棺桶屋など、
それは多彩な人物が、うま～くからんでいます。
チャンチャンバラバラだけが見どころじゃありません。
重厚な人間ドラマとしても、実によく出来ています。シナリオが素晴らし過ぎ！
一見小ずるいワルだけど、実は心優しい素浪人を、三船敏郎がぶっきらぼうに演じているのが秀逸です。
実に格調高い娯楽映画ですね。
脇も、仲代達矢、加東大介、東野英治郎、志村喬、藤原釜足、藤田進、山田五十鈴、司葉子など、
めっちゃ豪華版！ってやつです。
宇宙人俳優とモイラが勝手に呼んでいる土屋嘉男も、博打で女房までとられた情けない百姓を、上手に演じていましたね。
主人公に凄んで、腕をたたっ斬られる無宿人役のジェリー藤尾も、印象に残っています。
ちょっとユニークで、なかなかインパクトがあったのは、
出入りででっかい金槌（木槌？）を持ち、主人公に凄惨な拷問をする、すごい大男。
最初、「あれ？ジャイアント馬場？」とか思ったのですが、
羅生門綱五郎という、台湾出身の力道山時代のプロレスラーだそうですね。
この人、大島渚監督の「太陽の墓場」にも、労務者役で出ていました。
いっそ、あの大男役がジャイアント馬場だったら、
「プロレス界の帝王馬場　対　世界のミフネ！　監督は世界のクロサワ！」で、ふだん映画をあまり観ないプロレスファンも、
大挙して映画館に押し寄せた‥‥かも？

★世界のクロサワ★