「AIが東京大学に合格する日はやってこない。これまで50年以上にわたって人工知能を阻んできた同じ課題(AI完全問題)が立ちはだかるだろうから。一方、センター入試を受験してランダムに答案を埋めるだけで入学できる大学が存在していることも事実だ」
「東ロボくんはきっと3年でどこかの大学には合格する。毎年偏差値は上がっていく。そのうち、優秀な高校生が第1志望にする大学にも合格するようになるだろう」
「その様子を毎年国民に公開し、AIとは何か、AIには何が可能で、何が不可能かを実感してもらいたい。AIのある社会にどう備えていく必要があるのかを、それぞれが考える材料を提供するという意味で、日本にとって今ぜひとも必要なプロジェクトであり科学教育なのではないか」
当時の国立情報学研究所(NII)の坂内正夫所長がそれを面白がってくださり、ゴーサインが出た。こうして「ロボットは東大に入れるか」はNIIの所内プロジェクトとしてスタートした。
本格的な研究が始まっていない段階から多くのメディアから関心を寄せていただいた。そのことはありがたかったが、同じ質問が繰り返されることには閉口した。
テレビ局から寄せられる一番多い要望が「東ロボくんが問題を解いている様子を撮影させてください」だった。「AIなので、歩いて東大に行って試験を受けるわけではありません」とお返事するとがっかりされた。
当初、記者や編集者からは「夢のあるプロジェクトですね」とか「人間が試験勉強から解放されるかもしれませんね」と言われた。トラクターやオートメーションは人間を多くの肉体労働から解放した。同時に多くの人々を肉体労働から「追放」した。その人々に新たに提供されたのが、知識を運用するホワイトカラーの仕事である。
人間を大学入試から解放するようなAIが出現すれば、人はホワイトカラーと言うエデンの園から再び追放されるのである。記者たちがそのような危機感を抱かないことが解せなかった。
だが、第2回電王戦でプロ棋士がコンピューター将棋に敗れ、東ロボが初めての模試において、約5割の大学に合格可能性80%以上と判定されたころから、みるみる空気が変わっていった。
多くの雑誌が「AIによって奪われる職種」とか「AIによって支配される未来」といったネガティブな特集を組んだ。AIは近未来の職場環境を激変させる可能性があるテクノロジーとして認識されたのである。
ただその認識がややオーバーであることが気になった。質問は「シンギュラリティ(技術的特異点、AIが人の知能を上回る時期)は来ると思いますか?」「AIによって最初になくなる仕事はなんですか?」に集中するようになった。
そして15年。東ロボくんは、44万人の高校3年生と同じセンター模試を受け、偏差値約58をたたき出した。数学と世界史では東大の2次試験を想定した模試にも挑戦し、平均点を超えた。単なる穴埋め問題や計算問題だけでなく、600字の大論述や証明問題でも優秀な人間を上回ったのだ。
出典: http://www.nikkei.com/article/DGXKZO94675990S5A201C1X12000/
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