『宦官物語 男を失った男たち』
古代から、ほとんど全世界の王朝に存在していた宦官は、
なぜ中国で異例の発達をとげ、強大な勢力集団となったのか?
そもそも宦官とは、宦官制度とは何か?
英雄豪傑美女たちが権謀術策をこらして争った王朝交代劇を、
宮廷の深奥部からあやつった特異な男たちの実像。
その発生から実態、生態、歴史、終焉までのすべてを描き出し、
秘められた中国史の内幕にせまる、歴史ノンフィクション。
男であるのに、男としての機能を失い、宮廷に仕える男たち、宦官。
その特異な存在は、全世界にあったらしい。
しかし今、「宦官」という言葉から想像されるのは、中国王朝での彼ら。
何千人という後宮の中で、異彩を放つ存在だった中国の宦官たち。
男子としては皇帝のみが入ることを許される後宮を守るためには、
男子禁制にしなければならず。
しかし女だけでは足らぬこともあり、そこで生まれたのが宦官制度。
男であるのに男としての機能を失わさせれば、そりゃ皇帝以外の子は、
生まれるはずもなかろう。
しかしその手術といったら…。
棹を切り取るだけ、玉を切り取るだけ、その両方を切り取るもの、
その方法も、糸で縛ったり刃物で切ったりと色んなパターンがあり、
その痛みは女である私には想像するしかできないけれど、痛かろう。
術後も管を入れ蝋を溶かし入れ、3日間仰向けから動いてはいけない、
とか、想像するだけで悶絶しそう。
その痛みと恥辱から、それは捕虜や奴隷に対しての処置だったのに、
時代が下るにつれ、自ら宦官を望むものが増えてくる。
宮廷で子種が残せずとも、後宮の奥深く入ることのできる宦官たちは、
そこから帝国を操ることができる。
男性のシンボルを切り取りその痛みに耐えてでも、宦官となり、富を得る。
実際に皇帝並み、いやそれ以上の富を手にした宦官たちもいるらしい。
もっとも、そんな宦官はほんの一握りであったらしいけれど。
歴代皇帝たちはそんな宦官たちを倦み、幾度も廃止しようとしたらしい。
しかしそれでも完全に宦官がいなくなったのは、19世紀に入って、
清朝が滅びてから、というのだから驚き。
あの西太后は宦官を溺愛し、清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀でさえ、
すべての宦官を解放した後も、生活に不自由なことに気づき、
何人かを呼び戻した、という。
そんな、宦官たちの起源から歴史、そしてその生態にいたるまでを、
中国、世界の歴史をなぞりながら描く。
腹黒い宦官ばかりではなく、紙を発明した蔡倫も後漢の宦官であったりと、
実際に有能な宦官も多くいたという、とても興味深い1冊でした。
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