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前回ご説明したように、観光業の世界では、<次は着地型旅行だ>と言われ、<単に消費者ニーズの多様化だけではなく、ウェブ化の進展が着地型への動きを加速させるはずだ>と皆が思っていた。これは高速バスにも当てはまることだが、ウェブ化の進展というのは、単に予約方法が電話からインターネットに変わる、ということではない。従来の旅行会社モデルでは、宿泊施設やオプショナルツアーのような「素材」は、その情報が旅行会社のパンフレットに掲載され、基幹システムに登録されることが、全国の支店で流通するための必須条件であった。しかしパンフレット制作にはコストがかかり、掲載できるアイテム数や1アイテムごとの情報量には限界があった。基幹システムの登録も、その入力作業を旅行会社のスタッフが行なう以上、アイテム数と情報量には限りがある。であるから、旅行会社が取り扱う素材は、複雑でなくシンプルである必要があった。例えば旅館で言えば、「和室」「部屋食」「大浴場」みたいな定番から外れることは難しかった。ところがウェブ化の進展により、各旅館の公式サイト(ホームページ)にせよ楽天トラベルのような予約サイトにせよ、旅館の担当者自身が、コストを気にせず豊富な情報を、画像をふんだんに使って掲載できるようになった。以前ならば、仮にペット好きなオーナーが自分の宿を「ペット同伴可」と謳おうと考えても、一般客からの苦情も怖いしペット同伴客への注意事項なども伝えられないし、実現は難しかったところだ。しかしウェブ化以降は、この犬種はいいけどこっちはダメとか、猫の場合は最低限これは守ってくれといった細かい注意事項も掲載できるし、一般客に対しても、何階にはペットが入ってくるけれども一般客室のフロアはペット禁止なので気になりませんよと、フロア図面まで示して安心感を持たせることもできるようになった。このあたりは、おおむね、高速バスで起こっている変化(「第三フェーズ化」)と同じである。で、あれば、ウェブ化の進展は、まさに着地型旅行にとって追い風だ。まず、ウェブは紙と違い、掲載アイテム数を絞り込まなくていい。掲載量が増えてもコストがほとんど変わらないからだ。さらに掲載情報へのアクセスも変わった。仮にコストなど気にせず百科事典のような分厚い旅行パンフレットを作り大量の商品を並べたとして、その大量の商品から「自分の興味に合っていて、自分がその地を訪れる日や時間帯に催行されていて、自分の予算に合っている」商品を見極めるのは困難だ。しかしウェブ上で、条件やキーワードを入れて「検索」ボタンを押すだけで、理想の条件に近い商品から順番に表示をしてくれるようになった。さらに、それら商品情報を入力するのは、地元を愛し、地元の観光素材の知識を十分に持ち、自ら商品を企画する人たちだ。よく、講演や研修の前に講師のプロフィールを見て面白くなさそうだなと感じていても、いざ本人が自分の言葉でしゃべり始めたらぐいぐい引き込まれた、という経験をする。それと同じで、自分の言葉というのは力強い。豊富な画像も使うことができる。より具体的に、商品の魅力を発信できるだろう。いったん話は変わるが、航空運賃や宿泊料金などは、実は個人向け単品予約と旅行会社向けで価格が異なる。ボリュームディスカウントという考えもあるが、それ以上に、旅行会社が他の素材と組み合わせパッケージとして販売してくれる限り自社の卸値はオモテに出ないという理由が大きい。たとえウェブ限定とはいえ個人向け単品予約の価格を下げてしまえばブランド価値を毀損する上、ライバル間で値下げ合戦が始まってしまうが、「包括旅行」向け価格なら安く設定しても問題ない。この点が、実はこれまで、パッケージ旅行の強みの一つだった。だから、ウェブ上で、往復の交通機関と宿泊、そして着地型旅行などを旅行者自身が組み合わせ、結果としてオーダーメイドのパッケージ旅行を作る仕組み(ダイナミックパッケージ)ができれば、その価格差の問題さえクリアできる。実際、JTB、楽天トラベル、じゃらんnetといった会社が航空と宿泊の組み合わせ、WILLERは高速バスと宿泊の組み合わせでダイナミックパッケージを開発した。みな、やがては往復の交通と宿泊だけでなく、着地型ツアーやアウトドア体験、現地でのイベントなどオプションもセットで予約できる「マルチ・ダイナミックパッケージ」に進むだろうと考えたし、機能的にはそれに近い形まで進んだサイトもある(まだできていないのは、往路と復路で別々の交通機関を組み合わせることくらい)。ところが、それぞれ一定の実績はあろうが、残念ながら我が国の旅行のあり方を変えるほどの数字は上げられていなさそうだ。理由ははっきりしないが、おそらく、一般的な旅行者にとって、ウェブ上で自ら旅行を組み立てるというのはハードルが高い作業なのだ。決して、ITスキルの問題ではないのだろう。我々のように交通とか宿泊といった業界に詳しくない、ごく一般の方にとっては、単品の予約ならともかく、旅行全体の絵を描くのは「旅行会社の人」の役割だということなのだろう。結果として、そういう一般的な旅行者は、旅行会社のカウンターに向かう。つまり、今後、みなが考えたように着地型旅行が成長するかどうかは、一言で言えば、会社帰りに最寄駅構内の私鉄系旅行会社に、あるいは週末にショッピングモールの上階にあるJTBトラベランドの列に並び、従来型のパッケージツアーのパンフレットを見ながら旅行を申し込んでいるそういった一般的な旅行者の皆様を、いかにウェブに誘導し、マルチ・ダイナミックパッケージを活用してもらえるかにかかっているのだ。それは決して、サイト運営者側のIT技術の問題ではなく、また旅行者側のITスキルの問題でもない。もっとも、ここまでの話はあくまで「旅行業界」の問題であり我々バス屋には関係ない、とも言える(もちろん、旅行業界は旅行業界で存亡の危機とも言える厳しい状況であり、がんばって欲しいわけだが)。ただ、この、<誰がどう考えても、これからは着地型がブレークすると思われたのに、一般的な旅行者にとって既存の旅行会社や従来型のパッケージ旅行の存在感は予想以上に大きく、変化は予想より遅い>という事実は、我々が、高速バスについて、観光需要をもっと掘り起こそうと考えるにあたって大いに参考になる気がするのだ。ようやく本題に戻って、次回からは、高速バス「第三の市場」について考えてみたい。
2013.12.24
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当社で企画段階からご協力していたテレビ東京『土曜スペシャル鹿児島〜青森2000キロ 高速バス限定!列島縦断の旅』、12月7日の地上波(首都圏等)での放送は、フィギュアスケートの「裏」という悪条件ながら想定を大きく上回る高視聴率を叩き出し、局内はちょっと騒ぎだった様子。また放送中、「高速バス」というキーワードでリアルタイム検索をしてみましたが、<へえ、高速バス。あちこち走ってるんだなあ>、<3列シートなんてあるのか>といったツイートが多く見られました。テレビ等の一般メディアでの露出が高速バスの認知拡大に重要だと再確認するとともに、逆に言えばいかに一般的な消費者の中で高速バスについて認知されていないか、あらためて実感。それから、当事者である我々はつい、<なぜあの会社、あの路線が紹介されて、こっちは出ないんだ>などと考えてしまうけれども、多くの視聴者は高速バスのことなど本当にちっともご存知ないと考えたほうがよく、どの会社のどの商品であれ高速バスの露出が増えることが業界全体にとって重要だとも再認識。なおツイートの中には、<蛭子さん(土曜スペシャルの人気シリーズ「路線バス乗り継ぎの旅」に出演する蛭子能収さん)には勝てないな>みたいなものもあり、ダンディさんがんばれ!と言ったところ。1月9日(木)にBSジャパンで短縮(2時間)バージョンが放送されるので、まだの方はぜひご覧ください。また、夏以来『日刊自動車新聞』が、「高速バス新時代」という連載(本ブログと同名)を隔週で続けてくれており、「移行組」各社のトップインタビューや弊社の「高速バス・マネジメント・フォーラム2013」の様子などを大きくご紹介いただいていましたが、その連載の結びに当たり、ご依頼を受け本日付の紙面に寄稿させていただきました。バス事業者というよりは、車両・機器メーカーの多くがお読みであろう媒体。そのような方々に高速バス業界の事情をお伝えできたのは嬉しい限りです。ありがとうございました。
2013.12.20
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