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バス愛好家向けの雑誌『バスマガジン』にて、連載「成定竜一の高速バス業界 一刀両断」がスタートしました。初回は2ページいただき、次回からは1ページです。同誌読者の愛好家の方がご存じないであろう、ビジネスとしてのバス業界について解説していきます(とはいえ、このブログをお読みの方には、今さらの話が多いかもしれませんが)。皆さんからのご意見も反映させていきたいと考えていますので、ぜひご感想などお寄せください。よろしくお願いします。
2015.09.28
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珍しく三部作の「その3」(「その1」、「その2」の続きです)。前回書いたように、全国の高速バスを一元的に検索、予約できるサイトは「バス屋の夢」だ。だが私は、考えた末、それ「だけ」では我が国の高速バス市場を拡大させることは無理、という結論に達した。一愛好家としてバスを横目に見ながらホテル業で働いていた頃のことだ。一つには、高速バス事業者どうしの競争が新しいサービスを生み出すように、「販路」についても複数の主体が競争し続けることの意義に気付いたからだ。楽天などの予約サイトは、繁忙日などの人気の高い便について少しでも多く事業者から在庫を提供してもらえるよう営業を重ね、合わせて集客のための施策(ウェブ上の広告など)と、それにより集まった利用者を満足させる努力(UI改善など)を突き詰め続ける必要がある。「自動販売機」になってしまってはだめで、日々、考え抜かねばならない。その一番の原動力は競争(必ずしも経済的な損得だけでなく、ライバルよりも先に行きたいという心理的な要素も大きい)だ。もう一つの理由は、適正な在庫配分(幅運賃導入後は適正な運賃設定も)を、事業者側で主体的に行なうことが重要だと考えたからである。「需要が見込める区間を運行していればさえ、乗客は向こうから来てくれる」という意識を改め、「その需要は潜在的な需要に過ぎず、それを顕在化させるのは自分たち」と自ら理解してもらうことが第一歩だと考えたのだ。さらに付け加えれば、どうしてもパワーを持ち過ぎるきらいのある販売側に対し事業者が対等な関係であるためには、在庫と運賃を手放してはいけないのだ。最近、FIT(訪日「個人」旅行者)対策でこの点が再び重要な論点になりつつある。我が国の高速バスの多言語ウェブ予約は、自社サイトでは京王の「Highway-Buses.jp」が、また総合予約サイトではWILLERの多言語サイト(同社のサイトは、日本語外国語ともに、自社路線に加え多くの「既存組」各社の高速バスを取扱う。その意味で、同社の自社サイトであるとともに、楽天などと肩を並べる総合予約サイトでもある。なお外国語版はヘッダの京王や小田急、名鉄の車両画像が美しい)が、それぞれ先行した。それを、工房による「Japan Bus Online」と、WILLERが事務局を務め「既存組」の商品のみを扱う「Japan Bus Lines」が追うが、両者とも、自社サイトなのか総合予約サイトなのか立ち位置が判然としない。私は、常々書いているように、FITは次の大きな市場だと考えているから、「既存組」各社にはこれらのサイトの活用を勧めている。ただし、私がお勧めしているのは、あくまでも「活用」。こちらが主体的に活用するのである、これらのサイトで取扱いを始めたから、即ち、「インバウンドに積極的」とか「FITの集客はお任せできる」ということでは決してない。考えてみてほしい。確かに、日本全国の高速バスを検索できるサイトは、外国人旅行者にとっては必要だろう。英語や母国語の検索エンジン(googleの各国語版)で、例えば「日本 高速バス」(←もちろん英語または母国語で)と検索した際に上位表示されるサイトを訪れると、発着地を指定するだけで希望の高速バスが表示されるというのは便利だろう。しかし、私たちが海外旅行に行って高速バスを使おうと考えた際、そんな検索をするだろうか? もちろん、高速バスの愛好家が台湾や韓国の高速バス事情を見に行きたい、とか、バックパックを背負いバスを乗り継いで北米の田舎町を旅行したいんだとか、特定の旅行者はそのような検索をするだろう。だが、多くの旅行者が現地で高速バスを使うのは、鉄道よりバスの方が便利なデスティネーションを訪問する際が中心だろう。ナイアガラの滝やモン・サンミシェルへの足としてバスのルートや時刻を知りたい人が「USA バス」とか「フランス 高速バス」などと検索するだろうか。当然「ナイアガラ バス」と検索するはずだ。日本に当てはめれば「高山 バス」「高千穂 アクセス」(←くどいけど英語または母国語)。そのような際、検索結果に上位表示されるのは、濃飛バスや宮崎交通の公式サイトのはずだ。ただし、各社の公式サイト(ホームページ)が多言語対応できていれば、という前提付きだが。そして、それさえ見てもらえれば、そのまま「Highway-busses.jp」など自社サイトの多言語ページに誘導すれば余計な送客手数料は不要になる(にもかかわらず、「Japan Bus Online」がそのような動線を準備していないのは残念だが)。さらに、公式サイトを見てもらえれば、予約制の高速バスのみならず、非予約制の空港連絡バスや路線バスなどの情報提供することができるのだ。繰り返すが、私は決して、全国の高速バスを一元的に予約できるサイトが不要だと言っているのではない。日本をテーマにした外国語ガイドブックの後ろの方の「日本国内での移動」解説ページで「このサイトを見れば高速バスが一目瞭然」と紹介されることは重要だ。さすがに日本全国を扱うガイドブックで、個別の事業者のサイトを片っ端から表記するわけにいかないからだ。ウェブ上で広告を積極的に展開しやすいのも、この種の予約サイトだ。つまり、利用客の行動に合わせ、「定置網を仕掛けて待つ」(自社サイト)と、「積極的に投網を打つ」(総合予約サイト)の両方の動線を用意する必要があるのだ。もちろん、定置網の位置や仕掛けは、他でもない事業者自身が試行錯誤し最適解を見つけ出す必要があるし、投網に不当なコストをかけすぎることのないよう、在庫と運賃で彼らのパワーを制御する必要がある。「インバウンド」「FIT」といったキーワードで思考を停止してはならない。特別なことを書いているつもりはない。外国人客にも日本人客にも、その心理や行動と真摯に向かい合い、その希望に添う答えを出し続けなければ、私たちの前に広がる大きなチャンスを現実のものとして手に入れることができないのだという、ただそれだけの話である。
2015.09.27
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前回書いたように、「既存組」の基幹システムが、楽天トラベルなどの予約サイトとシステム連携を行なった際、一部を除いて「在庫フルオープン」という仕様になった。つまり、繁忙日など人気の便についても、(その気になれば)最後の1席まで、予約サイトが取扱うことができる。なお、高速ツアーバスからの「移行組」の各基幹システムは、もともと、各予約サイトに対し何席販売を任せるか制御することができる。事業者が、販売力や手数料率を勘案しながら、自社サイトも含めた各販路に対する提供在庫数をコントロールできるのだ。それが健全だと思う。予約サイトとしては、「既存組」のそのような判断は一見「しめしめ」だろう(「既存組」各社は、今後、各予約サイトのパワーが拡大しても、「搾取されている」などと言わないでほしい。上記仕様を選んだことでその権利を失ったはずだ)。だが本当に「しめしめ」なのか。現状、「既存組」による予約サイトの活用は、長距離夜行路線が中心だ。高速ツアーバスがその種の路線で「攻めて来た」という理由が大きい。発券期限が厳格に設定され、どうせコンビニ等で事前発券され手数料が必要なので、予約サイトで販売しても手数料の負担感が小さいということもあろう。だが、「既存組」が予約サイトを活用すべきなのは夜行路線だろうか。いや、高速バス市場の多くは高頻度昼行路線が占めている。それらの路線では、地方側を朝、また大都市側を夕方以降に出発する便は地方側在住のリピータで高乗車率であるが、大都市での需要喚起が不十分なため、大都市側の午前便、地方側の午後便は乗車率が低い。午前と午後では別の市場が相手であり、片方の「伸びしろ」がまだまだ大きい。その伸びしろは、まさにウェブマーケ、特に宿泊とのクロスセルを期待できる総合予約サイトと親和性が大きい。つまり、まだ予約サイトに登場していない高頻度昼行路線こそ、予約サイトを活用すべきである。だが、地方側のリピータが、ポイントプログラムなどを目当てに予約サイトに転移すれば手数料負担が増加するのみ。だからこそ便ごとに提供座席数を変動させ、大都市側の観光客の利用が見込める便に限って、予約サイトに座席を提供すべきなのだ。「在庫フルオープン」仕様になったことで、10年前に私が絵に描いた「大都市部からの観光需要を予約サイトが喚起」という構図が遠のいた。これは、高速バス市場の「本丸」たる高頻度昼行路線の取扱いが進まない予約サイトにとってはもちろん、「既存組」各事業者にとっても、乗車率向上の大きなチャンスを失ったことを意味する。普通の商品(例えばパソコン)ならば、店によって在庫があったりなかったりするし、すぐ「お隣」の宿泊予約の世界でも消費者は何ら違和感なく販路ごとの在庫や価格の違いを使い分けているが、バスではなかなかそうはいかない(制度的には特に縛りはないけれど。特に幅運賃制導入以降は)。「売れ残りそうな座席を、手数料率は高いが販売力がある販路に預ける」というよりは「どこで買っても公平に」ということなのだろう。究極的に「既存組」各社が予約サイトに望むのは、「手数料率を下げてくれたらさえ、全路線の全座席を提供するよ」ということのようだ。「そうすれば、全国の高速バスを一元的に予約できて便利になるし」それが、前回ご紹介した読者の方のお考えだったようだ。たしかに、「既存組」の予約センターの仕事ぶりなどを見ていても、かなりの数、自社で運行していない路線について問い合わせを受けて他社を紹介している。高速ツアーバスが手を付けられなかった地方路線はマルチトラック化していないから、例えば京王が小田急を紹介しても、阪急が近鉄を紹介しても、ほとんどの場合「ライバル」には当たらないのだ。だからこそ、「全国の高速バスを一元的に紹介、予約できるワンストップ予約サイト」という話が、何かある度に業界内で頭をもたげる。おそらく「バス屋の夢」なのだ。個社がバラバラに運行する高速バスが、JRブランドで全国を結ぶ鉄道に伍するためにも、全事業者(この場合は「既存組」同士しか意識がないのだろうが)をヨコにつなぎたい、という思いはわかる。たしかに、私自身、学生バイトとして現場にいた頃はそう考えていた。だが、それは本当に意義あることなのだろうか?<次回に続く>
2015.09.24
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このブログを始めてもう6年半になるが、今回はちょうど400回目の投稿らしい。始めた当時、私自身は楽天トラベルの高速バス予約事業の責任者をやっており、合わせて、「楽天=ツアーバス陣営の親玉」という印象が強かった頃だ。生まれたばかりの高速ツアーバスをまずは育て上げ、そうすることで、ウェブマーケティングなど見向きもしない「既存組」の高速乗合バス事業者に振り向いてもらおうという戦略を描いた中で、彼らへメッセージを送るツールとして書き始めたものだ。「既存組」に営業の電話を入れると、当初は会社名を名乗った瞬間にがしゃんと切られたりいきなり罵倒されたりしていたが、そのうち「お話しには興味があるんですが、上司にばれるとまずいんで会社に来られるのは困るんです」というような反応が増えてきて、そういった方々への情報発信であった。楽天が「既存組」の高速バスを本格的に取扱うまでには10年かかるかなあ、と考えていたが、その半分で道筋ができあがり、それどころか高速ツアーバス自体が乗合化し、そのおかげで私は今、コンサルタントとして両者(主に「既存組」)のお手伝いでメシを食えている。そんなことを書いたのは、当時からの読者の方から「今思えば成定さんの考えを誤解してました」とお聞きしたからだ。当時私は「既存組」に対し「ウェブ予約には対応しているがウェブマーケティングには未対応。楽天を活用し新規顧客を取り込みましょう」と主張していた。地方では十分な認知を誇る高速バスも大都市では認知度が低く、その潜在需要の喚起にはウェブが最適だ、との考えも書き続けた。その方はそれらの投稿を読んで「国内全ての高速バスを楽天で取扱うことを目指している」という印象を持ったらしい。楽天のサイトを訪れれば全ての高速バスを予約できる「ワンストップ化」を目標としていると考えたとのこと。それは半分正解だが半分間違いだ。たしかに、私が考えたのは多く(できれば全て)の「路線」を楽天が扱うことだった。だがそれは「全ての予約」を楽天のサイト上で行なってもらうこととは違う。描いたのは「多く(全て)の路線の一部の座席」を取り扱うことだった。従来からも、単純なウェブ予約であれば「既存組」も実現していた。京王が基幹システム「SRS」をウェブ予約に対応させた「ハイウェイバスドットコム」や工房による「発車オーライネット」(基幹システム名とサイト名が共通)などだ。それらは、しかし、事業者自身による集客を前提としていた。具体的には、各事業者の公式サイトでまず情報(時刻や運賃など)を閲覧し、「いざ予約」という時点でこれらのサイトへリンクされることが前提だった(もちろん、二度目以降の利用のリピーターが各サイトに直接訪問することはあるけれど)。高速バスの認知を高め公式サイトにアクセスを集めるのは事業者側の責任なのだ。それに対し楽天の立ち位置は、積極的に高速バスの認知を広め新規需要を喚起し、それを予約・決済にまでつなげるというものである。ただし、当然、「ハイウェイバスドットコム」や「発車オーライネット」がシステム利用料相当の低いコスト負担で済むのに対し、楽天は集客に関わる費用も含め手数料率はかなり高い。両者の本質的意義は全く異なる。だからこそ、各事業者は、楽天でも販売するかどうかを路線ごとに選べることはもちろん、便ごとに、かつ随時、楽天で売りたい座席数を制御するという絵を描いた。手数料が高い楽天では売りたくない日や便は登録座席数をゼロにし、手数料を負担してでも新規需要を望む便は増やす。事業者自身が販売窓口を便ごとに主体的にコントロールし、コスト負担を最小限に抑えながら運賃収入を最大化させるのである(「チャネルコントロール」と呼ぶ)。「既存組」を扱い始めた当初、基幹システム上で一部座席をブロックし、手運用で楽天に提供してもらう「アロットメント」方式しか選択肢がなかった(ただ事業者側が随時コントロールせず、アロットの売れ残りがそのまま空席で残ってしまう事態も発生した)。やがて京王が「SRS」を楽天とシステム連携させるという決断をした際、「SRS」上で「販売上限数」を設定できるよう対応してくれた。日ごと便ごとに「何席を上限として楽天で売りたいか」を設定すると、その席数までは楽天が販売することができる。一方で各事業者の直販(電話予約や「ハイウェイバスドットコム」)好調だと、自動的に楽天の販売上限数が減っていく仕組みだ。最後には自社販路を優先する「Last Seat Availability」という考え方である。今では楽天だけでなく、ホワイト・ベアーファミリーの「高速バスドットコム」や、WILLERが運営する各サイトに対しても同様の設定が可能になっている。一方、「発車オーライネット」も楽天や高速バスドットコムなどとシステム連携されているが、残念ながらこの考え方は採用されておらず、予約サイトでも販売することを事業者が決めた路線については、発オラに収容されている座席全てを楽天など予約サイトが販売することができる。私としては大いに不満だが、それは開発側が悪いのではなく「SRS」同様の仕様を要求しなかった発オラユーザーの各事業者側の問題である。結局、京王や名鉄など「SRS」系の事業者以外は、チャネルコントロールという概念を理解してくれなかったのだ。この事態は、一見、予約サイトに都合いいように見える。繁忙日など人気の高い便の在庫が自動的に出てくるからだ。楽天などの予約サイト側としては「しめしめ」と感じているかも知れない。しかし私には、非常に残念なことに、事業者側はもちろん、予約サイト側にとってさえ、マイナスにしか見えないのである。次回に続く
2015.09.23
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先週の金、土と一泊で、「チバストーリー」の試乗(という名の乗りバス)。チバストーリーとは(実は「CHI【BUS】TORY」という風にバスがかかっている、という脱力的な小ネタはスルーしましょう。こういう感覚が日本の旅行業、広く観光産業をダメにしてきたような気が…)、千葉県が費用負担し、定期化に向け(?)実証運行されている「無料高速バス」。成田空港と県内観光地(館山、鴨川、銚子)との間を各4往復と椀飯振舞だ。空港と観光地を結ぶ路線である以上、当然、観光客の誘致がゴール。想定するのは「訪日客(業務出張、観光双方)の日本最後の一泊を成田に近い房総で」「トランジット(アジアから成田乗換で欧米、など)の合間に千葉を見て」「国内LCCの就航地(北海道や九州など)から千葉県への観光旅行を」というところか。企画とオペレーションを日本旅行千葉支店が受託し、運行は、JRバス関東や千葉交通など県内の高速乗合バス事業者4社に貸切バスとして発注している。今回は3コース4便に乗車したが、面白かったのは、「添乗員が同乗」というのが条件らしいのだが、その添乗員のタイプが「四者四様」。乗車順に、社員バスガイドが乗合の車掌として乗務するときのスタイル、往年の名車掌風、事務的な人、バスツアーの添乗員タイプ。おそらく、自ら添乗員を手配した事業者の場合、添乗を「保安添乗(車掌)」と捉えアンケート回収など最低限のお仕事だけこなすのに対し、自ら手配できなかった事業者は発注元の日本旅行に手配を頼んだところ「旅行の添乗員」さんがやって来てあれこれと心配り、ということなのだろう。さて、ここまで読んで、多くの方は「ガラガラの車内にバスマニア(私たち)だけ、暇そうな添乗員という、実質的な空気輸送」の絵を想像したことだろう。はい。ほぼ正解。ところが一部不正解。乗車4便中1便はなんと満席だったのだ。その便は、土曜朝7:45館山発の成田行き。7:45発というのは、わざわざ温泉旅館や海の見えるリゾートに泊まった観光客には早すぎる時間帯(現に私たちも宿の朝食を断って乗車)。館山駅からの乗車は2組のみで、あとは途中のP&R駐車場から。つまり、先に挙げた「海外や遠方の観光客を千葉県内の観光地へ」という構図とは裏腹に、地元客で満席だったのだ(観光客の入れ込みが増えても喜ぶのは観光産業だけだが、地元客に「タダバス」を提供すれば選挙の票につながるから、実は巧妙な選挙対策なのでは、という皮肉さえ仲間内では聞いたけど)。事前にウェブ予約画面で満席表示を確認しており、おそらく地元客の空港利用(海外や九州などへの飛行機での旅行)の足として都合よく使われているんだろうと乗車前には想像していた。ところが実際にはそのような利用はゼロのようで、みな軽装。小さな子供連れが目立った。祖父母まで親子三代のご家族は、乗車するなり「ばあば」手作りのおにぎりがアルミホイルに包まれて登場。別の男の子兄弟は「にいに」が「ママ、今日お泊まりするの?」全く想定外。高速バスや空港連絡バスではまず見ない構図で驚いた。このバスについては千葉県内ではそれなりに報道されており、地元の自治体も熱心。すると、それが「外的刺激」になって「一度乗ってみようか」となるのだ。その辺は、会報誌などで「外的刺激」を与えるバスツアーの領域だ(上尾・川越~四万温泉線の車内で起こった拍手を思い出す。有料無料の差はあれど「●●へ行くバスがある」と刺激を受けると乗ってみたくなる)。必要(出張や用務の他、テーマパークなど目的地ありきの観光利用も含む)に迫られ乗車する高速バスや空港連絡バスとは異なる世界なのだ。喜んでもらうのは意義あるとはいえ、税金を投入した本来の目的は残念ながら達成されていない。ここにも、私の今の重い課題、「個人観光客と高速バスの意外な相性の悪さ」が現われている。案内サイトはLCCの公式サイトと相互リンクされているが、そもそもLCCのサイトを訪問するユーザーは目的地ありきの旅行者。地元以外で高速バスの認知を拡大することや、個人の自由旅行(公共交通などを組み合わせる旅行)を制御することの困難さも伝わってくる。それでも、元気づけられる要素はある。事務局を受託した旅行会社は、徹底して沿線を巻き込み利用特典を山ほど用意してくれた。この辺りは、良し悪しはともかく旅行会社的ノウハウであり、バス事業者が取り組んでいない領域だ。車内ではお手製とも見える沿線自治体の観光チラシが配られ、着地では、観光客向けのプレミアム付きクーポンを購入できる。上記リンク(利用特典紹介ページ)の、鴨川ルート「大原駅入り口」の箇所をご覧いただきたい。停留所近くの喫茶店で飲み物を頼むと一品サービスという特典はともかく、「停留所隣接の『マルダイ土屋』にて、バスを待つ方に休憩スペースの提供及び湯茶の無料サービス」と書いてある。この『マルダイ土屋』、なんとファッションブティック(というか、千葉の小さな町の洋服屋さん)。私たちは、停留所新設と言うとつい「地先の了解がハードル」と及び腰になるが、そうでないケースなのだろう。担当者(停留所交渉の担当は日本旅行か事業者かは知らないが)が「お店の前に期間限定で停留所を設置させてください」と頭を下げ、「大原の街に観光客を連れてきます。ガイジンさんも来るかも知れません」と言うと、地元を愛する店主か奥様が「へえ、じゃあお茶でもお出ししましょう」と言ってくれたに違いない。残念ながら、ガイジンさんどころか乗降自体少ないようだが、各停留所における自治体や観光施設による積極的な特典設定も含め、地元からの、バスに対する潜在的期待値を示している。この「チバストーリー」のほか、先日乗車した「高野・白浜・熊野アクセスバス」などは外部のお金による実験的要素が大きいが、自主運行の高速バスでも、観光色の強い新路線は苦戦を耳にする。一方、東京駅~御殿場プレミアム・アウトレット線や、回送車両の実車営業化を主目的に始まった新宿~東京サマーランド線など、気付けば増便が繰り返されている路線もある。この「多くの苦戦」と「一部の成功」の間に、個人観光客(FITを含む)を高速バスに取り込むためのヒントが隠されているはずだ。
2015.09.10
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