Laub🍃

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2010.06.02
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
美しいものを見る度に自分の醜さを思い知る。

どうして俺はそうじゃないのかと悩む時期はもう過ぎた。

今は自分の仕事にかこつけて、美しいものを壊すことが俺の日常だ。

それが俺達の使命なのだから。





餌兎・壱


*******



だが、あの頃はまだもう少し無邪気だった。

エロ本集めにスカート捲りに覗きに喧嘩、まぁそこらに居る普通の悪ガキだ。


俗物的で露悪的な、使われる側の人間。それが俺の周囲からの総評だった。

…そんな人間が、人類の高潔な使命とやらを果たすプロジェクトに選ばれるなんて誰が思うよ。


「…なあ。今回俺達が集められた理由、聞いたか?」
集められて説明会を受けた後。子供達100人超の資料は既に配られてるが、その資料は既に酒の肴になり果ててる。
「子供の世話……だってな。……どう考えても人選ミスじゃねえの」
集められた奴らはどいつもこいつも強面ばかり。
「だよなあ。俺達にそんなことできるわけねえだろ」
「そうそう、特に卯浪みたいなやつ、特にそんな役にさせちゃいけねえっつーの、なあ?」
「お前なあ」
知った顔で言って来る奴は俺と同様こすい悪事ばっかりやってきた奴だ。こいつには言われたくねえ。
「ああ、でもなあ……良い奴ばっかりでも困るんじゃねえの?」
「俺達は補充要員なんだってな……前任者の話聞いたか?」
対象のガキ共は3歳をようやく迎えたばかり、そんな奴らから親にも等しい保護者を引きはがしたらろくな精神状態にならなそうだが。
「赤ん坊時代を育ててた女共は全員金貰って退職させられたって話か」
「ははっ、奴隷かテロリストかお国に忠実な軍人でも育てる気か?」


「……軍人、と言うのが正しいのかもしれませんね」
「…はぁ?」
「子供達の将来の話ですよ」

突然声を掛けてきたのは、前髪を綺麗に揃えた線の細いガキ。

「……あぁ、アンタ、首相の…」
「ええ、首相の甥、百舌戸要です。……そして、この7SEEDSプロジェクト責任者の一員です。以後お見知りおきを」

そう言って計画の『要』は笑った。
7歳。年に似合わず冷静で達観した顔だ。どんな地獄だろうと涼しく笑って越えていきそうな面。

このガキも今回から指導に加わるらしい。
つくづく気に食わんが、これでも上司なんだっていうから笑えねえ。

「あなた方なら、きっと17までこの子たちを育てられるでしょう」
「……ま、少なくともガキをこんな育て方して痛む良心は持ち合わせてねえな」
「違いねえ」
性格悪い奴同士あーだこーだ揶揄い合っていると要はまた嗤った。
「そうですね、中途半端な良心はこのプロジェクトにおいて邪魔ですから。貴方方はうってつけの人材と言っていいでしょうね」
「……言ってくれるじゃねえか」
「褒めてるんですよ」
「だろうよ」

嫌な笑い方をするガキだ。
……リストの表紙、3歳児共の屈託ねえ挑戦的な笑みとどこか被った、純粋ゆえに使命に洗脳された笑み。

俺達もいつかこんな笑い方をするのかーーーーそれとも、大人の汚さの方が上回るのか。


ー今はまだ、分からない。




【続】





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最終更新日  2017.12.28 17:11:25
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