Laub🍃

Laub🍃

2010.06.04
XML
カテゴリ: 🌾7種2次表
クソガキ共の夢を折る仕事。
同時に、クソガキ共に夢を追わせる仕事の連続だった。

そこに若干の他意はあったが、クソガキ共が思うよりは俺は冷静だった。

冷静に、職務に忠実に、まるで命を残そうとする昆虫のように無機質に。


*******

餌兎

*******


安居がうさぎの看板を撃てなかった。
普段の人の的と違って生々しかったからだろう、とはいえその時は職務を忘れて少し笑っちまった。









「卯浪先生にお願いがあります」
「まーた汚れ仕事か要」
「頼まれなくても近い事をなさってる方が今更何を」
「分かった分かったよ」

唯一の楽しみと言っていい嫌がらせに監視にかこつけた覗き。
汚い大人の本能ってやつだ。

他の入れ替わる教師陣と違って俺と要、そして2年前にやってきた貴士は殆ど休まない。
たまの休暇ぶりに帰ってくると子供達が激変しているかもしれないからだ。

良くも悪くも古株として安定感を持たせること、それが俺達のもう一つの役目。

ー未来には、行けなくても。


「……その頼みってのは?」

「……はぁ?……またなんか企んでんのかお前らは」

最近特に要と貴士はこそこそと後ろ暗い話をしてる。
貴士にはその内ガキが産まれるらしいが、そのガキには確実に耳に入れられないであろう話を平然としてやがる。

俺も大概の下衆野郎ではあるが、こいつらには負ける。

「俺がしょっちゅう理不尽な体罰してるのを見込んでか?…いくら俺が理不尽野郎でも、そこまでやったら職権乱用ってことで上のお偉いさん方から外されちまうだろ。ただでさえ有望株がここんとこ減ってきてるんだからよ」


不安そうな目、俺の「問題」に必死に答えようとした震える声。
空しく響く俺の「落第」の声。

「切磋琢磨されて他の急進が有望になってきているということでもあります」
「…まあ、ものは言いようか。最終的に7人残ってればいいと」
「その通り」
「予備も用意せんで」
「国家機密ですからね」

関係する職に就かせても下手に外部に情報を漏らされると計画が狂う、それぐらいなら7人がきちんと他の落第者達の遺志も継いで行った方がいいでしょうと宣う要の目は、狂人のそれだ。

俺のように下衆なことをしているという自覚もない、崇高な使命とやらに夢中なのだ。何を犠牲にしても気付かないくらいに。

崖の下にいくら突き落としても。共食いさせても。こいつの鋼鉄の心臓には痛みなどないんだろう。

「……特別な懲罰房ってのは逆さ吊りか?屋根の上か?山中の例の洞窟か?監視カメラ仕込んでるんだから健康状態は把握できるが」
「赤い部屋です」
「……」

驚いた。こんな時にこいつが冗談を言うなんてな。


「おいおい、首相の家ってのはどいつもこいつも倫理観がおかしくねえとやってけんのか」
「貴方に言われたくありません」

酷い言いようだ。だが、これが本当ならーだとすれば、こいつは。

「……悪魔になるかもしれんだろう」
「そのリスクは覚悟しています」

どうだか。

「偉い奴らの考えることは分からんな」
「大局で見ているだけですよ」

要はいつもの無表情よりも冷たい笑顔で笑った。
俺も、安居も、皆こいつの掌の上で狂っていく。







そして、雨は降りはじめた。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2018.01.02 17:44:08
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: