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長押綴

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2011.03.23

夢幻を追って、ここに来た。
戦争などない場所。
そういわれて、この館にやってきた。
けれど今は、あの世界をもう一度みたい気持ちでいっぱいだ。

どうして、あの時誘いに乗ってしまったのか。
戦争はないけれど徹底的に立場の決まってしまっている世界は、あちらとはまた違った地獄の様相を呈していた。

諦めるかあいつらを睨み付けるしかできない世界は、あたしらの居るべき世界じゃない。
そうだ、どうしてだ。あたしらは神様から力を与えられたのに、どうしてこんな試験管の中で溺れなければいけないんだ。

「狂っている？」

「僕は狂ってなんかいないさ。ただの愛だ。
　僕よりもよほど君の方が狂っていると思うけどね？」

「だって君は、愛の為に愛をしている。恋に恋して、正義の為に正義の剣を振るう。実にクレイジーで滑稽で愚かで可愛らしいことこの上ない」

「悩むが良い若者！」

「くっそぉ…っ」

　また、言い任された。

「義香ちゃん、無理だって。佐藤博士には誰も勝てないよ」

　うるさい。一刻も早くあたしはここを出て、自由になりたいんだ。
　比べられることなどない、毎日データを取られて何か思う余裕もないここから逃げたい。
　もう数字に振り回されて、周囲の評価に振り回されてまわりを見下したり、逆にねめ上げたりなどしたくないのに。

　好きな人を愛しているから守りたいと思うことのなにがいけない。

　何故だ。何故、あたしはここでもがいている。

　自分をもはや鏡で見る勇気なんてない。
　汚い汚い汚い汚い。
　消えろ消えろ消えろ消えろ、汚い自分なんて消えてしまえ。

　愛を重んじる愛おしさと正義を重んじる美しさを知らないあいつらとあたしは違うんだ。

　動け動け動け動け。ひっかけ、かみつけ、抗い続けろ。

　試験管のガラスは今日も破れないけど、破れる日が絶対に来る。
　そうしたら今度こそ幸せな世界に逃げられる、そのはずだ。

to be continued... ?

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