Laub🍃

Laub🍃

2011.12.09
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カテゴリ: .1次メモ
 それはまるで呪いのようだと思うのに、どうしても手を離せなかった。


 幼い頃から彼の手には妹の手が握られていた。
 幼くて弱くて可愛い妹。彼の使命は彼女を守ることだった。
 だから、自分がどんなに嫌われようと、彼女さえ居ればずっと耐えられた。醜い傷跡を笑われても、彼女の為に、踏みとどまった。

 そして彼女につく悪い虫は全てふり払った。たとえ彼女がどんなに泣いて頼んでも。

 それでも彼女の手は自分よりずっと弱い力ではあるけれど握り返してくれていて、だからこそ彼は彼女をより一層愛した。

 そんな風だから、普通の仕事などできようはずもなく、二人は珍しがった王様に買われ、小間使いとして暮らすことになった。制服も、繋いでいる方の袖はリボンで結べば着られるものを用意してもらった。

 王様ならば妹と結婚してもいいかと思った。



 とうとう、彼と言う鎖から彼女が解き放たれる時が、来た、のだ。





「……え?」


 瞬間、目の前の王様の首は飛んでいた。


「イヤアアアアアア!!!」
「やだ、化け物、化け物おおおおお!!!」
「……え、えっ、えっ」


 魚とも鳥とも獣ともつかぬ腕を光らせ見る間に異様な形になっていくのは確かに妹の面影を持つ目の前のーーーー


「……妹、なのか」
「…………」

 怪物は新しく人を襲おうとしている。
 後ろからそっとその背中を抱き締めた。

「…あ゛、あ゛、兄ちゃ」


 正気に返りつつある妹は後悔と混乱でぽろぽろと涙を流している。真っ赤な顔で震えている。

「大丈夫、俺はずっと一緒に居るから」

 そういえばずっと幼い頃も彼女が暴走して俺が怪我をした時にぽろぽろと綺麗な涙を見たなと彼は思い出し、そっと微笑んだ。





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最終更新日  2016.11.17 01:37:13
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