Laub🍃

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2012.01.03
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カテゴリ: .1次小
彼女がそこに行きたがっていたのは知っていた。

同僚である僕が、たとえ行けなくても。

だから、彼女が僕の辿り着けない所に行く事が決定した日、僕は思い出にどうしてもと彼女にあることをお願いした。一つの約束をして。

僕がその約束を破ったのは、自分の為だった。
生まれて初めて彼女との約束を破ることは、いつまでも胸に残る酒のような罪悪感を齎したけれどその欲に抗うことはできなかった。


それでもその瞬間、世界の全てに嫉妬していた僕は救われた。

彼女も世界も愛おしくてたまらなくなった。

別人のようだと言われることも増えた。
彼女と離れるのだからしっかりしなければいけないんだと嘘を吐いた。




僕の嘘ばれたのは、「お願い」の3か月後。

「……え?約束…」
「ごめんね」
「お前……!」

泣き崩れる彼女を抱き締めると、力の限りひっかいてきた。
だけどそれでも離さない僕に諦めたように、彼女はそっと柔らかく抱きしめてきた。

これまでいつも、そうしてきたように。

「寂しがりのお前が、我慢できるわけないもんな」
「そうだよ。みんなで、最後まで、一緒に居よう」

生きるのは、大事なものを見付ける為。
なら、大事なものを見付けたならーーーーーーー





彼女と二人、何よりも大切な宇宙を抱き締めた。
こんにちは、僕の二番目の宝物。








宇宙の卵ー隕石が、地球に衝突する、ちょうど半年前のこと。
脱出する資格もコネも持たない者は、世界と心中することに決まっていた。





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最終更新日  2017.05.02 08:42:44
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