Laub🍃

Laub🍃

2012.03.04
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カテゴリ: .1次メモ
すべて知らぬ存ぜずで過ごせると思っていた。
隠遁する老人のような生活を送っていれば、誰も傷つけず誰からも傷つけられることなく
ただひたすらに道草のような思い出したら遊んでもらえるような存在になれると。

そんなわけがなかった。

葬式の知らせ。

私はその時まで、彼が病にかかっていることすら知らなかった。

叫ぶ。誰もいないことを分かっていて叫ぶ。誰かに聞かせる声など持ち合わせていない。
声を聴かせる相手ももう居ない。
声を聴きたい相手ももう居ない。


叫びも祈りも忍びも全てが今や無駄になってしまう。

泥濘のように這いずる私の目に、ふと光が見えた。

彼。……いや、彼の、息子。

私は、這いずるようにして、彼に近付いて行った。


今度こそ、見失わない。
呼びかける声はもう枯れているけれど。





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最終更新日  2015.10.14 15:20:54
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